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第36話 フランソワの決意
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「お母様、こんにちはー。アーサーです」
門の前で声をかけるとフランソワが庭からやってきた。
「こんにちは、アーサー様。新居での生活には慣れましたか?」
「そうだね。セージ家のみなさんやショコラやアイリスがよく働いてくれているから大丈夫だよ」
「それはよかったですね。奥様でしたら、屋敷におられますので、どうぞお入りください」
「あ、あと、サイトもいる?」
「はい、私と一緒に庭の手入れをしてくださっていました」
どうやら、サイトは執事見習いみたいなこともやっているらしい。
たしかに、ガーベラと僕がいなくなればダンジョンへ行くメンバーが足りないもんな。
さみしい思いをさせてしまったかもしれないな。
「イェーイ!ヘイ、アーサー?ハウアーユー?」
相変わらず中学生英語で話しかけてくるな。
そろそろ、パリピとは少しずれてることを学んでほしいな。
「あ、どうも、はうあーゆー?」
「いえ、なんでもないです。お元気そうでなによりです」
初めから普通にしゃべれば普通の人なんだけど、このギャップが陰キャ感を強めるんだよな。
「ちょっと、サイト様にもお伝えしたいことがあるので、屋敷まで来てもらえますか?」
「オーゥケェーイ!一緒に行くYO!メーン」
やっぱ、ちょっとノリが古いんだよな。
実年齢サバ読んでるんじゃないだろうな?
あ、それなら、フランソワと年齢が近づくから朗報だな。
「あと、フランソワにも関係あるから同席してね」
「かしこまりました」
僕たちはお母様のいる二階の部屋へ集まった。
お母様の私室はいつも整理されていて、その日ごとに違った花が生けられている。
お母様はたしか30代前半の年齢であることを考えるとフランソワと同年代だ。
いつも「王妃の仕事」と称して美容には気を使っているから20代と言われても納得してしまう。
フランソワと比べると、やはり美しい。
僕たちは椅子を持ちより、お母様の部屋に集まっていた。
「アーサーが家を出たのが、もう遠い昔のように感じますが、数日前のことなんですね」
「そうですね。お元気にされていましたか?」
「ええ、元気でしたが、やはり寂しいものですね。また、お屋敷にもお邪魔しますね」
「いつでも来てください。内装もなんとかストライク侯爵の力添えがあって仕上がりました」
「そうですか。侯爵にもお礼をしておきますね。さて、今日は何か用事あって来たのでしょう?」
「ええ、実は、今夜、フランソワが暗殺されるという情報を手に入れたので、護衛に参りました」
「え? フランソワが? ということは、フランソワの秘密に気づいた者がいるということですね?」
「そういうことです。サイト様はフランソワの生い立ちについてはご存じですか?」
「聞いてるYO!」
サイトなりに空気を読んで、精一杯自粛したのだろう。
「それなら話が早いですね。僕もある筋からそれを聞いたのですが、それがどうやら今夜動き出すらしいのです」
「ある筋というのは?」
「アウグスト公爵の関係者から聞き出しました。もちろん、スキルで口止めしているので、逆手に取られる心配はありません」
「なるほど、アーサーには特別なスキルがありますものね」
「ええ、お母様がそのように生んでくださったおかげです」
お母様は機嫌がいいときの表情をしている。
「それにしても、物騒ですね。暗殺は城でも行われるようで、それと並行することで混乱を生じさせるつもりらしいです」
「城にも? そういえば、足を引きずるという病気が流行っているのでしょう? それも関係が?」
「そうです。その毒を撒いたのもアウグスト公爵です」
「なんてことを……」
「とにかく、ここは危険なので、せめて僕の屋敷に移動しませんか?」
「いえ、あなたの屋敷はここから徒歩で移動できます。あまり変わりはないでしょう。どこか遠くへ逃げた方がいいかもしれませんね」
「どこか候補はありますか?」
「いえ、私の実家は遠すぎますし、王都の屋敷は見張られているでしょう」
「都市の外壁の外は魔物がいて危険ですし、行く場所がないですね」
そんなとき、フランソワが話し出した。
「すいません。城が狙われるのは城のどなたかが暗殺されるかもしれないということですか?」
「そうみたいだね。おそらくは宰相」
「やはりそうですか。城で命を狙われるのは陛下か宰相閣下が筆頭かと思いました。それなら、私は城へ行きたいです」
「え? 城は狙われているからとても危ないよ?」
「それもでも城がいいのです。私がこうして幸せに暮らせているのも、陛下と宰相閣下のおかげです。二人をおいて逃げるなど私にはできません」
う~ん。まずいな。これは想定してなかった。
城へ行ってしまうと、お父様と宰相にこの話が聞かれる。
そうなると、自動的に戦いに巻き込まれるもんな。
しかも、ガーベラは何も知らずに巻き込まれているだろう。
ヘタしたらそこにサルビアも現れる。
困ったな。
「それもそうね。私も陛下を置いて逃げるなんてことは考えられません。城へ行きましょう」
仕方ない、行くか。
「わかりました。実は剣聖ガーベラも城にいますので、安全かと思いますが、護衛対象を集めて守る形をとりましょう」
「ええ、それでは早速向かいましょう」
門の前で声をかけるとフランソワが庭からやってきた。
「こんにちは、アーサー様。新居での生活には慣れましたか?」
「そうだね。セージ家のみなさんやショコラやアイリスがよく働いてくれているから大丈夫だよ」
「それはよかったですね。奥様でしたら、屋敷におられますので、どうぞお入りください」
「あ、あと、サイトもいる?」
「はい、私と一緒に庭の手入れをしてくださっていました」
どうやら、サイトは執事見習いみたいなこともやっているらしい。
たしかに、ガーベラと僕がいなくなればダンジョンへ行くメンバーが足りないもんな。
さみしい思いをさせてしまったかもしれないな。
「イェーイ!ヘイ、アーサー?ハウアーユー?」
相変わらず中学生英語で話しかけてくるな。
そろそろ、パリピとは少しずれてることを学んでほしいな。
「あ、どうも、はうあーゆー?」
「いえ、なんでもないです。お元気そうでなによりです」
初めから普通にしゃべれば普通の人なんだけど、このギャップが陰キャ感を強めるんだよな。
「ちょっと、サイト様にもお伝えしたいことがあるので、屋敷まで来てもらえますか?」
「オーゥケェーイ!一緒に行くYO!メーン」
やっぱ、ちょっとノリが古いんだよな。
実年齢サバ読んでるんじゃないだろうな?
あ、それなら、フランソワと年齢が近づくから朗報だな。
「あと、フランソワにも関係あるから同席してね」
「かしこまりました」
僕たちはお母様のいる二階の部屋へ集まった。
お母様の私室はいつも整理されていて、その日ごとに違った花が生けられている。
お母様はたしか30代前半の年齢であることを考えるとフランソワと同年代だ。
いつも「王妃の仕事」と称して美容には気を使っているから20代と言われても納得してしまう。
フランソワと比べると、やはり美しい。
僕たちは椅子を持ちより、お母様の部屋に集まっていた。
「アーサーが家を出たのが、もう遠い昔のように感じますが、数日前のことなんですね」
「そうですね。お元気にされていましたか?」
「ええ、元気でしたが、やはり寂しいものですね。また、お屋敷にもお邪魔しますね」
「いつでも来てください。内装もなんとかストライク侯爵の力添えがあって仕上がりました」
「そうですか。侯爵にもお礼をしておきますね。さて、今日は何か用事あって来たのでしょう?」
「ええ、実は、今夜、フランソワが暗殺されるという情報を手に入れたので、護衛に参りました」
「え? フランソワが? ということは、フランソワの秘密に気づいた者がいるということですね?」
「そういうことです。サイト様はフランソワの生い立ちについてはご存じですか?」
「聞いてるYO!」
サイトなりに空気を読んで、精一杯自粛したのだろう。
「それなら話が早いですね。僕もある筋からそれを聞いたのですが、それがどうやら今夜動き出すらしいのです」
「ある筋というのは?」
「アウグスト公爵の関係者から聞き出しました。もちろん、スキルで口止めしているので、逆手に取られる心配はありません」
「なるほど、アーサーには特別なスキルがありますものね」
「ええ、お母様がそのように生んでくださったおかげです」
お母様は機嫌がいいときの表情をしている。
「それにしても、物騒ですね。暗殺は城でも行われるようで、それと並行することで混乱を生じさせるつもりらしいです」
「城にも? そういえば、足を引きずるという病気が流行っているのでしょう? それも関係が?」
「そうです。その毒を撒いたのもアウグスト公爵です」
「なんてことを……」
「とにかく、ここは危険なので、せめて僕の屋敷に移動しませんか?」
「いえ、あなたの屋敷はここから徒歩で移動できます。あまり変わりはないでしょう。どこか遠くへ逃げた方がいいかもしれませんね」
「どこか候補はありますか?」
「いえ、私の実家は遠すぎますし、王都の屋敷は見張られているでしょう」
「都市の外壁の外は魔物がいて危険ですし、行く場所がないですね」
そんなとき、フランソワが話し出した。
「すいません。城が狙われるのは城のどなたかが暗殺されるかもしれないということですか?」
「そうみたいだね。おそらくは宰相」
「やはりそうですか。城で命を狙われるのは陛下か宰相閣下が筆頭かと思いました。それなら、私は城へ行きたいです」
「え? 城は狙われているからとても危ないよ?」
「それもでも城がいいのです。私がこうして幸せに暮らせているのも、陛下と宰相閣下のおかげです。二人をおいて逃げるなど私にはできません」
う~ん。まずいな。これは想定してなかった。
城へ行ってしまうと、お父様と宰相にこの話が聞かれる。
そうなると、自動的に戦いに巻き込まれるもんな。
しかも、ガーベラは何も知らずに巻き込まれているだろう。
ヘタしたらそこにサルビアも現れる。
困ったな。
「それもそうね。私も陛下を置いて逃げるなんてことは考えられません。城へ行きましょう」
仕方ない、行くか。
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