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第四章 ワクドキ学園パラダイス編 12歳

第47話 ダンジョン攻略概論

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 ダンジョン攻略概論。
 授業の内容はそのままだ。
 ダンジョンについて学ぶ授業だ。
 概論とあるように座学中心で実技は別の授業となる。
 この授業の成績が一定を超えたら実技の授業へと移ることができる。
 今期の成績が重要なので、必ず、高成績を修めたい授業である。
 
 この授業を取ってよかったのは、何も知らずに入っていたダンジョンについて知ることができたことだ。
 1度上級はほぼクリアしたとは言え、初心者であることには変わりない。
 そもそも、ダンジョンってなんぞや?から始めてほしい。
 
 ダンジョンは竜脈を放っておいたらできるものである。
 入口は門のようになっており、中は伺えない。
 中に入ると各種迷宮が待ち構えている。
 ダンジョンには下級・中級・上級・特別級と分けている。
 見分け方は、下級の門は白色、中級の門はピンク色、上級の門は赤色、特別級の門は黒色をしている。
 下級のダンジョンは子どもの肝試しに使える程度。
 中級は魔術をそれなりに使えないと攻略できない。
 上級は複数の魔術を使いこなし、格闘法などを身につけていなければならない。
 特別級はケースバイケース。

 特別級の説明だけ雑に見えるが、本当にピンキリなんだそうだ。
 ちょっとふざけたダンジョンから、ガチムチに人が死ぬダンジョンまであるそうだ。
 どの特別急にも共通していることは、魔物が少し変わってるってことらしい。
 どう変わっているのかもケースバイケースで、中には全ての魔物がピンク色とか言うふざけた設定もあるそうだ。
 龍脈ごとに違うので、なんとも言えないらしい。
 一つ共通していることは、ヒト型の魔物は珍しいとされていることだ。
 竜脈に生物が取り込まれることでダンジョンになるわけだが、そこにヒトがいることは稀で、あったとしてもそんなに数は出ないらしい。
 そして、ドロップはなぜか現金だそうだ。

 って、それは知ってる。
 小さい頃に入ったダンジョンがそんな仕組みだった。
 でも、大量にヒト型が出てきたので、確か大金を稼いだはずだ。
 今使っているダイヤの指輪もその時の買い物だった。

「ねぇ、あのダンジョンってめずらしいダンジョンだったのね?」
 アネモネが授業中に話しかけてきた。

「そうみたいだな。たっぷり稼がせてもらったもんな」

「うんうん。懐かしいね」

「え?ダンジョンに入ったことあるの~?いいなぁ~」
 眠そうにしながらセオさんが話に入ってきた。
 夜寝てないのかな?

「そうよ。この指輪もダンジョンでガッポリ稼いで、お揃いで買ったんだから。いいでしょ?」
 アネモネとセオさんは時間が経つと仲良くなっていた。
 入学して2ヶ月経った頃くらいから2人で遊ぶこともあるようだ。

 俺は俺で、魔法陣総論の連中とよくつるんでる。
 ヒャッハー先輩はなんだかんだで面白いヒトだ。
 ちなみに、ヒャッハー先輩の名前はヒャ・ッハーと言う。
 なんでも、モヒカンに愛された部族ヒャ族の長を代々する家庭だそうだ。
 どこの地方の話かまでは聞いてないが、少数民族だろう。
 「ッハー」の発音は「ッ」の前に小さく「ン」を入れるといいそうだ。
 めんどくさいので「ヒャッハー先輩」でいいらしい。
 なんだかんだいって、面倒見のいいヒトばかりだ。
 この集団とつるんでいるのが居心地がいい。

 もちろん同級生の友達もできた。
 と言っても、年齢はマチマチだ。
 下は15歳で上は34歳と幅が広い。
 やっぱり、地元の学校より魔闘士という共通の話題があるから友達ができやすい。
 それに、業界では俺は有名人らしく、向こうから声をかけてくれるパターンが多かった。
 中でも、ヒャッハー先輩は最年長の34歳。
 魔闘士としてやっていくのは諦めていて、転職先を見つけるために大学に入学したそうだ。
 魔闘士協会がスポンサーということであって、魔闘士であれば入学試験で優遇される。
 そういった第2の進路を求めて入学してくる生徒も多い。
 魔闘士をやってるとそれなりに収入もあるので、その財産を学費に回すと数年は在学できるらしい。
 その時間のうちに手に職をつけて、卒業していくのだそうだ。
 もしくは、大学に就職するパターンも多いらしい。

