チンポロリの魔法

風雅ゆゆ

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チンポロリの魔法

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「うわっ!」

声と同時に、その周囲の人々がざわつく。
人垣の合間から覗いてみると、男性のズボンの前が弾けたように破れていたのだ。
性器が露わになり、男性は慌ててそれを隠すが、この状況にどう対処すればよいのか混乱しているようだ。
俺は人をかき分けて男性の腕を掴んだ。 

「こっちです」

男性は俺に引っ張られるままについてきた。少し走った先に、大きな公園がある。そこの公衆トイレへ駆け込み、2人で個室に入った。男性は慄いた様子で俺に弁解する。

「あ、あの…僕は決して変態ではなくて…!ズボンがきゅうに破れて…!その、あの…」 

「大丈夫です。俺も急に引っ張ってきちゃってごめんなさい。あの、俺丁度買ったばかりのパンツがあるから、良かったらこれ履いてください」

俺は手持ちの紙袋からスラックスを取り出した。男性は目を潤ませてそれを受け取る。

「有難う…助かるよ」 

男性は物置に鞄を置き、着替えはじめた。履いていたズボンを下ろすと、男性のたくましいそれが露わになる。俺は思わずつばを飲み込んだ。彼はよほど慌てているのか、俺の視線に気づかず着替えをすませていく。 

「はあ…下着はコンビニで調達するか。助かったよ。せっかく買ったのに悪かったね。これ、ズボンのお代……」

「いえ、いいんです!困った時はお互い様ですから!それじゃ…」

 「あっ、君…!」

俺は男性の声を振り切るようにトイレを出た。そのまま自宅のアパートにもどり、カギを閉める。 

ベッドに滑り込み、パンツのチャックを開いて自身を取り出した。先ほどの男性のモノを思い浮かべながら、思い切り扱く。

「うっ…は…あっ……!」

ほどなく果て、右手の中にべっとりと白い液体があふれた。それをティッシュでふき取りながら呼吸を整える。 

そしていつものように、罪悪感にさいなまれる。俺はのろのろと起き上がり、本棚の裏に隠しておいた本を引っ張り出した。あちこちシミや日焼けで変色した古い本だ。神保町の古書店で、なんとなく魅かれるものがあり、中も見ずに購入した。 

開いてみれば、ライトノベルも真っ青の「魔導書」であった。決して安くはなかった本だ。ためしに俺は呪文の一つを試してみた。恥をかかされた相手に仕返しをするという子供じみた呪文。相手のズボンの股間部分をぶち破るという魔法だ。 

実践した相手は、大学の教授だ。気に入った学生を露骨に贔屓する。講義中、俺は講堂の一番後ろに席を取り、こっそり呪文を唱えた。すると教授のズボンが急に破れたのだ。教授も学生も最初はぽかんとしていたが、次第に講堂は爆笑の渦に包まれた。 

教授は顔を真っ赤にし、講義を切り上げて研究室へ引っ込んでしまった。この魔導書は本物だ。慄くと同時に、あることを思いついた。これを使えば、男性のアソコが見放題じゃないか、と。俺はずっと男性に性的な興味を持っていたが、なかなかそれを表にだぜずにいた。 

恋人いない歴=年齢だ。たまりにたまった欲求を吐き出すかのように、俺はその日から魔法で好みの男性のズボンを爆破しまくった。そして先ほどのように偶然を装い、ズボンを渡して助ける。ほんの少しの間だけど、彼らのモノを眺められるだけで幸せだった。 

その興奮を家に持ち帰り、自分を慰める。事後はいつも彼らに対して罪悪感を抱く。不毛な毎日だったが、なかなか恋人を作れずにいた自分にとっては天国のような日々だった。けれど、派手に魔法を使いすぎたようだ。その日は突然訪れた。 

俺はいつもと同じように、混雑時を狙って街を歩いた。目の端に、整った顔立ちの男性を捉える。シルバーの眼鏡をかけ、緩くウェーブのかかった黒髪を後ろに流している。トレンチコートでシルエットがきゅっと締まり、長身が際立った。 

「あの人…」3日ほど前に俺がズボンをぶち破った相手だった。さすがに同じ人物に魔法をかけるわけにはいかない。それに、俺が他の人の介抱をしている光景を見られても怪しまれる可能性がある。今日は諦めて帰ろうとした瞬間、誰かに肩を掴まれた。 

振り返ると、先ほどの男性だった。

「やあ、君はこの前の」

「あ…はい…」

「よかったらちょっと話せるかな?」

俺の肩を掴む手に、力がこもる。それで俺は察した。もしかして、ばれてる…!?
俺は思わず手を振りはらい、その場から駆け出した。 

「待ちなさい!」

男性は追いかけてくる。インテリな見た目に反して足が速い。このままじゃ追いつかれてしまう。まさかこんな事態になるとは思っていなかった俺は、思考がうまくまとめられないまま、いつもの公園に逃げ込んでしまった。身元がばれるので自宅に戻るわけにもいかない。 

