女の子がエロい服を着てる世界でもラブコメはできる!

キューマン・エノビクト

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5. 日本国憲法もフランス人権宣言も、一体どうしてしまったんだ

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 放課後、教室を出てみると目の前に白宮さんがいた。

「さぁ、行きましょう。着いてきてください」

 白宮さんが歩き出したので、俺は素直についていく。
 ふと目を落とすと、可愛らしい、白いお尻が揺れていた。
 凝視するわけにもいかなかったので、俺はサッと視線を戻して、白宮さんの後頭部に集中した。
 周りからの視線もあったが、気にする余裕はなかった。

 白宮さんが足を止めて、ポケットから鍵を取り出す。

「先生に借りておきました。放課後いっぱい使えるそうです」
「ありがとう、助かる」

 鍵を開けてもらい、俺と白宮さんは部屋の中へ。
 ちょっとした会議室だった。
 これを放課後いっぱい貸してもらえるなんて、彼女は余程信頼されているんだろう。
 白宮さんはドアに鍵をかけ、席についた。

「鍵かけちまっていいのか?俺がレイプ未遂犯みたくなる可能性もあるんだぞ」
「学年2位を取るほど真面目に勉強していて、先生たちからの信頼も厚い人が下手な真似をするとも思いませんから」
「…俺のことをご存知で?」
「学業でライバルになりそうな人のことはつい意識してしまうんです。奥原 総司おくはら そうじくん」
「…そりゃどうも、白宮さん」

 終礼前に買ってきたコーヒーを開けると、心地よい香りが漂う。

「さて、お話を聞きましょうか」
「うーん…どこから話せばいいかな…そうだな…」

 コーヒーを一口飲んで、言葉をまとめる。

「俺が別の世界から来たと言ったら、信じるか?」
「…それは唐突ですね…。今流行りの『異世界転生』というものを、奥原くんはしてきたと?」
「いや、この世界も元の世界とほとんど同じなんだけど…歴史と常識が書き換わっている」

 白宮さんは要領を得ない様子だ。
 そりゃそうだろう。俺だって突然こんな事言われたら何が何だか分からない自信がある。

「例えば…そうだな、白宮さんって清楚…なんだよな?」
「一応、清楚と言われる部類の格好をしているつもりではありますが…」
「めちゃくちゃ失礼なのを承知で言うけど、俺にとってはその格好は痴女そのものなんだ」
「ち…じょ…」

 しばし考えてから、白宮さんは顔を真っ赤に染めた。

「ち、痴女!?私がですか!?ど、どこがですか!?」
「お、落ち着いてくれ!白宮さんは確かに清楚なんだと思う、この世界基準では。ただ、俺のいた世界では、女性は胸を出さないし股間も出さない、ローターも挿れないのが普通だったんだ。そういったところは性的な部位だから、それこそ恋人の前でもなければ隠すべきところだ。そもそも、公共の場で胸やら股間やらを出してたら、公然猥褻罪で逮捕される」
「なっ…服飾の自由がないってことですか!?」
「いや、ちゃんと隠してさえいれば基本的にどんな格好しても自由だが…こっちの世界では胸をさらけ出すところまで自由なのか?」
「はい、先進国ならほとんどどこでも自由です。日本だって、憲法に規定されているじゃないですか」
「そうなの!?」

 スマホを取り出し、検索する。
 服飾の自由。日本国憲法第22条で規定される自由権の一つ。
 マジであった…。

「俺がこの世界に来たのは、この学園に入学する一週間前だったから、まだ知らなかった」
「そんな、まだ最近じゃないですか」
「そうなんだよ。…常識がイカれたってわかってから、中学の歴史の教科書を流し読みしたよ。フランス革命がきっかけになったことまではわかったけど」
「なるほど…しかし、そうなると…奥原くんは、その、私をえっちな目で見ていると…?」
「…だから鍵なんかかけていいのか、って言ったんだよ。ここ2ヶ月ちょい、本当にめちゃくちゃ我慢きつかった…」
 
 俺はテーブルに突っ伏した。

「周りの異性がみんなめちゃくちゃエロい格好してるんだよ。見れて嬉しいとか最初の数日は思ったけど、もう変な目線がバレないように気をつけるのがキツくてキツくて…毎朝早く来てるのも、女の子がいない時間を確保してのんびりするためだし…しかも悩みの内容が内容だったから誰にも話せなかったし…」
「お…お疲れさまです…」