 最年少の友達15歳だが、このダンジョン攻略概論でできた。
 彼女も俺のことを知っていて、話しかけてくれた。

「こんにちは。キミ、ライラック・アルデウス君だよね?私はクロッサス・クローバーだよ。今、時間いい?ちょっと、後期のダンジョンパーティを探してるんだけど、一緒にどうかな?パーティを見つけて実習を済ませないと前期の授業は合格できないらしいだよ。悪い話じゃないんだけどどうだろう?」

「こんにちは。クローバーさん。僕はパートナーがいるので特にパーティは探してないかな。クローバーさんは他にいないの?」

「そうなんだよ。私はこの歳で大学に入学したものであんまり同世代の友達がいないんだ。いるにはいるんだけど、この授業を取ってなくて、パーティには参加してもらえなくて…」

「そうだったんだ。別に入ってくれることは構わないけど、パートナーに確認してからでいいかな?」

 少し離れたところに座っているアネモネとセオさんに声をかける。

「おーい、アネモネー、セオさーん。この子がパーティが入りたいって言ってんだけど、いいかな?」

 2人が歩いてくる。
 
「アネモネ様~?よろしいですか~?」

「いいんじゃないかな?ちゃんとついて来れなかったら置いていくってのが条件なら」

「ライく~ん、オッケーもらったよ~」

 2人の関係が不穏な関係に変わっていた。
 この2ヶ月で何があった?
 まさか、本当に決闘でもしたのか?

「わかりましたー。そう伝えておきます。クローバーさん、聞こえました?その条件でよければOKです」

「うん。聞こえたよ。それじゃあ、お邪魔させてもらうね。ちなみに、あの2人はアネモネさんとセオさんでよかったのよね?また今度紹介してちょうだい?あと、私のことはクロッサスと呼び捨てにして呼んでね。数少ない年下の同級生だし、仲良くしてください」

 ペコリと頭を下げる。
 こちらこそと、頭を下げ返す。

「それで、クロッサス、ダンジョンパーティは何のために作るの?この授業ではダンジョン探索はしないよね?」

「あぁ、私も先輩から教えてもらっただけなんで教授に聞いた方がいいとは思うんだけど、下級ダンジョンは入ってみるらしいんだ。その時にパーティが必要で、パーティの組めないヒトは組めないヒト同士で組むらしいんだけど、ライラックは有名人だから実力も安心だしね。どんなヒトなのか見てみたかったってのが本音かな」

 なるほど、下級は子どもの肝試しに使えるくらい安全らしいし、魔物も出ないんだろう。
 ボスもレベルの低いスライムばかりらしいし。
 下級じゃ、ダンジョンとはカウントしないのかもしれないな。
 しかし、このクロッサスという女の子も美少女だ。アネモネの2つ下に当たるが、アネモネとは違う、スポーティで健康的な美しさを持っている。
 こんな娘が欲しいものだ。
 あれ?これはオリビアへの気持ちと一緒だな?
 セオさんとも違うような。
 新鮮だな。
 
「そっか、まぁ、俺たちは何度かダンジョン探索したことあるから、おいて行かれないように気をつけてね。ちなみに、魔闘法はどれくらいできるの?」

「一応、光と闇のマナは使えるよ。戦闘法も全開法は使えるよ。ツバル法はまだ使えないかな」

 ツバル法って言い方はそんなメジャーだったんだ。
 テキトーに名付けてたものが正解だなんて……。
 しかし、ツバル教授の考えた魔闘法はかなり有名なんだな。
 そら、魔闘士の歴史を変えた天才なんて言われるわけだ。

