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アレンのおかあさん
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『昨夜の失態はなんです。わたくしの顔に泥を塗るつもりですか』
――ぴしゃりと叱るような声に、心臓がどきっと鳴った。
スクリーンに映ったのは信じられないくらいきれいな女性。金色の髪をまとめあげ、真珠や宝石でまとめてある。肌は人形みたいに白くてまつ毛は金色、瞳は青い。着ている服にもたくさんの宝石が縫いつけられてキラキラしている。
とっても美人だけれど、なぜかしら、冷たい感じがする。その人の周りには二、三人のおとながいるけれど、みんな無表情で人形みたいに怖い。
みんなが見ている先に、まっしろなシャツを着たアレンが立っていた。いまよりずっと小さい。七歳くらいかしら。うつむいて唇を噛んでいる。
『聞いているのですか、アレクシス』
『……はい、おかあさん』
『なら返事をなさい。無礼にも程があるわ』
まるで自分が怒られているみたいで心臓がドキドキする。
この人がアレンのお母さん?――えっと、たしか新しいお母さんよね。となりのアレンをつついて小声で話しかけた。
「ねぇアレン。この人がお母さんなの? 本当に? どうしてこんなに怒っているの?」
「おれがミスしたからだよ」
アレンはぎゅっと唇を噛みしめた。
「レイクウッド王国では七歳になると王様の前で自分の魔法を見せるんだけど、おれは周りのみんなを石にしちまったんだ。ほんとうは花びらを降らせるつもりだったけど緊張して、うまくいなかった」
「で、でも、元に戻ったんでしょう? だれかがケガしたわけでもないでしょう?」
「うん。ルシウスがすぐに戻してくれた。でも、失敗は失敗だから」
でもでもでも、アレンはわざと悪いことをしたんじゃないのよね。石になって困った人がいるかもしれないけど、でも、アレンは、頑張ろうとしたのよね。
『せっかくのお披露目の機会だったというのに。わたくしがどれだけ恥ずかしい思いをしたか分かりますか? 子どもだからと甘えるんじゃありません。わたくしの息子なら完璧に魔法を使いこなしてみなさい』
「そ――そんなの無理に決まってるじゃない!」
気がつくとわたしは、立ち上がって、叫んでいる。スクリーンの中の人に届くはずがないと気づいて、また変なことしちゃった、と思ったけれど、涙が止まらない。
「エマ、いいよ、こんな奴を相手にする必要ない。言わせておけばいいんだ」
アレンに腕を引かれてイスに座ってからも、スクリーンの中でアレンに向けられる氷のような言葉にズキズキと胸が痛んだ。
ねぇ、アレンが帰る家ってここなの? 氷のように冷たい目で接する人たちの中に、アレンは戻るの?――そんなのって、ない。
「うっ、ひっく……」
泣きすぎてお腹がいたくなってきた。もしかしてこれが今回の試練なの?
「エマはほんとうに泣き虫だな」
見かねたアレンが頭をなでてくれた。
さっき、ルシウスさんもしていたわね。どうしてか分からないけど、安心する。
だいじょうぶだよ、ありがとう、大好き。って言われている気がする。
「エマ、みてろ。もうすぐルシウスが助けてくれるはずだから。――ほら」
アレンが部屋を出て行ったあと、スクリーンが動き、ルシウスさんが近づいていくのが分かった。
『なにか用ですか、宮廷魔法使いどの』
メイドみたいな人に爪の手入れをさせていたアレンのお母さんが視線を上げる。宮廷魔法使いってなにかしら。
『失礼ながら申し上げます、陛下。彼はレイクウッド王国の始祖と呼ばれる竜と同じエメラルドの瞳をもち、稀にみる魔法の才能をお持ちです。しかし、まだ足りないものがある。知識と体力と経験です。この三つの要素を簡単に会得する方法がひとつだけあります』
『それは?』
『自らの足で異国を旅することですよ。当然体力がつくでしょうし、本でふれるよりも目で見た方が多くを得られることでしょう。いかがですか、この“オズワルド・ルシウス・ティンカーベル”に“アレクシス王子”を任せいただくというのは』
「アレクシス王子!?」
「オズワルド!?」
わたしとアレンはほぼ同時に立ち上がり、同時に顔を見合わせて、同時に首をかしげた。
「え……と、ちょっと待って。アレンが、王子様?」
「ルシウスが賢者オズワルド? 魔法大学を首席で卒業したあと数年でこの世のすべての魔法を使えるようになった大天才?」
「もう、わたしが先よ! アレンは王子様なの?」
「おれが先だ。ルシウスが本当にオズワルドなのか確かめないと」
「わたしが聞いてるの!」
「おれが話してるんだよ!」
ふたりともパニックになってぎゃーぎゃー騒いでしまった。
『ばふ、落ち着けわわんっ』
スピンが後ろ足で立ち上がって必死になだめようとしている。アレンは「あぁそうだよ」と投げやりに言って乱暴に腰かけた。