混乱した頭を抱えつつ、間抜けにも俺はいつものコースである公衆トイレに逃げ込んでしまった。個室に逃げ込み、急いで閉めようとしたが、ドアを足でおさえられてしまう。男性はそのままグイッとドアを開き、個室の中に入ってきた。後ろ手に鍵を閉め、呼吸を整える。 

勢いに気圧され、俺は蓋のしまった便器の上に座る形になった。顔が見れない。うつむく俺の手から、彼は紙袋を奪った。中身のズボンを見て「なるほど」と一言つぶやいた。彼は荷物置きに紙袋を置くと、俺の両肩を掴んだ。「で?どんな手品を使ったんだい?」 

「な…何のことですか…?」

「とぼけるな。君が沢山の人のズボンをやぶっていることは知ってるんだ」

「知りません!俺、手品なんてできないし……」

俺が目をそらすと、男性に顎を捉えられ、真正面を向かされた。

「ネットで検索したらね、私と同じ状況にあった人の書き込みがあったんだ」 

「街中で突然ズボンが破れて、そのあと可愛らしい親切な男の子に助けて貰ったって。丁度君みたいなね」

彼は俺の目をじっと見つめてくる。俺は心臓の音が大きくなるのを感じながら目を伏せた。

「そ…それはたまたま……」

「たまたまその場に居合わせて、ズボンを持っていたって?」 

「そ…そうです!一人目の人にズボン渡しちゃったから…次の日にまたズボンを買いに行って、そこでたまたまズボンが破れた別の人にズボンを渡して…を繰り返してしまっただけで…俺だって別に好きで居合わせたわけじゃ…」

「でも、私が着替えていた時見てただろ?」

「へ…?」 

「熱心に。気付かれてないとでも思ったのか?」

男性の言葉に、思わず彼の股間に目が行ってしまう。それを見て彼は少し笑った。

「そこまでしてみたかったのか?俺のが。…いいよ。もう一回その手品を見せてくれたら許してあげよう。ホラ、破ってみなよ」 

男性は俺に覆いかぶさるように身体を乗り出してくる。おそらく俺が認めないと解放してくれそうにない。幸い手品だと思っているようだ。俺は小声で呪文を唱え、彼の股間を指さした。するとズボンが弾けて彼の性器が露わになる。男性は驚いて自分の下肢を見下ろした
。 

「本当に君だったのか。一体どうやったんだ?」

「お…俺…手品研究部で…種明かしはできないんですけど…。その…実験のつもりだったんです。ごめんなさい…そこのズボン使ってください…」

俺はそそくさとその場を立ち去ろうと思ったが、再度両肩を掴まれて便器の上に押し戻された。 

「私だけ2回も恥ずかしい目に遭わされるなんて不公平だな。君のも同じように見せてくれないと」

「えっ!ちょっ……!」

「自分のも出来るんだろ?やってみてくれよ」

男性は頑として動かない。狭い個室で身動きすら取れない俺は、観念して自分の股間にも魔法をかけた。 

「…あれ?」

俺の股間はうんともすんとも言わない。何度か呪文を唱えなおすが、ズボンは沈黙したままだ。

「君…自分のを見せたくなくてわざと失敗したふりをしているんじゃないよね?」

「違います!俺も何でかわからなくて…本当に…」

「じゃあ手品に頼るのはやめだ」 

男性は俺のベルトをはずし、ズボンと下着をはぎ取った。下半身が露わになり、俺は慌てて手で隠す。しかし男性にその手を掴まれた。「自分だけ隠すなんてずるいな。あれだけ私のペニスを凝視しておいて。それに私が街中で露出させられてどれだけ恥ずかしかったか」 

「す…すみません!もう二度としません…だから…」

「だめだ。君も同じ目にあってもらう」

「同じ目って…俺も街中で…?」

「本当はそうさせたいけど、そんなことをしたらすぐにつかまってしまうからな。これで手打ちにしよう」

男性は携帯で俺の股間を撮りだした。 

「君の手品の被害者にこの映像を見せて、お相子だ」

「そんな…謝りますからそんな……」

「でも嫌がってる子の姿じゃないよね、これ?」

男性は俺の性器を指で突いた。自分でも気づかないうちに硬くなっていた。俺は思わず隠そうとしたが、男性に手を掴まれ、それは叶わなかった。 

「街中で露出してって言った途端、君のソコ勃起しはじめてたよ。本当は自分がズボンを破って周りに見せつけたかったんじゃないの?」

彼は携帯を俺のペニスにこすりつけた。レンズに先濡れの液が付く。こんな状況なのに興奮している自分がいた。 

「違い…ます…ただ…悪戯の…つもりで…」

必死に言い訳をならべたが、冷たくて硬い機械に何度もカリを擦られ、快感に声が上ずってしまう。いつもは盗み見る側だったのに、今は好みの男性に陰部を凝視されている。 

これから自分はどんな目に遭うのかという不安と、男性に攻められる嬉しさの狭間で感情がせめぎあった。しかし身体は正直で、拒絶めいた言葉とは裏腹にしっかりと秘部を濡らしていた。次の行為を期待し、男性を求めるようにアヌスもひくついている。 

男性は俺の目の前にペニスをちらつかせた。

「私のコレが欲しいのかい?」

「…違います…ッこれは…」

「本当は欲しくてたまらないんだろ?」

彼は俺の口元にペニスをこすりつける。

「……」 

「正直になりなさい。君は自分の欲求と向き合うべきだ。じゃないと、この先も我慢できなくて誰かのズボンを破いて回ることになるだろ」

「……」

男性の言うとおりだ。俺はここで謝罪しても、きっとまた欲望に駆られて同じことを繰り返す。 

「私は君が嫌いじゃない。君がここで素直になるなら満足いくまで抱いてあげよう」

男性は俺の頬を撫でた。

「……」

俺は口を開き、彼のペニスをくわえた。雄臭くて少し苦い。ずっと夢を見ていた行為。俺は呼吸も忘れ、いつしか夢中で彼のモノをしゃぶっていた。 

気持がいいのか、彼の口から時折吐息が漏れる。俺は少し嬉しくなってもっと激しく舌を動かし、彼を刺激した。睾丸を揉みしだき、自分が触られて気持ちのいいところを攻める。やがて彼は俺の頭を抱え、口の中いっぱいに射精した。

「んっっ……!」 

いきなり奥に出されてむせそうになったが、何とかこぼさず飲み干した。先端に残った残滓を吸い出すようにぺろぺろとペニスを舐める。男性は深く息を吐きながら俺の頭を撫でた。

「上手いな…やっぱりこういうことは慣れてるのかな。ココもほぐれてるね…」 

男性は自分の指を舐め、俺のアヌスに挿入した。今朝自宅で自分を慰めたせいか、指はすぐに中へと入っていく。

「ちが…ッ…初めてです…俺…」

「こんなにトロトロなのに?」

「本当に…初めてなんです…こういうこと……っ」

男性が指を入れただけで感じてしまい、俺はあっけなく果ててしまった。 

「あっ…あ…ッ…!」

身体がビクビクと痙攣し、頭が真っ白になった。こんな感覚は初めてだ。自分で自分を慰める時の何倍も気持ちがいい。しばらく身体がビクつき、何も考えられなくなった。

「指を入れただけでそんなに反応するなんて。コレを入れたらどうなるかな」 


「あっ…ッふあ…ぁっ!」

俺の感覚が元に戻る前に、彼はペニスを挿入してきた。腰を引き寄せられ、奥深くまで突き上げられる。前立腺に当たり、全身に電流が走るような錯覚を覚えた。いつもの自慰の玩具ではない、生身の人間のペニスだ。 

俺の身体は暴走するようにそれを貪った。突かれるたびに収縮し、彼を締め付ける。パンパンと腰を打ち付けられるたびに便器のふたが豪快な音を立てたが、そんな音さえ耳に入らないほど、俺の身体は快感に支配されていた。肌の当たる音が早くなる。 

男性は小さく呻くと、俺の中でドクドクと精を吐いた。残さず全部飲み干せるように、俺は無意識に両足で彼の腰にしがみついていた。男性は息を整えると、俺の目元を指で拭った。いつの間にか泣いていたらしい。気持ちよすぎて泣くなんて初めてだ。 

アヌスが大きく収縮しながら、精液を垂れ流している。身体がしびれて俺が動けないでいると、男性がそれをトイレットペーパーで拭いてくれた。

「気持ちよかった?」

男性が優しい声で尋ねる。俺はコクンとうなずいた。

「もう人のズボンを破ったりしないか?」

彼の問いに、また俺はうなずく。 

「もしまた悪戯したくなったら私に連絡しなさい。もう私以外に悪戯しちゃだめだよ」

男性は俺のズボンから携帯を取り出し、自分のアドレスを記録していった。
その後、俺と彼は頻繁に連絡を取るようになり、いつしか恋人になった。 

その同日、彼に真実を話し、あの魔導書を購入元の古書店に売った。俺にはもう必要が無くなったから。
 後日、俺は彼の誕生日プレゼントを買うため街に出かけた。今日はいつも以上に道が混雑している。人波をよけながら歩いていると、突然俺のパンツの股間部分がはじけ飛んだ。 

慌てふためいて鞄で股間を隠していると、一人の少年が近づき、声をかけてきた。

「大丈夫ですか?とりあえずこっちへ」

彼に腕を引っ張られるままに走っていくと、いつかの公園が見えてきた。少年は俺の手を握り、公衆トイレへ連れていく。 

個室へ入り、彼は紙袋を差し出してきた。

「僕丁度ズボン持ってるんですよ。よかったらどうぞ」

「あ…有難う助かるよ…」

そう言って袋を受け取ろうとした瞬間、俺は目を見張った。少年の手にはあの魔導書が抱えられていたのだ。 

俺はそっと股間を隠し、その場から逃げ出した。


 【チンポロリの魔法  姦】 




























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