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4. 裸みたいな格好の女の子にお礼をされるって、どういうこと?
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朝は眠い。
眠いので、目覚ましに自販機でコーヒーを買う。
ガコンという音が、朝の静かな学校に響いた。
プルタブを引いて開けてやると、充填された窒素が音を立てて漏れた。
缶を傾けると、脳裏にカフェインが染み渡っていく感覚を覚えた。
些か不健康な感じはあるが、俺はこの感覚が好きだ。
「どうしたもんかね…」
昨日、俺は結局例の美少女から逃げ帰ってしまった。
正直気まずいので卒業まで顔を合わせたくないまであるが、普通に考えて無理である。
ため息を吐きながら教室のドアをがらりと開ける。
想像通り、誰もいなかった。
窓際の自席に座り、コーヒー缶を置いて黄昏る。
…実のところ、眠さの原因はこの早起きである。
朝から半裸・全裸の女の子に囲まれてきゃいきゃいされるのは精神がゴリっと削られること間違いなしなので、俺は人のいない時間にさっさと教室に来ることにしたのだ。人がある程度揃うまでは比較的静かな教室を堪能することができる。
少しでも心の安寧が欲しい俺は、睡眠を少しばかり犠牲にしてでも早起きをすることにした。
屋外に目をやると、朝から部活の練習に励んでいる生徒たちがいた。
意外なことに、この世界の体操服は元の世界と全く同じである。
さすがに激しい運動をするときには身体の保護が必要ということらしい。まあ全裸で腹にボール当たったら痛いもんな。服越しでも痛いけど。
さて、もう少し時間が経てば男子たちが戻ってくるだろう。
先に男子集団が帰ってくれば、あとで女子が来てもまだ精神的負担が少ないのだ。
男子一人のところに半裸・全裸の女子がわらわらと来るのはきつい。
コーヒーを傾けながら窓の外を眺めていると、廊下から足音が響いてきた。
まだ男子が帰ってくるには早い時間だ。それに足音は一人分しかないから、おおかた誰かが早めに登校してきたということだろう。
女子だったら少々気まずいが特段気にするほどのことでもない、と俺がコーヒーを机に置いたその瞬間。
ドアが開いた音がした。
こんな時間に登校してくる奴が、部活以外でこのクラスにいただろうか?
俺はその正体を確かめるべく、窓に背を向けた。
「「あ」」
見事にハモった。
そこにいたのは、昨日の美少女だった。
銀と白の合間の色をした長髪。整った顔立ち。
へその上までを覆い、わずかに胸を透けさせた学校の標準制服。
長いほっそりとした脚は白いニーソックスに覆われ、その上部には白いローターのリモコンが挟まっている。
そして、そのケーブルは行儀よく閉じた一本の割れ目の中へと続いていた。
「いた」
彼女はその2文字を発して、つかつかとこちらへ歩み寄ってきた。
「え、いや、ちょっと待って」
「昨日は本当に、ありがとうございました」
「いえいえ、お礼なんてされるほどのことを俺はしたわけでは…」
しどろもどろになって倒置法を口から繰り出す。
完全に人見知りのコミュ障になってしまった。
すると、彼女はフフッと優しく笑って、クールな雰囲気を保ちつつもそのまま柔らかい表情になった。
…え?これ、もしかして俺の言動で張り詰めてた空気が緩んだみたいなことになってる?全くそんなこと無いんだが?
「ちょっとお借りしますね」
彼女はそう言って、浜場の席に座って、こちらを向いた。
エロ衣装の美少女とご対面である。俺はどんな精神状態でいていいかわからなかった。
そして何を言っていいかもわからない。
「…本当に、お礼されるようなことなんてしてないしな…くしゃみしたついでみたいなもんだったし、あいつ最後は自爆してたし」
「自爆…たしかに、そうとも言えますね」
思い出してみると、なかなかシュールな光景だった。
「それでも、助けてもらったのは事実です。だから、お返しをさせてください。これは私の事情ですが、できるだけ他人に借りを作りたくないんです」
「お返し…お返し…」
マジでどうしよう。本当に何も思いつかない。
「本当になんでもいいんですよ?あ、恋人になりたいとかセックスさせてほしいとかはお断りしますが」
「いや1ミリも考えとらんわ!!」
俺は思い切りツッコんだ。
なんなら手がチョップしそうになった。
「というか仮に…本当に、マジで仮に、架空のお願いであって俺の本心ではまったくないんだが、例えば『胸を見せてほしい』とかならセーフなのか?」
「私の胸?別にいいですけど」
彼女は当然のように制服を捲り上げた。
薄っすらと見えていただけのピンク色の突起が顕になる。
島地ほど大きくはないが(そもそも比べること自体が相当失礼だが)、形のいい小ぶりな胸で…って、分析してどうする!
