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38. イベントというものは、正直めんどくさい
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2学期は長い。
月の数だけ数えればどちらもおよそ4ヶ月なのだが、俺たち1年生としては、学校に慣れない状態で4ヶ月を過ごすのと慣れた状態で4ヶ月を過ごすのではまるで感覚が違う。
1学期は慣れないうちにあっという間に終わってしまうが、2学期はゆっくりと進んでいく…ような気がする。
さらに2学期を長く感じさせるもう一つの要因として、イベントがある。
この学園のイベントは、全体的に2学期に偏っている。定期テストもあるし、他にも色々と待っているが、まず最初は…
「運動会の出場種目決めを行います」
先生の言葉に、俺は小さくため息をついた。
「なんだ奥原、随分憂鬱そうじゃねえか」
「憂鬱だよ。運動苦手なんだよな」
こっそりと話しかけてきた浜場に、俺は声のトーンを下げて返した。
「えー、おっくんそうは見えないけどなぁ」
「振り向くな島地、先生にバレるぞ」
島地は素直に前を向いた。
かと思うと、どこぞの司令のように肘をついて手を組んで、口元を隠しながら話を続ける。
「…おっくん、普段体育でもそこそこ活躍してると思うんだけど」
「良く見てくれててありがたいけど、実は得意不得意と好き嫌いって違うんだよ」
「まぁそれはそうかもしれないけどさ、とりあえず醜態を晒したりはしなさそうだし、気楽に行こうぜ」
「適当に…100m走とか玉入れとかで行くか…」
種目の投票が始まるなり、俺はするすると前に抜けていって目当てのものに投票し、無事に勝ち取った。
◆ ◆ ◆
「マジで楽なやつに投票しやがったなお前…」
二階の『展望席』で、俺は加賀と浜場に挟まれながら昼食のサンドイッチを頬張っていた。
「だから言ったろ、運動会は元々苦手なんだって」
「そうは言ったってお前結構動けるんだからさぁ」
「そういうのは近藤あたりに任せときゃいいだろ。アイツは文武両道が服を着てるようなヤツだぞ」
そう言ってから思った。もし彼が女子だったらこの例えは正しかったんだろうか。
思考が微妙に逸れたので、俺は手に持つサンドイッチの最後の一口を頬張り、思考をリセットした。
「まぁとにかく、これで運動会中は楽ができる。せっかくの週末が潰れてるんだ、これくらいいいだろ」
「へぇ、楽な種目ですか。何に出るんですか?」
急に頭上から降ってきた声に振り向くと、白宮さんがいた。
「俺は100m走と玉入れだよ。最低出場種目数の2つだ」
「残念、被ってませんね。私は1000m走と綱引き、借り物競争です」
「俺は被ってなくて安心したよ。白宮さんみたいな強い人とは戦いたくない」
「…そうですか」
なんかちょっと不機嫌にさせてしまったかもしれない。
表現を間違えたか…?
「そもそも俺は運動で誰かと競うのが苦手でな。負けるのもそうだが、勝つのも苦手なんだ。なんか隣でリアルタイムで負けてる人がいるというのは居心地が悪くてな。定期テストとかなら結果は発表されるまでわからないから、ある程度は気楽だけど」
「なるほど。そういう考え方もあるんですね」
「なんか生きづらそうだな」
「うるせえ」
指摘してきた加賀に雑な答えを返し、次のサンドイッチを手に取った。
月の数だけ数えればどちらもおよそ4ヶ月なのだが、俺たち1年生としては、学校に慣れない状態で4ヶ月を過ごすのと慣れた状態で4ヶ月を過ごすのではまるで感覚が違う。
1学期は慣れないうちにあっという間に終わってしまうが、2学期はゆっくりと進んでいく…ような気がする。
さらに2学期を長く感じさせるもう一つの要因として、イベントがある。
この学園のイベントは、全体的に2学期に偏っている。定期テストもあるし、他にも色々と待っているが、まず最初は…
「運動会の出場種目決めを行います」
先生の言葉に、俺は小さくため息をついた。
「なんだ奥原、随分憂鬱そうじゃねえか」
「憂鬱だよ。運動苦手なんだよな」
こっそりと話しかけてきた浜場に、俺は声のトーンを下げて返した。
「えー、おっくんそうは見えないけどなぁ」
「振り向くな島地、先生にバレるぞ」
島地は素直に前を向いた。
かと思うと、どこぞの司令のように肘をついて手を組んで、口元を隠しながら話を続ける。
「…おっくん、普段体育でもそこそこ活躍してると思うんだけど」
「良く見てくれててありがたいけど、実は得意不得意と好き嫌いって違うんだよ」
「まぁそれはそうかもしれないけどさ、とりあえず醜態を晒したりはしなさそうだし、気楽に行こうぜ」
「適当に…100m走とか玉入れとかで行くか…」
種目の投票が始まるなり、俺はするすると前に抜けていって目当てのものに投票し、無事に勝ち取った。
◆ ◆ ◆
「マジで楽なやつに投票しやがったなお前…」
二階の『展望席』で、俺は加賀と浜場に挟まれながら昼食のサンドイッチを頬張っていた。
「だから言ったろ、運動会は元々苦手なんだって」
「そうは言ったってお前結構動けるんだからさぁ」
「そういうのは近藤あたりに任せときゃいいだろ。アイツは文武両道が服を着てるようなヤツだぞ」
そう言ってから思った。もし彼が女子だったらこの例えは正しかったんだろうか。
思考が微妙に逸れたので、俺は手に持つサンドイッチの最後の一口を頬張り、思考をリセットした。
「まぁとにかく、これで運動会中は楽ができる。せっかくの週末が潰れてるんだ、これくらいいいだろ」
「へぇ、楽な種目ですか。何に出るんですか?」
急に頭上から降ってきた声に振り向くと、白宮さんがいた。
「俺は100m走と玉入れだよ。最低出場種目数の2つだ」
「残念、被ってませんね。私は1000m走と綱引き、借り物競争です」
「俺は被ってなくて安心したよ。白宮さんみたいな強い人とは戦いたくない」
「…そうですか」
なんかちょっと不機嫌にさせてしまったかもしれない。
表現を間違えたか…?
「そもそも俺は運動で誰かと競うのが苦手でな。負けるのもそうだが、勝つのも苦手なんだ。なんか隣でリアルタイムで負けてる人がいるというのは居心地が悪くてな。定期テストとかなら結果は発表されるまでわからないから、ある程度は気楽だけど」
「なるほど。そういう考え方もあるんですね」
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