女の子がエロい服を着てる世界でもラブコメはできる!

キューマン・エノビクト

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74. 珍しい組み合わせも、たまには

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 ポーカーどころじゃない精神的疲弊を覚えながら、ふらふらと廊下を歩く。
 よく考えてみれば、人がいないからとアレを許可してしまった俺のやらかしである。

「はぁ…」

 ため息をひとつ零したところで、空腹感があることに気づいた。
 時刻は11時半を少し過ぎた頃。昼飯には早い気もするが、先程のアレでかなりエネルギーを消費したということだろうか。
 何にしろ、早めに食堂に向かってもいいだろう。
 そうなると、安牌なのはPTAが運営する食堂だ。
 本格的に昼飯にできるクラスやら部活やらというのは実のところ少なく、ほとんどが精々おやつ程度だ。
 無論、PTA側もそれを見越してちゃんとした食堂を提供しているのだろう。

(焼きそばもフランクフルトもあるにはあるが…まぁ、明日でいいや)

 ポケットに手を突っ込んで、学生以外立入禁止の廊下を歩く。
 ここは人混みもない上、食堂になっている部屋まで近いショートカットになるからだ。
 遠くの喧騒と対照的に足音が響くほど静かなところに足音を響かせていると、どうも足音がもう一つある気がする。
 気になって足を止めてみると、どうやらその足音は背後から近づいてくるらしい。
 俺はその場で体を回転させた。

「…あれ、近藤?」
「なんだ、奥原だったんだ。どうしてこんなところに?」
「食堂行こうと思ってな。こっちが近いし、人もいないから」
「おっ、奇遇だね。僕もちょうど同じこと考えてたんだ」

 近藤は走り出して、すぐに俺の隣まで来てぴったり止まった。
 動きの端々から運動神経の良さが感じられる。

「せっかくだし、僕と一緒に行かない?」
「流石にこの場面で断りはしないよ。行こう」

 俺は苦笑いを浮かべて、二人で食堂へと向かった。

 ◆ ◆ ◆

 トレーの上に、塩おにぎりにミネストローネにコロッケ、そして水の入った紙コップを載せて、空いている席を探す。
 手を挙げる近藤の姿が目に入った。

「先に取っといたよ」
「サンキュ」

 窓際に設けられた、廊下の展望席のような感じの席。
 いつかの俺が言ったカウンター席が好きという言葉を覚えていてくれたのだろうか。
 俺は席について、「いただきます」と一言呟いてからミネストローネを手に取った。
 そして考える。…何を話そうか。
 文武両道の爽やかイケメン男子こと近藤とは、夏休みに行った海でのビーチバレーから度々絡むことがある。
 しかし、だいたい浜場が一緒にいた。多分、近藤と二人になるのはこれが初めてだろう。
 ふと隣を見ると、俺の悩みなど知らないといった顔で近藤がホットドッグにマスタードを注入しているところだった。

(まぁ、今はとりあえず食べるか)

 そう考えて、俺はミネストローネを啜った。
 温かさと共にトマトの淡い酸味が舌の上に広がり、流れ込んできたマカロニが柔らかい触感を伝えてきた。
 なんというか、疲れに効く味だ。

「あぁー…」
「お疲れかな」

 思わず漏れ出た声に、近藤は小さく笑いながら聞いてきた。

「まぁ、アレだったからな」
「そうだな。アレだ」

 隣のテーブルでバカラの担当スタッフをやっていた近藤は、俺のいたルーレットのテーブルで起きた全てをしっかりと見届けていたのだ。

「僕たちが想像する以上に精神的に大変だっただろうね、別世界から来た奥原じゃ」
「そうそう、全くそうなんだよ…ん?なんでその話を…?」
「浜場に聞いたんだ。奥原の動きはどうも女性が苦手というにはなんかおかしい気がして、何か知らないかと聞いてみたらあっさり」
「マジか…あいつ…」
「責めないであげてよ?流石に誤魔化しづらかったようだし」
「責めないよ、不服だけど動きが変だったのは俺のほうだからな。しかし、よくそんな荒唐無稽な話を信じたな」
「奥原から直接聞いていたら疑ったかもね。でも、浜場という他人がそれを信じるくらいには奥原はそれっぽかったってことだろうし、信じると言うよりは疑う理由がなかったね。ところで、このことはどれくらいの人が知ってるんだい?僕としても、浜場としかこの件を共有できないことはなかなかストレスでね」
「他人の事情を共有しようとするなよ…とりあえず、島地と色葉は知ってる。あと…」
「白宮さん、かな」
「…御名答」

 当てられてしまった俺は、再びミネストローネを啜った。
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