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149. 必要な準備を、整えよう
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週末直前の、それも放課後の学校は、どこか浮足立っている。
まあいつものことだ。俺たちは社会人になってもこんなノリで生きていくのだろう。
「悪い、今日は用事あるから」
「そっか、明日はホワイトデーだもんね。準備とかあるよね」
「まあそんなところだ」
半分くらいはごまかした。
俺には別の用事もある。
美香に別れを告げて、俺はスマホを取り出した。
◆ ◆ ◆
向かった場所は、俺と美香がいつも会っている会議室。
そこには先客がいた。
「おっ、来たね」
「こんにちは、先輩」
由美先輩と花音先輩――文化祭以降、なんだかんだで関わりのある二人だ。
登録させられた連絡先で、俺が二人を呼び出したのだ。
「まさか奥原くんの方からこの連絡先を使ってくれるとはね」
「俺が使わなかったらそっちが使うつもりだったんですか…」
「ご、ごめんなさい…」
「まあまあ、いいじゃない」
彼女たちが俺の連絡先を使うときは、多分俺は生体ディルドかなにかとして使われることになるんだろう。
「さて、本題に入ろうか。奥原くん」
「はい――宿泊学習の話を、聞かせてください」
俺は手帳とペンを見せてやる気をアピールした。
由美先輩はうんうんと頷いたあと、花音先輩を促して机に着席させた。
そして、二人は鞄から旅のしおりを取り出す。
「捨てないで取っておいて、よかったです…」
「ホント、どんな形で役立つかわからないもんだね。一応訊くけどこれで合ってる?」
「はい、これです」
ぱらぱらと懐かしむように見てから、俺に中身を呈示する。
俺たちにしおりが配られるのは週明けなので完全に同じものかは不明だが、行き先も大まかな観光ルート等の情報もだいたい同じだった。
「どうせ今後使うこともないだろうし、これは奥原くんにあげるよ」
「いいんですか?」
「いいよいいよ、メモ取るよりラクだろうしね。わたしは花音に見せてもらうから」
由美先輩は椅子をずらして花音先輩と密着する。それがやりたかっただけなのではと思わなくもないが、とりあえず黙っておく。
花音先輩も満更でもなさそうだったし。
「まぁ…でも、こうやってわたしたちをわざわざ呼んだってことは、しおりからじゃ得られない情報が欲しいってことでしょ?」
「…察しが良くて助かります。俺が欲しい情報は…」
手帳に目を落とす。
大切なことだ。失敗のないように、過剰なまでに質問事項をメモしてある。
その中の核心的なものを、とりあえず二つ。
「温泉についてと――『ラブルーム』について。大まかにはこの二つです」
◆ ◆ ◆
「――とまあ、こんな感じかな?」
「ありがとうございました。訊きたいことはこれで全てです」
二人の話はとてもわかりやすかった。
それなりにあったはずの放課後の時間は、残すところ三十分弱となっていた。
手帳のページは実に四ページを消費し、手首が痛くなっている。
「それでは、ありがとうございました」
「あっ、あの――ちょっと、待ってくれませんか」
花音先輩が、立ち上がろうとした俺を呼び止めた。
「奥原くんは、今日、このあと時間はありますか」
「多少買い物はするつもりですが、まあ…」
「三十分だけでいいので…ちょっと、付き合ってもらえませんか」
「おっ、言えたね花音。えらいえらい」
「ひゃあっ」
頭をわしわしと撫でられて可愛い声をあげる花音先輩の姿に、俺は苦笑いをした。
二人とも、多分最初からこれを狙っていたのだろう。
ガッツリ話を聞かせてもらった身だ。お礼を身体で支払うのは、悪いことではない。
「わかりました」
俺は返事をした。
まあいつものことだ。俺たちは社会人になってもこんなノリで生きていくのだろう。
「悪い、今日は用事あるから」
「そっか、明日はホワイトデーだもんね。準備とかあるよね」
「まあそんなところだ」
半分くらいはごまかした。
俺には別の用事もある。
美香に別れを告げて、俺はスマホを取り出した。
◆ ◆ ◆
向かった場所は、俺と美香がいつも会っている会議室。
そこには先客がいた。
「おっ、来たね」
「こんにちは、先輩」
由美先輩と花音先輩――文化祭以降、なんだかんだで関わりのある二人だ。
登録させられた連絡先で、俺が二人を呼び出したのだ。
「まさか奥原くんの方からこの連絡先を使ってくれるとはね」
「俺が使わなかったらそっちが使うつもりだったんですか…」
「ご、ごめんなさい…」
「まあまあ、いいじゃない」
彼女たちが俺の連絡先を使うときは、多分俺は生体ディルドかなにかとして使われることになるんだろう。
「さて、本題に入ろうか。奥原くん」
「はい――宿泊学習の話を、聞かせてください」
俺は手帳とペンを見せてやる気をアピールした。
由美先輩はうんうんと頷いたあと、花音先輩を促して机に着席させた。
そして、二人は鞄から旅のしおりを取り出す。
「捨てないで取っておいて、よかったです…」
「ホント、どんな形で役立つかわからないもんだね。一応訊くけどこれで合ってる?」
「はい、これです」
ぱらぱらと懐かしむように見てから、俺に中身を呈示する。
俺たちにしおりが配られるのは週明けなので完全に同じものかは不明だが、行き先も大まかな観光ルート等の情報もだいたい同じだった。
「どうせ今後使うこともないだろうし、これは奥原くんにあげるよ」
「いいんですか?」
「いいよいいよ、メモ取るよりラクだろうしね。わたしは花音に見せてもらうから」
由美先輩は椅子をずらして花音先輩と密着する。それがやりたかっただけなのではと思わなくもないが、とりあえず黙っておく。
花音先輩も満更でもなさそうだったし。
「まぁ…でも、こうやってわたしたちをわざわざ呼んだってことは、しおりからじゃ得られない情報が欲しいってことでしょ?」
「…察しが良くて助かります。俺が欲しい情報は…」
手帳に目を落とす。
大切なことだ。失敗のないように、過剰なまでに質問事項をメモしてある。
その中の核心的なものを、とりあえず二つ。
「温泉についてと――『ラブルーム』について。大まかにはこの二つです」
◆ ◆ ◆
「――とまあ、こんな感じかな?」
「ありがとうございました。訊きたいことはこれで全てです」
二人の話はとてもわかりやすかった。
それなりにあったはずの放課後の時間は、残すところ三十分弱となっていた。
手帳のページは実に四ページを消費し、手首が痛くなっている。
「それでは、ありがとうございました」
「あっ、あの――ちょっと、待ってくれませんか」
花音先輩が、立ち上がろうとした俺を呼び止めた。
「奥原くんは、今日、このあと時間はありますか」
「多少買い物はするつもりですが、まあ…」
「三十分だけでいいので…ちょっと、付き合ってもらえませんか」
「おっ、言えたね花音。えらいえらい」
「ひゃあっ」
頭をわしわしと撫でられて可愛い声をあげる花音先輩の姿に、俺は苦笑いをした。
二人とも、多分最初からこれを狙っていたのだろう。
ガッツリ話を聞かせてもらった身だ。お礼を身体で支払うのは、悪いことではない。
「わかりました」
俺は返事をした。
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