俺はバッと顔を背けた。
「私は普通の人と違って触られるのは少々苦手ですが、別に隠しているわけじゃありませんし…中年ならともかく、私達の世代ならわざわざ胸まで覆う服のほうが珍しいじゃないですか」
「そりゃそう…そりゃそうか?いや、そりゃそうか」
俺は缶コーヒーを思いっきり傾けて、中身を流し込んだ。
彼女は不思議そうな顔をして、服を下ろした。
…正直、薄っすらと透けている様子も、布の上につんと突起をつくっている様子もめちゃくちゃにエロいのだが…
しかし、お願いすべきことは決まった。
「…秘密は絶対に守ると誓ってくれるか?」
「別にわざわざ言いふらしたりはしませんが…そんな、秘密にしなければいけないことなんですか?」
「正直、あんまバレたくないのと、バレても信じてもらえなさそうというのがあってな…話すと長くなりそうだが」
「そうなんですか…それなら、放課後に会いましょう。クラスの人達も帰ってくる頃でしょうし」
ふと耳を傾けると、廊下に足音と話し声が反響していた。部活終わりの男子グループだ。
「では、また来ますね」
彼女はスッと立ち上がり、開け放していたドアから出ていった。
入れ替わるように、男子が2人。
そのどちらもが彼女を目で追って、そしてこちらに視線を向けた。
「…奥原、お前白宮さんと二人っきりで何してたんだよ」
「ん?あぁ、あの人白宮って言うんだ」
「え…知らないのか…?」
「いや、名前はどっかで…あ、中間テスト学年1位の!」
白宮 美香。たしか、そんな名前だったはずだ。
「そうじゃないだろ!!」
「お、おい、加賀…どうしたんだよ」
加賀はずんずんと俺に寄ってきた。
「白宮さんといえば容姿端麗文武両道の超スーパーウルトラデラックス高嶺の花だろ!」
「落ち着けって…いや、マジで知らなかった…俺あんまり交友関係広くないし」
「嘘だろ…この学園に白宮さんを知らない人がいるなんて…」
そういえば白宮さん、名乗らなかったな。
あんだけ有名だからこっちも知ってて当然と思ったのだろう。なんか申し訳ない。
「で、お前は白宮さんと二人っきりで何をしてたんだ?」
「落ち着けって加賀」
「落ち着いてられるかよ、浜場…」
加賀を宥めたもう一人の男子――浜場に、加賀は興奮した状態で反駁する。
「よりによって白宮さんと二人っきりだぞ!?気になるだろ!?」
「いや、オレは白宮さんには興味ないし…綺麗な人だなとは思うけど」
「なんで!?なんで俺マイノリティなの!?おかしいよね!?」
加賀が咆哮する。知らんがな。
「…昨日、なんか変なやつに絡まれてたのを通りがかった俺が偶然助けたんだよ。そしたら律儀にお礼をしてきた」
お返しをする、なんて言われたことは黙っておいたほうが寿命が伸びそうだ。
「マジでそれだけだ。何もないぞ」
「本当だろうな…ならいいが…」
加賀、お前は白宮さんの何なんだよ。
「というか、加賀も白宮さんとそういうことしたいクチなのか?」
「そういうこと?」
「ほら、性的な…」
「ん?…あぁセックスね」
白宮さんと同じく明け透けに言われると流石に面食らう。
「いや、俺はないかな…そりゃまあ、できたらうれしいけど、なんというか、白宮さんって清楚できっぱりした感じの雰囲気あるじゃん。だからなんというか、そういう雰囲気ではないんだよな。ただ、それもまたいいって、この学園の男子ならみんなそう思ってるんじゃないか?」
…清楚?
