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EP1_4章

4章_13 決戦の舞台

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 「くそっ!目の前に大将首があったってのに!
・・・畜生!!」


悔しさと情けなさに打ちひしがれながら、
シエン隊長は慣れない左手で右腕と足の止血をして膝を屈する。


そして、
慣れない左腕でなんとか馬に乗ろうとしているところで、
見覚えのある青銀の騎士が目の前に現れた。


「開門させたにしては、余りにも苦戦しているな、
シエン隊長。その怪我ではもう戦えない。
陣の後方へ下がれ。立てるか?」

声の主は南門に駆け付けたロキシェル将軍その人であった。


「将軍、今は俺の無様を笑う時間じゃない。
大将首がいたぞ、俺は大公の野郎にやられたんだ。
まだその辺に居るはずだ!」

怒りと悔しさをぶつけるようにシエン隊長は叫ぶ。


「大公?エオメル・エンタールが南門に居たと、
そう言ったな?」


シエン隊長の言葉を聞いたロキシェルは、
今まで見たことがないような厳しい表情になっていた。


「ロキシェル将軍、敵の増援がこちらに向かって来ます!」


南門外の各所で激しい乱戦が繰り広げられる中、
突然の知らせにもロキシェル将軍は迅速に指示を出した。

「救護隊に知らせて、シエン隊長を後方に。
これより私が南門包囲軍の指揮を執る。

此処のブラナス軍は少なくとも二隊。
南門から飛び出した隊と、今こちらに向かう増援隊。
まずは増援を片づける。」


煙幕の中なのは相手も同じ事、
と軍をなだめた将軍は、
一旦全体を下げることで視界を確保し、
整然と陣を立て直した。

彼女の率いる軍に迫り来る煙の先の音を、
ロキシェル将軍は冷静に感じ取っていた。
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