「一回しか説明しないからな。――おれはレイクウッド王国の王子でアレクシス・リオン・テオ・レイクウッドって長い名前がある。本当の母さんは貴族じゃないただの薬師だったけど、王様に気に入られて第八王妃になったんだってさ。で、画面に映っていた嫌味なお母さんは第一王妃だけど、自分の子どもたちが全然魔法が使えないからおれを養子にしたんだ。王国では、王の血を引く子どもの中で一番魔法がうまい子が次の王様になる決まりだから目をつけたんだよ」
「待って、早い、早口すぎる!」
なにを言っているのかほとんど理解できなかったわ。風船に穴を空けたらあっという間にしぼんでいくみたいに、アレンはさっさと終わらせようとしている。
でも、王子様というのは事実なのよね。
「だから顔を変えていたんだよ。王子があちこち旅しているってバレたら面倒だろ」
「ふえー、わたし、生まれて初めて王子様を見たわ」
なんだかため息が出ちゃう。
とてもすごいことよね。たぶん。流れ星をキャッチするくらいの確率かもしれないわ。
「あ、どうしよう! わたし王子様に対していろいろ言ったけれど、罪に問われないかしら?」
急に心配になってきた。もし明日にでもレイクウッド王国の警察の人たちが来て「王子様にひどいことをした罪で逮捕する」なんて言ったら……。
「ばーか」
ぱちん、とおでこを弾かれる。
「おれが友だちのことを告げ口するわけないだろう。もしだれかがエマを捕まえようとしたら魔法で追い返してやる」
自信満々に親指を立てるから、なんだかうれしくなってきた。
――あぁ、そうね。そうだわ。王子様が友だちを作っちゃいけないって法律はないはず。わたしはアレンにとっての友だちで、これからもアレンと友だちでいていいんだわ。
そうと分かったら急に頬がゆるんで、気づくと笑っていた。
「エマは本当に泣いたり笑ったり忙しいヤツだな。めんどくせーの」
「ちょっと、そんな言い方ないでしょ!」
「あ、いま叩いたな。王子への暴力だぞ」
「えっ!? どうしよう」
「うそだよ」
「もー!!」
『ばふー。楽しんでいるようだけど、まだ続きがあるわわんっ』
とりあえずアレンの疑問であるルシウスさんがオズワルドさん? 問題は置いといて、スクリーンを見上げた。
いつの間にか画面が変わり、ルシウスさんが白い靄の中を飛んでいる。雲かしら。なんて速さなの。
『早く早く、いそがないと』
――ぴしゃりと叱るような声に、心臓がどきっと鳴った。
スクリーンに映ったのは信じられないくらいきれいな女性。金色の髪をまとめあげ、真珠や宝石でまとめてある。肌は人形みたいに白くてまつ毛は金色、瞳は青い。着ている服にもたくさんの宝石が縫いつけられてキラキラしている。
とっても美人だけれど、なぜかしら、冷たい感じがする。その人の周りには二、三人のおとながいるけれど、みんな無表情で人形みたいに怖い。
みんなが見ている先に、まっしろなシャツを着たアレンが立っていた。いまよりずっと小さい。七歳くらいかしら。うつむいて唇を噛んでいる。
『聞いているのですか、アレクシス』
『……はい、おかあさん』
『なら返事をなさい。無礼にも程があるわ』
まるで自分が怒られているみたいで心臓がドキドキする。
この人がアレンのお母さん?――えっと、たしか新しいお母さんよね。となりのアレンをつついて小声で話しかけた。
「ねぇアレン。この人がお母さんなの? 本当に? どうしてこんなに怒っているの?」
「おれがミスしたからだよ」
アレンはぎゅっと唇を噛みしめた。
「レイクウッド王国では七歳になると王様の前で自分の魔法を見せるんだけど、おれは周りのみんなを石にしちまったんだ。ほんとうは花びらを降らせるつもりだったけど緊張して、うまくいなかった」
「で、でも、元に戻ったんでしょう? だれかがケガしたわけでもないでしょう?」
「うん。ルシウスがすぐに戻してくれた。でも、失敗は失敗だから」
でもでもでも、アレンはわざと悪いことをしたんじゃないのよね。石になって困った人がいるかもしれないけど、でも、アレンは、頑張ろうとしたのよね。
『せっかくのお披露目の機会だったというのに。わたくしがどれだけ恥ずかしい思いをしたか分かりますか? 子どもだからと甘えるんじゃありません。わたくしの息子なら完璧に魔法を使いこなしてみなさい』
「そ――そんなの無理に決まってるじゃない!」
気がつくとわたしは、立ち上がって、叫んでいる。スクリーンの中の人に届くはずがないと気づいて、また変なことしちゃった、と思ったけれど、涙が止まらない。
「エマ、いいよ、こんな奴を相手にする必要ない。言わせておけばいいんだ」
アレンに腕を引かれてイスに座ってからも、スクリーンの中でアレンに向けられる氷のような言葉にズキズキと胸が痛んだ。
ねぇ、アレンが帰る家ってここなの? 氷のように冷たい目で接する人たちの中に、アレンは戻るの?――そんなのって、ない。
「うっ、ひっく……」
泣きすぎてお腹がいたくなってきた。もしかしてこれが今回の試練なの?