 一気に吐き出した俺に、白宮さんは若干引いていた。
 一方で、俺はずっと抱えていた悩みを全部吐き出せて結構スッキリしていた。

「世界を移ったとか、荒唐無稽な話ではありますけど…脳内設定と断じるのも難しいですね。私をエロい目で見ています、って私に言うのも奥原くんにはメリットがありませんし…」
「ぶっちゃけ、俺が実は他の世界から来たと信じ込んでる頭のおかしい人でも別にいいんだけどな、自分の知ってる常識が通用してないのは確かなんだよ。そういうわけで…」

 俺は両手をテーブルについて頭を下げた。

「頼む!俺に常識を教えてくれ!このままなにかやらかして将来ごと破滅するのは嫌なんだ!」
「わかりましたけど…どこから教えればいいんでしょうか…」

 白宮さんは困惑の表情を浮かべた。
 当然といえば当然である。常識は意識しないからこそ常識であるのだから、何が相手と自分で違うのかを見極めることは難しい。

「そうだな…えっと、一応確認させてもらうけど、白宮さんの今の服装はとても常識的なものなんだよな?」
「はい、一応ここの制服の一つですし、非常識ということはないと思います」
「どこまでが制服で、どこまでがアクセサリ…というか自主的なものなんだ?この学園って制服はあるけど制服を着るかどうかは自由っぽいし」
「規定されているのは、この上着だけですね」

白宮さんは上着をつまんで引っ張った。

「やっぱり胸が出ている方が開放的でみんな好きみたいですけど、私はこの少し透けている感じも上品でいいと思いますよ」
「上品…上品ね、うん」
「これも、奥原くんの世界では下品な部類に入ってしまうんでしょうか?」
「下品というか…お縄だな」
「そ、そこまでですか…」

 白宮さんはちょっとシュンとしている。
 まあ、そもそも世界が違うので気にする必要はないのだが。

「逆に、この世界では何が下品とされてるんだ?」
「そうですね…例えば自分の使ったバイブやローターを人前で舐めることは、あまりお行儀がいいとは言えませんね」

 島地…お前…
 もしかしたら、元の世界でも島地は男子の前で脚を広げてパンツが見えるのも厭わないタイプのヤツなのかもしれない。

「てか人前じゃなきゃいいのかよ、それは」
「衛生的に、お尻に挿れたものはまずいですが、そうじゃなければ別に…」
「えぇ…」
「…これも奥原くんの世界ではマズいですか?」
「まあ、普通ではないね…」
「あんまりこう言うのは失礼かもしれませんが、なんだか窮屈な世界に感じますね…」
「こっちからしたら自由度が良くも悪くも高すぎてビビってるよ…ってか、こっちは自分の出した汁を自分で舐めるのも普通なのか」
「女子は普通だと思います。男子は…精液の味が苦いからあんまりやる人はいない、と聞いたことはありますけど」
「…さいですか」

 俺はツッコミをやめた。
 慣れるという意味でもツッコミを入れないことは正しいのだろう、うん、そうに違いない。

「話を戻そう。その服以外は別に指定されているわけではない感じか?」
「そうですね。上履きも標準のものはありますが、各々で準備したものを着用できます」
「なんつーか、自由だな」
「憲法にも服飾の自由は規定されていますからね。昔、制服をきっちり定めた学校が『憲法に反している』と批判を受けて撤回した、なんてことがあったそうです」
「世間一般的には、その『服飾の自由』ってどれくらい支持されてるんだ?」
「難しい質問ですね…ちょっと待ってください」

 白宮さんはスマホを取り出し、何かを検索している。
 少しして、お目当てのものを見つけたようで、画面をこちらに向けてきた。
 元の世界でも世の中を騒がせていた与党の改憲案と元の憲法を比較しているサイトだった。

「改憲案で服飾の自由周りには手を入れてませんね。世間一般的にもだいたい同じだと思います」
「なるほどね…もう完全に世の中に組み込まれて当たり前になってるんだ」

 俺は腕を組んだ。

「服を着るも着ないも自由ですし、どんなアクセサリーをつけようと自由です」
「そのアクセサリーにはバイブやらローターやらも含まれてるんだな」
「当然です」

 当然らしい。
 まあ、当然だよな。
 俺は自分を納得させるために大げさに頷いた。

「…なんとなく、この世界の常識は理解できたと思う。言動に気をつければなんとかなりそう」
「それはよかったです。でも、慣れるまで大変そうですね…」
「それはそうだな。本当に」

 正直8割くらいは慣れることを諦めていたのだが、流れでそう答えてしまった。

「…練習、しますか?」
「練習?」
「慣れる練習です。少しくらいは私も貢献できると思います」

 そう言って、白宮さんは立ち上がり、テーブルのこちら側へとやってきた。
 そして俺の目の前に立つ。
 目の前につるりとした股間がくる形になってしまい、俺は思わず目を背けた。

「目、そらしちゃダメですよ。慣れなきゃいけないんですから」

 白宮さんはそっとテーブルによりかかり、太ももへと手を伸ばす。
 ニーソに設けられたそのポケットに収まっているローターのリモコンに触れ、スイッチをスライドさせた。
 くぐもったモーターの音が聞こえてきた。

「ん…やっぱり、久しぶりだとちょっとくすぐったいですね」

 そういえば、どこかで聞いたことがある。
 中に挿れたローターは、絶頂するに足りるほどの快感は与えてくれず、少なくとも俺の世界では恥ずかしさを煽る小道具に過ぎないのだと。
 だからこの世界では、動かしていたとしてもアクセサリーとして成立するのだろうか?
 そんな思考は、上からゆっくり下ろされてきた白宮さんの手が霧散させた。

「…っ」

 指が、割れ目の中へと侵入していく。
 そして、そっと指先を動かし、内側を擦った。

「な、何をして…!?」
「何って…マスターベーションですが…っ」

 小さな喘ぎ声を上げながらも、白宮さんはこともなげに答えた。

「え、そんな、人前で…」
「別に…っ、珍しいことじゃ、ないでしょう…っ」

 確かに、そうだ。
 周りの女子もみんな、自分でローターやらバイブやらディルドやらを持ってきて、自分の席で秘部へと挿入している。
 知っているのだが、いざ目の前でされると、どうしていいかわからなくなる。

「は、恥ずかしくないのか…?」
「…それは、…奥原くんに、えっちな目で見られていると思うと…っ、恥ずかしいですが…、この際、慣れてもらうには…仕方が、ないじゃないですか…っ…んっ…助けてもらった、借りもありますし…」
「そうじゃなくて…その、人前で、オナニーすることが…」
「…?」

 顔を上気させながらも、白宮さんは不思議そうな表情を滲ませた。

「だから、珍しいことじゃないって…っ、言ってるじゃないですか…。ローターやディルドは、自分を飾るための道具ですよ…っ…オナニーも、同じですから…」

 そういえば、女性はオナニーをすることで女性ホルモンが分泌されて綺麗になるなんて話を聞いたことがあるが…
 そういうことなんだろう…いや、そういうことと言って良いのかわからないが。

「だから…、慣れてください…。セックスも、インフォーマルではありますが…カジュアルなコミュニケーションの一つですよ…」

 マジで?
 セックスもそういうものなの?
 あまりの文化の違いに俺が頭を抱えているとはつゆ知らず、白宮さんの手の動きはだんだんと早くなってきている。
 この部屋の冷房はどうやら効きが悪いらしく、汗が服を肌に張り付けている。
 勃ち上がった乳首が、そのピンク色を増しているのは、汗のせいでさらに透けているからだろう。

「ん…んぁ、あぁっ!」

ひときわ大きい喘ぎ声を発して、白宮さんは背を反らした。
さっきまで淫らな水音を上げていた割れ目から、透明な液体が迸った。
つまるところ、白宮さんは絶頂に達したのだろう。

「…はぁ、はぁ…久しぶりですから、少し潮を吹いてしまいました…」

 女性というものに縁がなかった自分が、今目の前でオナニーを見せつけられ、あまつさえ絶頂まで見届けてしまった。
 その事実を脳に浸透させるまでには、さすがに時間がかかった。

「…その…セックスも、コミュニケーションってのは、本当なのか」
「はい、あんまり学園では見かけませんが、互いに同意さえしていれば普通に行われるコミュニケーションですよ」
「マジか…もはやキスなんて存在が空気なんだろうな」
「きっ…きき、き、き…す…ですか…?」

 変に上ずった声が聞こえたので見上げてみると、白宮さんはわかりやすいほどに顔を真っ赤にしていた。
 さっきオナニーしてたときとは比べ物にならないほど真っ赤だ。

「ん?どうかしたのか?」
「キ…キスなんて…すっごくえっちな行為じゃないですか…」
「は?そうなの?」

 俺は思わず気の抜けた声を出してしまった。
 …いや、まさかキスがそんな扱いをされているなんて思わないじゃん…。

「あの…キスなんて俺の世界では挨拶代わりにする地域もあるくらいにはド健全コンテンツなんだが…こっちではお縄なのか」
「法律でどうこうってわけじゃないですけど…破廉恥ですよ…」

 俺は破廉恥の意味を考え直すこととなった。
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