44 / 63
第44話 諸侯会議
しおりを挟む
僕は諸侯会議に招集されていたので、貴族用の豪華な服装で王城に来ていた。
諸侯会議とは王都内に屋敷を持つ全ての貴族を招集する会議のことである。
もちろん、そこで会うことになるバルーン子爵家へは、昼のウチに挨拶へ行き、頭を下げてきた。
メイドとして連れて来たときは苦情があったが、結婚となれば、話は別らしく、終始にこやかに応対してくれた。
三人同時に式を挙げるという提案には苦い顔をされたが「結婚するなら仕方ない」と最後は言ってくれた。
夜の城内は昨日ぶりだが、今夜はパーティだ。
それも、王都の貴族を全員呼んでのパーティだ。
それに、ただのパーティではなく、諸侯会議を兼ねている。
パートナーにはサルビアを連れて来た。
ガーベラはパーティが嫌いだからだ。
アイリスも今はメイドの身分であることから辞退していた。
貴族と言っても公爵の顔がわからないくらい、僕は王子なのに誰も知らない。
ストライク家とバルーン家、ラムダン家くらいしか話したことすらない。
しかし、今の僕は『ピュア』の副作用が残っている。
心にもない言動をしてしまう。
自分が怖い。
今日も午前中に、ストライク家の領地経営を立て直す約束をしてしまった。
少し周囲を見てみると、きらびやかなシャンデリアに魔石灯がともされている。
魔石は貴重なので、ただの明かりに使うのは避けられているが、今日は違うようだ。
気合の入り方がちがう。
王城の三階に用意されたパーティ会場は華やかなドレスときらびやかなシャンデリアでいつもの無骨な雰囲気は消されていた。
一人ひとり顔を見ていくと、中にサイトの顔があった。
思わぬ人物を発見して喜んで近づいていく。
すると横にはフランソワの姿もあった。
そうか、フランソワは正式に婚約者として認められているから出席できるのか。
あれ? それなら、アイリスも来れたような?
「サイト様、お疲れではありませんか?」
「フゥー!元気だZEー!アゲてけー!」
「ちょっと、空気を読んだ方がいいかと……」
「あ、すいません。静かにします」
僕も慣れてきたな。
「今日は、勇者として呼ばれたのですか?」
「ええ、そうです。どうやら誰かの報告のせいで僕が討伐したことになっているようです。あれはアーサー様の手柄なのに……」
「いえいえ、気にしないでください。手柄は必要なかったので、サイト様の手柄になるように報告したのは僕です。ご安心ください」
僕は子爵がいいのだ。
出世に興味はない。
領地経営をメインでするなんてめんどくさい。
「国王陛下のおなーりー」
ざわざわしていた周囲が静まり返る。
お父様は入城されると、会場の中央にある演台の前に立った。
どうやら何かスピーチがあるらしい。
「貴族諸君。よくぞ我がパーティへ参られた。本日はただのパーティだけではなく、諸侯会議としての機能も持っている。飲みすぎには十分注意されたい。なあ、ストライク侯爵」
ライオネラを見ると顔が真っ赤だった。
クスクスと笑われてさらに顔が赤くなる。
「冗談はこれくらいにして、本題へ移ろう。皆も知っての通り、昨晩魔王が現れた。魔王とは、魔界から召喚することでこの世界へ現れることで知られている。しかし、アウグスト公爵が召喚してしまった」
魔王の召喚は知っていても犯人がアウグスト公爵とは知らなかった貴族がザワザワしている。
それに対して、一部の現場を見たものが説明することで情報の補完がされていく。
魔王との戦いを兵士から報告を受けた貴族もいるようで、なかなか詳細まで知っている者もいるようだ。
「その魔王は勇者サイトが倒した。しかし、魔王因子はすでに召喚されてしまっている。以前の大公の時とは違い、完全に召喚されてしまった。その因子をもとに近々魔王が完全復活することは間違いない」
僕も昼間に教えてもらったことだが、どうやら、魔王因子というものを一度召喚してしまうと、依り代を変えて何度も復活するらしい。
それに、魔族の因子も大量に召喚されているので、それも同時に復活するらしい。
バラバラに復活するなら問題ないが、ダンジョンの中で魔物を依り代にして大量に復活することが一番恐ろしいとのことだ。
「魔王因子はどこで復活するかは予想がつかない。今こそ貴族が一つになり、魔王を倒す時である。昨日のアウグスト公爵もそうだが、くだらない派閥争いをする時ではなくなった。ここで、宣言する。王国が一つとなり、軍備を拡大し、魔王を討伐することを!」
「「「おおーーーー!!」」」
一致団結したのだろうか?
