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第63話 意外な実力
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ダンジョンは少しずつ牙を剥いてきていた。
僕たちは現在、24階層にいる。
20階層を超えたあたりから少しずつ手こずることが増えてきた。
しかし、サルビアは戦闘に参加していないため、余裕はあるが、僕とアイリスの二人では対処できなくなりつつあった。
なんといっても、物量が違う。
魔物の数が増えている。
ガーベラとサイトが先導することでかなり間引いてくれているようだが、それでも僕の未熟な魔法攻撃ではダメージを与えても手が足りない。
アイリスは盾職なので、攻撃には参加しない。
サルビアは本当にピンチの時しか手助けしてくれない。
「ねえ、そろそろ進むのは限界な気がするんだけど、サルビアは攻撃に参加してくれないの?」
「うん。だって、まだ余裕だよ? これくらいで根を上げてたら30階層からはもっとキツくなるしね」
「それはそうだろうけど、ケガするよ?」
「多少のケガなら回復してあげるから気にせずやったらいいじゃない?」
「まぁ、ね」
確かにサルビアの言っていることは正論だが、僕はケガをしたくない。
痛いのはイヤだ。
アイリスのケガを見た時も思ったが、血を見るのが怖いんだ。
ビビリでヘタレな僕にはそろそろ限界が近い気がするのに、サルビアはまだしも、アイリスでさえ大丈夫だと考えている。
前衛タンクのアイリスに大丈夫だと言われて仕舞えば、後衛で魔法を撃っているだけの僕は何も言えない。
「わかったよ。わかったけど、サルビアはもう少し早めにヘルプ出してよ」
これが僕のギリギリの妥協点だ。
サルビアが手助けをしてくれるのは本当に危ない時だけになっている。
本当に危ないってのは、命の危機だけだ。
死ぬ寸前にしか助けてくれないので、怖くて仕方ない。
「そうね。この先25階層からは少しさらに魔物の数も質も変わるから少し手助けしようかな」
「ありがとうございます。賢者様」
「そうでしょ? もっと褒めてね」
サルビアは賢者と呼ばれながらも自分の頭が悪いことを気にしている。
しかし、ダンジョンの探索に関してはベテランで、10歳の時からダンジョンに潜っているようだ。
「わかったよ。いくらでも褒めるから助けてね」
「ええ。それじゃあ、少しだけ攻撃にも参加するね。そういえば、アステリアさんってダンジョン攻略は得意なのかな?」
「一番の騎士とは自分で言っていたけど、この前の魔王もどきの戦いには参加してなかったもんね。ひょっとしたら、口だけなのかもしれないね」
「そんなことはありませんよ。私は名実ともにナンバーワンです」
いきなりアステリアさんが後ろから声をかけてきた。
いつからいたんだ?
ダンジョンに入る時はいなかったはずなのに、いつの間にか、僕たちの背後にいた。
気配も全く感じなかった。
怖すぎる。
「いらっしゃったのですね? 失礼しました。このダンジョンに来ることはお伝えしてしていなかったと思うのですが?」
「ええ、たまたま皆さんがダンジョンに入っていくところを見かけたので、ついてきました」
「そうだったんですね。ちょっとでいいからアステリアさんの腕前を披露してくださいよ」
「もちろん。そのために来ましたので」
そういうと、アイリスより前に出て、単騎で突っ込んでいく。
もうすぐ、階層主の間となっている。
本当に大丈夫なんだろうか?
心配をよそにどんどん進んでいく。
するとすぐに階層主が現れた。
フレイムリザードだった。
大きなトカゲのような体から灼熱のブレスを吐き出すことで有名だ。
僕が知っているくらいなので、かなり有名な魔物であることは間違いない。
しかし、アステリアさんは涼しい顔をして散歩でもするかのように近づいていき、一言発した。
「ウインドカッター」
その一言で終わってしまった。
よく見ると、フレイムリザードは三体いたようで、縦一列に並んでいたようだ。
最後尾の一体まで一つの魔法で真っ二つに切られていた。
凄まじい威力だ。
でも、魔法自体は僕も使えるような初級魔法なのに。
サルビアの言葉を借りるなら、熟練度が違うのだろう。
同じ魔法でも、使う回数によって熟練度が上がるそうだ。
威力が上がれば、少ないマインドで高い威力を出すことができる。
熟練者にのみ許された魔法の使い方だ。
そう、一つ魔法を見ただけで、どれほどアステリアさんが強いのかはすぐにわかった。
一連の流れを見守っていたサルビアが驚いて口をあんぐり開けている。
賢者から見てもどうやら凄まじい威力だったようだ。
「サルビア、あれはマネできる?」
「で、できるわよ!」
怪しい。
怪しすぎる。
強がりで見栄を張っているだけだろう。
「アステリアさん、ありがとうございました。すごい魔法ですね」
「いえ、それほどではありません。たまたま三体も倒せましたが、まだまだです。それにアーサーさんこそ本気を出せばもっとすごいことができるのではありませんか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。僕なんてクソザコです。今も戦闘訓練に婚約者たちを巻き込んでいますしね」
「こ、婚約者なんですか?」
「ええ、そうですよ。この二人とガーベラの三人です」
「さ、三人も?」
「ええ、一応、これでも王子なので、三人同時に婚約しています」
「三人同時!?」
なんだろう?
さっきから少し様子がおかしいな。
僕みたいなクズモブが三人も婚約状態にあることに驚いているのかな?
「アーサーさんはモテるんですね」
「いえ、成り行きと言いますか……」
「成り行きで三人も婚約することはないと思いますよ?」
「それもそうですね。でも、僕も必死だったもので……」
アステリアさんが見るからに狼狽している。
何か悪いことでもしたのだろうか?
気になるが、聞きようがないので、気にせず25階層へ進むことにした。
僕たちは現在、24階層にいる。
20階層を超えたあたりから少しずつ手こずることが増えてきた。
しかし、サルビアは戦闘に参加していないため、余裕はあるが、僕とアイリスの二人では対処できなくなりつつあった。
なんといっても、物量が違う。
魔物の数が増えている。
ガーベラとサイトが先導することでかなり間引いてくれているようだが、それでも僕の未熟な魔法攻撃ではダメージを与えても手が足りない。
アイリスは盾職なので、攻撃には参加しない。
サルビアは本当にピンチの時しか手助けしてくれない。
「ねえ、そろそろ進むのは限界な気がするんだけど、サルビアは攻撃に参加してくれないの?」
「うん。だって、まだ余裕だよ? これくらいで根を上げてたら30階層からはもっとキツくなるしね」
「それはそうだろうけど、ケガするよ?」
「多少のケガなら回復してあげるから気にせずやったらいいじゃない?」
「まぁ、ね」
確かにサルビアの言っていることは正論だが、僕はケガをしたくない。
痛いのはイヤだ。
アイリスのケガを見た時も思ったが、血を見るのが怖いんだ。
ビビリでヘタレな僕にはそろそろ限界が近い気がするのに、サルビアはまだしも、アイリスでさえ大丈夫だと考えている。
前衛タンクのアイリスに大丈夫だと言われて仕舞えば、後衛で魔法を撃っているだけの僕は何も言えない。
「わかったよ。わかったけど、サルビアはもう少し早めにヘルプ出してよ」
これが僕のギリギリの妥協点だ。
サルビアが手助けをしてくれるのは本当に危ない時だけになっている。
本当に危ないってのは、命の危機だけだ。
死ぬ寸前にしか助けてくれないので、怖くて仕方ない。
「そうね。この先25階層からは少しさらに魔物の数も質も変わるから少し手助けしようかな」
「ありがとうございます。賢者様」
「そうでしょ? もっと褒めてね」
サルビアは賢者と呼ばれながらも自分の頭が悪いことを気にしている。
しかし、ダンジョンの探索に関してはベテランで、10歳の時からダンジョンに潜っているようだ。
「わかったよ。いくらでも褒めるから助けてね」
「ええ。それじゃあ、少しだけ攻撃にも参加するね。そういえば、アステリアさんってダンジョン攻略は得意なのかな?」
「一番の騎士とは自分で言っていたけど、この前の魔王もどきの戦いには参加してなかったもんね。ひょっとしたら、口だけなのかもしれないね」
「そんなことはありませんよ。私は名実ともにナンバーワンです」
いきなりアステリアさんが後ろから声をかけてきた。
いつからいたんだ?
ダンジョンに入る時はいなかったはずなのに、いつの間にか、僕たちの背後にいた。
気配も全く感じなかった。
怖すぎる。
「いらっしゃったのですね? 失礼しました。このダンジョンに来ることはお伝えしてしていなかったと思うのですが?」
「ええ、たまたま皆さんがダンジョンに入っていくところを見かけたので、ついてきました」
「そうだったんですね。ちょっとでいいからアステリアさんの腕前を披露してくださいよ」
「もちろん。そのために来ましたので」
そういうと、アイリスより前に出て、単騎で突っ込んでいく。
もうすぐ、階層主の間となっている。
本当に大丈夫なんだろうか?
心配をよそにどんどん進んでいく。
するとすぐに階層主が現れた。
フレイムリザードだった。
大きなトカゲのような体から灼熱のブレスを吐き出すことで有名だ。
僕が知っているくらいなので、かなり有名な魔物であることは間違いない。
しかし、アステリアさんは涼しい顔をして散歩でもするかのように近づいていき、一言発した。
「ウインドカッター」
その一言で終わってしまった。
よく見ると、フレイムリザードは三体いたようで、縦一列に並んでいたようだ。
最後尾の一体まで一つの魔法で真っ二つに切られていた。
凄まじい威力だ。
でも、魔法自体は僕も使えるような初級魔法なのに。
サルビアの言葉を借りるなら、熟練度が違うのだろう。
同じ魔法でも、使う回数によって熟練度が上がるそうだ。
威力が上がれば、少ないマインドで高い威力を出すことができる。
熟練者にのみ許された魔法の使い方だ。
そう、一つ魔法を見ただけで、どれほどアステリアさんが強いのかはすぐにわかった。
一連の流れを見守っていたサルビアが驚いて口をあんぐり開けている。
賢者から見てもどうやら凄まじい威力だったようだ。
「サルビア、あれはマネできる?」
「で、できるわよ!」
怪しい。
怪しすぎる。
強がりで見栄を張っているだけだろう。
「アステリアさん、ありがとうございました。すごい魔法ですね」
「いえ、それほどではありません。たまたま三体も倒せましたが、まだまだです。それにアーサーさんこそ本気を出せばもっとすごいことができるのではありませんか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。僕なんてクソザコです。今も戦闘訓練に婚約者たちを巻き込んでいますしね」
「こ、婚約者なんですか?」
「ええ、そうですよ。この二人とガーベラの三人です」
「さ、三人も?」
「ええ、一応、これでも王子なので、三人同時に婚約しています」
「三人同時!?」
なんだろう?
さっきから少し様子がおかしいな。
僕みたいなクズモブが三人も婚約状態にあることに驚いているのかな?
「アーサーさんはモテるんですね」
「いえ、成り行きと言いますか……」
「成り行きで三人も婚約することはないと思いますよ?」
「それもそうですね。でも、僕も必死だったもので……」
アステリアさんが見るからに狼狽している。
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