上 下
55 / 76
第四章 ワクドキ学園パラダイス編 12歳

第51話 決別

しおりを挟む
「決闘よ」

 この一言から始まった。
 どうやら、アネモネはセオのことが許せないらしい。
 どちらが俺と結婚するのか決闘で決めると言いだした。
 もちろん、そんな、中世ナーロッパな展開はこの惑星でも存在していない。
 アネモネが自分で考えたルールだ。
 セオはそれに乗るらしい。

「セオ、ちょっと考え直してくれないか?アネモネは頭に血が昇ってるだけで、落ち着けばいつもの冷静な彼女に戻るはずなんだ」

「いえ~、私の文化では2人仲良く旦那様を盛り立てていかのが慣わしですぅ~。邪魔するようなら~、切って捨てるまでぇ~」

 おお、どっちも本気だ。
 まるでマ⚪︎オとク⚪︎パに取り合いにされる桃姫の気分だ。
 どこまで、この役は続くのか?
 そんな疑問に答えてくれるものはいなかった。

「このあと、体育館で闘うわ。まいったがでるまでは勝負よ」

 完全なる魔闘士スタイルですやん……。
 自分の土俵で勝負するとか……。
 しかも、アネモネの魔力はどえりゃーことになっとるのに……。
 どうすんのよ?
 
 アネモネが勝ったとしたら、さっきまでの続きで爛れた性活に戻るだけで、問題ないけど、仮に、セオが勝ったとしたらどうなんの?
 あーもーわからん。
 うん。
 まぁ、いっか。
 なるようになるさ。
 ってか、アネモネが勝つだろう。
 彼女の魔力は40万だ。
 負けるわけがない。
 問題ない。

 体育館についた。
 2人は向き合って立っている。
 セオがコインを出した。

「これでいい~?」

「ええ」

 最低限の会話だけで決まっていく。
 やっぱ、この2人どこか似てるんだよな。
 息ぴったりだし。
 なんだろ?
 アネモネを見てると股間が疼くんだけど、セオからも感じるんだよな。
 なんなんだろ?
 まぁ、いいか。

 セオがコインをトスする。
 クルクルと回りながらコインは放物線を描く。
 体感速度にしてゆっくりと、地面に向かう。
 ゆっくりと地面に近づき、地面に触れる。

 チャリーン

 火蓋は切って落とされた。
 2人同時にオーラを全開。
 セオのオーラはアネモネに負けてない。
 対するアネモネも手加減をする気は一切ない。
 まさに全開のオーラだ。
 どう見ても、セオが大怪我する未来が見える。
 
 セオからダッシュで間合いを詰める。
 アネモネはどっしり構え、横綱相撲だ。
 セオから繰り出される渾身の右ボディ。
 打ち払おうと、アネモネの左手刀が動く。
 拳と手刀が触れ合った瞬間、アネモネの顔が歪む。
 一瞬のスキにセオからの連打。
 顔、喉、胸、腹、股間、正中線に沿って的確に打撃が打ち込まれる。
 アネモネは反応すらできない。
 オーラも全て相殺されている。
 完璧な有効打であった。
 そして、膝をつくアネモネの首筋に手刀が叩き込まれる。
 それの意味は誰もがわかる。
 アネモネの完敗だ。

 アネモネが負けた。
 俺とのお付き合いをめぐる決闘でだ。
 そうなると、俺はどうなる?
 ピーチ姫はクッパに攫われるのか?
 白雪姫は毒林檎を食べたのか?
 
 いや、それはいい。
 アネモネを治療しなくては。
 近づき、治癒魔術をかける。
 あ、これって、オーラの方が早く治るかな?
 今度実験しよ。
 
 さて、アネモネの体調は問題なかった。
 しかし、精神には深い傷を負っていた。
 それにしても、セオは強かった。
 アネモネ相手に圧倒的であった。
 この強さの秘密はなんなんだ?

 ちがうちがう、問題はこのこじれた話の落とし所だ。
 アネモネが決闘と言い出し、自爆した。
 セオがどこまで本気なのか確かめなければ。
 
「勝負ありでいいよね?それで、この後はどうなるの?」

 だれに聞くともなく、独り言のように言ってみた。
 誰かが都合のいい答えを用意してくれることを期待して。

「う~ん。私が勝ったんだからライは私の物かな~? でも、ライの気持ちを奪うことはできないからライとも決闘する~?」

「いやいや、それは決闘で決めることではないのでは?」
 俺は必死で抵抗する。

「……。」
 アネモネは黙っている。

「そうだね~。それじゃあ、1ヶ月でライを振り向かせるよ~。それならアネモネも文句ないでしょ~?」

「……ええ」
 アネモネは力無く返事した。

 それでいいの!?