派閥争いが減ってくれればいいのだけれど。
「派閥で争うことは利益を考えると自然であることもしかり、しかし、第六王子アーサーの婚約相手を見てほしい。ストライク侯爵派閥の剣聖ガーベラ、アウグスト公爵派閥の旗頭である賢者サルビア、そして、本日報告を受けたのが、宰相派閥の伝統あるバルーン子爵の娘アイリスと婚約したようだ」
周囲がドヨドヨしだす。
そら、三人も婚約者がいたらそうなるよね。
しかも全ての派閥にツバ付けてるし……。
なんかすいません。
「はい。僕が王国を一つにまとめます!」(次の話題に変えてください)
ああ、やらかしてしまった。
副作用のせいだ。
こんなこと言えば、お兄様方から疎まれるじゃないか……。
怖くて顔を挙げられない。
お兄様の顔を見られない。
「「「おおおおーーーー!!」」」
会場内が沸く。
そりゃ、そうなるよね。
沸くと同時に敵も作ってるんだよね。
もうイヤだ。
屋敷に引きこもりたい。
「このように頼りになる王子だ。これからも魔王討伐をはじめ、国家運営にも携わってもらいたいと考えている」
え?
なんかすごいこと言わなかった?
「差しあたっては、ストライク家の領地経営の回復をするために明日から留学へ行くと聞いている。成功させて戻ってきた時には相応のポジションを約束しよう」
いらないです。
僕はずっと子爵でよかったんです。
ストライク侯爵の金魚のフンをするのが夢だったんです。
「さあ、今宵は、魔王討伐のパーティだ。皆で楽しんでくれ」
こうして、僕の領地改革のハードルは上げまくられるのだった。
明日から出発とかも聞いてないし……。
でも、ストライク領に寄生するためには、回復してもらうしかないしな。
できることを頑張ろう。
諸侯会議とは王都内に屋敷を持つ全ての貴族を招集する会議のことである。
もちろん、そこで会うことになるバルーン子爵家へは、昼のウチに挨拶へ行き、頭を下げてきた。
メイドとして連れて来たときは苦情があったが、結婚となれば、話は別らしく、終始にこやかに応対してくれた。
三人同時に式を挙げるという提案には苦い顔をされたが「結婚するなら仕方ない」と最後は言ってくれた。
夜の城内は昨日ぶりだが、今夜はパーティだ。
それも、王都の貴族を全員呼んでのパーティだ。
それに、ただのパーティではなく、諸侯会議を兼ねている。
パートナーにはサルビアを連れて来た。
ガーベラはパーティが嫌いだからだ。
アイリスも今はメイドの身分であることから辞退していた。
貴族と言っても公爵の顔がわからないくらい、僕は王子なのに誰も知らない。
ストライク家とバルーン家、ラムダン家くらいしか話したことすらない。
しかし、今の僕は『ピュア』の副作用が残っている。
心にもない言動をしてしまう。
自分が怖い。
今日も午前中に、ストライク家の領地経営を立て直す約束をしてしまった。
少し周囲を見てみると、きらびやかなシャンデリアに魔石灯がともされている。
魔石は貴重なので、ただの明かりに使うのは避けられているが、今日は違うようだ。
気合の入り方がちがう。
王城の三階に用意されたパーティ会場は華やかなドレスときらびやかなシャンデリアでいつもの無骨な雰囲気は消されていた。
一人ひとり顔を見ていくと、中にサイトの顔があった。
思わぬ人物を発見して喜んで近づいていく。
すると横にはフランソワの姿もあった。
そうか、フランソワは正式に婚約者として認められているから出席できるのか。
あれ? それなら、アイリスも来れたような?
