上 下
53 / 63

第53話 圧倒的実力差

しおりを挟む
 アステリアさんとガーベラ、サルビアの手合わせについてだが、一言でいうと、圧倒的だった。
 ガーベラが剣を振るより早くアステリアさんが、剣を振り、サルビアが得意とする巨大火球より大きな水球でレジストして、水圧で圧倒した。
 アステリアさんとガーベラ、サルビアとの間には神と人ほどの差があった。
 絶対に超えることのできない大きな壁というやつだ。

 二人は観念し、アステリアさんの実力を認めた。
「アステリアさん、すごいですね。当代剣聖を剣で倒し、当代賢者を魔法で圧倒した。こんな方ほかにはいませんよ?」
 ガーベラが興奮気味に言う。
「いえ、買いかぶりすぎです。それに、アーサー殿下はもっと上級者なのでしょう?」
 急に話をふられてたじろぐ僕。

「え、えーっと、スキルコピーさせてもらえばどうにかなるかもしれません」

「え?」
 みんなが驚く。
 あわててしまい、爆弾発言をしてしまった。

「アーサー、スキルコピーなんてできるんですか?」
「え、あ、えーっと、……うん」
「ひょっとして『剣聖』スキルはコピーしましたか?」
「そ、……そうだね」
「やはり、実家で資料を読んでいると、ストライク家以外で『剣聖』スキルが発現したのは百年ぶりのことみたいだったので、イレギュラーな原因でもあるのかと思っていましたが……まさかスキルコピーだとは……」
 ガーベラもドン引きの内容だったらしい。
 僕はなんとなくズルをしているのはわかっていたので、スキルコピーについては誰にも言っていなかった。

「まさか『勇者』も……?」
 サルビアがめずらしく鋭い。
「そ、そうだね……」
 これが一番後ろめたい気持ちの原因だ。
 スキルコピーで爵位を得たのだから……。
 しかも、美少女と結婚したいって理由で……。

「そりゃ、できるならするよね。それで? 私の『賢者』はしたの?」
「いや、まだなんだ。なんとなく、忘れるんだよね」
「そりゃ『勇者』があればなんでもできるもんね。あ、でも、派生スキルが獲得できないから強い基本スキルがあっても意味ないか」
「そうなんだよ。魔法関係は全く使えないんだ」
「そうに決まってるじゃない。派生スキルで魔法を使えるようになるんだから」

 サルビアの話を要約すると、どうやら、派生スキルに『白魔法』のような色ごとの魔法があるそうだ。
 基本スキルのレベルが上がれば派生スキルは発生し、そこでやっと魔法が使えるようになるらしい。
 そのレベルが10になった時に基本スキルに合成することで、さらにレベルを上げて派生させるのが、セオリーとのことだ。
 要するに、レベル上げが不十分だったということだ。
 だって、僕のスキルレベルは『剣聖』が1で、『勇者』が5だもんな。
 サルビアは60代で低いと嘆いていたので、ガーベラの600代がすごいと言われるレベルなのだろう。
 つまり、100には届いていないと話にならないわけだ。
 今の僕のレベルでは何もできなくて当然ということになる。

「あの、私もスキルについてはレアなものを持っています」
 アステリアさんが、話題に入ってきた。
 全権大使を放置して、スキルトークに夢中になっていた。
 申し訳ないことをしたな。

「どんなものですか?」
「はい『女神』というものを持っています。鑑定すればわかることなので先に話しておくと、レベルは9999です」
「え?」
 カンスト?
 やりすぎにもほどがある。
 そりゃ、ガーベラやサルビアを子供みたいにあしらえるはずだ。
 
「スキル『女神』では、あらゆるスキルをレベルマックス状態で使うことができます」
「え? チートすぎないですか?」
「ちーと?」
 おっと、素が出てしまった。

「いえ、こちらの話です。反則すぎませんか?」
「そうですね。私もそう思います。ですから、あまり、国の大きな出来事には関与しないようにしています。周囲が騒ぎすぎますので……」
「あ、すいません。無遠慮すぎました。そんな秘密を明かしてくれたのは何か理由があるんですか?」
 気になるから聞いてみる。

「そうですね。あえて言うなら、アーサーさんだからです。それと、アーサーさんの選んだ未来の奥様たちだからですね。……あ、いきなり殿下にアーサーさんだなんて失礼でしたね」
「いえ、これからも好きに呼んでください。むしろ殿下と呼ばれる方がむずがゆいです」
「そうでしたか。それなら、アーサーさんと呼ばせてもらいますね」
「はい、これからもよろしくお願いします。アステリアさん」

 こうして、レイサーム王国との共同戦線は整った。
 しかし、肩を並べてと言っていたが、アステリアさん本人はあくまで後方支援に徹するようだ。
 やはり、チートスキルを使いすぎると悪目立ちするかららしい。
 しかたがないとはいえ、美女と一緒に戦えないことは残念だった。
 
 ダンジョン攻略は僕たちが主力になり、サポートとしてレイサーム王国のバックアップを受ける形に落ち着いた。
 お父様に報告すると「レイサームから持ってきた話に主戦力を投入しないのはおかしい」と怒っていたが、僕たちは納得している。
 アステリアさんがとても強いことはわかったし、信用に値する人物であることもわかったので、それを踏まえて説得した。

 お父様は僕の説得と、全権大使の歓迎パーティなどでアステリアさんの人となりを観察し、一応の納得はしてくれたようだ。
 それにしても、アステリアさんは美しい。
 初めて出会ったときの騎士としての服装でも美しかったが、パーティでのドレス姿は見とれるなんてレベルを遥かに超えていた。
 周囲の男性陣も同様に驚いていたようだ。

 パーティには正室であるブーゲンビリア様のほかに、側室であるお母様も出席していた。
 僕がアステリアさんとの担当窓口で、その母だからだろう。
 その日のパーティはアステリアさんの周りに人だかりがずっとできていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚  ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。  しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。  なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!  このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。  なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。  自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!  本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。  しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。  本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。  本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。  思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!  ざまぁフラグなんて知りません!  これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。 ・本来の主人公は荷物持ち ・主人公は追放する側の勇者に転生 ・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です ・パーティー追放ものの逆側の話 ※カクヨム、ハーメルンにて掲載

【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~

川原源明
ファンタジー
 秋津直人、85歳。  50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。  嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。  彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。  白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。  胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。  そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。  まずは最強の称号を得よう!  地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編 ※医療現場の恋物語 馴れ初め編

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

処理中です...