48 / 63
第48話 内省
しおりを挟む
最近、心身ともに変化が起こっている。
『ピュア』を使うことで少しずつ変化がある。
純真な気持ちで物事に取り組むことができるようになってきている。
根本的なところではクズなんだが、土壇場で「やればできる子」となっている。
思えば魔王を倒したあたりからおかしいとは思っていた。
この僕が魔王を倒そうと思うのだから。
でも、クズはクズなのだ。
簡単な方へ、いつでも流されるし、気持ちいいことは好きだ。
今も流されている。
ショコラに誘惑されるがままに致している。
されるがままにされている。
僕の上で大暴れのショコラを眺めながら、反省をしている。
ああ、やっぱり、反省してる分ピュアだな。
僕が果てた後、ショコラは満足したようにおなかをさすっている。
僕は気持ちを声にしてみる。
「もう、ショコラとはしない」
「え? じゃあ、これがラストチャンスだったのですか?」
「そうなるね」
「それじゃあ、あと一回だけ続きでお願いします」
そんなに僕の子が産みたいのか?
それで幸せになれるのかな?
と、言いながら、またしてる。
反省はしているが、反映はされていない。
それがクズな僕。
ああ、クズな自分がイヤなんだな。
だから、大山健一君に嫉妬して「持ってる人」に憧れてるんだ。
僕は「持つ側」に立ちたいんだ。
そのためには、流されてはいけないんだ。
自分の考えを持つ必要があるんだ。
再度、果てた僕を絞りだそうとショコラが頑張っている。
急に醜いものに見えてきた。
僕が欲しいんじゃなくて「王子の子種が欲しい女」に嫌気がさした。
僕はすぐに服を着て飛び出した。
しばらくはショコラに会うのを控えよう。
そうだな。
王城に住ませて、仕事だけをさせよう。
『鑑定』を使って精神支配系の能力者を特定することは行き詰まっていた。
容疑者の人数が多いうえに、ショコラの身分では会えない人物が多すぎた。
主に、役職級は『鑑定』できていない。
一番怪しいのに。
ショコラが城で勤務して三日がたったとき、城から使者が来て、手紙を渡していった。
手紙は宰相からで、一言だけだった。
「ショコラは死体として発見された」
僕は急いで城へ行った。
事情を聞くと、昼間に発見されたそうだ。
僕が城に住むように言って三日後に。
僕は責任を感じた。
彼女が死んだ原因の一部が自分にある気がした。
そう、こんな責任を感じるのもピュアだからだ。
こんなにしんどいならピュアじゃなくていいと考えた。
でも、みんなはこんなしんどい思いを乗り越えて真面目に生きているんだ。
それを僕は放棄してきた。
責任感なんて生まれた時から抱いたことはない。
初めての感情に翻弄され、奔走し、容疑者をさがした。
僕の一日二回しか使えない『鑑定』と十七回使える『ピュア』を駆使して。
万が一を考えて護衛にガーベラを付けた。
何日もかかった。
ショコラの捜査ノートを熟読し、続きの捜査を行った。
「アーサー、もうショコラが亡くなって十日がたちましたが、これはいつまで続けますか? 私も騎士団の仕事があるので長くは空けられないのですが……」
「見つかるまでやるさ」
「そうですか、護衛は他の誰かに交代してもらってもいいですか?」
「そうだな。少しムキになっていたようだよ。何日も引き留めてごめん」
「いいえ、私も同じように辛いです。犯人を見つけたときには必ず切り伏せますので、教えてください」
「ああ、ありがとう。護衛はアイリスに頼むよ」
「わかりました。アイリスは攻撃手段を持っていませんので、アーサーは自分の身は自分で守ってくださいね」
操作に一行に進展がない状況にガーベラも焦りを感じたらしい。
たしかに、僕のようにフラフラしてる貴族とは違い、ガーベラは騎士団の千人長だ。
どこかで区切りを付けなければ、仕事に支障をきたす。
それに、捜査の進め方もどこか自暴自棄になっていた。
責任を感じすぎて、ヤケクソなやり方だった。
もっと効率よく立ち回らなければならない。
ガーベラは騎士団の詰め所へ行ったが、僕は捜査を続ける。
アイリスはいないが、気にしない。
万が一に備えて剣は用意しているし、今日はまだ『ピュア』がすべて残っている。
『鑑定』はその辺の兵士に使ってしまったが、何かあっても対応できるだろう。
僕はガーベラがいなくなったことで少し冷静になれた。
よく考えると、兵士より、上位階級の人間から操作を進めた方がいいように感じた。
とりあえずは王だ。
お父様に聞いてみてヒントをもらおう。
もちろん秘密にできないように、スキルは使う。
『ピュア』「お父様、先日のショコラの殺人事件の犯人について何かご存知ですか?」
「その件か、捜査は宰相を中心に行っているから、そちらに確認してみるといい」
「はい。わかりました。ありがとうございます」
そうか、宰相か。
城内の事とはいえ、宰相が担当するのはおかしい気もするが?
近衛騎士でいいんじゃないのか?
まあ、いい、聞きに行こう。
宰相の私室前でばったり出会った。
『ピュア』「こんにちは、この前のショコラ殺人事件について知っていることを教えてくれませんか?」
「ええ、犯人は私です。少々ジャマになってきたもので……はっ! 違います。失言です」
ああ、そういうことか。
ショコラはがんばっていたんだ。
コツコツ頑張って、宰相にまで近づこうとしていたんだ。
それを疎んだ宰相はショコラを殺したんだ。
『ピュア』「お父様に自首してきてください」
「いや、私は犯人ではありませんよ」
宰相の太ももにナイフが突き刺さっている。
痛みで冷静さを保ったのか。
こんな方法で『ピュア』を回避できるのか。
「驚いたでしょう? 私も『ピュア』に負けない『催眠術』スキルを持っているのですよ」
「なんだって?」
「『催眠術』ですよ。私の言ったことはなんでも信じてしまう催眠術です。あなたを殺すと大事になるので、『催眠術』を使って口封じをしましょう。あの奴隷の女は何度もしつこかったので殺しましたが、あなたは王子、そうはいきません」
僕は怒った。
久しぶりの感情だ。
コイツを追い詰めることを決めた。
『ピュア』を使うことで少しずつ変化がある。
純真な気持ちで物事に取り組むことができるようになってきている。
根本的なところではクズなんだが、土壇場で「やればできる子」となっている。
思えば魔王を倒したあたりからおかしいとは思っていた。
この僕が魔王を倒そうと思うのだから。
でも、クズはクズなのだ。
簡単な方へ、いつでも流されるし、気持ちいいことは好きだ。
今も流されている。
ショコラに誘惑されるがままに致している。
されるがままにされている。
僕の上で大暴れのショコラを眺めながら、反省をしている。
ああ、やっぱり、反省してる分ピュアだな。
僕が果てた後、ショコラは満足したようにおなかをさすっている。
僕は気持ちを声にしてみる。
「もう、ショコラとはしない」
「え? じゃあ、これがラストチャンスだったのですか?」
「そうなるね」
「それじゃあ、あと一回だけ続きでお願いします」
そんなに僕の子が産みたいのか?
それで幸せになれるのかな?
と、言いながら、またしてる。
反省はしているが、反映はされていない。
それがクズな僕。
ああ、クズな自分がイヤなんだな。
だから、大山健一君に嫉妬して「持ってる人」に憧れてるんだ。
僕は「持つ側」に立ちたいんだ。
そのためには、流されてはいけないんだ。
自分の考えを持つ必要があるんだ。
再度、果てた僕を絞りだそうとショコラが頑張っている。
急に醜いものに見えてきた。
僕が欲しいんじゃなくて「王子の子種が欲しい女」に嫌気がさした。
僕はすぐに服を着て飛び出した。
しばらくはショコラに会うのを控えよう。
そうだな。
王城に住ませて、仕事だけをさせよう。
『鑑定』を使って精神支配系の能力者を特定することは行き詰まっていた。
容疑者の人数が多いうえに、ショコラの身分では会えない人物が多すぎた。
主に、役職級は『鑑定』できていない。
一番怪しいのに。
ショコラが城で勤務して三日がたったとき、城から使者が来て、手紙を渡していった。
手紙は宰相からで、一言だけだった。
「ショコラは死体として発見された」
僕は急いで城へ行った。
事情を聞くと、昼間に発見されたそうだ。
僕が城に住むように言って三日後に。
僕は責任を感じた。
彼女が死んだ原因の一部が自分にある気がした。
そう、こんな責任を感じるのもピュアだからだ。
こんなにしんどいならピュアじゃなくていいと考えた。
でも、みんなはこんなしんどい思いを乗り越えて真面目に生きているんだ。
それを僕は放棄してきた。
責任感なんて生まれた時から抱いたことはない。
初めての感情に翻弄され、奔走し、容疑者をさがした。
僕の一日二回しか使えない『鑑定』と十七回使える『ピュア』を駆使して。
万が一を考えて護衛にガーベラを付けた。
何日もかかった。
ショコラの捜査ノートを熟読し、続きの捜査を行った。
「アーサー、もうショコラが亡くなって十日がたちましたが、これはいつまで続けますか? 私も騎士団の仕事があるので長くは空けられないのですが……」
「見つかるまでやるさ」
「そうですか、護衛は他の誰かに交代してもらってもいいですか?」
「そうだな。少しムキになっていたようだよ。何日も引き留めてごめん」
「いいえ、私も同じように辛いです。犯人を見つけたときには必ず切り伏せますので、教えてください」
「ああ、ありがとう。護衛はアイリスに頼むよ」
「わかりました。アイリスは攻撃手段を持っていませんので、アーサーは自分の身は自分で守ってくださいね」
操作に一行に進展がない状況にガーベラも焦りを感じたらしい。
たしかに、僕のようにフラフラしてる貴族とは違い、ガーベラは騎士団の千人長だ。
どこかで区切りを付けなければ、仕事に支障をきたす。
それに、捜査の進め方もどこか自暴自棄になっていた。
責任を感じすぎて、ヤケクソなやり方だった。
もっと効率よく立ち回らなければならない。
ガーベラは騎士団の詰め所へ行ったが、僕は捜査を続ける。
アイリスはいないが、気にしない。
万が一に備えて剣は用意しているし、今日はまだ『ピュア』がすべて残っている。
『鑑定』はその辺の兵士に使ってしまったが、何かあっても対応できるだろう。
僕はガーベラがいなくなったことで少し冷静になれた。
よく考えると、兵士より、上位階級の人間から操作を進めた方がいいように感じた。
とりあえずは王だ。
お父様に聞いてみてヒントをもらおう。
もちろん秘密にできないように、スキルは使う。
『ピュア』「お父様、先日のショコラの殺人事件の犯人について何かご存知ですか?」
「その件か、捜査は宰相を中心に行っているから、そちらに確認してみるといい」
「はい。わかりました。ありがとうございます」
そうか、宰相か。
城内の事とはいえ、宰相が担当するのはおかしい気もするが?
近衛騎士でいいんじゃないのか?
まあ、いい、聞きに行こう。
宰相の私室前でばったり出会った。
『ピュア』「こんにちは、この前のショコラ殺人事件について知っていることを教えてくれませんか?」
「ええ、犯人は私です。少々ジャマになってきたもので……はっ! 違います。失言です」
ああ、そういうことか。
ショコラはがんばっていたんだ。
コツコツ頑張って、宰相にまで近づこうとしていたんだ。
それを疎んだ宰相はショコラを殺したんだ。
『ピュア』「お父様に自首してきてください」
「いや、私は犯人ではありませんよ」
宰相の太ももにナイフが突き刺さっている。
痛みで冷静さを保ったのか。
こんな方法で『ピュア』を回避できるのか。
「驚いたでしょう? 私も『ピュア』に負けない『催眠術』スキルを持っているのですよ」
「なんだって?」
「『催眠術』ですよ。私の言ったことはなんでも信じてしまう催眠術です。あなたを殺すと大事になるので、『催眠術』を使って口封じをしましょう。あの奴隷の女は何度もしつこかったので殺しましたが、あなたは王子、そうはいきません」
僕は怒った。
久しぶりの感情だ。
コイツを追い詰めることを決めた。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
元体操のお兄さんとキャンプ場で過ごし、筋肉と優しさに包まれた日――。
立坂雪花
恋愛
夏休み、小日向美和(35歳)は
小学一年生の娘、碧に
キャンプに連れて行ってほしいと
お願いされる。
キャンプなんて、したことないし……
と思いながらもネットで安心快適な
キャンプ場を調べ、必要なものをチェックしながら娘のために準備をし、出発する。
だが、当日簡単に立てられると思っていた
テントに四苦八苦していた。
そんな時に現れたのが、
元子育て番組の体操のお兄さんであり
全国のキャンプ場を巡り、
筋トレしている動画を撮るのが趣味の
加賀谷大地さん(32)で――。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)
@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」
このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。
「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。
男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。
「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。
青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。
ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。
「カクヨム」さんが先行投稿になります。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる