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152. 飛行機は、滅多に堕ちない
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一般に、車のエンジン音というのはかなり大きい。
それが観光バスという大きなものならば尚更である。会話にもなかなか苦労した。
そう考えると、会話も特に苦労せずに可能な飛行機というのは、よくできている。
「マジで雲の上飛んでんなー」
「いつまで言い続けるつもりだよ」
浜場は窓際でずっと雲を見下ろしている。
「しょうがないだろ、オレは飛行機初めてなんだから」
「まあ窓側はそのまま譲っててやるから、楽しみな」
俺は再び座席に腰を落ち着けた。
「慣れてるんだ?」
通路側にいるのは近藤だ。
この三人で固まったのは奇跡に近いだろう。
「まあ、旅行で時々乗ってたからな。テンションは上がるけどそこまでじゃないよ」
「なるほどねぇ。僕もそんな感じかな。少なくとも周りよりは慣れてると思うよ」
近藤は周りを見渡す。
今でこそ皆呑気にトランプなどに興じているが、離陸するときは一部から悲鳴も上がったものだ。
「まあ、慣れも必要だからな」
「飛行機はいろいろ怖いからね。例えば…墜落とか」
「お、おいおい、言うなって意識してたのに」
浜場が窓から顔を引き剥がしてこちらの会話に参加した。
「テレビだとああいうのドラマチックに仕立ててやるからなあ。慣れてくるとああいうの見た後『あー、飛行機乗りてえな』って思うようになるよ」
「精神強すぎだろ!」
「安心しろって。飛行機の事故率は車とかに比べて…」
「ねえねえ、君たち」
通路を挟んだ先の席にいる片理さんがいつもどおりの人当たりのいい笑顔で話しかけてきた。
かと思うと、その笑顔は変えぬまま暗いオーラを纏って、
「やめなさい、その話」
「…はい」
俺たちは揃って頭を垂れた。
「まったく。島地が怖がってるよ」
片理さんのさらに一つ奥の席には島地が座っている。
碓かに若干不安そうな表情をしていた。
「悪かったよ。飛行機はそんな事故起きるようなものじゃないから安心しろ。こうやって使われてることが証拠に…」
そこまで言った瞬間、ヒュンと落ちる感覚がした。
機内のシートベルト着用ランプが点灯する。
『ただいま当機は乱気流に突入いたしました。飛行に影響はございませんが、揺れが激しくなる恐れがありますので座席に座ってシートベルトをお締めください』
「…ヤバい、漏れそう…」
俺たちの話で脅かしてしまった後に、トドメを刺すかのような揺れ。
限界に達してしまった島地に、俺たちは揃って反省するほかなかった。
幸い、数分で乱気流を抜けることができたようで、ランプが消えた瞬間に島地はトイレへと駆けていった。
それが観光バスという大きなものならば尚更である。会話にもなかなか苦労した。
そう考えると、会話も特に苦労せずに可能な飛行機というのは、よくできている。
「マジで雲の上飛んでんなー」
「いつまで言い続けるつもりだよ」
浜場は窓際でずっと雲を見下ろしている。
「しょうがないだろ、オレは飛行機初めてなんだから」
「まあ窓側はそのまま譲っててやるから、楽しみな」
俺は再び座席に腰を落ち着けた。
「慣れてるんだ?」
通路側にいるのは近藤だ。
この三人で固まったのは奇跡に近いだろう。
「まあ、旅行で時々乗ってたからな。テンションは上がるけどそこまでじゃないよ」
「なるほどねぇ。僕もそんな感じかな。少なくとも周りよりは慣れてると思うよ」
近藤は周りを見渡す。
今でこそ皆呑気にトランプなどに興じているが、離陸するときは一部から悲鳴も上がったものだ。
「まあ、慣れも必要だからな」
「飛行機はいろいろ怖いからね。例えば…墜落とか」
「お、おいおい、言うなって意識してたのに」
浜場が窓から顔を引き剥がしてこちらの会話に参加した。
「テレビだとああいうのドラマチックに仕立ててやるからなあ。慣れてくるとああいうの見た後『あー、飛行機乗りてえな』って思うようになるよ」
「精神強すぎだろ!」
「安心しろって。飛行機の事故率は車とかに比べて…」
「ねえねえ、君たち」
通路を挟んだ先の席にいる片理さんがいつもどおりの人当たりのいい笑顔で話しかけてきた。
かと思うと、その笑顔は変えぬまま暗いオーラを纏って、
「やめなさい、その話」
「…はい」
俺たちは揃って頭を垂れた。
「まったく。島地が怖がってるよ」
片理さんのさらに一つ奥の席には島地が座っている。
碓かに若干不安そうな表情をしていた。
「悪かったよ。飛行機はそんな事故起きるようなものじゃないから安心しろ。こうやって使われてることが証拠に…」
そこまで言った瞬間、ヒュンと落ちる感覚がした。
機内のシートベルト着用ランプが点灯する。
『ただいま当機は乱気流に突入いたしました。飛行に影響はございませんが、揺れが激しくなる恐れがありますので座席に座ってシートベルトをお締めください』
「…ヤバい、漏れそう…」
俺たちの話で脅かしてしまった後に、トドメを刺すかのような揺れ。
限界に達してしまった島地に、俺たちは揃って反省するほかなかった。
幸い、数分で乱気流を抜けることができたようで、ランプが消えた瞬間に島地はトイレへと駆けていった。
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