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一章
兄妹の朝はこうして始まる
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藤宮レクの一日は、鏡に向かって微笑むことから始まる。
洗面台の前に立ち、鏡に向かってニコリ。
そして映し出された笑顔を見て「はぁ」とため息を吐く。
「もっと、こうか? 唇を動かさないように……」
「おにいちゃーん、朝ごはんできたー」
リビングから自分を呼ぶ声がする。しかしそれを無視してレクは笑顔の練習を続ける。
口元に手を添えたり、首の角度を変えたりと試行錯誤。
「……いや俺、きもっ!」
「またやってる……」
鏡の向こうにはオカメのような笑みを浮かべる少年と、それをジト目で見つめる妹のさよがいた。
「この八重歯矯正しようかなぁ」
「気に入らないの?」
「当たり前だろ! いつも俺が笑うたび、女子たちに『かわいいかわいい』言われるんだ! それもこれも全部、この八重歯のせいだ! こんなもんいるかあああ!」
歯ブラシを掴むと、八重歯の先端を思い切り擦り始めるレク。
「ヤスリじゃないんだから……」
呆れたさよはため息を漏らす。
「男に可愛さなんていらねーの! カッコよくてなんぼだろ!」
今度は歯ブラシをマイクのように見立て、声高らかに宣言する兄を、さよは変わらずの目で見上げる。
「お兄ちゃんは、カッコよくなりたいの?」
「もちろん」
「そっか。じゃあ一応言っておくけど……」
さよはコホンと咳払いをする。
「トランプを常に持ち歩いたり、『俺さ~アールグレイ以外の紅茶は飲めないんだよねぇ~』って自慢するのは全くカッコよくないよ? 意味わかんないよ」
茶化すような口ぶりで兄の真似をする。
するとレクの動きがピタリと止まる。
「………………まじで?」
壊れたロボットのようにぎこちなく首を動かし、それまで鏡越しに見つめていた妹と直接目を合わせる。
「うん。さよは思うの。コーヒーに砂糖とミルクを入れても負けじゃないし、ビートルズ以外の曲も聴いていいんだよ?」
「ふ、ふーん。そうなんだーへー。そっかそっかー」
とぼけたふりをしているが、両目は泳ぎ、手は電動歯ブラシのように震えている。
わかりやすく動揺する兄を見ておかしそうにクスリと微笑むと「朝ごはんチンしたから早く来てね」と言い残し、さよはその場から離れようとする。
その背中にレクは、「もう母さんたち出かけたの?」と尋ねる。
「うん、二人とも仕事~」
がらがらがらぺっ。
口内に溜まった泡を水で流し、レクはリビングへと足を運ぶ。
☆ ☆ ☆
登校準備が整った兄妹は学校指定のローファーに履き替えた。施錠する兄を、明るい色味のスカートを揺らしてさよは待つ。中学二年になったさよだが、その顔立ちはまだまだ幼く、ランドセルの方がまだ似合うだろう。
春とはいえ朝の風は冷たく、レクは思わずくしゃみをする。
「誰かが俺の噂をしているな……」
無視してさよは半歩先を歩く。
「さよ、最近のことだけど、お前怪我とか大丈夫か?」
「え。あ、うん……」
「お前は俺に比べて戦闘向きじゃないんだからさ。服だっていつも破けてるし……」
レクは一呼吸を置いて。
「お前、無理すんなよ」
「…………」
さよは俯き、唇を真一文字に結ぶ。
「お前は戦闘力がないんだからさ、お兄ちゃんに任せとけよ! まぁ、記憶はないけどな……」
そう言うと兄は、少し照れ臭そうな笑みを浮かべる。
「わかった。でも……」
さよは遠慮がちに言葉を選ぶ。
「お兄ちゃん、敵の場所、わかんないでしょ?」
「あーそうなんだよなー。ちっともわかんねぇんだよなー」
レクは苦い顔を浮かべ、空を仰ぐ。
「ほんと、お前はよくわかるよな」
「………………それがわたしの能力、なのかも」
「かもな」
通りを進み、青い歩道橋を渡り終えると二人以外にも制服姿が目立ってきた。
二人の目的地である宮市学園は中高一貫の私立学校。
レクは高等部、さよは中等部にそれぞれ通っている。
兄妹は校門をくぐり年配の警備員に軽く会釈をして、校舎へと続く坂道を登る。
「そう言えば昨日の夜、チョー気持ち悪い夢を見たんだよ」
さよは兄の顔を覗き、無言で続きを促した。
