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EP1_5章

5章_5 運命のアムリタ

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 男の顔は相変わらず水で濡れているが、
湖に清められて、元の顔の凛々しさが戻っていた。


「心優しき我が領民、シンシアよ。
言葉は無くとも、そなたの心優しきこと、
この国の宝であるな。

我はエオメル・エンタール。今やっと、
我が星鏡台地へ帰り着いた。

そして今此処に、我が伴侶も見てとった。
長らくの不在で国に迷惑をかけたが、
今これから、恩を返していかなければ。」


騎士の言葉にシンシアは驚きのあまり肩が飛びあがる。
この男が、公王エオメル・エンタール。

そしてこの男は、シンシアを娶るとそう言ったのだ。


《私は・・・》
シンシアが急いで手に取った枝の言葉の続きは、
公王エオメルの口づけで塞がれる。


この続きをどうして伝えられなかったのか、
シンシアは一生涯、枕を濡らすこととなる。


公王の帰還は、
すぐさま公都レフコーシャに知らされる。
ロクサリオを含めた早馬が、
夜を徹して台地を駆け、翌日にはアムリタに入っていた。


「おお、本当に戻られた!主君が帰還された!」
公都からの一隊は、公王エオメル・エンタールの姿を見るなり大いに喜ぶ。

その中でも、ロクサリオの安堵と喜びは、ひとしおのものだった。


「公王殿下、一体どれほどに道草を食えば気が済むのでしょう。
レフコーシャに戻れば、
帰ってこなければ良かったと思うほどに仕事がございますぞ。」

ロクサリオの言葉に、エオメルは笑ってみせる。


「任せておけ、我が仕事の分だけ、
貴様も使い倒してやろうではないか!
続きはレフコーシャで話そうぞ。

それよりも、私はこのアムリタで妃を娶ることにしたのだ。
教会の部屋に待たせているから、我と共に今夜の馬車に乗るよう、
準備を手伝ってやってくれ。」


帰還した王が、女まで見初めたというのだ。
家臣一同、うれしさの余り顔に結われた緊迫の糸がほどけきっていた。
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