「エマはほんとうに泣き虫だな」
見かねたアレンが頭をなでてくれた。
さっき、ルシウスさんもしていたわね。どうしてか分からないけど、安心する。
だいじょうぶだよ、ありがとう、大好き。って言われている気がする。
「エマ、みてろ。もうすぐルシウスが助けてくれるはずだから。――ほら」
アレンが部屋を出て行ったあと、スクリーンが動き、ルシウスさんが近づいていくのが分かった。
『なにか用ですか、宮廷魔法使いどの』
メイドみたいな人に爪の手入れをさせていたアレンのお母さんが視線を上げる。宮廷魔法使いってなにかしら。
『失礼ながら申し上げます、陛下。彼はレイクウッド王国の始祖と呼ばれる竜と同じエメラルドの瞳をもち、稀にみる魔法の才能をお持ちです。しかし、まだ足りないものがある。知識と体力と経験です。この三つの要素を簡単に会得する方法がひとつだけあります』
『それは?』
『自らの足で異国を旅することですよ。当然体力がつくでしょうし、本でふれるよりも目で見た方が多くを得られることでしょう。いかがですか、この“オズワルド・ルシウス・ティンカーベル”に“アレクシス王子”を任せいただくというのは』
「アレクシス王子!?」
「オズワルド!?」
わたしとアレンはほぼ同時に立ち上がり、同時に顔を見合わせて、同時に首をかしげた。
「え……と、ちょっと待って。アレンが、王子様?」
「ルシウスが賢者オズワルド? 魔法大学を首席で卒業したあと数年でこの世のすべての魔法を使えるようになった大天才?」
「もう、わたしが先よ! アレンは王子様なの?」
「おれが先だ。ルシウスが本当にオズワルドなのか確かめないと」
「わたしが聞いてるの!」
「おれが話してるんだよ!」
ふたりともパニックになってぎゃーぎゃー騒いでしまった。
『ばふ、落ち着けわわんっ』
スピンが後ろ足で立ち上がって必死になだめようとしている。アレンは「あぁそうだよ」と投げやりに言って乱暴に腰かけた。
「一回しか説明しないからな。――おれはレイクウッド王国の王子でアレクシス・リオン・テオ・レイクウッドって長い名前がある。本当の母さんは貴族じゃないただの薬師だったけど、王様に気に入られて第八王妃になったんだってさ。で、画面に映っていた嫌味なお母さんは第一王妃だけど、自分の子どもたちが全然魔法が使えないからおれを養子にしたんだ。王国では、王の血を引く子どもの中で一番魔法がうまい子が次の王様になる決まりだから目をつけたんだよ」
「待って、早い、早口すぎる!」
なにを言っているのかほとんど理解できなかったわ。風船に穴を空けたらあっという間にしぼんでいくみたいに、アレンはさっさと終わらせようとしている。
でも、王子様というのは事実なのよね。
「だから顔を変えていたんだよ。王子があちこち旅しているってバレたら面倒だろ」
「ふえー、わたし、生まれて初めて王子様を見たわ」
なんだかため息が出ちゃう。
とてもすごいことよね。たぶん。流れ星をキャッチするくらいの確率かもしれないわ。
「あ、どうしよう! わたし王子様に対していろいろ言ったけれど、罪に問われないかしら?」
急に心配になってきた。もし明日にでもレイクウッド王国の警察の人たちが来て「王子様にひどいことをした罪で逮捕する」なんて言ったら……。
「ばーか」
ぱちん、とおでこを弾かれる。
「おれが友だちのことを告げ口するわけないだろう。もしだれかがエマを捕まえようとしたら魔法で追い返してやる」
自信満々に親指を立てるから、なんだかうれしくなってきた。
――あぁ、そうね。そうだわ。王子様が友だちを作っちゃいけないって法律はないはず。わたしはアレンにとっての友だちで、これからもアレンと友だちでいていいんだわ。
そうと分かったら急に頬がゆるんで、気づくと笑っていた。
「エマは本当に泣いたり笑ったり忙しいヤツだな。めんどくせーの」
「ちょっと、そんな言い方ないでしょ!」
「あ、いま叩いたな。王子への暴力だぞ」
「えっ!? どうしよう」
「うそだよ」
「もー!!」
『ばふー。楽しんでいるようだけど、まだ続きがあるわわんっ』
とりあえずアレンの疑問であるルシウスさんがオズワルドさん? 問題は置いといて、スクリーンを見上げた。
いつの間にか画面が変わり、ルシウスさんが白い靄の中を飛んでいる。雲かしら。なんて速さなの。
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