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第三章 激闘の魔闘士大会編 中等部1年生

第34話 トーナメント1回戦に向けて

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 俺は2週間ポンコツだった。
 俺はトーナメントは棄権するつもりだったが、基本は認められないらしい。
 当日不参加で初めて棄権が認められるというルールだそうだ。
 チケットはどうするんだ?と尋ねたが、どうやら、入場料は取らないらしい。
 あくまで、魔闘士への門戸を広げることが目的なのだそうだ。
 俺のようにプロでない予選からの参加者がいる時点でそうするしかないそうだ。
 今まさに、棄権しようとしていたのだから、運営の判断は正しいと言える。
 あくまで、お祭りとしての収入だけでも大きなものになるらしく、十分黒字だそうだ。
 つまり、俺は試合に出場できる状態にある。
 
 そう、出場することに決めた。
 コーンさんを殺害したわけだから、観客から罵詈雑言を浴びせられるかもしれないが、そっちの方が俺のためになる気がした。
 自分本位で申し訳ないが、事故はお互いに起こり得ることだ。
 気にしないことにした。
 あぁ、これも、きっと魔力がいい感じに脳にキまってるんだろう。
 もう、いいや。

 とりあえず、準備としては、オーラについてもっと知る必要がある。
 そして、大きな問題がある。
 世間は俺を特級の中でも格別の能力を有していて、反則級であるということを認識している。
 なにせ、光と闇のオーラ両方でコーンさんを圧倒したのだから。
 それを踏まえると、どこぞの研究所のモルモットになることを覚悟で時を止めるのもアリかと思った。

「そうだな、練習しよう」

 そう、1人ごちると、オリビアのところに向かった。

「こんにちは。今大丈夫?」
 俺は勝手知ったる他人の家とばかりに、ロドリゲス邸の庭に行った。
 すると、オリビアだけでなくフォールもいた。

「ライ!ライこそ大丈夫なの?」
 オリビアが駆け寄ってきた。

「あぁ、ごめんな。心配かけて。大丈夫だよ」

「思ったより元気そうだな。帰宅して行くところを偶然見かけたんだが、あんなお前を見たのは初めてでびっくりしたぞ」
 フォールも心配してくれていたようだ。

「うん。もう、死にたいってとこまで落ち込んだよ」

「そうだろうな。無理するなよ?」

「ありがとう。でも、次の試合にはコーンさんの分も出ようと思うんだ。練習に付き合ってくれないか?」

「もちろんいいよ」
 オリビアが即答した。

「危ないことはダメだぞ?」
 フォールはビビってる。
 俺の試合を見たのだろう。
 どう見ても危険な試合だった。

「約束するよ。1つ試したいことがあるんだが、見てほしいんだ」
 そして、無色オーラで相手の時間を止められることを説明した。

「なるほど。興味深いな。というか、お前の魔力は一体いくつなんだ?試合を見てたが、さっぱり理解できないオーラの使い方だったぞ?」

「やっぱりそうだよね?もう、誤魔化せないから言うけど、一応内緒にしてくれよ?陽が7000で、隠が19万だ」

「!!」

「え?そんなことあるの?もう無敵じゃないの?」

「俺もそう思ってナメてたら、あんなことになったんだよ」

「そうか、そうだよね。ウチのお父さんが元だけど、トップランカーをできてたのもオーラの奥が深いからだしね」
 オリビアが謙遜しながらも冷静な意見を言う。

「そうみたいだな。ほんと、奥が深いよ。魔力の数字で勝ってるのに、いくらでもひっくり返されるし、使い方次第でいくらでも、勝敗が分かれるな」

「たしかにそうだな。途中で攻撃が重くなったように見えたんだが、あれはカラクリがあるのか?」
 フォールが純粋な疑問を投げる。

「あぁ、闇オーラには重力魔術と同じような効果があるんだ。ちなみに、光は自動治癒な」

「はぁー、そんなこともできるんだね。どうやら、大人たちは、あまり教えたくないようだけど、それが理由か。使い方によっては、大事故が起きるもんね。あっ、ごめん」
 オリビアが失言したと謝る。

「いいよ。もう乗り越えたから」

「そうだな。お前は特訓に来たんだもんな」

「そうなんだ。悪いけど、ちょっと付き合ってくれないか?光と闇は実戦で使えたけど、無色はまだだからな」

「いいけど、その、いいの?自分が特別だって宣言してるようなものじゃない?」

「うん。もう、いいや」

「いや、良くないだろ?」
 熊のような大男が現れた。
 ラースがいきなり現れて言い放った。

「いいんだよ、おじさん。今の話、聞いてたんだ?気にしないで」
 ラースの顔を見ると怒りを露わにしている。

「気にしろ!自分を大事にしろ!別に試合に負けても誰もお前を責めないよ」
 ラースは怒りの気持ちをぶつけてくる。

「そうですね。確かに投げやりだったかもしれません。でも、みなさんオーラの使い方がうまくて、時間を止めることくらいしか勝ち方がわからないんです」
 ううん、もう、なんでもいいや。

「大丈夫だ。俺が今から勝ち方を教えてやる」
 ラースは握り拳を作りながら言った。
 どうやら、本気なようだ。

「それじゃあ、教えてください」
 なんとなく言ってみた。

「わかったよ。まず、オーラについてだが、詳しく理解しろ。そこで初めて使いこなせる。もちろん、教えなかった俺も悪いが、闇オーラは本当に危険だ。操作をミスすると自滅する。俺も試合を見ていたが、抱きついて相手ごと重くするのは絶対にダメだ。重力をかけすぎて、相手ごと自分も潰れる。やるなら、拳の先にコントロールできるだけの重さをたしてやるのが基本だ。」

「なるほど、魔術は術式でコントロールするから暴走しにくいですけど、オーラだと、必要以上に重くしてしまい、自滅するわけですね」

「あぁ、そうだ。そもそも、重力とは、惑星との引力のことだ。その反対もある。つまり、引きつける力と、離す力と考えた方がいい。つまり、引力と斥力の関係だ。重くするのは、惑星を引きつけている力で、使い方によっては、対象を惑星から対戦相手に設定することができる。そうすることで、相手に重くて素早い攻撃を当てることができる。あと、相手と離れるように設定すれば、攻撃を避けることもできる。使い方によっては無敵となる」
 なんか難しいな。

「なるほど、それで隠の中級であるおじさんがトップランカーに入ることができたんですね」
 やっと、謎が解けてきた。
 コーンさんの謎の強さのカラクリが。

「あぁ、そうだ。ラース・ロドリゲスの強さの秘密はその力だ。しかし、俺の限界はそこだった。ツバルの旦那が現れて吹き飛んでしまった。ツバルの旦那は、元々、有利に試合展開できる陽の上級術者で強かった。しかし、俺が闇オーラを使いこなすと、勝てなくなった。闇オーラ最強の時代があったのさ。でも、旦那はあきらめず、研究を積み重なることで、全開法を編み出した。下級の闇オーラで俺と同じことをやりながら、陽の火力で攻撃してきたんだ。すると、すぐにその真似をするヤツが現れる。闇オーラ最強時代の終わりだ」

「うーん。教授が美味しいとこ取りですね」

「そうなんだ。当時、俺は荒れた。なんせ、自分が最強だと思ってたのに、俺の真似をしたヤツがすぐに勝っちまったんだからな。おかげで、俺はプロレスラーへと転身したわけだ」

「お父さん、自分が最強だと思ってた時代があったんだ…」
 オリビアが微妙な表情をする。

「ガハハ!若気の至りってやつよ!で、まぁ、結果的には今はオリビアも生まれて家族みんなが幸せなんだから、いいだろ?」
 バチコーンとラースがウインクする。
 ちょっと気持ち悪い。
 いや、救われたな。
 かなり殺伐とした自分を冷静に俯瞰視点で観測できた。
 やはり、焦ってたのかもしれない。
 いや、投げやりだな。
 もう、いいやって感じに。

「あはは!おじさんのウインクとか誰トクだよ?あはは!」
 久しぶりに笑った。
 あぁ、なんだか、無性にアネモネに会いたくなってきたな。
 特訓が終わったら抱きしめてみよう。

「さて、緊張もほぐれたことだし、本題だ。今、説明した。ツバルの旦那のように、陽の火力を乗せながら、ライの魔力なら当時最強だった俺の戦法が使えるってわけよ。しかも数段パワーアップしてな。結局魔力量かよ?って話になるけど、使いこなせるかは、お前次第だ。やってみるだろ?この際だし、オリビアと、フォールもやっていけよ」
 3人まとめて面倒見てやると言わんばかりだ。
 頼もしい。
 もちろん返事は全員決まってる。

「お願いします」

 こうして俺は特訓を1週間ほど重ね、闘いの地へ行くのであった。
 もちろんそこにはアネモネの姿もあった。
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