11 / 37
さみしがりやの本
友美ちゃんを追って
しおりを挟む
昼休み、いてもたってもいられず図書室に向かった。奥まった本棚に駆け寄り、黒い本を必死に探す。
(もしかしたら友美ちゃん鬼に操られているんじゃないの)
きっと自分のせいだ。
アキトが封じてくれたはずだが半分ほどまで剥いでしまったのでなにかの拍子に取れてしまったのかもしれない。
「おかしいなぁ、この辺にあったバスなのに」
しかしいくら探しても見つからない。回りの本を手あたり次第取り出して本棚を空っぽにしても例の本は出てこない。
「こっちだったかな? どこに隠れちゃったんだろう」と次なる本棚に手を伸ばしたとき、
「こら、ダメでしょう」
本棚の向こう側からぬっと怖い顔があらわれた。
「おおお鬼ぃー!」
あまりにもびっくりして転んでしまう。「あらあら」と姿を見せたのは司書の先生だ。
「驚かせてごめんなさいね。でも本を散らかすから」
今さらながら足元に積み上げた本の山に気づき、「ごめんなさい」とあやまって本を戻しはじめる。司書の先生も手伝ってくれた。
「先生。ここにあった黒い本を知りませんか? 探しているんですが」
「黒い本ですか? どんな内容でしょう?」
「分からないんです。表に白いお札が貼ってあるんです」
「お札が貼られた黒い本ですか……」
先生は床に散らばった本を戻しながらぼんやりと考えている。
「そういえば以前ここにいた先生から聞いたことがあります。『友だち本』の話を」
「友だち本?」
「内容は分かりませんが、とても古い本で、一度も借りられたことがないんだそうです。だから本はさみしくて、自分を読んでくれる『友だち』を呼ぶんだとか。ただの噂話ですけどね」
先生もそれ以上のことは分からないらしく、結局本は見つからないまま図書室をあとにした。
花菜はとぼとぼと廊下を歩きながら考える。
(さみしくて? もしかしてそのせいで鬼になってしまったの? もし友美ちゃんに取り憑いていたらどうすればいいの? 焼くなんてできないし)
アキトに会って相談したい。そう思って顔を上げたとき中庭のニワトリ小屋が目に飛び込んできた。
(友美ちゃん?)
友美がひとりで小屋に入っていく。なんだかイヤな予感がして大急ぎで階段を駆け下りた。間髪入れずニワトリたちの悲鳴が聞こえる。
「友美ちゃん!」
中庭のニワトリ小屋の扉が全開になり、中で友美が背中を向けて座り込んでいた。
「……はな、ちゃん」
ぐるりと首を巡らせた友美は生きたニワトリの脚を口にくわえている。
するどく尖った角が二本、はっきりと見えた。
花菜は悲鳴を上げることもできなかった。
(もしかしたら友美ちゃん鬼に操られているんじゃないの)
きっと自分のせいだ。
アキトが封じてくれたはずだが半分ほどまで剥いでしまったのでなにかの拍子に取れてしまったのかもしれない。
「おかしいなぁ、この辺にあったバスなのに」
しかしいくら探しても見つからない。回りの本を手あたり次第取り出して本棚を空っぽにしても例の本は出てこない。
「こっちだったかな? どこに隠れちゃったんだろう」と次なる本棚に手を伸ばしたとき、
「こら、ダメでしょう」
本棚の向こう側からぬっと怖い顔があらわれた。
「おおお鬼ぃー!」
あまりにもびっくりして転んでしまう。「あらあら」と姿を見せたのは司書の先生だ。
「驚かせてごめんなさいね。でも本を散らかすから」
今さらながら足元に積み上げた本の山に気づき、「ごめんなさい」とあやまって本を戻しはじめる。司書の先生も手伝ってくれた。
「先生。ここにあった黒い本を知りませんか? 探しているんですが」
「黒い本ですか? どんな内容でしょう?」
「分からないんです。表に白いお札が貼ってあるんです」
「お札が貼られた黒い本ですか……」
先生は床に散らばった本を戻しながらぼんやりと考えている。
「そういえば以前ここにいた先生から聞いたことがあります。『友だち本』の話を」
「友だち本?」
「内容は分かりませんが、とても古い本で、一度も借りられたことがないんだそうです。だから本はさみしくて、自分を読んでくれる『友だち』を呼ぶんだとか。ただの噂話ですけどね」
先生もそれ以上のことは分からないらしく、結局本は見つからないまま図書室をあとにした。
花菜はとぼとぼと廊下を歩きながら考える。
(さみしくて? もしかしてそのせいで鬼になってしまったの? もし友美ちゃんに取り憑いていたらどうすればいいの? 焼くなんてできないし)
アキトに会って相談したい。そう思って顔を上げたとき中庭のニワトリ小屋が目に飛び込んできた。
(友美ちゃん?)
友美がひとりで小屋に入っていく。なんだかイヤな予感がして大急ぎで階段を駆け下りた。間髪入れずニワトリたちの悲鳴が聞こえる。
「友美ちゃん!」
中庭のニワトリ小屋の扉が全開になり、中で友美が背中を向けて座り込んでいた。
「……はな、ちゃん」
ぐるりと首を巡らせた友美は生きたニワトリの脚を口にくわえている。
するどく尖った角が二本、はっきりと見えた。
花菜は悲鳴を上げることもできなかった。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる