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第45話 ストライク領
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パーティの翌日僕はストライク領へ行くことになった。
屋敷のことはバリスお義父さんにお願いして、アイリスと二人で出発することになった。
ガーベラとサルビアは魔王復活の時の戦力として王城に残しておかないといけないらしい。
二人は国家戦力だから自由には動けないとのことだ。
着替えなどは現地でも手に入るだろうから、最小限の荷物と馬車だけでの移動となった。
移動も昼間の移動だけでたどり着くくらい近いところらしい。
僕は地理も頭に入っていないので、領地がどこにあるのかも知らない。
アイリスはそれなりの教育は受けてきたらしく、常識の範囲の地理はわかっていた。
アイリスに連れていってもらうだけなので、簡単なお仕事だ。
道も一本だけらしく、迷いようもないとのことだ。
一時間ほど馬車に揺られる。
ガタゴト鳴るごとにおしりに振動がくる。
ずっと座っているとかなり痛い。
『ピュア』「僕はおしりの痛みを感じない」
おお、これは効くらしい。
我慢できることは大丈夫なのかな?
昼間に王都の領地とストライク領の境目で一度休憩をはさんだ。
馬車を路肩にとめ、家から持ってきたサンドイッチを食べる。
「ねえ、このサンドイッチはアイリスが作ったの?」
「そうですよ。お口にあいましたか?」
「うん。おいしいよ。ありがとう。アイリスって僕と結婚する気あるんだよね?」
「ええ、もちろんです」
「それなら、もっと妻っぽく振る舞ったらいいんじゃないの?」
「メイドの仕事も好きなんです。ダメですか?」
「ダメではないけど、妻としてもがんばってね」
「承知しました」
「もう、口調が堅いよ」
「そう……ですか?」
「うん。サルビアはやりすぎだと思うけど、ガーベラぐらいでもいいんじゃないの?」
「そうでしょうか? 私はアーサー様と話すときはこれくらいが話しやすいのですが」
「ああー。もう、『様』は抜きね」
「アーサー……。恥ずかしいですね」
この距離感はすごく好きだ。
アイリスの一番好きなところかもしれない。
かわいい。
「今は婚約状態だから、結婚したときまでに直してくれたらいいよ」
「かしこまりました」
あんまりわかってなさそうだけど、いいか。
そんな距離感もあるよね。
アイリスが一番気安く話せるかもしれない。
「見せつけてくれるじゃねーか。見たところ、貴族のようだな。金目の物を置いていきな」
げ、盗賊だ。
筋肉がもりもりの無精ひげの軍団に取り囲まれた。
アイリスは盾を素早く装備した。
僕は剣を装備したが、人は切ったことがない。
これまでも誰かが切ってくれていた。
盗賊は出ないって話だったのに……。
「おうおう、この人数相手に戦う気か? 勇気があるのはカッコいいが、死んでしまっては意味ないぜ~?」
周囲を見回すと20人くらいはいた。
それなら、いけるか。
『ピュア』「僕を守って、戦え!」
近くにいた十人に使った。
これで、日付が変わるまで、この十人は僕の護衛だ。
『催眠術』でのテイムが1日限定だったので、今もそのはず。
「アイリス、ありがとう、もう大丈夫だよ」
「はい。こちらこそありがとうございました」
その後は何事もなく、無事ストライク領の都市へ到着した。
都市の名前は、鉱山都市ストレート。
内陸の都市であるため、近くの川かわ用水路をいたるところに引いている。
特産物は鉱物であったが、鉱山が枯れてからは特にない。
今の季節は夏なので、たくさんの夏野菜が取れているようだ。
これだけ野菜があれば特産物の一つぐらいあってもいいのに。
なんて考えているとすぐにストライク家の屋敷についた。
さすが侯爵の屋敷といった感じだ。
広大な庭に、玄関前の馬車のロータリー。
広い駐車場。
どでかい屋敷。
屋敷に着くと、すぐに執事が現れ、案内してくれた。
先代剣聖の趣味が影響しているのか、内装は我が家の内装と似ていた。
アンティークな机や椅子、骨董めいた壺や食器。
案内された先には、重厚な扉があり、執事が大きな声で呼びかけた。
「旦那様。アーサー様をお連れしました」
「わかった。お通ししろ」
「はい」
扉の先には20歳ほどの青年がいた。
がっしりした体格に、ほどよくぴったりしたシャツに細いネクタイ。
髪は短く切りそろえられ、精悍な顔つきをしている。
生真面目そうな印象を受けた。
「よくぞいらしてくれた、アーサー様。領主を務めています、スパイク・ストライクです。お待ちしていました。この度は妹とのご婚約おめでとうございます」
うん。真面目だな。
「はじめまして、アーサー・ド・サリュームです。この度は留学という形で領地経営について学びにきました」
「いえいえ、ご謙遜なさらないでください。あの、じゃじゃ馬娘のハートを射止めるお方だ。領地の収益回復のためにお越しくださったのでしょう?」
「いえ、ほんとにそんな難しいことは僕にはできません。学ばせてください」
「いやいや、あの頑固なお父様を口説き落とした手腕を発揮してくださいよ?」
めんどくせーな。
『ピュア』「いや、本当に留学としてきたので、領地経営について教えてください」
「かしこまりました」
初めっからそう言ってりゃいいのによ。
メンドクセー。
そこからは、盗賊の引き渡しに始まり、領地の見学と、経営についてのレクチャーを受けた。
そして、今は剣の鍛錬をしている。
なぜかって? スパイクの趣味なんだとよ。
見学とレクチャーの話がクドイから終わらせるために『ピュア』は使い切ってしまった。
そして、そこへ「剣筋を見れば人となりも分かろうものでしょう? 軽いトレーニングをしませんか?」と来たものだ。
すると、スキルの副作用が勝手に口を動かし「ぜひともやってみましょう」となったんだよ……。
これが終わったら真面目にやります。
屋敷のことはバリスお義父さんにお願いして、アイリスと二人で出発することになった。
ガーベラとサルビアは魔王復活の時の戦力として王城に残しておかないといけないらしい。
二人は国家戦力だから自由には動けないとのことだ。
着替えなどは現地でも手に入るだろうから、最小限の荷物と馬車だけでの移動となった。
移動も昼間の移動だけでたどり着くくらい近いところらしい。
僕は地理も頭に入っていないので、領地がどこにあるのかも知らない。
アイリスはそれなりの教育は受けてきたらしく、常識の範囲の地理はわかっていた。
アイリスに連れていってもらうだけなので、簡単なお仕事だ。
道も一本だけらしく、迷いようもないとのことだ。
一時間ほど馬車に揺られる。
ガタゴト鳴るごとにおしりに振動がくる。
ずっと座っているとかなり痛い。
『ピュア』「僕はおしりの痛みを感じない」
おお、これは効くらしい。
我慢できることは大丈夫なのかな?
昼間に王都の領地とストライク領の境目で一度休憩をはさんだ。
馬車を路肩にとめ、家から持ってきたサンドイッチを食べる。
「ねえ、このサンドイッチはアイリスが作ったの?」
「そうですよ。お口にあいましたか?」
「うん。おいしいよ。ありがとう。アイリスって僕と結婚する気あるんだよね?」
「ええ、もちろんです」
「それなら、もっと妻っぽく振る舞ったらいいんじゃないの?」
「メイドの仕事も好きなんです。ダメですか?」
「ダメではないけど、妻としてもがんばってね」
「承知しました」
「もう、口調が堅いよ」
「そう……ですか?」
「うん。サルビアはやりすぎだと思うけど、ガーベラぐらいでもいいんじゃないの?」
「そうでしょうか? 私はアーサー様と話すときはこれくらいが話しやすいのですが」
「ああー。もう、『様』は抜きね」
「アーサー……。恥ずかしいですね」
この距離感はすごく好きだ。
アイリスの一番好きなところかもしれない。
かわいい。
「今は婚約状態だから、結婚したときまでに直してくれたらいいよ」
「かしこまりました」
あんまりわかってなさそうだけど、いいか。
そんな距離感もあるよね。
アイリスが一番気安く話せるかもしれない。
「見せつけてくれるじゃねーか。見たところ、貴族のようだな。金目の物を置いていきな」
げ、盗賊だ。
筋肉がもりもりの無精ひげの軍団に取り囲まれた。
アイリスは盾を素早く装備した。
僕は剣を装備したが、人は切ったことがない。
これまでも誰かが切ってくれていた。
盗賊は出ないって話だったのに……。
「おうおう、この人数相手に戦う気か? 勇気があるのはカッコいいが、死んでしまっては意味ないぜ~?」
周囲を見回すと20人くらいはいた。
それなら、いけるか。
『ピュア』「僕を守って、戦え!」
近くにいた十人に使った。
これで、日付が変わるまで、この十人は僕の護衛だ。
『催眠術』でのテイムが1日限定だったので、今もそのはず。
「アイリス、ありがとう、もう大丈夫だよ」
「はい。こちらこそありがとうございました」
その後は何事もなく、無事ストライク領の都市へ到着した。
都市の名前は、鉱山都市ストレート。
内陸の都市であるため、近くの川かわ用水路をいたるところに引いている。
特産物は鉱物であったが、鉱山が枯れてからは特にない。
今の季節は夏なので、たくさんの夏野菜が取れているようだ。
これだけ野菜があれば特産物の一つぐらいあってもいいのに。
なんて考えているとすぐにストライク家の屋敷についた。
さすが侯爵の屋敷といった感じだ。
広大な庭に、玄関前の馬車のロータリー。
広い駐車場。
どでかい屋敷。
屋敷に着くと、すぐに執事が現れ、案内してくれた。
先代剣聖の趣味が影響しているのか、内装は我が家の内装と似ていた。
アンティークな机や椅子、骨董めいた壺や食器。
案内された先には、重厚な扉があり、執事が大きな声で呼びかけた。
「旦那様。アーサー様をお連れしました」
「わかった。お通ししろ」
「はい」
扉の先には20歳ほどの青年がいた。
がっしりした体格に、ほどよくぴったりしたシャツに細いネクタイ。
髪は短く切りそろえられ、精悍な顔つきをしている。
生真面目そうな印象を受けた。
「よくぞいらしてくれた、アーサー様。領主を務めています、スパイク・ストライクです。お待ちしていました。この度は妹とのご婚約おめでとうございます」
うん。真面目だな。
「はじめまして、アーサー・ド・サリュームです。この度は留学という形で領地経営について学びにきました」
「いえいえ、ご謙遜なさらないでください。あの、じゃじゃ馬娘のハートを射止めるお方だ。領地の収益回復のためにお越しくださったのでしょう?」
「いえ、ほんとにそんな難しいことは僕にはできません。学ばせてください」
「いやいや、あの頑固なお父様を口説き落とした手腕を発揮してくださいよ?」
めんどくせーな。
『ピュア』「いや、本当に留学としてきたので、領地経営について教えてください」
「かしこまりました」
初めっからそう言ってりゃいいのによ。
メンドクセー。
そこからは、盗賊の引き渡しに始まり、領地の見学と、経営についてのレクチャーを受けた。
そして、今は剣の鍛錬をしている。
なぜかって? スパイクの趣味なんだとよ。
見学とレクチャーの話がクドイから終わらせるために『ピュア』は使い切ってしまった。
そして、そこへ「剣筋を見れば人となりも分かろうものでしょう? 軽いトレーニングをしませんか?」と来たものだ。
すると、スキルの副作用が勝手に口を動かし「ぜひともやってみましょう」となったんだよ……。
これが終わったら真面目にやります。
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