中身はクズモブなのに『ピュア』だけでゴリ押す第六王子のハーレムは完成する〜非戦闘スキルなのにバトルも無双〜

ahootaa

文字の大きさ
上 下
62 / 63

第62話 初めてのNO

しおりを挟む
 階層主を討伐した僕たちは次の階層へと進んでいた。
 僕の魔法攻撃が未熟であることがわかったので、ザコ狩りで魔法の熟練度を上げるようにしている。
 特にレベルアップの時のような告知が無いので、なんとなくで判断するしかないそうだ。
 感情の昂りに合わせて威力が変動したり、かなりアナログな仕様らしい。
 残りマインドの感知もアナログだし、かなり不安が残る仕様だ。
 
 しかし、威力が低いものの、レベルが高いことから、上位魔法も使えているようで、爆裂魔法はやはり優秀な威力を持っていた。
 サルビアは爆裂魔法には一家言あるようで、何やら語り出していたが、聞き流していた。
 だって、話が長いんだもん。

 そうやって僕は重要な情報を聞き逃してきたのだろうが、それは今さらな話だ。
 少しずつ僕のペースで情報を手に入れ、自分の血肉としていきたい。
 サルビアのコアな魔法トークはまだ早いと感じたのだ。
 
「……だから、爆裂魔法って言うのは面白いのよ? わかった?」
「ああ、わかったよ。ありがとう」
「あー、絶対聞いてないって顔してる!」
「そんな事ないよ。爆裂魔法が面白いって話でしょ?」
「そうそう、それでね……」
 聞きな流しスキルは取得していないが、得意であった。
 賢者なのにバカなサルビアはチョロい。

 そんなやりとりを横目にアイリスは落ち着いていた。
 彼女はかなり大人しい性格なので声をかけないとずっと静かに過ごすことになる。
 僕は彼女のそんなところが好きだ。
 僕のようなモブキャラ相手にも真面目に相手をしてくれるし、バカにすることもない。
 高級な言葉を選ぶなら「真摯」というワードがぴったりだ。
 でも、彼女のそんな性格に付け入ってエッチなことをしようとしてしまう僕はクズだろう。
 それでも、アイリスは僕のそばを離れずについてきてくれる。
 ありがたい存在だ。

 そんな性格だからか、アイリスは『受け』というスキルを持っている。
 このスキルは誰かからの依頼に対して少し無理があってもこなしてしまうという無理をし過ぎてしまうスキルだ。
 過去に僕も何度か利用したが、本当にムチャなお願いも聞いてくれた。
 戦闘中でも、指示を出せば目標遂行のために最善を尽くす。
 
「敵影あります。正面2です」
 前衛であるアイリスは索敵もこなしてくれる万能メイドだ。
 メイドでありながらも僕の婚約者という難しいポジションもこなしてくれる。

「OK。それじゃ、これまでと同じようにサルビアは指示を出すのが仕事で、アイリスはタンクメインの立ち回り、僕が魔法で攻撃するね」
「承知しました。姿を目視しました。大型の魔物です。警戒してください」
「ホントだね! ありゃ、フロストリザードだ。それも二体もいる!」
「それって強いの?」
「う~ん、私なら一撃だけど、アーサーの魔法なら少し時間がかかるかもね」
「そうか、それなら、さっさと一発目を打ち込むよ」
「そうね。やるなら早い方がいいよ。あいつの攻撃は少し厄介だからね」
「そうなの? よし、バーニングフレア!」

 どごおおぉぉぉぉおおん!!!

 僕の魔法が炸裂したが、それほどダメージは入っていなかった。
 これはまずいかもしれないな。
「やばいと思ったらサルビアも攻撃に参加してね」
「そうね。でも、これくらいは練習だと思って倒しておかないと後々苦労するよ?」

 と言われても、攻撃が通らないしな。
 物理攻撃に切り替えるしかないかな?
 腕が痛くなるから剣聖攻撃はしたくないんだよなぁ。
 そんなどうでもいいことを考えていると、フロストリザードはブレス攻撃をしてきた。
 
 ブォォォォォ!

 氷点下の風が吹き抜ける。
 中には氷につぶてが入っているため、物理ダメージも受ける仕組みだ。
 ブレスは僕たちに襲いかかるが、アイリスが盾で防いでくれる。
 でも、いくら大きめの盾とはいえ、一人で防げる攻撃量には限界がある。
 ブレスは広範囲攻撃だ。
 
 アイリスは必死に防ごうと素早い動きで僕たちの前に現れた。
 そして、フロストリザードへ突撃していった。
 ブレスがいくら広範囲攻撃とはいえ、噴射口は一点だ。
 そこまで近づけば二人を同時に守ることができると判断したのだろう。

 そう、あくまで、防衛対象は僕たち二人だったのだ。
 アイリスにとって、自分自身は防衛対象には含まれていなかった。
 真面目な彼女は僕たちを守ってはいたが、自分自身は守れていなかったのだ。
 具体的に言うと、彼女の足元は氷のつぶてが大量に当たり、ズタボロになっていた。
 
「サルビア、回復を!」
「了解」

 僕はサルビアに指示を出し、剣に手をかけた。
 素早く剣聖スキルを使って攻撃を放ち、フロストリザード二体を切り刻んだ。
 そして、すぐにアイリスのところへ駆け寄った。

「アイリス、ムチャをしすぎだよ……」
「いえ、私はアーサー様の盾です。どのような事があっても受けきる覚悟です」
「ありがとう。でも、自分の安全も考慮して受けて欲しいな。僕が頼りないのはわかってるけど、いくらなんでもこんなのを何回もされたら一緒に連れて行けなくなるよ」
「それはイヤです!!」
 初めてアイリスがNOを突きつけた。
 それが僕は嬉しかった。

「そうだね。僕もイヤだから、お互い怪我は少なくなるようにしようよ」
「承知しました」

 こうして、アイリスとの関係も深まった気がしたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】 転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた! 元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。 相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ! ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。 お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。 金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...