平凡雑音日記。

赤屋カル

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怖い女と罪な男

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僕は何かに取り憑かれている。

それは透明な獣のような形をして,
フッと息を吹き掛ければ消えてしまいそうな

そしてぎゅっと抱きつかれて
まるで2度と離さないと言わんばかりに
僕の体を鎖のように縛り付ける。


解放された,そう思っていたのは
僕だけだったみたいだ。


僕の瞳はまだ黒く,そして冷酷非道だ。


その冷たい目から離れる人も多いだろう。

「たくさん食べる人が好き」と彼女はいう。

そんな彼女の前で,僕は必死に食べる。

濃厚な焼き鳥のタレが僕の胃を少しずつ
満たしていく。

何串か食べた後に,僕のガラスのグラスは
少しずつ溢れていきそうになる。

一口食べるごとに10ミリの水がトクトク注がれ,もう、溢れる寸前だ。


「ギブ。」

まだ1皿に山盛りにのっている焼き鳥を前に
僕は空気と共に吐き出した。

彼女の三日月のような目は,いつのまにか
果てしなく遠く,
そして冷たく

一瞬で水が氷になるような

黒くて光が一つも入っていない瞳になった。



「ごめん。」
僕はその言葉を何度も何度も彼女に向けるのだが,

「食べられないなら,頼むなよ」
彼女は真っ当なことをグサッと吐いた。


僕は何も言い返せず,1万円を財布から取り出し,銀のプレートに載せるハメとなった。

彼女は終始口を開けては閉じ,閉じては開けを繰り返した。

その音は少しずつ,僕を苦しめ,
そして罪悪感に包もうとしていた。


彼女は「私,残す人が一番嫌い」
そう言って,彼女はまた三日月のような顔になって

 「だから,もうやめてね」

と顔とは反対に鋭く冷たく列車の轟音と同じ低さで吐き出した。
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