55 / 164
55. 大会の会場が、混沌としないわけがない
しおりを挟む
今日の授業は、大会のためになんと午前中だけで終わりである。
生徒の自主性を重んじた結果らしいが、重んじすぎて授業時間が足りなくなったりしないのだろうか…
まあこれで授業時間が増えたとかは聞いたことがないので、もともとの時間を多く取ってるのかもしれない。
というわけで生徒たちは午後、会場たる体育館に集められた。
『それでは、第1回仮装・コスプレ大会を開催します!』
「もうコスプレって言っちゃったよ」
俺は小声で、会場に響く島地のアナウンスにツッコミを入れた。
最初は仮装だけしかなかった気がするが、皆あまりにもコスプレをするものだからコスプレも名称に冠されてしまった。多分第二回からはコスプレ大会になるだろう。
『大会優勝者には、なんと!とある有名な遊園地の!ペアチケットが!贈呈されます!』
会場がノリの良い奴らの雄叫びと黄色い悲鳴で埋まった。
俺はそっと耳を塞ぐ。横を見ると、浜場も同じ姿勢を取っていた。
声が止んでから、俺は小声で話しかける。
「やっぱうるさいよな」
「マッドサイエンティストは余計な雑音を好まないからな」
なんかズレた回答が返ってきた。嫌な予感がする。
『それでは、この後大会にエントリーする方はこちらの受付に来てください!』
「よし、行くぞ相棒!」
ノリノリで声を上げた浜場。
予想通りとはいえ、やっぱりか…
「一人で行けばいいだろ」
「なにおう!せっかく同じ格好してるのが二人いるのにやらないなんて選択肢があるか!?いやない!」
「あるだろ」
俺のやる気のない抗弁は早々に棄却され、俺は袖を掴まれて受付へと引きずられていった。
◆ ◆ ◆
というわけで、俺たちは白衣に受付番号たる『7』の札を貼り付けていた。
「バッジにする案もあったんだけど、そもそもつけるところがない子もいるからね」とは島地の弁である。
一瞬乳首に直接バッジを通すピアス方式を思い浮かべて、それが元の世界に割とありがちなネタであることに気づき、懐かしくなってしまった。
アレ実際どうなんだろうね。多分通す針が長すぎると左右に動くせいで衛生的にまずいと思う。
「で、優勝目指すならアピールしないといけないけどどうすんの」
仮装大会改め仮装・コスプレ大会は、参加していない人たちからの投票で結果が決まる。
その投票基準は特に決まっておらず、『おもしろかったから』『クォリティが高かったから』『なんかリアクションが良かったから』などなど、何でもござれだ。
「それはな、こうだ」
浜場は俺にドヤ顔を向けて、それから白衣の前でバッと両腕をクロスさせた。
手にはそれぞれ赤と黄の水溶液(水だが)の入った試験管。
そして叫ぶ。
「フゥーハハハ!!オレは狂気のマッドサイエンティスト!!実験を始めようじゃないかモルモット君!!」
なんか色々混じっていた。
人の目が急にバッと集まったのを感じた。
「ほら、お前もやれ」
「…まったく…」
小声で促され、俺は少し考えてから口を開いた。
そして、試験管を傾けて青と緑の水溶液(水だが)を流し込んだ。
「…やはり、疲れたときはこの薬に限るな」
空になった試験管を覗きながら、周囲に聞こえる音量で呟いてみる。
…もう、どうにでもなれだ。
生徒の自主性を重んじた結果らしいが、重んじすぎて授業時間が足りなくなったりしないのだろうか…
まあこれで授業時間が増えたとかは聞いたことがないので、もともとの時間を多く取ってるのかもしれない。
というわけで生徒たちは午後、会場たる体育館に集められた。
『それでは、第1回仮装・コスプレ大会を開催します!』
「もうコスプレって言っちゃったよ」
俺は小声で、会場に響く島地のアナウンスにツッコミを入れた。
最初は仮装だけしかなかった気がするが、皆あまりにもコスプレをするものだからコスプレも名称に冠されてしまった。多分第二回からはコスプレ大会になるだろう。
『大会優勝者には、なんと!とある有名な遊園地の!ペアチケットが!贈呈されます!』
会場がノリの良い奴らの雄叫びと黄色い悲鳴で埋まった。
俺はそっと耳を塞ぐ。横を見ると、浜場も同じ姿勢を取っていた。
声が止んでから、俺は小声で話しかける。
「やっぱうるさいよな」
「マッドサイエンティストは余計な雑音を好まないからな」
なんかズレた回答が返ってきた。嫌な予感がする。
『それでは、この後大会にエントリーする方はこちらの受付に来てください!』
「よし、行くぞ相棒!」
ノリノリで声を上げた浜場。
予想通りとはいえ、やっぱりか…
「一人で行けばいいだろ」
「なにおう!せっかく同じ格好してるのが二人いるのにやらないなんて選択肢があるか!?いやない!」
「あるだろ」
俺のやる気のない抗弁は早々に棄却され、俺は袖を掴まれて受付へと引きずられていった。
◆ ◆ ◆
というわけで、俺たちは白衣に受付番号たる『7』の札を貼り付けていた。
「バッジにする案もあったんだけど、そもそもつけるところがない子もいるからね」とは島地の弁である。
一瞬乳首に直接バッジを通すピアス方式を思い浮かべて、それが元の世界に割とありがちなネタであることに気づき、懐かしくなってしまった。
アレ実際どうなんだろうね。多分通す針が長すぎると左右に動くせいで衛生的にまずいと思う。
「で、優勝目指すならアピールしないといけないけどどうすんの」
仮装大会改め仮装・コスプレ大会は、参加していない人たちからの投票で結果が決まる。
その投票基準は特に決まっておらず、『おもしろかったから』『クォリティが高かったから』『なんかリアクションが良かったから』などなど、何でもござれだ。
「それはな、こうだ」
浜場は俺にドヤ顔を向けて、それから白衣の前でバッと両腕をクロスさせた。
手にはそれぞれ赤と黄の水溶液(水だが)の入った試験管。
そして叫ぶ。
「フゥーハハハ!!オレは狂気のマッドサイエンティスト!!実験を始めようじゃないかモルモット君!!」
なんか色々混じっていた。
人の目が急にバッと集まったのを感じた。
「ほら、お前もやれ」
「…まったく…」
小声で促され、俺は少し考えてから口を開いた。
そして、試験管を傾けて青と緑の水溶液(水だが)を流し込んだ。
「…やはり、疲れたときはこの薬に限るな」
空になった試験管を覗きながら、周囲に聞こえる音量で呟いてみる。
…もう、どうにでもなれだ。
0
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる