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第44話 諸侯会議

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 僕は諸侯会議に招集されていたので、貴族用の豪華な服装で王城に来ていた。
 諸侯会議とは王都内に屋敷を持つ全ての貴族を招集する会議のことである。
 もちろん、そこで会うことになるバルーン子爵家へは、昼のウチに挨拶へ行き、頭を下げてきた。
 メイドとして連れて来たときは苦情があったが、結婚となれば、話は別らしく、終始にこやかに応対してくれた。
 三人同時に式を挙げるという提案には苦い顔をされたが「結婚するなら仕方ない」と最後は言ってくれた。

 夜の城内は昨日ぶりだが、今夜はパーティだ。
 それも、王都の貴族を全員呼んでのパーティだ。
 それに、ただのパーティではなく、諸侯会議を兼ねている。
 パートナーにはサルビアを連れて来た。
 ガーベラはパーティが嫌いだからだ。
 アイリスも今はメイドの身分であることから辞退していた。

 貴族と言っても公爵の顔がわからないくらい、僕は王子なのに誰も知らない。
 ストライク家とバルーン家、ラムダン家くらいしか話したことすらない。
 しかし、今の僕は『ピュア』の副作用が残っている。
 心にもない言動をしてしまう。
 自分が怖い。
 今日も午前中に、ストライク家の領地経営を立て直す約束をしてしまった。

 少し周囲を見てみると、きらびやかなシャンデリアに魔石灯がともされている。
 魔石は貴重なので、ただの明かりに使うのは避けられているが、今日は違うようだ。
 気合の入り方がちがう。
 王城の三階に用意されたパーティ会場は華やかなドレスときらびやかなシャンデリアでいつもの無骨な雰囲気は消されていた。
 
 一人ひとり顔を見ていくと、中にサイトの顔があった。
 思わぬ人物を発見して喜んで近づいていく。
 すると横にはフランソワの姿もあった。
 そうか、フランソワは正式に婚約者として認められているから出席できるのか。
 あれ? それなら、アイリスも来れたような?
 
「サイト様、お疲れではありませんか?」
「フゥー!元気だZEー!アゲてけー!」
「ちょっと、空気を読んだ方がいいかと……」
「あ、すいません。静かにします」
 僕も慣れてきたな。

「今日は、勇者として呼ばれたのですか?」
「ええ、そうです。どうやら誰かの報告のせいで僕が討伐したことになっているようです。あれはアーサー様の手柄なのに……」
「いえいえ、気にしないでください。手柄は必要なかったので、サイト様の手柄になるように報告したのは僕です。ご安心ください」
 僕は子爵がいいのだ。
 出世に興味はない。
 領地経営をメインでするなんてめんどくさい。

「国王陛下のおなーりー」

 ざわざわしていた周囲が静まり返る。
 お父様は入城されると、会場の中央にある演台の前に立った。
 どうやら何かスピーチがあるらしい。

「貴族諸君。よくぞ我がパーティへ参られた。本日はただのパーティだけではなく、諸侯会議としての機能も持っている。飲みすぎには十分注意されたい。なあ、ストライク侯爵」
 ライオネラを見ると顔が真っ赤だった。
 クスクスと笑われてさらに顔が赤くなる。
「冗談はこれくらいにして、本題へ移ろう。皆も知っての通り、昨晩魔王が現れた。魔王とは、魔界から召喚することでこの世界へ現れることで知られている。しかし、アウグスト公爵が召喚してしまった」

 魔王の召喚は知っていても犯人がアウグスト公爵とは知らなかった貴族がザワザワしている。
 それに対して、一部の現場を見たものが説明することで情報の補完がされていく。
 魔王との戦いを兵士から報告を受けた貴族もいるようで、なかなか詳細まで知っている者もいるようだ。

「その魔王は勇者サイトが倒した。しかし、魔王因子はすでに召喚されてしまっている。以前の大公の時とは違い、完全に召喚されてしまった。その因子をもとに近々魔王が完全復活することは間違いない」

 僕も昼間に教えてもらったことだが、どうやら、魔王因子というものを一度召喚してしまうと、依り代を変えて何度も復活するらしい。
 それに、魔族の因子も大量に召喚されているので、それも同時に復活するらしい。
 バラバラに復活するなら問題ないが、ダンジョンの中で魔物を依り代にして大量に復活することが一番恐ろしいとのことだ。

「魔王因子はどこで復活するかは予想がつかない。今こそ貴族が一つになり、魔王を倒す時である。昨日のアウグスト公爵もそうだが、くだらない派閥争いをする時ではなくなった。ここで、宣言する。王国が一つとなり、軍備を拡大し、魔王を討伐することを!」

「「「おおーーーー!!」」」

 一致団結したのだろうか?
 派閥争いが減ってくれればいいのだけれど。

「派閥で争うことは利益を考えると自然であることもしかり、しかし、第六王子アーサーの婚約相手を見てほしい。ストライク侯爵派閥の剣聖ガーベラ、アウグスト公爵派閥の旗頭である賢者サルビア、そして、本日報告を受けたのが、宰相派閥の伝統あるバルーン子爵の娘アイリスと婚約したようだ」

 周囲がドヨドヨしだす。
 そら、三人も婚約者がいたらそうなるよね。
 しかも全ての派閥にツバ付けてるし……。
 なんかすいません。

「はい。僕が王国を一つにまとめます!」(次の話題に変えてください)

 ああ、やらかしてしまった。
 副作用のせいだ。
 こんなこと言えば、お兄様方から疎まれるじゃないか……。
 怖くて顔を挙げられない。
 お兄様の顔を見られない。

「「「おおおおーーーー!!」」」

 会場内が沸く。
 そりゃ、そうなるよね。
 沸くと同時に敵も作ってるんだよね。
 もうイヤだ。
 屋敷に引きこもりたい。

「このように頼りになる王子だ。これからも魔王討伐をはじめ、国家運営にも携わってもらいたいと考えている」

 え?
 なんかすごいこと言わなかった?

「差しあたっては、ストライク家の領地経営の回復をするために明日から留学へ行くと聞いている。成功させて戻ってきた時には相応のポジションを約束しよう」

 いらないです。
 僕はずっと子爵でよかったんです。
 ストライク侯爵の金魚のフンをするのが夢だったんです。

「さあ、今宵は、魔王討伐のパーティだ。皆で楽しんでくれ」

 こうして、僕の領地改革のハードルは上げまくられるのだった。
 明日から出発とかも聞いてないし……。
 でも、ストライク領に寄生するためには、回復してもらうしかないしな。
 できることを頑張ろう。
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