25 / 27
23話 ここから物語が動く・・・のか・・・?
しおりを挟む
するとボイレコから、さっきの生徒指導室での会話の一部始終が残されていた。
「んー・・・、先生が悪い人だとは思いませんが、お互いの事をまだよく知りもしないのに、恋愛に発展するのはちょっと・・・遠慮したいです。それに、私と先生の関係は教師と生徒ですから。」
「バイト感覚で乙女ゲームをしてくれないかな?協力費として、毎月お金を払うから。」
「高松さんって、アニメとか好きだよね?休み時間も・・・松山さんとアニメについて話してたしね・・・。確か・・・夏休みにコミケっていうイベントがあって、高松さん金欠なんでしょ?こんなにいいバイトは他にないと思うけどなぁ・・・」
「ふーん・・・。つまり、本気で付き合ってるわけではないと・・・。へぇー・・・。」
ボイレコの音声を聴きながら金沢は腕を組み、人差し指で腕をトントンと叩いていた。
あ・・・この癖。金沢は不機嫌な時にこの癖をよくやる。前に私がお皿を割った時も、金沢はずっと指で腕を叩いていた。
「あー・・・。金沢・・・。」
「何?」
私はおずおずと金沢に話しかける。返ってくるのは冷たい言葉だけど。
「ごめん・・・。」
「なんで謝ってんの?」
自分が悪いと分かってはいるが、いざ目の前で冷たい言葉を吐かれると、やっぱり精神的ダメージは大きい。ましてや、あまり怒らない人なら尚更。今後は金沢に一言言おうかな・・・。
いや、それは・・・依存だ。
人に頼る事は依存に等しい。
自分の事は自分で解決しなきゃ・・・。
(あくまで紫乃の価値観です。頼らない事が正義という訳では無いですよ。By作者)
「お金に釣られて勝手な事しちゃった事・・・。」
私は、少し涙ぐんでそう言った。私が涙ぐむのもおかしな話ではあるが、生理的現象を抑えることは出来なかった。
「まぁ・・・そうだな。お前アホなんだから金に釣られて変なことすんなよ。」
意外にも金沢の口調は優しく、さっきのピリピリとしたオーラはすっかり消え失せていた。
「怒・・・ってる・・・?」
「いや別に。どっちかってと心配。」
「そっか・・・。気ぃつけます。」
無愛想だけど、優しい。それが金沢のいいところだ。そして・・・私の心を・・・。
と、私に邪な感情が芽生えかけた時、周りの人達が私と金沢をじーっと見つめている事に気づいた。
「前々から思ってたが・・・。」
そう言いながら会長はメガネをクイッとあげた。それに伴い、メガネのレンズがキラリと光った。だからコナ○かっての・・・。
「2人って兄妹みたいだよね~。琥珀は紫乃を守るお兄ちゃんみたい。」
珊瑚がニコニコと満面の笑みでそう言った。
「何それ草。そしたら先生は俺の所へ挨拶に来んのかな・・・?めっちゃシュール。」
さっきの優しさはどこへ行ったのやら、いつもの気だるさ120%状態の金沢に戻っていた。
「まぁ、そういう事になるのかな・・・。」
先生は少し寂しそうな顔を取り繕うような笑顔を、みんなに向けていた。私は先生のその笑顔を、気がかりに思っていた。
その後は、全員揃ったので作業をどんどんと進めていき、私と葵くんの2人の時よりもだいぶ捗っていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていき、ふと古びた時計を見ると、22時近くを示していた。
「てか、そろそろ10時だよ。帰らない?」
私の言葉で全員の視線が古びた時計に向き、「それもそーだね・・・」とみんながそれぞれ帰る支度を進めていた。
とっぷりと日が沈み、街灯がチカチカと点滅する夜中。私たちは門の前で互いに別れを告げた。
私、金沢、珊瑚は門の右へ、会長、亜麻先輩、葵くんは門の左へとそれぞれ歩みだした。さて、私が気がかりに思っているのは・・・
「あれ?先生の家、こっちなんですか?」
珊瑚が何気なくそう尋ねた。なるほど・・・。先生は右の人でした。同じ方向ですね。まぁ、家の前まで一緒な訳じゃないんだし・・・。大丈夫だよね・・・?そんな偶然ないよね・・・?
