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42. 言葉の真意なんて、そう見抜けるものじゃない
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『2組の白宮選手、男子を連れて一着でゴール!!さぁお題は何だ!?』
実況が高らかに宣言する。
なんとなく周りを見渡してみると、やはり視線が俺たちに集中している。
こっちを指差してなにやらうわさ話をしているヤツもいる。人を指差すのはマナー違反だって幼稚園で教えてもらえなかったんだろうか?
白宮さんがお題の書かれた紙を係の人に手渡した。
『お題は…えー、お題は「仲の良い人」です!!見事に簡単なお題を引き当てましたが、彼を指定したのはなぜでしょう!?』
その質問に、会場の注目度がさらに増したのを感じた。
…本当に、俺たちは皆から注目される存在になってしまっていたらしい。
白宮さんは何食わぬ顔でマイクを受け取り、答えた。
『彼とは、勉強面で良きライバル同士だからです。前回は同率1位でしたが、次の中間テストでは彼に勝ちたいと思っています』
『おぉー、ありがとうございます!』
どこからともなく拍手と歓声が上がってきた。
当たり障りのない上手い回答だと思う。だが、ライバルにすらたどり着けなかった男たちが頭を抱えているのを見ると、そこそこ破壊力はあったのかもしれない。
『えーっと、それではこちらの…あなた』
「奥原です」
『奥原くん!白宮さんから宣戦布告されましたが、どうしますか?』
「…まぁ、負けないように頑張りたいと思います」
『とのことでしたー!以上です!お二人とも一着おめでとうございます!さて、二着の方がやってまいりました!』
俺の出番はここで終わったらしいので、自分の席に戻ることとした。
◆ ◆ ◆
「おいおい何だぁー、あのやる気のない言葉はぁ?」
「うるせぇ。咄嗟にスピーチするのは苦手なんだよ」
わざとらしく語尾を伸ばして絡んできた浜場に、俺は苦々しく返した。
「いやー、あそこは『白宮さんには負けません!絶対一位取ります!』って宣言するとこでしょ」
「そうは言うけどさ、アイツ負けず嫌いなところがあるんだよ。そっから一位もぎ取るのめちゃくちゃ大変だぞ?」
「えー、でもさ、おっくんって一学期の中間では二位で期末では同率一位でしょ?」
「そりゃそうだけどさ。宣戦布告しちゃった以上負けるわけには行かないってなって猛勉強すると思うぞアイツ」
「…へぇ~」
「なんだよ」
ニヤリとした笑みを浮かべて見つめてくる島地に、俺は聞き返す。
「白宮さんのこと、よく知ってるんだね。しかも『アイツ』呼びでさ」
「…仲はいいからな」
話の流れを汲めば明らかな意図が含まれていることがわかるその言葉に、俺は考えうる限りで最も無難な答えを返した。
「『仲は』ね。うん、そっか」
「…何だよ」
「自分で気づいたほうがいいこともあるってことだよ」
「…昔から意味深な話は理解できなくて苦手でな」
「別に、そのままの意味だよ」
「全く分からん。話が終わったなら、俺は玉入れの列に並びに行くぞ」
「うん。いってらっしゃい」
「今度は頑張れよー、奥原」
「俺達のクラスに勝利を捧げてくれ…」
「あっはは!加賀っちそれどんなキャラー?」
釈然としないまま、玉入れの待機列へと歩いていく。
少しして後ろを振り返ってみると、五人はもう解散して各自の席へと戻るところだった。
実況が高らかに宣言する。
なんとなく周りを見渡してみると、やはり視線が俺たちに集中している。
こっちを指差してなにやらうわさ話をしているヤツもいる。人を指差すのはマナー違反だって幼稚園で教えてもらえなかったんだろうか?
白宮さんがお題の書かれた紙を係の人に手渡した。
『お題は…えー、お題は「仲の良い人」です!!見事に簡単なお題を引き当てましたが、彼を指定したのはなぜでしょう!?』
その質問に、会場の注目度がさらに増したのを感じた。
…本当に、俺たちは皆から注目される存在になってしまっていたらしい。
白宮さんは何食わぬ顔でマイクを受け取り、答えた。
『彼とは、勉強面で良きライバル同士だからです。前回は同率1位でしたが、次の中間テストでは彼に勝ちたいと思っています』
『おぉー、ありがとうございます!』
どこからともなく拍手と歓声が上がってきた。
当たり障りのない上手い回答だと思う。だが、ライバルにすらたどり着けなかった男たちが頭を抱えているのを見ると、そこそこ破壊力はあったのかもしれない。
『えーっと、それではこちらの…あなた』
「奥原です」
『奥原くん!白宮さんから宣戦布告されましたが、どうしますか?』
「…まぁ、負けないように頑張りたいと思います」
『とのことでしたー!以上です!お二人とも一着おめでとうございます!さて、二着の方がやってまいりました!』
俺の出番はここで終わったらしいので、自分の席に戻ることとした。
◆ ◆ ◆
「おいおい何だぁー、あのやる気のない言葉はぁ?」
「うるせぇ。咄嗟にスピーチするのは苦手なんだよ」
わざとらしく語尾を伸ばして絡んできた浜場に、俺は苦々しく返した。
「いやー、あそこは『白宮さんには負けません!絶対一位取ります!』って宣言するとこでしょ」
「そうは言うけどさ、アイツ負けず嫌いなところがあるんだよ。そっから一位もぎ取るのめちゃくちゃ大変だぞ?」
「えー、でもさ、おっくんって一学期の中間では二位で期末では同率一位でしょ?」
「そりゃそうだけどさ。宣戦布告しちゃった以上負けるわけには行かないってなって猛勉強すると思うぞアイツ」
「…へぇ~」
「なんだよ」
ニヤリとした笑みを浮かべて見つめてくる島地に、俺は聞き返す。
「白宮さんのこと、よく知ってるんだね。しかも『アイツ』呼びでさ」
「…仲はいいからな」
話の流れを汲めば明らかな意図が含まれていることがわかるその言葉に、俺は考えうる限りで最も無難な答えを返した。
「『仲は』ね。うん、そっか」
「…何だよ」
「自分で気づいたほうがいいこともあるってことだよ」
「…昔から意味深な話は理解できなくて苦手でな」
「別に、そのままの意味だよ」
「全く分からん。話が終わったなら、俺は玉入れの列に並びに行くぞ」
「うん。いってらっしゃい」
「今度は頑張れよー、奥原」
「俺達のクラスに勝利を捧げてくれ…」
「あっはは!加賀っちそれどんなキャラー?」
釈然としないまま、玉入れの待機列へと歩いていく。
少しして後ろを振り返ってみると、五人はもう解散して各自の席へと戻るところだった。
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