占い師が不良少女でも信じてくれますかっ!?

しんしょう

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占いと幼なじみ

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 不良少女のいる部室を、なんの躊躇もなく、ガララッと開けて、勢いよく入ってくる者が一人。

 「おいーす! 元気してるかっ!? 」

 「ああっ!? んだ? いきなり来てうるせぇなっ! 」

 「いや~、ごめんごめ~ん! そんなに怒んないでよっ、いつものことじゃんかっ」

 勢いよく入って来た少女に、悪びれる様子は微塵もない。

 「んで? なにしに来たんだ? 」

 「おいおいー、幼なじみに向かってその言い方はないだろ~」

 「ちっ、マジで声がデケェ・・・」

 「お? 褒めてくれてんのか? 」

 「褒めてねぇわ! 」

 思わず突っ込んだその相手は、不良少女の幼なじみだった。

 「いやー、それがさ、ちょっと困ったことがあって。もう私じゃどうしていいか分かんないから助けてもらおうと思ってさ」

 深刻さは一ミリも感じさせない様子で、そう言う幼なじみ。不良少女も、適当に答える。

 「あ? テメェが困ることなんてあんのか? このノー天気野郎に。いや、そんなはずはねぇ」

 「女の子に向かって野郎はないだろ、野郎は~」

 (そこ引っかかんのかよ・・・)

 「んじゃどう言えばいいんだよ? 」

 「えーと、野郎じゃなくてー、女郎? 」

 「バカだな、テメェは」

 「言ったなー! バカって言う方がバカなんですー! 」

 そう言って不良少女にやっかむ幼なじみ。

 「ああもう、うぜぇ! うぜぇからさっさとその困り事ってのを言いやがれっ! 」

 「おっと、ちょっと忘れてた。てか本当に困ってんだよー」

 「そんまま忘れとけよ・・・、どうせ日焼け止め塗り忘れてヒリヒリ痛えとかだろ? 」

 「それは確かにあるけど、もっと深刻なやつなんだよー」

(それはあんのかよ)

 「実は、顧問の先生が結婚するみたいなのね。だからみんなでお世話になってる先生にプレゼントしたいなって思ってるんだけど、いいのが思いつかないの! だから、」

 「だから何渡したらいいか占えってか? 」

 幼なじみの言葉を遮って不良少女は言った。

 「そう! その通り! さっすが私の幼なじみなだけあるね! 」

 小躍りしだしそうなテンションの幼なじみ。

 「バカだな、やっぱ」

 そんな幼なじみの様子に呆れ顔の不良少女。

 「そんな事言わないでさー。それが決まらなくて、部活にも集中出来ないの! 一生のお願いだからっ! 」

 上目遣いで不良少女を見る幼なじみに、頭をガシガシと掻きながら、

 「ちっ、しょうがねぇなあ・・・」

 どこか普段よりも甘い不良少女は、占う事を承諾する。

 「ありがとっ! 本当に! 」

 「ったく、んじゃ、さっさとやんぞ」

 「うんっ! 」

 しぶしぶといった様子でタロットカードを取り出し、いつもの手慣れた手つきでカードを切っていく。そして、裏向けにされたカードの山から、一枚を引き抜く。

 出たのはワンドの5(Five of Wands)

 「・・・で、これはどういうやつ? 」

 「まぁ意味的には忙しいとか慌ただしいって事だな」

 「えっと・・・??? 」

 「その顧問の先生は結婚式の準備やらお前らの面倒見たりだとかで忙しいんだろなぁ・・・って事だな」

 「つまり・・・??? 」

 「余計な真似はすんなって事だ」

 「そ、そんな~、何もしないなんてダメだよ! 」

 幼なじみはひどく残念がる。

 「ダメな事はねぇだろ・・・まぁ、いつも以上にテキパキ動いて、練習すりゃあ怒らせねぇで済むし、先生の負担は減るんじゃねえか? 」

 「・・・そっか! 別に物じゃなくてもいいんだ! 」

 「ありがとっ! 早速みんなに相談してくるー! 」

 そう言うや否や、部室から走り去っていく幼なじみ。

 「・・・昔っからホント、忙しねえやつだな」

 そう言って、やんちゃな我が子を見守るような表情の不良少女の姿があった。

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