「アタシは1ヶ月はライと話さない……」

 え?俺がいやなんだけど?
 俺の希望は無視?
 ってか、完全にお姫様ムーブで笑える。
 いや、笑えんか。

「俺の気持ちはどうなんの?」

「ん~。1ヶ月後に答えを聞かせて~」

「部屋はどうすんの?」
 重ねて質問する。

 クロはすごく気まずそうにしている。

「アタシが出ていく」
 アネモネは強情だ。
 言い出したらテコでも動かないきらいがある。
 困ったな。

「アネモネの部屋はどうすんの?」
 さらに質問する。

「クロの部屋にいく」

「え?え?え?」
 クロが3回も同じことを言う。
 そりゃ、そうだろうよ。
 迷惑だよ。

「夏休みの間の1ヶ月だけならいいけど。私は、途中、実家にも帰るよ?」
 クロがしぶしぶ了承する。
 そうだ、実家にも帰らなければ……って、アネモネの実家もウチだ。
 結局アネモネと一緒に住むことになるし、セオが実家についてきたら余計に無茶苦茶だ。
 両親に説明できない。
 仕方ないか。
 1ヶ月だけ付き合ってやるか。

「わかったよ。俺がアネモネを選ぶのは変わらないけど、ケジメには付き合ってやるよ。そのかわり、1ヶ月後にリベンジマッチやろうよ?その間、アネモネは自主トレーニングでどう? クロの家で暇でしょ? もちろん勝っても負けても仲良くしてね」

 この辺が落とし所か?

「わかった~」
 セオは即答だった。

 アネモネは少し考えてから。
「わかった」
 短く返事した。

 アネモネは最低限の荷物を持って出て行った。
 俺も家に入ったが、直前までヤリまくりだったので、ムアっとした臭いと、そこら中にいろんなものが散乱していた。
 ヤバいモノだけ片付けてセオを招き入れた。

「なかなか散らかってるね~掃除してもいい~?」

「いいけど、ゴミは触らないでね」

「察っし~、ライはエロい子だったのね~」

「うっ、すいません」

「ん~ん、私もエロいことしたいから問題ないよ~」

 あれ? 狙われてる?
 今晩大丈夫かな?
 ってか、アネモネともっとヤリたかった!
 残念すぎる。
 
 こうして、奇妙な共同生活は始まったのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

不死の大日本帝國軍人よ、異世界にて一層奮励努力せよ

焼飯学生
ファンタジー
1945年。フィリピンにて、大日本帝国軍人八雲 勇一は、連合軍との絶望的な戦いに挑み、力尽きた。 そんな勇一を気に入った異世界の創造神ライラーは、勇一助け自身の世界に転移させることに。 だが、軍人として華々しく命を散らし、先に行ってしまった戦友達と会いたかった勇一は、その提案をきっぱりと断った。 勇一に自身の提案を断られたことに腹が立ったライラーは、勇一に不死の呪いをかけた後、そのまま強制的に異世界へ飛ばしてしまった。 異世界に強制転移させられてしまった勇一は、元の世界に戻るべく、異世界にて一層奮励努力する。

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

その幼女、最強にして最恐なり~転生したら幼女な俺は異世界で生きてく~

たま(恥晒)
ファンタジー
※作者都合により打ち切りとさせて頂きました。新作12/1より!! 猫刄 紅羽 年齢:18 性別:男 身長:146cm 容姿:幼女 声変わり:まだ 利き手:左 死因:神のミス 神のミス(うっかり)で死んだ紅羽は、チートを携えてファンタジー世界に転生する事に。 しかしながら、またもや今度は違う神のミス(ミス?)で転生後は正真正銘の幼女(超絶可愛い ※見た目はほぼ変わってない)になる。 更に転生した世界は1度国々が発展し過ぎて滅んだ世界で!? そんな世界で紅羽はどう過ごして行くのか... 的な感じです。

処理中です...