「なんかな。目が覚めたら俺、血だらけで倒れてるんだよ、しかも脇腹のあたりからドロドロと流血しててさ」
身振り手振りを交えてレクは興奮気味に話す。
あ、目が覚めたって言っても夢の中でな。と付け加えて。
「そんでさ、パッと見上げたら、背の高いゴリッゴリのマッチョが立ってんの。で、ジーと俺のこと見つめててさ。俺はもう『え、え』ってパニクってたら、その巨漢が顔を近づけてきてさ。よく見たらめちゃくちゃ顔赤いの。しかもスッゲー鼻息荒くて」
「…………」
さよの肩は小刻みに震えていた。顔も強張っている。
「もうそれだけでもめちゃくちゃ怖かったんだけどさ。なんと、そっからその大男、俺の服をめくってさ傷口のあたりめっちゃ凝視してんの。そんでさ、ハァハァ言いながら俺の血を舐め出すの! やばくね? 初めはチロチロってゆっくりな感じだったんだけど、途中から一心不乱に舐め出してさ」
歩きながら二人は坂を登り終えると、下足室が見えてきた。
「もうめっちゃ気持ち悪かったわ。とんでもねー野獣って感じだった」
「…………」
さよは口を閉じ、地面に視線を固定している。
「あ、じゃあ俺こっちだから。朝からキモい話してごめんな! じゃなー」
レクは走り去っていった。
残されたさよは深いため息を吐き、その後ろ姿を見つめる。
兄の背中が見えなくなると、さよも昇降口へと歩き下駄箱から上履きを取り出すと、ローファーから履き替える。
ワックスで磨かれた廊下が、うっすらと彼女の暗い表情を映していた。
校舎に響く楽しげな笑い声や叫び声も、さよの耳にはどこか遠くに聞こえた。
重い足取りで階段を登り、中学二年生の教室へと向かう。廊下の窓からふと遠くの景色へ目を向け、思いを馳せる。
最近のバトルのこと。自分の能力のこと。
そして、兄が話した血を舐める巨漢の夢。
それらを払うように頭を振るが、反射した自分と目が合うと、またひとつため息が漏れた。
藤宮さよの一日はなんとも言えない疲労感に包まれ、始まった。
洗面台の前に立ち、鏡に向かってニコリ。
そして映し出された笑顔を見て「はぁ」とため息を吐く。
「もっと、こうか? 唇を動かさないように……」
「おにいちゃーん、朝ごはんできたー」
リビングから自分を呼ぶ声がする。しかしそれを無視してレクは笑顔の練習を続ける。
口元に手を添えたり、首の角度を変えたりと試行錯誤。
「……いや俺、きもっ!」
「またやってる……」
鏡の向こうにはオカメのような笑みを浮かべる少年と、それをジト目で見つめる妹のさよがいた。
「この八重歯矯正しようかなぁ」
「気に入らないの?」
「当たり前だろ! いつも俺が笑うたび、女子たちに『かわいいかわいい』言われるんだ! それもこれも全部、この八重歯のせいだ! こんなもんいるかあああ!」
歯ブラシを掴むと、八重歯の先端を思い切り擦り始めるレク。
「ヤスリじゃないんだから……」
呆れたさよはため息を漏らす。
「男に可愛さなんていらねーの! カッコよくてなんぼだろ!」
今度は歯ブラシをマイクのように見立て、声高らかに宣言する兄を、さよは変わらずの目で見上げる。
「お兄ちゃんは、カッコよくなりたいの?」
「もちろん」
「そっか。じゃあ一応言っておくけど……」
さよはコホンと咳払いをする。
「トランプを常に持ち歩いたり、『俺さ~アールグレイ以外の紅茶は飲めないんだよねぇ~』って自慢するのは全くカッコよくないよ? 意味わかんないよ」
茶化すような口ぶりで兄の真似をする。
するとレクの動きがピタリと止まる。
「………………まじで?」
壊れたロボットのようにぎこちなく首を動かし、それまで鏡越しに見つめていた妹と直接目を合わせる。
「うん。さよは思うの。コーヒーに砂糖とミルクを入れても負けじゃないし、ビートルズ以外の曲も聴いていいんだよ?」
「ふ、ふーん。そうなんだーへー。そっかそっかー」
とぼけたふりをしているが、両目は泳ぎ、手は電動歯ブラシのように震えている。
わかりやすく動揺する兄を見ておかしそうにクスリと微笑むと「朝ごはんチンしたから早く来てね」と言い残し、さよはその場から離れようとする。
その背中にレクは、「もう母さんたち出かけたの?」と尋ねる。
「うん、二人とも仕事~」
がらがらがらぺっ。
