68 / 164
68. 文化祭当日の忙しさも、後から愛おしくなるのだろう
しおりを挟む
『それでは、ここに有屋祭の開催を宣言します!!』
二年生だかの実行委員長がマイクに向かって叫び、同時に体育館が湧いた。
時刻は午前九時。これから三十分後、一般客を受け入れることになる。
それまでに必要な準備を整えておかねばならない。
「景品よし、チップよ…くねぇ、別のが混じってる」
「こっちはデザイン間違い見つけたぞ。どうする?」
「うーん、遠目にはわからなそうだから足りなくなりそうだったら使う!」
「ヤバい、こっちの台のここ剥がれかけてる!」
「のりどこだっけ!」
「そっちの箱に赤いトランプ入ってない?」
最後の確認に、俺たちはてんやわんやしている。
なんというか、学生の文化祭らしいゴタゴタっぷりだ。
「…ま、こんなもんでいいだろ」
「奥原、さすがにもうちょいやったほうが良くね?」
「あとは十分その場その場の対応で凌げる範囲だよ」
楽観的すぎるのは考えものだが、心配のしすぎもまた然りである。
あるのだが…
「…終わったら急に手持ち無沙汰になったな」
急にやることがなくなってしまい、浜場は手をそわそわさせる。
周りを見てみても、どこか落ち着かないというか上の空のヤツが多かった。
「こういう感覚を楽しめるのは今だけだから、楽しもうぜ」
「その余裕はどこから来るんだよ…」
「知りたいか?…他の余裕のなさからだよ」
「どういうことだよ」
俺は無言で、着替えた女子たちを指した。
一般的なカジノによくあるであろう、バニー衣装だ。
バニー衣装なのだが…元の世界での布にあたる場所が、いわゆる網タイツのようにメッシュになっている。
網目のサイズは1cm四方くらいと荒い。もちろん何もかもが丸見えである。
そして、股間にはピンク色のコードが入り込んでいたり、バイブの先が見え隠れしていたりする。
白いふわふわの尻尾は腰よりももっと下にある。どこから生えているのかは言わずもがなである。
「普段の服とも違うから耐性がなくてな…」
「なるほどな…まぁ、頑張れ」
「そういえば、前から思ってたんだけどさぁ」
急にそのバニー衣装を着込んだ色葉が話に割り込んできた。
ちょうど話も途切れたタイミングだったので、そちらに耳を傾ける。
「奥原ってさ、要するに今は超眼福状態なわけじゃん?そういう感じでポジティブに考えればなんとかなったりしないの?」
「うーん…まあそう思うよな…」
俺はこちらの世界に来たときのことを淡く思い出し、頭に手を当てた。
「正直、最初は常識が変わったことにめちゃくちゃ動揺したし、慣れたら慣れたで今度は過剰摂取すぎて辛いんだよな。いい花の匂いでも濃すぎたら吐くだろ、そんな感じで」
「そんな感じ…なんだ…」
「こればっかりは実際に経験しないとわからないだろうからな。色葉も周りの人がキスばっかしてるような世界に行ったらわかるよ」
「「うわぁ…」」
想像したのか、色葉と浜場が同時に嫌そうな声を上げた。
「理解してたつもりではあったけど、まさかそんなにしんどい思いをしてたとは…軽く考えてたよ」
色葉は俺の肩をポンポンと叩いて、『頑張って』とサムズアップをした。
正直今更だなと思ってしまったが、ちょうどそのタイミングで開場のチャイムが鳴ったのでその言葉は胸の奥に仕舞い込んだ。
二年生だかの実行委員長がマイクに向かって叫び、同時に体育館が湧いた。
時刻は午前九時。これから三十分後、一般客を受け入れることになる。
それまでに必要な準備を整えておかねばならない。
「景品よし、チップよ…くねぇ、別のが混じってる」
「こっちはデザイン間違い見つけたぞ。どうする?」
「うーん、遠目にはわからなそうだから足りなくなりそうだったら使う!」
「ヤバい、こっちの台のここ剥がれかけてる!」
「のりどこだっけ!」
「そっちの箱に赤いトランプ入ってない?」
最後の確認に、俺たちはてんやわんやしている。
なんというか、学生の文化祭らしいゴタゴタっぷりだ。
「…ま、こんなもんでいいだろ」
「奥原、さすがにもうちょいやったほうが良くね?」
「あとは十分その場その場の対応で凌げる範囲だよ」
楽観的すぎるのは考えものだが、心配のしすぎもまた然りである。
あるのだが…
「…終わったら急に手持ち無沙汰になったな」
急にやることがなくなってしまい、浜場は手をそわそわさせる。
周りを見てみても、どこか落ち着かないというか上の空のヤツが多かった。
「こういう感覚を楽しめるのは今だけだから、楽しもうぜ」
「その余裕はどこから来るんだよ…」
「知りたいか?…他の余裕のなさからだよ」
「どういうことだよ」
俺は無言で、着替えた女子たちを指した。
一般的なカジノによくあるであろう、バニー衣装だ。
バニー衣装なのだが…元の世界での布にあたる場所が、いわゆる網タイツのようにメッシュになっている。
網目のサイズは1cm四方くらいと荒い。もちろん何もかもが丸見えである。
そして、股間にはピンク色のコードが入り込んでいたり、バイブの先が見え隠れしていたりする。
白いふわふわの尻尾は腰よりももっと下にある。どこから生えているのかは言わずもがなである。
「普段の服とも違うから耐性がなくてな…」
「なるほどな…まぁ、頑張れ」
「そういえば、前から思ってたんだけどさぁ」
急にそのバニー衣装を着込んだ色葉が話に割り込んできた。
ちょうど話も途切れたタイミングだったので、そちらに耳を傾ける。
「奥原ってさ、要するに今は超眼福状態なわけじゃん?そういう感じでポジティブに考えればなんとかなったりしないの?」
「うーん…まあそう思うよな…」
俺はこちらの世界に来たときのことを淡く思い出し、頭に手を当てた。
「正直、最初は常識が変わったことにめちゃくちゃ動揺したし、慣れたら慣れたで今度は過剰摂取すぎて辛いんだよな。いい花の匂いでも濃すぎたら吐くだろ、そんな感じで」
「そんな感じ…なんだ…」
「こればっかりは実際に経験しないとわからないだろうからな。色葉も周りの人がキスばっかしてるような世界に行ったらわかるよ」
「「うわぁ…」」
想像したのか、色葉と浜場が同時に嫌そうな声を上げた。
「理解してたつもりではあったけど、まさかそんなにしんどい思いをしてたとは…軽く考えてたよ」
色葉は俺の肩をポンポンと叩いて、『頑張って』とサムズアップをした。
正直今更だなと思ってしまったが、ちょうどそのタイミングで開場のチャイムが鳴ったのでその言葉は胸の奥に仕舞い込んだ。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる