女の子がエロい服を着てる世界でもラブコメはできる!

キューマン・エノビクト

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98. 真剣に、迷って

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 12月23日――冬休み初日にして、クリスマス二日前。
 最近悩みがちの俺は、例によって悩んでいた。

 クリスマスの日、白宮さんを外出に誘うか否かだ。

 つい昨日、マドレーヌを齧りながら浜場に打ち明けた悩み。
 励まされ、もやもやとした気持ちは半分くらい消えたのだが…それでも消えることはない。

(クリスマスに誘うなんて…完全に、告白みたいなものじゃないか…)

 聖夜が特別な意味を持っているのは、どの世界でも同じだ。
 散々悩んで時間を使って――俺は、スマートフォンを取った。
 然るべき人物に、連絡をするために。

 ◆ ◆ ◆

『それで、オレに連絡してきたってわけか。クリスマスイブイブの、二十三時に』

 要件を告げると、浜場は呆れたような口調で言った。

『オレは明日も明後日も由紀とイチャイチャする用事があるんだぞ。万が一にも寝坊して遅刻したらどうしてくれる』
「…ご、ごめん…そこまで思い至ってなかった…」

 考えてみれば当然である。
 ヤツは彼女持ちだ。
 クリスマスデートをしない学生カップルがこの世にいようか。いや、いないと言っても過言ではない。

『…協力してやるよ。他に気を配れないほど夢中なんだろ』
「……」

 言い返せず黙り込んだと見てか、浜場は話を続けた。

『とは言っても、オレが示す選択肢は一つだ』

 わざとらしく間を置いて、

『絶対に誘え。絶対にだ』

 念を押すかのごとく、二回繰り返した。

「…なんでか、訊いてもいいか」
『善は急げと言うだろ。なんなら告白してもいいとまで思ってる』
「でも、急がば回れとも…」
『…あのなぁ!』

 一際、浜場の声が大きくなる。

『散々回っただろ!4月から友達になって、9月くらいから散々悩んで、12月に入ってようやく好きだと自覚して!…その12月も、終わろうとしているんだぞ』
「…ごめん」

 勢いに押されて何を言えばいいかわからず、なぜか謝罪が口から零れ出た。

『いや、すまん…こっちも熱くなりすぎたわ』
「いいよ…自分がヘタレなのは、わかってるからな」

 どこか気まずい空気が横たわる。
 それを払拭したくて、俺はもう一つ質問をした。

「聞きたいんだけどさ。…浜場はどうやって島地と両想いだってわかったんだ?」
『へ?別に知らなかったよ?オレが付き合わないかって言ったらOKされただけ』
「怖くなかったのか?断られるかもって」
『別に。学生の恋愛ってそんなもんだし。たまたまオレらはいろいろ相性も良くて続いてるけど』
「……」

 あまりにも価値観が違いすぎる。

『結局さ、現実はそんなもんなんだ。学生同士の恋愛が当然のように結婚まで行くとでも思ってるんなら、お前はラブコメの読みすぎだ。とはいえ…お前も白宮さんも、軽く付き合ってみてどうのなんて動きができる質じゃないのはわかってる。ある意味相性が良いのかもな』
「白宮さんは、俺のことを好きかな」
『知らね。知れたとして、そりゃ卑怯だろ』
「卑怯…か。そうか、そうだよな」

 考えてみれば当然だ。
 当たりクジだけ引くことなど、できないのだから。

『知るには、動くしかねえんだよ。だから誘えって言ってるんだ。完璧なプランとか立てようとしなくていい、とにかく誘わないと何も始まらないからな』
「わかった…ありがとう」
『どういたしまして。せっかく時間割いてやったんだから行動に移せよ』
「ああ。…浜場が友達で良かったよ」
『死亡フラグ立てんなよ。じゃ、おやすみ』

 通話が切れた。

「…ったく、不安になるようなこと言うんじゃねえっての」

 はは、と小さく笑いながら、連絡先の一覧に指を滑らせる。
 …あった。タップして、メッセージを送る画面へ。
 これまた十分くらい文面に悩んで、結局とてもシンプルな文章を送った。
 然るべき人物へと。


『25日って空いてる?』
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