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12. 嫌なやつとは、大抵邂逅するものだ
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沈黙は、比較的すぐに破られた。
「ん?奥原、それに…白宮さん?」
「おっ、ちゃんと来てたね」
流れていった先に、浜場と島地がいた。
「あたしがチケットあげたんだよ、こないだのイベントのお礼にって」
「イベント委員会、金持ってんな…」
呆れたように浜場が言う。
いっそ第三者委員会でも設置してやろうかと考えたが、俺はこの不明瞭な金の流れの恩恵を受ける側なので、見逃すことにした。
「まさか同じ日にぶつかるとは思ってなかったよ」
「まあ、夏休み最初の週末だしそりゃぶつかるだろ」
「いやぁ、デートの邪魔しちゃってごめんね?」
「その言葉そっくりそのままお前らにも返るからな?」
俺はカウンター攻撃のつもりでそんなことを言ったが、二人は平然としている。
「ん?いや、だってあたしたち付き合ってるし」
「…はぁ!?いつの間に!?」
「夏始まったくらい?」
返答された曖昧な時期。
6月あたりとかだろうか。
「はぁー…いつの間にやることちゃっかりやりやがって」
「えー、でもキスもまだだよ?」
「ちょ、おまっ…!公共の場で…!!」
浜場が慌てて島地を諌めた。
久々にキスが破廉恥な行為と認識されていることを思い出した。
「そんじゃ、そういうわけで。そっちも楽しんでね」
「あぁ、そっちこそ…」
ふと別方向を向いて、俺は見つけたくないものを見つけてしまった。
「ヤバい!逃げるぞ白宮さん!」
「え?いきなりどうしたの!?」
「あんときのレイプ未遂犯だ!多分見つかってはいないが…見つかると厄介だ」
「そりゃまずいな…オレたちがそれとなくブロックしておくから早く逃げてくれ」
「すまん、助かる!」
俺は白宮さんを浮き輪から水中に引きずり込んだ。
小さく悲鳴を上げるが、口も塞がせてもらう。
「白宮さん、このまま泳いで別エリアの近くまで行って、そこから一旦逃げるぞ」
「で、でも、私、泳げ…」
「大丈夫だ。俺がうまいこと引っ張るから。最悪犬かきでもいいから、とにかく動くぞ」
俺は白宮さんの手を握って、なんとか泳ぎ始めた。
たしかに、白宮さんは泳ぐのが下手だ。
それでも、必死についてきてくれるのと、プール自体が流れていることもあり、なんとか順調に逃げることができた。
◆ ◆ ◆
「君たち。退け」
背後から、真夏にそぐわない冷たい声が振ってくる。
オレと由紀は、おそるおそる振り返った。
「聞こえなかったか。退け」
「別に邪魔してるわけじゃないんスけどね」
「そうか。だが邪魔だ。退け」
「…避けてほしいんだったら、礼儀ってものがあるんじゃないですか」
真剣な声で、由紀が苦言を呈した。
「君たち、知っているぞ。確か、白宮と仲良くしていたな。あの男とも」
「何の話だかさっぱりだな」
「そうか。ならば退け。この俺をわざわざブロックしておくこともあるまい?」
(チッ、ここまでか…)
オレは水中で由紀の手を引き、横にずれようと合図した。
由紀もそれに従って、オレたちはヤツに進路を譲った。
ヤツは無言で流れるプールの中を泳いでいった。
「…っはぁ~…怖かった~…」
「マジでヤベえなあいつ…あんなのに絡まれてあいつら大丈夫か?」
「一応、尾行はしたほうがいいかもね…」
オレたちは、それとなく着いていくことにした。
「ん?奥原、それに…白宮さん?」
「おっ、ちゃんと来てたね」
流れていった先に、浜場と島地がいた。
「あたしがチケットあげたんだよ、こないだのイベントのお礼にって」
「イベント委員会、金持ってんな…」
呆れたように浜場が言う。
いっそ第三者委員会でも設置してやろうかと考えたが、俺はこの不明瞭な金の流れの恩恵を受ける側なので、見逃すことにした。
「まさか同じ日にぶつかるとは思ってなかったよ」
「まあ、夏休み最初の週末だしそりゃぶつかるだろ」
「いやぁ、デートの邪魔しちゃってごめんね?」
「その言葉そっくりそのままお前らにも返るからな?」
俺はカウンター攻撃のつもりでそんなことを言ったが、二人は平然としている。
「ん?いや、だってあたしたち付き合ってるし」
「…はぁ!?いつの間に!?」
「夏始まったくらい?」
返答された曖昧な時期。
6月あたりとかだろうか。
「はぁー…いつの間にやることちゃっかりやりやがって」
「えー、でもキスもまだだよ?」
「ちょ、おまっ…!公共の場で…!!」
浜場が慌てて島地を諌めた。
久々にキスが破廉恥な行為と認識されていることを思い出した。
「そんじゃ、そういうわけで。そっちも楽しんでね」
「あぁ、そっちこそ…」
ふと別方向を向いて、俺は見つけたくないものを見つけてしまった。
「ヤバい!逃げるぞ白宮さん!」
「え?いきなりどうしたの!?」
「あんときのレイプ未遂犯だ!多分見つかってはいないが…見つかると厄介だ」
「そりゃまずいな…オレたちがそれとなくブロックしておくから早く逃げてくれ」
「すまん、助かる!」
俺は白宮さんを浮き輪から水中に引きずり込んだ。
小さく悲鳴を上げるが、口も塞がせてもらう。
「白宮さん、このまま泳いで別エリアの近くまで行って、そこから一旦逃げるぞ」
「で、でも、私、泳げ…」
「大丈夫だ。俺がうまいこと引っ張るから。最悪犬かきでもいいから、とにかく動くぞ」
俺は白宮さんの手を握って、なんとか泳ぎ始めた。
たしかに、白宮さんは泳ぐのが下手だ。
それでも、必死についてきてくれるのと、プール自体が流れていることもあり、なんとか順調に逃げることができた。
◆ ◆ ◆
「君たち。退け」
背後から、真夏にそぐわない冷たい声が振ってくる。
オレと由紀は、おそるおそる振り返った。
「聞こえなかったか。退け」
「別に邪魔してるわけじゃないんスけどね」
「そうか。だが邪魔だ。退け」
「…避けてほしいんだったら、礼儀ってものがあるんじゃないですか」
真剣な声で、由紀が苦言を呈した。
「君たち、知っているぞ。確か、白宮と仲良くしていたな。あの男とも」
「何の話だかさっぱりだな」
「そうか。ならば退け。この俺をわざわざブロックしておくこともあるまい?」
(チッ、ここまでか…)
オレは水中で由紀の手を引き、横にずれようと合図した。
由紀もそれに従って、オレたちはヤツに進路を譲った。
ヤツは無言で流れるプールの中を泳いでいった。
「…っはぁ~…怖かった~…」
「マジでヤベえなあいつ…あんなのに絡まれてあいつら大丈夫か?」
「一応、尾行はしたほうがいいかもね…」
オレたちは、それとなく着いていくことにした。
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