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第50話 対抗策

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「アーサー、どういうことよ? なんで私たちが急にこんな汚いところへブチこめられなければならないの?」
「ええ、アーサー、教えてください」
「アーサー様……」
 サルビアとガーベラが問いただした後にアイリスは小さくつぶやいた。
 三人とも普段着を着ているので、ガーベラは瀟洒なドレス、サルビアは町娘が着るようなワンピース、アイリスはいつものメイド服を着ている。
 きっと、逮捕されてすぐにここへ連れてこられたのだろう。
 
「すまない。ハメられたんんだ……。僕が国家転覆をはかっている大罪人であると宰相にハメられたんだよ」
 ただ、謝るしかできなかった。
 本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

「なぁんだ。てっきりアーサーが本当に悪いことをしたのかと思って心配しちゃった! 何もしてないなら大丈夫じゃない? あなた王子でしょ?」
「いえ、サルビア、そんな簡単なことじゃないですよ。王子であるアーサーがこんなところへ入れられているのだから、それなりに相手は準備をしているということです」
 おお、ガーベラの理解が早い。
 サルビアは本当に賢者か?
 まぁ、僕が原因だから文句は言えないけど。

「そうなんだよ。もう、根回しは済んでいる状態らしい。だから追い詰められているんだよ」
「うーん、それじゃあ、城ごと、破壊しちゃう? 魔法で」
 おい、本当に国家転覆罪じゃないか。
 この前の魔王戦の時といい、サルビアは城に魔法をぶち込むのが好きなのだろうか?
 
「それは、冗談として、何か無罪であることを証明する方法はないかな?」
「ちょ、冗談じゃなく、私の魔法なら……」
「アーサー、私もサルビアに賛成です。このままでは死刑となるでしょう。そこまでの準備を相手もしているということですよね? それなら、城を破壊してでも逃げることも選択肢に入れるべきではないですか?」
 ガーベラ賢いな。
 僕はもう半分くらいはあきらめていたのに。

「城を破壊して逃げたとしてどうやって生活していきますか?」
 アイリスが質問を投げかけた。
 こんな会話にアイリスが入ってくるのは珍しい。
 初めてかもしれない。

「そうね。逃亡生活だもんね。よその国へ行くことも考える必要があるだろうね」
 サルビアが珍しくまともな意見を言った。
 確かに逃亡生活だ。
 外国へ逃亡したとしても、堂々と生活することは難しいかもしれない。
 
「そうですね。私とアーサーは最初の頃、冒険者になることを目標に頑張っていました。それを外国で続けるのもいいかもしれませんね」
 そうだった、ガーベラとは訓練のためにダンジョンに潜っていた。
 そして、武勲をあげて近衛騎士団に入団することを目標としていた。
 当時、僕はかなりゲスい理由でガーベラに婚約を申し込んだものだ。

「わかりました。私は『盾』スキルしか戦闘には使えませんが、皆さんをお守りします」
 ああ、アイリスとは何度かダンジョンへも行ったな。
 そのたびにかっこ悪いところを見せたものだ。
 それに、彼女にはエッチなこともしたので、恥ずかしい思いもさせているのに、それでも僕の婚約者としてついてきてくれている。

「みんな、すまない。僕が情けないがために。こんなことになってしまって本当に反省しているんだ」

 ・・・・・・

 音がしない。
 誰も動かない。
 キョロキョロしても、牢番の兵士も動かない。

「こんにちは。私はこのような形で出会うことになってしまい、非常にショックです。でも、このままでは、私の望まない結果になりそうなので、少しだけ干渉します。でも、あなたとは違った形で出会いたいので、姿は現しません。『強化催眠術』あなたはスキルが使えるようになります」

 女性の声だった。
 声が止まると、周囲は動き出した。
 まるで止まっていた時計のネジを回したように。

 なんだったんだ?
 三人はさっきの続きで外国での逃亡生活について語っている。
 さっきの不思議現象は謎のままだが、一つ気になるワードがあった。
『強化催眠術』……?
 強化された催眠術?
 宰相の『催眠術』を上書きしているのだろうか?
 それが事実なら『ピュア』をはじめとしたスキルが使えるようになっているはず。
 試してみよう。

『ピュア』「ガーベラ、スカートをめくってパンツを見せて」
「ちょ、な、なにを言っているんですか?」
 と、言いながらもガーベラの手はスカートをゆっくりめくる。
 少しずつ上げていき、もうすぐ、見えそうだ。
『ピュア』「ガーベラ、もういいよ」
「ふぅ。見えなくてよかったぁ……じゃ、ありません! なんですか? 今のは?」
「理由はよくわからないけど、スキルが復活したんだよ」
「と、言うことはいつも通り、みなさんには内緒の実験ですか?」

 バッ!

「アーサー? 今のアイリスの言葉は本当かしら?」
 ガーベラの目がすわっている。
「ん? どういうこと?」
 賢者はやはりバカだった。

「ん? なんのことかな? アイリスは何かと勘違いしているんじゃないかな?」
「いつもの実験ではなかったのですね? それでは、今のはみなさんにお話ししてもよろしいということですか?」
 おっと、思わぬカウンター。
 やるな、アイリス。

「ごめんなさい。もう、全部説明します。許してください」
 こうして、未来の妻たちに『ピュア』と『催眠術』についてすべて握られてしまうことを引き換えに、宰相への対抗策を得た僕であった。
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