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さみしがりやの本

友美ちゃんを追って

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 昼休み、いてもたってもいられず図書室に向かった。奥まった本棚に駆け寄り、黒い本を必死に探す。


(もしかしたら友美ちゃん鬼に操られているんじゃないの)


 きっと自分のせいだ。
 アキトが封じてくれたはずだが半分ほどまで剥いでしまったのでなにかの拍子に取れてしまったのかもしれない。

「おかしいなぁ、この辺にあったバスなのに」

 しかしいくら探しても見つからない。回りの本を手あたり次第取り出して本棚を空っぽにしても例の本は出てこない。

 「こっちだったかな? どこに隠れちゃったんだろう」と次なる本棚に手を伸ばしたとき、

「こら、ダメでしょう」

 本棚の向こう側からぬっと怖い顔があらわれた。

「おおお鬼ぃー!」

 あまりにもびっくりして転んでしまう。「あらあら」と姿を見せたのは司書の先生だ。

「驚かせてごめんなさいね。でも本を散らかすから」

 今さらながら足元に積み上げた本の山に気づき、「ごめんなさい」とあやまって本を戻しはじめる。司書の先生も手伝ってくれた。

「先生。ここにあった黒い本を知りませんか? 探しているんですが」

「黒い本ですか? どんな内容でしょう?」

「分からないんです。表に白いお札が貼ってあるんです」

「お札が貼られた黒い本ですか……」

 先生は床に散らばった本を戻しながらぼんやりと考えている。

「そういえば以前ここにいた先生から聞いたことがあります。『友だち本』の話を」

「友だち本?」

「内容は分かりませんが、とても古い本で、一度も借りられたことがないんだそうです。だから本はさみしくて、自分を読んでくれる『友だち』を呼ぶんだとか。ただの噂話ですけどね」

 先生もそれ以上のことは分からないらしく、結局本は見つからないまま図書室をあとにした。

 花菜はとぼとぼと廊下を歩きながら考える。


(さみしくて? もしかしてそのせいで鬼になってしまったの? もし友美ちゃんに取り憑いていたらどうすればいいの? 焼くなんてできないし)

 アキトに会って相談したい。そう思って顔を上げたとき中庭のニワトリ小屋が目に飛び込んできた。


(友美ちゃん?)

 友美がひとりで小屋に入っていく。なんだかイヤな予感がして大急ぎで階段を駆け下りた。間髪入れずニワトリたちの悲鳴が聞こえる。


「友美ちゃん!」


 中庭のニワトリ小屋の扉が全開になり、中で友美が背中を向けて座り込んでいた。


「……はな、ちゃん」


 ぐるりと首を巡らせた友美は生きたニワトリの脚を口にくわえている。

 するどく尖った角が二本、はっきりと見えた。
 花菜は悲鳴を上げることもできなかった。
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