「サイト様、お疲れではありませんか?」
「フゥー!元気だZEー!アゲてけー!」
「ちょっと、空気を読んだ方がいいかと……」
「あ、すいません。静かにします」
僕も慣れてきたな。
「今日は、勇者として呼ばれたのですか?」
「ええ、そうです。どうやら誰かの報告のせいで僕が討伐したことになっているようです。あれはアーサー様の手柄なのに……」
「いえいえ、気にしないでください。手柄は必要なかったので、サイト様の手柄になるように報告したのは僕です。ご安心ください」
僕は子爵がいいのだ。
出世に興味はない。
領地経営をメインでするなんてめんどくさい。
「国王陛下のおなーりー」
ざわざわしていた周囲が静まり返る。
お父様は入城されると、会場の中央にある演台の前に立った。
どうやら何かスピーチがあるらしい。
「貴族諸君。よくぞ我がパーティへ参られた。本日はただのパーティだけではなく、諸侯会議としての機能も持っている。飲みすぎには十分注意されたい。なあ、ストライク侯爵」
ライオネラを見ると顔が真っ赤だった。
クスクスと笑われてさらに顔が赤くなる。
「冗談はこれくらいにして、本題へ移ろう。皆も知っての通り、昨晩魔王が現れた。魔王とは、魔界から召喚することでこの世界へ現れることで知られている。しかし、アウグスト公爵が召喚してしまった」
魔王の召喚は知っていても犯人がアウグスト公爵とは知らなかった貴族がザワザワしている。
それに対して、一部の現場を見たものが説明することで情報の補完がされていく。
魔王との戦いを兵士から報告を受けた貴族もいるようで、なかなか詳細まで知っている者もいるようだ。
「その魔王は勇者サイトが倒した。しかし、魔王因子はすでに召喚されてしまっている。以前の大公の時とは違い、完全に召喚されてしまった。その因子をもとに近々魔王が完全復活することは間違いない」
僕も昼間に教えてもらったことだが、どうやら、魔王因子というものを一度召喚してしまうと、依り代を変えて何度も復活するらしい。
それに、魔族の因子も大量に召喚されているので、それも同時に復活するらしい。
バラバラに復活するなら問題ないが、ダンジョンの中で魔物を依り代にして大量に復活することが一番恐ろしいとのことだ。
「魔王因子はどこで復活するかは予想がつかない。今こそ貴族が一つになり、魔王を倒す時である。昨日のアウグスト公爵もそうだが、くだらない派閥争いをする時ではなくなった。ここで、宣言する。王国が一つとなり、軍備を拡大し、魔王を討伐することを!」
「「「おおーーーー!!」」」
一致団結したのだろうか?
派閥争いが減ってくれればいいのだけれど。
「派閥で争うことは利益を考えると自然であることもしかり、しかし、第六王子アーサーの婚約相手を見てほしい。ストライク侯爵派閥の剣聖ガーベラ、アウグスト公爵派閥の旗頭である賢者サルビア、そして、本日報告を受けたのが、宰相派閥の伝統あるバルーン子爵の娘アイリスと婚約したようだ」
周囲がドヨドヨしだす。
そら、三人も婚約者がいたらそうなるよね。
しかも全ての派閥にツバ付けてるし……。
なんかすいません。
「はい。僕が王国を一つにまとめます!」(次の話題に変えてください)
ああ、やらかしてしまった。
副作用のせいだ。
こんなこと言えば、お兄様方から疎まれるじゃないか……。
怖くて顔を挙げられない。
お兄様の顔を見られない。
「「「おおおおーーーー!!」」」
会場内が沸く。
そりゃ、そうなるよね。
沸くと同時に敵も作ってるんだよね。
もうイヤだ。
屋敷に引きこもりたい。
「このように頼りになる王子だ。これからも魔王討伐をはじめ、国家運営にも携わってもらいたいと考えている」
え?
なんかすごいこと言わなかった?
「差しあたっては、ストライク家の領地経営の回復をするために明日から留学へ行くと聞いている。成功させて戻ってきた時には相応のポジションを約束しよう」
いらないです。
僕はずっと子爵でよかったんです。
ストライク侯爵の金魚のフンをするのが夢だったんです。
「さあ、今宵は、魔王討伐のパーティだ。皆で楽しんでくれ」
こうして、僕の領地改革のハードルは上げまくられるのだった。
明日から出発とかも聞いてないし……。
でも、ストライク領に寄生するためには、回復してもらうしかないしな。
できることを頑張ろう。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる