ヒロイン覚醒要員である黒幕お父様の暴走を阻止します 〜死なないために愛嬌を振りまいていたら、不器用な愛情過多がとまりません〜

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愛嬌はあるだけ振り撒くもの1

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(悪魔の囁きで契約を結んだクリストファーは、お母様を甦らせるために錬金術に手を出して暴走。体を作るために、裏で人身売買に手を出しパーツを集めていく。それで私も、素材として――わああああ~やだやだっ!)

 想像したらゾワッと寒気がした。
 この「クリストファー・グランツフィル」の事情は、ヒロインのリデルが天族の血を覚醒させ、歌声の力で引き出すもの。
 歌声による浄化でお父様の体から悪魔を退けることに成功するリデルだけど、結局命は助からないで死んでしまう。

 ちなみに私ことアリアは、物語序盤でリデルが仲良くなる友達ポジション。
 物語通りに進むなら、クリストファーによって錬金術の素材として両目を取り出され、身体中の血を抜かれる。

(ひどすぎる、グロい)

 いろいろ振り返ったり考えすぎた結果、頭が疲弊した私はただただ絨毯の上を転げ回る。

(このままじゃ私、目玉を取られて死ぬってことだよね? なにそれ~~~!! 二度目の人生、終わりが見えてるんだけど~~!?)

 どうしようと悩みに悩んで、解決策を模索する。
 まず第一に、私は死にたくない。痛い思いもしたくないし、殺されるなんてごめんだ。

 前世では物語として楽しく読めたけど、現実となった今世では都合よくシナリオ通りに生きるつもりもない。
 ありがたいことに今の私はまだ5歳。物語開始は10年も先のことだ。

 それならと、私は思い至る。
 クリストファーの暴走を止めるために動こう、と。

(悪魔は弱い心につけ込んで契約を結ぼうとするんだ。だから契約してしまう前に、作中ではリデルの歌声で癒されたり、心を強くするために大切な人たちの無償の愛を与えたり……契約を結ぶ前ならやりようはまだある)

 でも、待てよと私は思考を止めた。

 リデルの歌声は、ヒロインの特別な能力だから私が使えるわけないので除外。
 もう一つの愛というのは……すなわち、悪魔に委ねないくらい精神を保つことなんだけど。

 存在自体をクリストファーに疎まれている私が、無償の愛を与えるなんてそれこそ無理なのでは。

(むしろ、煽りでは)

 そして、問題はもう一つあった。
 そもそもの話、クリストファーと悪魔の契約は、いつ頃結ばれるのだろうか。

(……って、もう契約済みだったら、ダメじゃん!)
 

 ***


「ねえ、シェリー。アリアね、お父様に会いたい」
「公爵閣下に……ですか?」

 記憶が蘇る前と同じような口調で、私はシェリーにねだる。
 シェリーはわかりやすく表情を引き攣らせ、口ごもっていた。

 予想通りの反応。なんたってクリストファーは私を避けているのだ。そう簡単に会うことはできない。
 だから「アリア」も、雪の中に飛び込むなんて無茶なアピールをしたのかもしれない。

「お父様にありがとうって言いたいの。アリアのこと、助けてくれたから」

 そう、雪中ダイブをした私を助けてくれたのは、何を隠そうクリストファーである。
 というか、私が窓の外にいるクリストファーを見かけて、どうにか話しかけたくてベランダから落ちたところを気づかれたんだけど。

「……わたくしでは対処しかねますので、少々お待ちくださいませ」

 私の頼みを聞いたシェリーは、代わりのメイドを部屋に残して誰かに確認を取りに行く。

 しばらくして戻ってきたシェリーは、何となく見覚えのある灰色髪の男性を連れてきた。

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