この世界の清楚、ぶっ壊れてんな…
俺はますます白宮さんへの『お願い』の重要性を思い知った。
眠いので、目覚ましに自販機でコーヒーを買う。
ガコンという音が、朝の静かな学校に響いた。
プルタブを引いて開けてやると、充填された窒素が音を立てて漏れた。
缶を傾けると、脳裏にカフェインが染み渡っていく感覚を覚えた。
些か不健康な感じはあるが、俺はこの感覚が好きだ。
「どうしたもんかね…」
昨日、俺は結局例の美少女から逃げ帰ってしまった。
正直気まずいので卒業まで顔を合わせたくないまであるが、普通に考えて無理である。
ため息を吐きながら教室のドアをがらりと開ける。
想像通り、誰もいなかった。
窓際の自席に座り、コーヒー缶を置いて黄昏る。
…実のところ、眠さの原因はこの早起きである。
朝から半裸・全裸の女の子に囲まれてきゃいきゃいされるのは精神がゴリっと削られること間違いなしなので、俺は人のいない時間にさっさと教室に来ることにしたのだ。人がある程度揃うまでは比較的静かな教室を堪能することができる。
少しでも心の安寧が欲しい俺は、睡眠を少しばかり犠牲にしてでも早起きをすることにした。
屋外に目をやると、朝から部活の練習に励んでいる生徒たちがいた。
意外なことに、この世界の体操服は元の世界と全く同じである。
さすがに激しい運動をするときには身体の保護が必要ということらしい。まあ全裸で腹にボール当たったら痛いもんな。服越しでも痛いけど。
さて、もう少し時間が経てば男子たちが戻ってくるだろう。
先に男子集団が帰ってくれば、あとで女子が来てもまだ精神的負担が少ないのだ。
男子一人のところに半裸・全裸の女子がわらわらと来るのはきつい。
コーヒーを傾けながら窓の外を眺めていると、廊下から足音が響いてきた。
まだ男子が帰ってくるには早い時間だ。それに足音は一人分しかないから、おおかた誰かが早めに登校してきたということだろう。
女子だったら少々気まずいが特段気にするほどのことでもない、と俺がコーヒーを机に置いたその瞬間。
ドアが開いた音がした。
こんな時間に登校してくる奴が、部活以外でこのクラスにいただろうか?
俺はその正体を確かめるべく、窓に背を向けた。
「「あ」」
見事にハモった。
そこにいたのは、昨日の美少女だった。
銀と白の合間の色をした長髪。整った顔立ち。
へその上までを覆い、わずかに胸を透けさせた学校の標準制服。
長いほっそりとした脚は白いニーソックスに覆われ、その上部には白いローターのリモコンが挟まっている。
そして、そのケーブルは行儀よく閉じた一本の割れ目の中へと続いていた。
「いた」
彼女はその2文字を発して、つかつかとこちらへ歩み寄ってきた。
「え、いや、ちょっと待って」
「昨日は本当に、ありがとうございました」
「いえいえ、お礼なんてされるほどのことを俺はしたわけでは…」
しどろもどろになって倒置法を口から繰り出す。
完全に人見知りのコミュ障になってしまった。
すると、彼女はフフッと優しく笑って、クールな雰囲気を保ちつつもそのまま柔らかい表情になった。
…え?これ、もしかして俺の言動で張り詰めてた空気が緩んだみたいなことになってる?全くそんなこと無いんだが?
「ちょっとお借りしますね」
彼女はそう言って、浜場の席に座って、こちらを向いた。
エロ衣装の美少女とご対面である。俺はどんな精神状態でいていいかわからなかった。
そして何を言っていいかもわからない。
「…本当に、お礼されるようなことなんてしてないしな…くしゃみしたついでみたいなもんだったし、あいつ最後は自爆してたし」
「自爆…たしかに、そうとも言えますね」
思い出してみると、なかなかシュールな光景だった。
「それでも、助けてもらったのは事実です。だから、お返しをさせてください。これは私の事情ですが、できるだけ他人に借りを作りたくないんです」
「お返し…お返し…」
マジでどうしよう。本当に何も思いつかない。
「本当になんでもいいんですよ?あ、恋人になりたいとかセックスさせてほしいとかはお断りしますが」
「いや1ミリも考えとらんわ!!」
俺は思い切りツッコんだ。
なんなら手がチョップしそうになった。
「というか仮に…本当に、マジで仮に、架空のお願いであって俺の本心ではまったくないんだが、例えば『胸を見せてほしい』とかならセーフなのか?」
「私の胸?別にいいですけど」
彼女は当然のように制服を捲り上げた。
薄っすらと見えていただけのピンク色の突起が顕になる。
島地ほど大きくはないが(そもそも比べること自体が相当失礼だが)、形のいい小ぶりな胸で…って、分析してどうする!
