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第三章 激闘の魔闘士大会編 中等部1年生

第28話 学生の本分

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 昨日の魔闘士大会予選を無事通過した俺は学業に勤しんでいた。
 魔闘士大会の本戦は半年後なので、しばらくは基礎トレーニングと、魔術の研究に時間を使える。

「なんか久しぶりな気がするな」

 改めて確認するが、俺は学生だ。
 しかし、学校での存在感はない。
 クラスのメンバーも把握していない。
 名前がわかるのは、オリビアとフォールの2人だけだ。
 それもそのはず、ほとんど学校へ行っていない。
 いや、行っているが、ロクに授業を受けていない。
 オーラのトレーニングが重要なのと、授業の内容は知っていることばかりだからだ。
 特に数学と国語は固有名詞が違うだけで地球と同じ内容ばかりだ。
 逆に、理科系、社会系の学習は固有名詞が多すぎて覚えるのが大変だが、どこか、地球と似ている名前なので、覚えやすい。
 それと、学校よりも大学へ留学していたり、ダンジョン攻略に勤しんでいたりと、学校外での活動が主な活動となっていることも学校に馴染めない原因だ。
 
 しかし、1つだけ楽しく感じる授業がある。
 魔術の授業だ。
 位置付けとしては、日本で言う「技術」の教科と似たポジションだ。
 だから、授業の回数は週に1回程度しかない。
 実習もあるが、座学も半分くらいある。
 どちらも面白い。
 
 今日の授業は特に面白かった。
 内容は「マナについて」であった。
 マナは日常のあらゆるところに使われているが、一般人の認識は甘い。
 正確に調べると非常に興味深いものなのである。
 今日の授業では、マナを使った工業製品についての紹介だった。
 初めに紹介されたのは、テレビだった。
 液晶は、火・風・水のマナを利用して、水銀で作った触媒に光の三原色を写している。
 つまり、家庭用コンセントはそれぞれのマナを運んでいるのだ。
(だから、4本のコンセントだったのか!)
 新しい発見があった。

 知識欲というものを満たされる瞬間はいつも気持ちがいい。
 風の魔術の上位版に雷魔術があることから、電波の類も風マナから作ることができる。
 電子レンジや、スマホや、無線、ラジオなど、電波を使った製品はこの技術を応用している。
 これは、電波に関する魔術があることを暗に示している。
 術式さえ開発すれば、人体から直接、電波を出すこともできる。
 それができてしまえば、人体に電子レンジと同じマイクロ波を照射して、血液を沸騰させるような外道な魔法が出来るかもしれない。
 いや、流石にそれはしないけど。
 たしか、電子レンジは箱に密閉しないと効果がないから、やりたくても電子レンジの様な物の中に人間を入れる必要がある。
 現実的ではないな。
 いや、人間を攻撃することからはなれよう。

 電気の量にもよるけど、いろんな液体を電気分解ってのも悪くないな。
 簡単なので言えば海水の電気分解で塩素ガスとか?
 あれ?また人間を攻撃してるな。
 しかし、自分で発電できるってだけでかなり夢が膨らむ。

 それにしても、電子パーツはあまりない。
 魔術が便利すぎるせいで、エネルギーとしての電気は活用されていないようだ。
 一部あるにはあるが、インフラが整備されていないため、利用しにくいという弱点がある。
 もちろん、半導体のたぐいは全滅だ。
 テレビゲームなどの娯楽もない。
 スマホもあるが、魔術を使った通話や、メッセージを使ったコミュニケーションができるだけである。
 ホームページや、snsはあるが、まだまだ発展の余地はある。
 つまり、ガラケーに近い。

