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第四章 ワクドキ学園パラダイス編 12歳

第45話 魔術試打

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 今日は魔術の授業がある日だ。
 魔術と言っても、学び方はたくさんある。
 術式を研究する授業もあれば、詠唱による魔術を復活させようとする授業もある。
 俺の魔術の授業は単純だ。
 色々な魔術を打ちまくるという授業だ。
 授業を受けられるかどうかの試験では、魔力測定を行われた。
 一定以上の魔力がないと、授業に参加しても何もできないからである。
 もちろん俺は一発合格だ。
 アネモネもこの授業は取っている。
 やはり、今後、ダンジョン攻略を考えるなら魔術の存在は切っても切り離せない。
 また、魔術師大会なるものにも参加することをアリエルから言われている。
 この魔術師大会ってのはどうやら秘密裏に行われている怪しい大会のようだ。
 会員制とでも言えばいいのか?
 とにかく、情報が少なく、どこでどのように行われているのかさえ掴めていない。
 ひょっとしたら魔術系の授業をとる中で情報を集められるかもしれないということからこの授業もとっている。
 
 さて、今日は前回の授業で選択した魔術をぶっ放す日となっている。
 試打場にて好き放題魔術を使ってもいい。
 試打場と言っても、かなり大学から離れた山だ。
 この周囲の山なら吹っ飛ばしても問題ないらしい。
 もちろん大学の私有地なので、悲しい事故は起こらない配慮がされている。

 俺は得意の重力魔術をいくつか試すつもりだ。
 あと、先日アネモネに贈った指輪と同じものを自分用にも用意したので、そちらの使い勝手も試してみる。
 どちらかというと、後者がメインだ。
 アダマンタイトの杖に特大ダイヤの触媒とか金額にしたら恐らく2000万丸はするはずだ。
 どれほどの効果が出るのか楽しみだ。
 アネモネも同じようなことを考えているようで悪い顔をしている。
 セオさんはいつも通り眠そうだ。
 特に何かアプローチをしてくるわけでもなく、俺と同じ授業でのんびりしていることが多い。
 11年もいるから一通りの授業は取っているんだろう。
 どれも、テキトーに過ごしている。

 さて、安全確認もされたことで、1人ずつ魔術をぶっ放す。
 俺たち以外の生徒は派手な見た目の魔術が多かった。
 火系だけは消火が大変だが、順調に進んでいる。
 セオさんの番がきた。
 彼女は杖すら持っておらず「パス」と言って終わった。
 相変わらずやる気がない。
 彼女が生徒代表であるのは、ただの最長老だからか?
 
 まぁ、いいか。
 次はアネモネの番だ。

「アネモネ・アフロディーテ撃ちます。魔術名はオーラで強化したフライです」

 どうやら彼女は風系魔術である「飛翔」を選んだようだ。
 初めはふわりと浮かび、その後、信じられない猛スピードで飛び立っていった。
 よく見ると風と土のオーラも纏っているので、いくら速くても風のダメージから身を守れているのだろう。
 よく考えられている。
 帰ってきたが、その時もとんでもない速さだった。
 飛翔中に何回かソニックブームが発生していたので、音速は何回か超えているはずだ。
 魔術とオーラの組み合わせは恐ろしい結果を生むようだ。
 それに、アダマンタイトの効果もあるのかもしれない。
 セオさんが驚いた顔をしていたのが印象的だ。

 最後は、俺の番だ。
 今回は重力魔術だが、術式をいじってある。
 せっかく、アダマンタイトで魔力の高さに応じた効果が得られる状態なのだからリミッターを切ってみた。
 小火弾であれば、小までのマナを使い、大火弾であれば大までのマナを使う。
 しかし、せっかくアダマンタイトで効果が魔力に応じてに上がる状態なんだから、「小」とか「大」とか言ったリミッターを切ってみた。
 やり方は、そこの術式となる図形を消すだけなので簡単。
 普段なら魔術が発動しないから試したことはないが、どうなるのか楽しみだ。
 ちなみに、発動範囲も同時に消えるので、どれくらいの大きさの魔術なのかさえわからない。

「ライラック・アルデウス撃ちます。魔術はオリジナルで無限重力です」

 55万を超える隠の魔力を使い周囲のマナを吸い取る。
 周囲のマナは無くなったので、惑星からも吸い取る。
 全身のゲートを開き、すべてのマナを取り込む。
 ここまではオーラを作る時によくやる作業だ。
 今日は魔術だ。
 その闇マナをゲートを経由して杖である指輪に送る。
 頭の中で術式を選択し、魔法陣を思い描く。
 術式を発動させる対象は隣の山の山頂に設定。
 触媒であるダイヤの指輪から魔術が発動。
 その後、魔術の光は拡散していく。
 通常であればここで魔術は失敗となる。
 しかし、同時にアダマンタイトの指輪が鈍く光り、魔術の拡散を収束させる。
 範囲が指定されていなかった魔術にアダマンタイトが指向性を持たせる形となった。
 山頂に黒い球体が発生し、周囲のものを吸い込み出した。
 光も歪んでいる。

 音も聞こえない。
 その引力は俺たちにも及んでいる。
 危険を察知し、魔術を終了、霧散させる。

「ふぅ」
 ため息が出た。

「何が「ふぅ」よ!危ないじゃない。あれは完全に魔術の域を超えてたわよ?何をしたの?」
 周囲の人間の声を代弁するアネモネ。

「うーん。アダマンタイトの指輪で俺の全力の魔力分の魔術放つとどうなるか試したかったんだ」

「ダメじゃない。あんなの見た事ないわよ?暴走はしてなかったようだけど、暴走級に危険な気がしたわ」

「だよね。ごめんごめん」
 軽く謝っておく。

「ごめんごめんって…」
 セオさんは腰が抜けていたようだ。

 多分、さっきの球体はブラックホールに準ずるものだろな。
 かなり危険だな。
 重力魔術を煮詰めたらできるだろうとは思っていたが、まさか一発目でできるとは思わなかった。
 正直ビビった。
 すぐに消せてよかった。
 魔闘法でゲートを閉じるトレーニングをしているからだろうな。
 一安心する俺であった。
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