「そっか、やっぱり闇オーラで躓いてる?」

「そうだね。闇オーラの奥が深すぎて、戦ってると混乱するんだ」

「あー、わかるかも。俺も、慣れるまでかなり時間かかったもん」

「え?ライはその年で使えるの?」

「うん。ってか、それを考えた本人に教えてもらったからズルしたようなもんだけどね」

「え!?ツバル教授と?すごい!今度サインもらってきてよ!」

 そんなに人気なんだ。

「いいけど、あんなんのどこがいいの?ヘラヘラしたおっさんだよ?」

「えー、ファンなんだからそんなこと言わないで欲しいなぁ」

「あはは。ごめんごめん」

 するとそこに1人の人物が現れた。
 ツバル・シュバルツそのヒトだ。

「あらあら、えらい言われようですね。ヘラヘラしてるのは事実ですが、シャイナが怒りますよ?」

 後ろを見ると少し隠れてシャイナがいた。

「教授!どしたの?」

「え!?この方がツバル教授なの?」
 クロッサスが驚いている。

「ええ、そうですよ。私がツバル・シュバルツです。授業中にすいませんね。私にも時間が限られていたので、直接話に来ました。ライ君、少しいいですか?」
 そう言いながら、外を指差した。

「ええ、いいですよ。急ぎなんですよね?」

「ええ、急ぎではないですが、私に時間がないもので。すいませんね」

 俺はアネモネを呼んで、ノートとペンを持って、廊下に出る。

「すいませんね。お時間をとってしまって」

「いえいえ、それで、本日はどのようなご用件でこんなところまで?」

「いや、ちょっと報告をしに来ました」

「報告?」

「ええ、このイタッツァにきたのは魔闘士協会本部へ行くためだったんですけどね、その本部で色々話をつけてきたので、その報告ですよ」

「ほう、どんな?」

「主に、君たちのこれからの取り扱いについてです。というのも、君たちが神殺しであることが会長に知られたので、遅かれ早かれ手駒にしたがると思うんですよね。そうすると、行動に制限がかかる恐れがあるので、それを撤廃して欲しいと伝えてきました。あと、私はワールドランキング1位を倒して欲しいのですが、ワールドランキングのルール上、順当に上がって行っても数年かかります。それだったら、わざわざ神殺しの魔力を晒して上がるより、5年後の魔闘士大会を目指す方が安全だということを伝えてきました。つまり、ライ君は16歳で、アネモネさんは21歳でもう一度魔闘士大会に出場するのです。それまではイタッツァで面倒を見てもらい、成長してください。」

「あぁ、俺たちもそのつもりだったし、それは全く問題ないよ。それで行こう。ありがとう」

「そうね。アタシもそれでいいわ。でも、教授、無色オーラの研究は進んでいるの?」

「えーっと、それがですね~。正直に申し上げると、全く進んでいません。というのも、無色オーラを使えるヒトは神殺しであるため、その資料が極端に少ないのです。今のところ、有名な神殺しは1000年前の神殺しだけです。本当は間にもいたのでしょうが、その間の神殺しは有名ではありません。なので、情報を持ってそうな魔闘士協会本部を研究の拠点にすべく、研究チームをゴッソリ連れてきました」

「やっぱりね。そんなことだろうと思ったわ。あなたはそれでいいかもしれないけど、シャイナはいつまであなたとの幸せな生活を待てばいいのよ?早く決めなさいよ?」
 アネモネは本気でシャイナに寄り添って怒っている。

「そうだな。ワールドラング1位は俺たちが倒すから、もうシャイナは魔闘士しなくていいんじゃないの?」
 俺もシャイナに同情する。

「そうですね。計画は大幅に変更せざるを得ません。なのでシャイナとは結婚することにしましょう。シャイナ?いいですね?」
 おいおい、そんな言い方じゃなくて、ロマンチックにやってやれよ!

「はい」
 言葉短く答える。
 それで良いのか?

「それでいいの?もっとやり方があるでしょ?」
 アネモネは本気で怒っていた。

「う~ん。難しいですね。また、後で話し合います。結婚式には参列してくださいね」

 まぁ、いいか。

「あ、教授!俺の友達が教授のファンらしいんだ。ここにサインくれよ」

「いいですよ」
 サラサラ~っと書く。

「クロッサスさんへって書いといて」

「はい。っと、出来上がり」

 その後、近況報告をお互いにし合い、解散となった。
 教室に戻り、クロッサスにサインをあげたら卒倒していた。
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