そこからしばらく右へ~左へ~と住宅地を歩き続け、珊瑚に別れを告げ、本来なら金沢と2人で歩く帰りの道を、先生と3人で歩いている。
んー、違和感。この2人のツーショって珍しいから見てたいけど、なんか目を合わせちゃいけない気がする。見えないからどうなってるか分からないけど、頭上に謎の恐怖感を覚える。チビ(148cm)って不便。
てか、間に挟まないで頂けます?基本的に私は後ろをついて行きたいタイプの人なんですよ・・・。中心にいるとか精神的にしんどい。
私は謎の恐怖感と、好奇心を天秤にかけながらテクテクと歩き続けた。すると、見慣れた古びたアパートが目に入る。あー・・・愛しの我が家や・・・。暖かい我が家や・・・。
いつもならここで口角が緩み、ダッシュで家に入り、布団にダイブしてただろう。
・・・いや、どんだけ家好きなんだよ。ひきこもりかよ。(極端なインドアだから間違ってはないけど・・・。)
いや、私のひきこもり事情は置いといて、今は何故いつもの様に暖かい我が家に入れないかが、問題なのである。
まさか・・・そんな偶然はあるのだろうか・・・。
私達が住んでるアパートのお向かいには、一般的な一軒家がある。ここは、先月の末まで30代の夫婦が住んでいたが、出産を機に引越しをして今は空き家になっている。
名前の知らないご夫婦さん・・・。
今更ですが、幸せになってくださいてね・・・。
赤ちゃん元気に産まれるといいな・・・。
・・・じゃない!いや、それも大事だけれども!
「じゃあね。紫乃ちゃん・・・。」
その声の主は今まで私たちと共に歩いていた成人男性で、その声の主は空き家へと入っていった・・・。
「ワァオ・・・。」
もはや何かの呪いを疑うレベル。フラグ回収乙、私(泣)。易々と乙女ゲームを引き受けた事を、今更ながらに後悔する。
絶望に浸りながらチラリと横の金沢を見ると、金沢はまた人差し指で腕をトントンと叩いていた。しかもさっきよりテンポが早い・・・。不機嫌MAX・・・。ヤヴァイ、デジャブ。
「え・・・と、金沢・・・。今日・・・ゲーム付き合うよ・・・。前・・・寝落ちしたやつ・・・。」
はぁ・・・とため息をついた後、金沢は少し怒ったような口調でこう言った。
「もちろん。ちゃんと''付き合ってね''。」
「んー・・・、先生が悪い人だとは思いませんが、お互いの事をまだよく知りもしないのに、恋愛に発展するのはちょっと・・・遠慮したいです。それに、私と先生の関係は教師と生徒ですから。」
「バイト感覚で乙女ゲームをしてくれないかな?協力費として、毎月お金を払うから。」
「高松さんって、アニメとか好きだよね?休み時間も・・・松山さんとアニメについて話してたしね・・・。確か・・・夏休みにコミケっていうイベントがあって、高松さん金欠なんでしょ?こんなにいいバイトは他にないと思うけどなぁ・・・」
「ふーん・・・。つまり、本気で付き合ってるわけではないと・・・。へぇー・・・。」
ボイレコの音声を聴きながら金沢は腕を組み、人差し指で腕をトントンと叩いていた。
あ・・・この癖。金沢は不機嫌な時にこの癖をよくやる。前に私がお皿を割った時も、金沢はずっと指で腕を叩いていた。
「あー・・・。金沢・・・。」
「何?」
私はおずおずと金沢に話しかける。返ってくるのは冷たい言葉だけど。
「ごめん・・・。」
「なんで謝ってんの?」
自分が悪いと分かってはいるが、いざ目の前で冷たい言葉を吐かれると、やっぱり精神的ダメージは大きい。ましてや、あまり怒らない人なら尚更。今後は金沢に一言言おうかな・・・。
いや、それは・・・依存だ。
人に頼る事は依存に等しい。
自分の事は自分で解決しなきゃ・・・。
(あくまで紫乃の価値観です。頼らない事が正義という訳では無いですよ。By作者)
「お金に釣られて勝手な事しちゃった事・・・。」
私は、少し涙ぐんでそう言った。私が涙ぐむのもおかしな話ではあるが、生理的現象を抑えることは出来なかった。
「まぁ・・・そうだな。お前アホなんだから金に釣られて変なことすんなよ。」
意外にも金沢の口調は優しく、さっきのピリピリとしたオーラはすっかり消え失せていた。
「怒・・・ってる・・・?」
「いや別に。どっちかってと心配。」
「そっか・・・。気ぃつけます。」
無愛想だけど、優しい。それが金沢のいいところだ。そして・・・私の心を・・・。
と、私に邪な感情が芽生えかけた時、周りの人達が私と金沢をじーっと見つめている事に気づいた。
「前々から思ってたが・・・。」
そう言いながら会長はメガネをクイッとあげた。それに伴い、メガネのレンズがキラリと光った。だからコナ○かっての・・・。
「2人って兄妹みたいだよね~。琥珀は紫乃を守るお兄ちゃんみたい。」
珊瑚がニコニコと満面の笑みでそう言った。
「何それ草。そしたら先生は俺の所へ挨拶に来んのかな・・・?めっちゃシュール。」
さっきの優しさはどこへ行ったのやら、いつもの気だるさ120%状態の金沢に戻っていた。
「まぁ、そういう事になるのかな・・・。」
先生は少し寂しそうな顔を取り繕うような笑顔を、みんなに向けていた。私は先生のその笑顔を、気がかりに思っていた。
その後は、全員揃ったので作業をどんどんと進めていき、私と葵くんの2人の時よりもだいぶ捗っていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていき、ふと古びた時計を見ると、22時近くを示していた。
「てか、そろそろ10時だよ。帰らない?」
私の言葉で全員の視線が古びた時計に向き、「それもそーだね・・・」とみんながそれぞれ帰る支度を進めていた。
とっぷりと日が沈み、街灯がチカチカと点滅する夜中。私たちは門の前で互いに別れを告げた。
私、金沢、珊瑚は門の右へ、会長、亜麻先輩、葵くんは門の左へとそれぞれ歩みだした。さて、私が気がかりに思っているのは・・・
「あれ?先生の家、こっちなんですか?」
珊瑚が何気なくそう尋ねた。なるほど・・・。先生は右の人でした。同じ方向ですね。まぁ、家の前まで一緒な訳じゃないんだし・・・。大丈夫だよね・・・?そんな偶然ないよね・・・?
そこからしばらく右へ~左へ~と住宅地を歩き続け、珊瑚に別れを告げ、本来なら金沢と2人で歩く帰りの道を、先生と3人で歩いている。
んー、違和感。この2人のツーショって珍しいから見てたいけど、なんか目を合わせちゃいけない気がする。見えないからどうなってるか分からないけど、頭上に謎の恐怖感を覚える。チビ(148cm)って不便。
てか、間に挟まないで頂けます?基本的に私は後ろをついて行きたいタイプの人なんですよ・・・。中心にいるとか精神的にしんどい。
私は謎の恐怖感と、好奇心を天秤にかけながらテクテクと歩き続けた。すると、見慣れた古びたアパートが目に入る。あー・・・愛しの我が家や・・・。暖かい我が家や・・・。
いつもならここで口角が緩み、ダッシュで家に入り、布団にダイブしてただろう。
・・・いや、どんだけ家好きなんだよ。ひきこもりかよ。(極端なインドアだから間違ってはないけど・・・。)
いや、私のひきこもり事情は置いといて、今は何故いつもの様に暖かい我が家に入れないかが、問題なのである。
まさか・・・そんな偶然はあるのだろうか・・・。
私達が住んでるアパートのお向かいには、一般的な一軒家がある。ここは、先月の末まで30代の夫婦が住んでいたが、出産を機に引越しをして今は空き家になっている。
名前の知らないご夫婦さん・・・。
今更ですが、幸せになってくださいてね・・・。
赤ちゃん元気に産まれるといいな・・・。
・・・じゃない!いや、それも大事だけれども!
「じゃあね。紫乃ちゃん・・・。」
その声の主は今まで私たちと共に歩いていた成人男性で、その声の主は空き家へと入っていった・・・。
「ワァオ・・・。」
もはや何かの呪いを疑うレベル。フラグ回収乙、私(泣)。易々と乙女ゲームを引き受けた事を、今更ながらに後悔する。
絶望に浸りながらチラリと横の金沢を見ると、金沢はまた人差し指で腕をトントンと叩いていた。しかもさっきよりテンポが早い・・・。不機嫌MAX・・・。ヤヴァイ、デジャブ。
「え・・・と、金沢・・・。今日・・・ゲーム付き合うよ・・・。前・・・寝落ちしたやつ・・・。」
はぁ・・・とため息をついた後、金沢は少し怒ったような口調でこう言った。
「もちろん。ちゃんと''付き合ってね''。」
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
拝啓、あしながおじさん。 ~令和日本のジュディ・アボットより~
日暮ミミ♪
恋愛
現代の日本。
山梨県のとある児童養護施設に育った中学3年生の相川愛美(あいかわまなみ)は、作家志望の女の子。卒業後は私立高校に進学したいと思っていた。でも、施設の経営状態は厳しく、進学するには施設を出なければならない。
そんな愛美に「進学費用を援助してもいい」と言ってくれる人物が現れる。
園長先生はその人物の名前を教えてくれないけれど、読書家の愛美には何となく自分の状況が『あしながおじさん』のヒロイン・ジュディと重なる。
春になり、横浜にある全寮制の名門女子高に入学した彼女は、自分を進学させてくれた施設の理事を「あしながおじさん」と呼び、その人物に宛てて手紙を出すようになる。
慣れない都会での生活・初めて持つスマートフォン・そして初恋……。
戸惑いながらも親友の牧村さやかや辺唐院珠莉(へんとういんじゅり)と助け合いながら、愛美は寮生活に慣れていく。
そして彼女は、幼い頃からの夢である小説家になるべく動き出すけれど――。
(原作:ジーン・ウェブスター『あしながおじさん』)
ephemeral house -エフェメラルハウス-
れあちあ
恋愛
あの夏、私はあなたに出会って時はそのまま止まったまま。
あの夏、あなたに会えたおかげで平凡な人生が変わり始めた。
あの夏、君に会えたおかげでおれは本当の優しさを学んだ。
次の夏も、おれみんなで花火やりたいな。
人にはみんな知られたくない過去がある
それを癒してくれるのは
1番知られたくないはずの存在なのかもしれない

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
乙女ゲームの正しい進め方
みおな
恋愛
乙女ゲームの世界に転生しました。
目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。
私はこの乙女ゲームが大好きでした。
心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。
だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。
彼らには幸せになってもらいたいですから。
実はこれ実話なんですよ
tomoharu
恋愛
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!1年後には大ヒット間違いなし!!
作品情報【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎ智伝説&夢物語】【トモレオ突破椿】など
・【やりすぎ智久伝説&夢物語】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。
小さい頃から今まで主人公である【智久】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね!
・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。
頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください!
特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる