女の子がエロい服を着てる世界でもラブコメはできる!

キューマン・エノビクト

文字の大きさ
上 下
116 / 164

116. 年末に、やることといえば

しおりを挟む
「本当にありがとうございました…!後日またお礼をさせていただきますので!」
「いえいえ、お構いなく」

 玄関先で腰を100度くらいに曲げてお礼をしているのは、揃って帰ってきた美香の両親である。
 わざわざ美香を迎えに来たらしい。

「総司くんも、またいつでも来ていいからね」
「それじゃあ、またお邪魔させてもらいます」

 俺も社交辞令を言って、美香を送り出した。

「じゃあね。良いお年を」
「そちらこそ、良いお年を」

 玄関の扉がバタンと閉じると、なにか一区切りついたような気持ちになった。
 部屋に戻ってみれば、まだベッドの布団に美香が座っていた跡がついている。
 さっきまで並んでゲームをやっていたのが嘘のように静かだ。
 触ってみると、まだ温かい。

「そんな寂しそうな顔しなくても、明後日には会えるでしょ」
「母さん…別にそういうことじゃなくてだな」

 苦笑いしながら言う母さんに、俺は微妙な表情を返した。

「どうだった、ちょっとした同棲生活は」
「同棲ってなぁ…ま、良かったよ」
「またそんな態度取っちゃって~」
「うるせ」

 思春期の息子のことくらい理解してほしい。
 まあ分かってやっているのだろうけども。

「また機会があったらいつでも美香ちゃん泊めていいからね。ね、お父さん」

 廊下の奥のリビングから「そうだな」と肯定する声が聞こえた。
 ここまで気に入られては、うっかり別れることもできないな。
 何なら、ここから家族ぐるみの付き合いに発展していく気がする…。
 まあそれで美香といられる時間が増えるならいいかと、俺は思考を切り替えた。

 ◆ ◆ ◆

 日付は変わって、翌日。

「さて、大掃除するわよ」
「唐突だな」
「唐突もなにもないでしょ。今日は大晦日でしょ」
「でも、いつも大掃除してなくね?」

 そう、我が家には大掃除という概念は特になかった。
 毎年、普通にやっているだけだ。

「でも、また美香ちゃんが来るかもしれないじゃない。そのときに汚い家じゃ幻滅されちゃうよ」
「幻滅って…怖いこと言うなよ」

 家の中が特に汚れているとも思わなかったが、それはそれとして幻滅されるのは怖いので、俺は大人しく大掃除に付き合うことに決めた。

「さあ、まずは…」

 母さんが気合を入れて仕切ろうとした瞬間、俺のスマホから着信音が鳴り響いた。

「悪い、美香からだ」
「…しょうがないわね」

 俺は電話に出た。

「もしもし?どうかしたか?」
『もしもしー、いやどうかしたってほどではないんだけど…うち、今から大掃除やるんだ。その間暇だから話せないかなーって』
「お、奇遇だな。うちもちょうど今始めようとしてたところだ」
『美香ー、掃除始めるわよー?あれ、通話中?もしかして総司くん?』
『ちょ、お母さんっ』

 美香の慌てる声がして、思わず頬が緩む。
 こちらを見ていた父さんに怪訝な顔をされた。そんな顔しなくても…。

「じゃ、通話繋ぎながら掃除やるか」
『おっけー!』

 電話越しにも伝わってくるその上機嫌さに、俺も心が弾んできた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

偶然PTAのママと

Rollman
恋愛
偶然PTAのママ友を見てしまった。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

処理中です...