ヲタクで腐女子な私にリアル乙女ゲームは攻略不可

大神ヒラメ

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16話 恋よりも推しを優先してしまうのが、ヲタクの性である

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「高松さん。乙女ゲームに興味ない?」
「・・・はい?」
乙女ゲーム?先生の口からそんな単語が出た事に私は驚いて、思わず聞き返してしまった。
「そ、乙女ゲーム。高松さんは素質があると思うんだよね。乙女ゲームの主人公の素質。」
ちょっとツッコミたい。乙女ゲームの主人公の素質ってなに?どんな素質だよ。
「えーっと、乙女ゲーム・・・って具体的に何をすればいいんでしょうか?」
私は興味半分で先生に聞いてみた。ちなみにもう半分は、悪ノリである。ダメじゃねぇか。
「んー・・・、そうだね。僕が君の事をオトす・・・。基本的な事はそれだけかな?」
オトす!?先生が私を!?・・・なぜにWhy?
なぜとWhyって意味一緒じゃねぇか。頭の悪さが目立つな。
「え。なんで先生が私の事をオトすんですか?私達、まだ出会って1日も経ってないですけど・・・。」
そもそも恋愛感情というのは、ある程度時間を共に過ごした男女に芽生える感情でしょ?え、そうだよね?
先生は少し難しい顔をして、私を見つめた。
「んー、それは・・・。」
先生はしばらく天井に目を向け、質問の答えを探しているようだった。
「一目惚れ・・・したんだよ・・・。」
「一目惚れ・・・ですか。」
先生は手の甲で口元を隠し、目を逸らした。
その頬は赤く染まっていた。
え、これ・・・、マジな感じ?
先生の意外な答えに、私は少し驚きを隠せなかった。
「んー・・・、先生が悪い人だとは思いませんが、お互いの事をまだよく知りもしないのに、恋愛に発展するのはちょっと・・・遠慮したいです。それに、私と先生の関係は教師と生徒ですから。」
私は当たり障りのないようにやんわりと断った。
調子乗ってるとも思われたくないし、何より先生を傷つけたくないので、この答えはベストと言えるだろう。評価は私。
私は割と真面目に答えたつもりだったが、先生は何かおかしかったのか、笑いを堪えてるようだった。
「んっ・・・、ふふっ・・・。そんな本気で答えられるとは思わなかったな・・・。君みたいなタイプの子は初めてだよ。」
先生は目から少し涙を零しながら、笑いを堪えていた。
え、なんなんこの人。怒っていい?怒っていいよね?
私の中で先生の株は大暴落し、私は話をつけてとっとと帰りたくなった。
「先生。ふざけてるようなら、私は帰ります。急いでるんで。」
私はぶっきらぼうにそう言い、帰ろうとした。
すると先生は私の手首を掴み、私を腕の中に収めた。私は先生の体温を背中から直接感じて、なんとも言えない気持ちになっている。
「先生、今さっきの会話をした上でこんなことされても、1ミリもトキメキません。セクハラで教育委員会に訴えますよ?」
私はわざとトゲのある言い方をした。いやまぁ、割と本気でイライラしてるし。
「んー。攻略難易度あがったなぁ・・・。まぁ、いいや。そっちの方が面白いし・・・。」
こっちは1ミリも面白くない。帰らせろ変態。
先生相手に暴言を吐けないので、私は露骨に舌打ちをした。
「うわ、冷たい。先生泣きそう・・・。」
先生はしゅんとした態度をとってそう言った。
顔をあげると、先生のしゅん顔が見えた。
イケメンのしゅん顔可愛い・・・。クソ!先生がイケメンでなければ萌えなかったのに・・・!
「先生、そろそろ離して下さい。本気で訴えますよ。」
私は先生への萌を隠すために、ぶっきらぼうにそう言った。
「そうだ、高松さんに提案があるんだけど・・・」
「いや、遠慮しときます。」
私は間髪入れずに言い放った。今更なにを言われても、断る自信がある。というか、今更なんの提案をするつもりだろうか?
先生は少しむくれた顔をして、提案内容を説明した。
「バイト感覚で乙女ゲームをしてくれないかな?協力費として、毎月お金を払うから。」
私はピクリと眉を動かした。いや、正確には動いてしまった・・・のだ。
毎月バイトをしてヲタ活をしている私にとって、お金を手軽に稼げる案件はとても魅力を感じる。
いやしかし・・・。金で動くという弱点を知られてしまえば、これからどんな揺すりをされるか分かったもんじゃない。
んー・・・。お金を稼ぐのは魅力的だが・・・、人としての尊厳は保っておきたい・・・。
先生は迷ってる私に気づいているのか、清々しい程のゲス顔で、こう言った。
「高松さんって、アニメとか好きだよね?休み時間も・・・松山さんとアニメについて話してたしね・・・。確か・・・夏休みにコミケっていうイベントがあって、高松さん金欠なんでしょ?こんなにいいバイトは他にないと思うけどなぁ・・・」
私の気持ちはゴトリと動いてしまい、正しい判断が出来なくなっていた。
「いいでしょう。受けてたちます。」
私は先生の目を見据え、キリッとした顔でそう言った。
先生はニヤリと笑い、私の事をやっと解放した。
「いい判断だ、高松さん。期限は君の卒業まで。君の事をオトす事が出来たら、僕の勝ち。オチなかったら君の勝ちだ。何か目標があった方が面白いし、勝った方が負けた方になんでも命令できる・・・というのはどうかな?」
いかにも乙女ゲーム、と感じる条件を突き出された。いつもの私だったら、多分勝てる自信がないので断っていたと思う。
しかし、金に目がくらんでいる今は、謎の余裕があった。金が得られる上に、勝てばイケメンのBL・・・。おっとヨダレが・・・。

人間というのは、こういう時に正常な判断が出来なくなるんだろうな。
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