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第18話 心境の変化
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王城へ着いた時には、城内は騒然としていた。
おそらく、お母様が送った先触れがもたらした情報のせいだろう。
一国の軍事の長である将軍が勇者暗殺を企てたのだ。
大事件だ。
早速お父様との面会時間が設けられた。
王の執務室へ通される。
「失礼します。イザベラ様と、アーサー様をお連れしました」
「そうか。入れ」
「はっ、どうぞ」
中へ通される。
応接用のソファへ腰かけると、お父様のため息が聞こえてきた。
「どうしてこんなことになったのだ……」
気苦労がうかがえる。
「シャルム様、どうか気を強く持ってください」
お母様が気づかいの言葉を贈る。
「ああ、すまなかったな」
「将軍は容疑を認めたので、反逆罪で即刻、打ち首にした」
「そうですか。これからは、僕の『ピュア』で尋問しますので、待ってくださってもいいかと」
「そうか、アーサーのスキルも成長したのだな」
「はい」
「すまなかったな。余計なトラブルに巻き込んでしまって」
「いえ、将軍の目的は何だったんですか?」
「勇者に手柄を取られることが気に食わんかったらしい。勇者をイザベラの屋敷へ行かせようと提案したのも将軍の手回しであった。しかし、そこで、フランソワとの婚約が決まってしまい、一気に焦ったのだろう。何せフランソワは……」
「シャルム様!フランソワのことは……」
お母様が困った顔をしている。
「ああ、そうであったな。すまん」
ん?
何か隠し事か?
教えてほしいな。
僕は当事者なんだけどな。
スキル使っちゃおうかな。
いや、目撃者が多すぎるな。
後でお母様一人に使おう。
「なにはともあれ、アーサーが無事でよかった。剣聖もいることだし、安心だがな」
「あ、それもそうなんですが、サルビアは大丈夫ですか? ずっと連絡がないので気にっているのですが?」
「ああ、それも問題だな。少し大きな問題になりそうだ」
「そうなんですね。なにか僕にできることはありますか?」
「ない。首を突っ込むな。それがアーサーにできる一番の協力だ」
えー、そんな言い方しなくてもいいじゃん。
あとで探りを入れよう。
「承知しました。お父様にお任せします。さらに別件ですが、サイト様の結婚の話はどれくらい進んでいますか?」
「ああ、進めているとも。なんともめでたい話だ。もう、結婚式の日は決まった。国を挙げての式としよう。勇者が結婚したとなれば民も元気が出よう」
「ありがとうございます。新居はどちらにご用意されるのですか?」
「勇者は国賓であるため、貴族街の邸宅地に屋敷を用意しようと思っている」
「できたらウチの近所なんてどうでしょう?サイト様とはせっかく仲良くなりましたので」
「それもそうだな。宰相、そういうことだ。場所を見つけておいてくれ」
「はっ。承知しました」
宰相は深々と例をする。
「シャルム様、こんなことは私が口を出すことではないのかもしれませんが、次の将軍はもう決まっているのですか?」
「安心せよ。断罪したからといってイザベラは何も心配しなくてもいい。後任は先代剣聖に頼む予定だ」
そうか、先代剣聖なら問題あるまい。
年齢が50代であるため、実戦では遅れるが、剣聖であることは間違いない。
「そうでしたか、それでは、ガーベラさんは昇進ですか?」
お母様はガーベラのことも心配してくれる。
「そうだな。いつまでも百人長で遊ばせるのももったいない。部隊長を任せる予定だ」
「そんな、それじゃあ、遠征が増えるんですか?」
僕は心配だった。
「そうなるな。しかし、最近は魔物の動きもおとなしいので、郊外のダンジョンが中心になるだろうな」
「それなら僕も行きたいです」
あれ?
行くつもりなんてなかったのに、口が勝手に動いた。
なんでだろ?
最近ガラにもないことだらけなんだよな。
積極的にダンジョンへ行ったり。
進んで戦ったり。
暗殺犯を取り押さえたり。
どうしたんだ?
「そうか。それはうれしい一言だな。アーサーはてっきり近衛騎士を狙っているものだと思っていたが、騎士団への入団をするわけだな?」
「はい。ガーベラを守りたいです」
あれ?
なんか、その気になってしまっているな。
あ、ひょっとして、僕にもピュアな気持ちが芽生えているのか?
スキルを使ううちに僕も変わっていたのか?
たしかに僕の希望は大山健一君みたいな主人公としての人生を歩むことだ。
その夢を現実にしようとしているのか。
「そうかそうか。あのアーサーがそんなことを言うようになったか。一安心だな」
「そうですね。シャルム様。私も安心しました」
お母様はほっとした表情をしている。
子育てで悩んでいたのだろう。
グータラな息子だったからな。
「よし、今から紹介してやる。今日は先代剣聖の紹介もあるからついでにしてしまおう」
さっそく、城内の練兵場へ連れていかれた。
練兵場では激しい訓練が実践形式で行われていた。先遣隊として戦う十人組、それらを従える百人長、百人長に指示を出す千人長、それ以上の将官。
ぱっと見て統率のとれた軍隊であることが素人でもわかる。
その中に知った顔があった。
第三王子である、トリスタン・ド・サリュームだった。
年齢はたしか、18歳だ。
がっちりした体格で指示を飛ばしている。
千人長だ。
僕はこの兄が好きだ。
朴訥としていて、口下手な僕にはちょうどいい。
いっしょにいて居心地がいい兄弟だった。
この兄の下なら働いていてもイヤな思いはしないだろう。
そう思っていた。
「皆のものー!国王陛下のおなーりー!」
「はっ!」
ザッっと音を立てて、敬礼をしている。
一切の乱れがない。
「よい、なおれ」
「はっ」
またもやザッと音を立てて気をつけになる。
「今から知らせがある。よく聞け。ガレス」
呼ばれると、宰相が現れ、紹介を始めた。
「ただいまより、人事異動の命を下す。将軍は反逆の罪により処罰した。よって、ボールス・ストライクを将軍とする」
紹介されると、僕の剣のお稽古の先生でもあった師範が出てきた。
「はっ、将軍を拝命します」
「よきにはからえ」
お父様が偉そうに言っていた。
王はいいな。
完全な主人公ムーブだな。
「続いて、前将軍のラムダを断罪に追いやった第六王子アーサー・ド・サリューム様を百人長とする」
え?
いきなり管理職なの?
現場からでよかったんだけどな。
前世も含めて管理職なんてしたことないけどな。
まぁ、やってみるか。
おそらく、お母様が送った先触れがもたらした情報のせいだろう。
一国の軍事の長である将軍が勇者暗殺を企てたのだ。
大事件だ。
早速お父様との面会時間が設けられた。
王の執務室へ通される。
「失礼します。イザベラ様と、アーサー様をお連れしました」
「そうか。入れ」
「はっ、どうぞ」
中へ通される。
応接用のソファへ腰かけると、お父様のため息が聞こえてきた。
「どうしてこんなことになったのだ……」
気苦労がうかがえる。
「シャルム様、どうか気を強く持ってください」
お母様が気づかいの言葉を贈る。
「ああ、すまなかったな」
「将軍は容疑を認めたので、反逆罪で即刻、打ち首にした」
「そうですか。これからは、僕の『ピュア』で尋問しますので、待ってくださってもいいかと」
「そうか、アーサーのスキルも成長したのだな」
「はい」
「すまなかったな。余計なトラブルに巻き込んでしまって」
「いえ、将軍の目的は何だったんですか?」
「勇者に手柄を取られることが気に食わんかったらしい。勇者をイザベラの屋敷へ行かせようと提案したのも将軍の手回しであった。しかし、そこで、フランソワとの婚約が決まってしまい、一気に焦ったのだろう。何せフランソワは……」
「シャルム様!フランソワのことは……」
お母様が困った顔をしている。
「ああ、そうであったな。すまん」
ん?
何か隠し事か?
教えてほしいな。
僕は当事者なんだけどな。
スキル使っちゃおうかな。
いや、目撃者が多すぎるな。
後でお母様一人に使おう。
「なにはともあれ、アーサーが無事でよかった。剣聖もいることだし、安心だがな」
「あ、それもそうなんですが、サルビアは大丈夫ですか? ずっと連絡がないので気にっているのですが?」
「ああ、それも問題だな。少し大きな問題になりそうだ」
「そうなんですね。なにか僕にできることはありますか?」
「ない。首を突っ込むな。それがアーサーにできる一番の協力だ」
えー、そんな言い方しなくてもいいじゃん。
あとで探りを入れよう。
「承知しました。お父様にお任せします。さらに別件ですが、サイト様の結婚の話はどれくらい進んでいますか?」
「ああ、進めているとも。なんともめでたい話だ。もう、結婚式の日は決まった。国を挙げての式としよう。勇者が結婚したとなれば民も元気が出よう」
「ありがとうございます。新居はどちらにご用意されるのですか?」
「勇者は国賓であるため、貴族街の邸宅地に屋敷を用意しようと思っている」
「できたらウチの近所なんてどうでしょう?サイト様とはせっかく仲良くなりましたので」
「それもそうだな。宰相、そういうことだ。場所を見つけておいてくれ」
「はっ。承知しました」
宰相は深々と例をする。
「シャルム様、こんなことは私が口を出すことではないのかもしれませんが、次の将軍はもう決まっているのですか?」
「安心せよ。断罪したからといってイザベラは何も心配しなくてもいい。後任は先代剣聖に頼む予定だ」
そうか、先代剣聖なら問題あるまい。
年齢が50代であるため、実戦では遅れるが、剣聖であることは間違いない。
「そうでしたか、それでは、ガーベラさんは昇進ですか?」
お母様はガーベラのことも心配してくれる。
「そうだな。いつまでも百人長で遊ばせるのももったいない。部隊長を任せる予定だ」
「そんな、それじゃあ、遠征が増えるんですか?」
僕は心配だった。
「そうなるな。しかし、最近は魔物の動きもおとなしいので、郊外のダンジョンが中心になるだろうな」
「それなら僕も行きたいです」
あれ?
行くつもりなんてなかったのに、口が勝手に動いた。
なんでだろ?
最近ガラにもないことだらけなんだよな。
積極的にダンジョンへ行ったり。
進んで戦ったり。
暗殺犯を取り押さえたり。
どうしたんだ?
「そうか。それはうれしい一言だな。アーサーはてっきり近衛騎士を狙っているものだと思っていたが、騎士団への入団をするわけだな?」
「はい。ガーベラを守りたいです」
あれ?
なんか、その気になってしまっているな。
あ、ひょっとして、僕にもピュアな気持ちが芽生えているのか?
スキルを使ううちに僕も変わっていたのか?
たしかに僕の希望は大山健一君みたいな主人公としての人生を歩むことだ。
その夢を現実にしようとしているのか。
「そうかそうか。あのアーサーがそんなことを言うようになったか。一安心だな」
「そうですね。シャルム様。私も安心しました」
お母様はほっとした表情をしている。
子育てで悩んでいたのだろう。
グータラな息子だったからな。
「よし、今から紹介してやる。今日は先代剣聖の紹介もあるからついでにしてしまおう」
さっそく、城内の練兵場へ連れていかれた。
練兵場では激しい訓練が実践形式で行われていた。先遣隊として戦う十人組、それらを従える百人長、百人長に指示を出す千人長、それ以上の将官。
ぱっと見て統率のとれた軍隊であることが素人でもわかる。
その中に知った顔があった。
第三王子である、トリスタン・ド・サリュームだった。
年齢はたしか、18歳だ。
がっちりした体格で指示を飛ばしている。
千人長だ。
僕はこの兄が好きだ。
朴訥としていて、口下手な僕にはちょうどいい。
いっしょにいて居心地がいい兄弟だった。
この兄の下なら働いていてもイヤな思いはしないだろう。
そう思っていた。
「皆のものー!国王陛下のおなーりー!」
「はっ!」
ザッっと音を立てて、敬礼をしている。
一切の乱れがない。
「よい、なおれ」
「はっ」
またもやザッと音を立てて気をつけになる。
「今から知らせがある。よく聞け。ガレス」
呼ばれると、宰相が現れ、紹介を始めた。
「ただいまより、人事異動の命を下す。将軍は反逆の罪により処罰した。よって、ボールス・ストライクを将軍とする」
紹介されると、僕の剣のお稽古の先生でもあった師範が出てきた。
「はっ、将軍を拝命します」
「よきにはからえ」
お父様が偉そうに言っていた。
王はいいな。
完全な主人公ムーブだな。
「続いて、前将軍のラムダを断罪に追いやった第六王子アーサー・ド・サリューム様を百人長とする」
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