 その代わりに、魔術がある。
 とにかく、魔術は夢がある。
 最低限必要な魔速は決まっているが、多くの人は根気さえあれば、巨大魔術を発動できる。
 また、マナを混合することで、便利な使い方ができる。
 光は治癒、闇は重力だ。
 無色のマナは無限の可能性がある。
 魔闘法ではmpが半減するので微妙な立場にあるが、魔術界では、最もメジャーな研究対象である。
 しかし、無色のマナは基本4色のマナを全て使って合成するが、その4分の1しか合成できない。
 そのせいで、長年研究が止まる。
 進むタイミングというのは、特級と呼ばれる術師が現れたときだけだ。
 研究者からすれば、特級が現れたら、何としてでも、捕まえる必要がある。
 そして、研究だけを先に進めて、実験できていない、あらゆる術式を試していき、検証する必要がある。
 マナ抽出所のマナを使うには余りにも高額である。
 そのように研究者は考えている。
 そんな研究者に捕まればどうなるかは明白だ。
 よって、大人しくしておくに限る。
 特級だとバレないように立ち回る。

 しかし、しかしだ。
 俺も研究したい。
 今日の授業で興味深い内容があった。
 テレビや電子レンジなどの、マナ技術を用いた魔導工学製品には、コアとなる触媒に術式を付与している。
 この触媒から術式をコピーすることができるというのだ。
 専用の用紙である感熱紙のような紙で触媒を覆い、無色のマナを紙に通すことで、コピーできる。
 この紙自体が高級であるため、乱用はできないが、今の俺にはゾンビから得た貯金がある。
 まとまった金額の貯金がある。
 さっそく買いに魔術店に行った。
 100枚を10万丸で買う。
 適当に魔導製品を買う。
 ドライヤーと、目覚まし時計にした。
 ドライヤーは熱風を強めると、攻撃として成り立つこと、時計は、時魔術のヒントを求めてのことだ。

 結論から言うと、予想以上の成果はなかった。
 ドライヤーは確かに熱風の術式で、火と風のマナを使っていた。
 出力を上げると強力な攻撃となるが、攻撃魔術でないため、味方を巻き込まない術式が組めないものであった。
 このままでは、敵味方関係なく高熱の突風にさらされる。
 ここままでは使えないので、少し研究する必要がある。
 ひとつわかったのは、小火弾と小風弾の出力を抑えて、ほどよく調整したのが、ドライヤーの威力であることである。
 結局は自分で作れてしまうものだった。
 ここまで来れば、巨大火弾と巨大風弾の組み合わせに出力をあげれば、強力な攻撃魔術のできあがりだ。
 出力範囲を重力魔術の時の半径10mで高さ1mにすれば、ベギ◯マもどきのできあがりだ。
 さらに範囲を広げれば、べ◯ラゴンを名乗れる。
 時計は時が経てば、針が動くという術式が3つあった。それぞれ、短針、長針、秒針である。
 ほかに、アラームは短針とアラームの針が重なると音が鳴るという術式だった。
 なんだか、プログラミングに似ている気がする。
 いや、魔術の術式自体がプログラミングそのものである。
 たとえば「魔術をつくる」という機能だけの術式がある。
 魔術効果はないので、マナを通しても、何も起こらず、マナを通しすぎたらショートしてマナ暴走が起こるというものだ。
 まるで、抵抗のない電気回路に電気を流しているようなイメージである。
 そういう意味ではマナ回路と言い換えることができるかもしれない。

 「時が経てば針が動く」はおそらく時魔術である。
 調べてみると、無色のマナを使っていた。
 しかし、1秒の概念を惑星の自転周期から計算するというとても面倒な術式だったため、実用化は断念した。
 時計がやたらと高いのはこのためかもしれない。
 やはり、無色のマナは不思議パワーを秘めているようだ。
 この世の中の不思議現象は大抵が無色のマナで説明できる気がする。
 精霊召喚も誰もが知る精霊であれば、光のマナで召喚できるが、全てオリジナルの精霊となると、どんな動きをするのかプログラミングした上で召喚するらしい。
 召喚というか、俺からすればただのAIロボだな。
 その、オリジナル精霊は無色のマナでできるらしい。
 やはり、無色のマナの研究をするのが楽しそうだ。
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