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ふわふわ飛んじゃう!
鬼の正体
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(でもこの子はどうして飛べなかったの? 理由があったんじゃないの?)
突然満月が真っ黒な雲に隠れた。いや違う、雲だったら赤い目玉がぎらぎら光っているはずがない。
「きゃっ」
「花菜!」
花菜は突然現れた巨大な蛇に体をぐるぐる巻きにされる。
『アキト、鬼は二匹いたんだ。鬼になった蛇が花菜の影を襲ったにちがいない』
「そういうことか。くそっ、このままじゃ置いていかれる。赤ニャン変化してオレを持ち上げろ」
『ったく猫使いの荒いことで』
赤ニャンは軽口で文句を言いながらも体を反転させた。赤いカラスの姿に変身してアキトの首元を掴んで飛び立つ。
「青巻紙赤巻紙黄巻紙 東京特許許可局 武具馬具武具馬具三武具馬具あわせて武具馬具六武具馬具 桜咲く桜の山の桜花咲く桜あり散る桜あり 六根清浄 急急如律令」
呪文を受けて札に光が宿る。それを蛇に向かって投げた。うまく眉間に貼りつくが蛇はまったく動じない。赤い舌を伸ばして器用にはぎ取ってしまった。
「ちっ。もう一回。短縮版だ。青巻紙赤巻紙黄巻紙 桜咲く桜の山の桜花咲く桜あり散る桜あり 六根清浄 急急如律令」
アキトは再度札を投げつける。しかしそれは蛇に届く前に尻尾でたたき落とされた。そのままアキトたちに尻尾が振り下ろされる。
「うわっ」
「アキトくん! 赤ニャン!」
まともに尻尾で叩かれたアキトと赤ニャンは数メートル落下した。木の枝がクッションになってアキトを受け止める。しかし蛇はとどめを刺すつもりなのか大きな体をうねらせてアキトたちに襲いかかった。
(どうしよう、このままじゃ!)
花菜は焦った。焦りながら考えた。
どうすればいい。どうすればアキトたちを助けられる。
(そうだ。影)
友美に影を踏まれたとき、花菜の影から蛇が逃げていった。だとすれば。
花菜はなんとか首を巡らせて夜空を見上げた。
(お月さまは、ある。影もばっちり)
まぶしいほどの月の光に蛇の影が濃く映っている。
「アキトくん影だよ。蛇の影を狙って。わたしも一緒に呪文となえるから!」
アキトがうなずく。ぼろぼろになりながらもポケットから札を取り出して指先に挟む。
花菜もそこに祈りが届くように両手をあわせた。
(とどいて)
「いくぞ」とアキトの声が聞こえた。
「「青巻紙赤巻紙黄巻紙 東京特許許可局 武具馬具武具馬具三武具馬具あわせて武具馬具六武具馬具 桜咲く桜の山の桜花咲く桜あり散る桜あり 六根清浄 急急如律令」」
アキトの札に光が宿る。それはまるで太陽のように強い。
「成仏しろ!」
アキトが蛇の影に札を叩きつける。花菜を縛り上げていた蛇は一瞬硬直し、そして、尻尾から砂のように崩れていった。
「えっ、あ、落ちるー」
支えを失って落下した花菜だったが赤ニャンが巨大なクッションに変化して受け止めてくれた。すこしずつしぼんでいくので様子を見ながら地面に立った。しかしまだ足元がふらつく。
「花菜、だいじょうぶか」
バランスを崩したとき、とっさにアキトが抱きしめてくれた。花菜の体は一気に熱くなる。
「だ、だいじょうぶだから!」
思いきり突き飛ばす。アキトは「ならいいけど」と不満そう。
「あ……あ、そうだアキトくん。このまま付き合ってほしいの」
「どこへ?」
花菜は自分の胸に手を置き、これ以上ないくらいはっきりと答えた。
「この子が眠っているところ」
突然満月が真っ黒な雲に隠れた。いや違う、雲だったら赤い目玉がぎらぎら光っているはずがない。
「きゃっ」
「花菜!」
花菜は突然現れた巨大な蛇に体をぐるぐる巻きにされる。
『アキト、鬼は二匹いたんだ。鬼になった蛇が花菜の影を襲ったにちがいない』
「そういうことか。くそっ、このままじゃ置いていかれる。赤ニャン変化してオレを持ち上げろ」
『ったく猫使いの荒いことで』
赤ニャンは軽口で文句を言いながらも体を反転させた。赤いカラスの姿に変身してアキトの首元を掴んで飛び立つ。
「青巻紙赤巻紙黄巻紙 東京特許許可局 武具馬具武具馬具三武具馬具あわせて武具馬具六武具馬具 桜咲く桜の山の桜花咲く桜あり散る桜あり 六根清浄 急急如律令」
呪文を受けて札に光が宿る。それを蛇に向かって投げた。うまく眉間に貼りつくが蛇はまったく動じない。赤い舌を伸ばして器用にはぎ取ってしまった。
「ちっ。もう一回。短縮版だ。青巻紙赤巻紙黄巻紙 桜咲く桜の山の桜花咲く桜あり散る桜あり 六根清浄 急急如律令」
アキトは再度札を投げつける。しかしそれは蛇に届く前に尻尾でたたき落とされた。そのままアキトたちに尻尾が振り下ろされる。
「うわっ」
「アキトくん! 赤ニャン!」
まともに尻尾で叩かれたアキトと赤ニャンは数メートル落下した。木の枝がクッションになってアキトを受け止める。しかし蛇はとどめを刺すつもりなのか大きな体をうねらせてアキトたちに襲いかかった。
(どうしよう、このままじゃ!)
花菜は焦った。焦りながら考えた。
どうすればいい。どうすればアキトたちを助けられる。
(そうだ。影)
友美に影を踏まれたとき、花菜の影から蛇が逃げていった。だとすれば。
花菜はなんとか首を巡らせて夜空を見上げた。
(お月さまは、ある。影もばっちり)
まぶしいほどの月の光に蛇の影が濃く映っている。
「アキトくん影だよ。蛇の影を狙って。わたしも一緒に呪文となえるから!」
アキトがうなずく。ぼろぼろになりながらもポケットから札を取り出して指先に挟む。
花菜もそこに祈りが届くように両手をあわせた。
(とどいて)
「いくぞ」とアキトの声が聞こえた。
「「青巻紙赤巻紙黄巻紙 東京特許許可局 武具馬具武具馬具三武具馬具あわせて武具馬具六武具馬具 桜咲く桜の山の桜花咲く桜あり散る桜あり 六根清浄 急急如律令」」
アキトの札に光が宿る。それはまるで太陽のように強い。
「成仏しろ!」
アキトが蛇の影に札を叩きつける。花菜を縛り上げていた蛇は一瞬硬直し、そして、尻尾から砂のように崩れていった。
「えっ、あ、落ちるー」
支えを失って落下した花菜だったが赤ニャンが巨大なクッションに変化して受け止めてくれた。すこしずつしぼんでいくので様子を見ながら地面に立った。しかしまだ足元がふらつく。
「花菜、だいじょうぶか」
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「だ、だいじょうぶだから!」
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「あ……あ、そうだアキトくん。このまま付き合ってほしいの」
「どこへ?」
花菜は自分の胸に手を置き、これ以上ないくらいはっきりと答えた。
「この子が眠っているところ」
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