口内に溜まった泡を水で流し、レクはリビングへと足を運ぶ。
☆ ☆ ☆
登校準備が整った兄妹は学校指定のローファーに履き替えた。施錠する兄を、明るい色味のスカートを揺らしてさよは待つ。中学二年になったさよだが、その顔立ちはまだまだ幼く、ランドセルの方がまだ似合うだろう。
春とはいえ朝の風は冷たく、レクは思わずくしゃみをする。
「誰かが俺の噂をしているな……」
無視してさよは半歩先を歩く。
「さよ、最近のことだけど、お前怪我とか大丈夫か?」
「え。あ、うん……」
「お前は俺に比べて戦闘向きじゃないんだからさ。服だっていつも破けてるし……」
レクは一呼吸を置いて。
「お前、無理すんなよ」
「…………」
さよは俯き、唇を真一文字に結ぶ。
「お前は戦闘力がないんだからさ、お兄ちゃんに任せとけよ! まぁ、記憶はないけどな……」
そう言うと兄は、少し照れ臭そうな笑みを浮かべる。
「わかった。でも……」
さよは遠慮がちに言葉を選ぶ。
「お兄ちゃん、敵の場所、わかんないでしょ?」
「あーそうなんだよなー。ちっともわかんねぇんだよなー」
レクは苦い顔を浮かべ、空を仰ぐ。
「ほんと、お前はよくわかるよな」
「………………それがわたしの能力、なのかも」
「かもな」
通りを進み、青い歩道橋を渡り終えると二人以外にも制服姿が目立ってきた。
二人の目的地である宮市学園は中高一貫の私立学校。
レクは高等部、さよは中等部にそれぞれ通っている。
兄妹は校門をくぐり年配の警備員に軽く会釈をして、校舎へと続く坂道を登る。
「そう言えば昨日の夜、チョー気持ち悪い夢を見たんだよ」
さよは兄の顔を覗き、無言で続きを促した。
「なんかな。目が覚めたら俺、血だらけで倒れてるんだよ、しかも脇腹のあたりからドロドロと流血しててさ」
身振り手振りを交えてレクは興奮気味に話す。
あ、目が覚めたって言っても夢の中でな。と付け加えて。
「そんでさ、パッと見上げたら、背の高いゴリッゴリのマッチョが立ってんの。で、ジーと俺のこと見つめててさ。俺はもう『え、え』ってパニクってたら、その巨漢が顔を近づけてきてさ。よく見たらめちゃくちゃ顔赤いの。しかもスッゲー鼻息荒くて」
「…………」
さよの肩は小刻みに震えていた。顔も強張っている。
「もうそれだけでもめちゃくちゃ怖かったんだけどさ。なんと、そっからその大男、俺の服をめくってさ傷口のあたりめっちゃ凝視してんの。そんでさ、ハァハァ言いながら俺の血を舐め出すの! やばくね? 初めはチロチロってゆっくりな感じだったんだけど、途中から一心不乱に舐め出してさ」
歩きながら二人は坂を登り終えると、下足室が見えてきた。
「もうめっちゃ気持ち悪かったわ。とんでもねー野獣って感じだった」
「…………」
さよは口を閉じ、地面に視線を固定している。
「あ、じゃあ俺こっちだから。朝からキモい話してごめんな! じゃなー」
レクは走り去っていった。
残されたさよは深いため息を吐き、その後ろ姿を見つめる。
兄の背中が見えなくなると、さよも昇降口へと歩き下駄箱から上履きを取り出すと、ローファーから履き替える。
ワックスで磨かれた廊下が、うっすらと彼女の暗い表情を映していた。
校舎に響く楽しげな笑い声や叫び声も、さよの耳にはどこか遠くに聞こえた。
重い足取りで階段を登り、中学二年生の教室へと向かう。廊下の窓からふと遠くの景色へ目を向け、思いを馳せる。
最近のバトルのこと。自分の能力のこと。
そして、兄が話した血を舐める巨漢の夢。
それらを払うように頭を振るが、反射した自分と目が合うと、またひとつため息が漏れた。
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兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
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この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
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