俺はバッと顔を背けた。
「私は普通の人と違って触られるのは少々苦手ですが、別に隠しているわけじゃありませんし…中年ならともかく、私達の世代ならわざわざ胸まで覆う服のほうが珍しいじゃないですか」
「そりゃそう…そりゃそうか?いや、そりゃそうか」
俺は缶コーヒーを思いっきり傾けて、中身を流し込んだ。
彼女は不思議そうな顔をして、服を下ろした。
…正直、薄っすらと透けている様子も、布の上につんと突起をつくっている様子もめちゃくちゃにエロいのだが…
しかし、お願いすべきことは決まった。
「…秘密は絶対に守ると誓ってくれるか?」
「別にわざわざ言いふらしたりはしませんが…そんな、秘密にしなければいけないことなんですか?」
「正直、あんまバレたくないのと、バレても信じてもらえなさそうというのがあってな…話すと長くなりそうだが」
「そうなんですか…それなら、放課後に会いましょう。クラスの人達も帰ってくる頃でしょうし」
ふと耳を傾けると、廊下に足音と話し声が反響していた。部活終わりの男子グループだ。
「では、また来ますね」
彼女はスッと立ち上がり、開け放していたドアから出ていった。
入れ替わるように、男子が2人。
そのどちらもが彼女を目で追って、そしてこちらに視線を向けた。
「…奥原、お前白宮さんと二人っきりで何してたんだよ」
「ん?あぁ、あの人白宮って言うんだ」
「え…知らないのか…?」
「いや、名前はどっかで…あ、中間テスト学年1位の!」
白宮 美香。たしか、そんな名前だったはずだ。
「そうじゃないだろ!!」
「お、おい、加賀…どうしたんだよ」
加賀はずんずんと俺に寄ってきた。
「白宮さんといえば容姿端麗文武両道の超スーパーウルトラデラックス高嶺の花だろ!」
「落ち着けって…いや、マジで知らなかった…俺あんまり交友関係広くないし」
「嘘だろ…この学園に白宮さんを知らない人がいるなんて…」
そういえば白宮さん、名乗らなかったな。
あんだけ有名だからこっちも知ってて当然と思ったのだろう。なんか申し訳ない。
「で、お前は白宮さんと二人っきりで何をしてたんだ?」
「落ち着けって加賀」
「落ち着いてられるかよ、浜場…」
加賀を宥めたもう一人の男子――浜場に、加賀は興奮した状態で反駁する。
「よりによって白宮さんと二人っきりだぞ!?気になるだろ!?」
「いや、オレは白宮さんには興味ないし…綺麗な人だなとは思うけど」
「なんで!?なんで俺マイノリティなの!?おかしいよね!?」
加賀が咆哮する。知らんがな。
「…昨日、なんか変なやつに絡まれてたのを通りがかった俺が偶然助けたんだよ。そしたら律儀にお礼をしてきた」
お返しをする、なんて言われたことは黙っておいたほうが寿命が伸びそうだ。
「マジでそれだけだ。何もないぞ」
「本当だろうな…ならいいが…」
加賀、お前は白宮さんの何なんだよ。
「というか、加賀も白宮さんとそういうことしたいクチなのか?」
「そういうこと?」
「ほら、性的な…」
「ん?…あぁセックスね」
白宮さんと同じく明け透けに言われると流石に面食らう。
「いや、俺はないかな…そりゃまあ、できたらうれしいけど、なんというか、白宮さんって清楚できっぱりした感じの雰囲気あるじゃん。だからなんというか、そういう雰囲気ではないんだよな。ただ、それもまたいいって、この学園の男子ならみんなそう思ってるんじゃないか?」
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