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EP1_4章

4章_8 西門の決着

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 時を同じくして、
破竹の勢いで西門の包囲軍を絞り上げたエルザの部隊は、
西門の敵部隊にさらに激しく襲い掛かっていた。


「さあ、そろそろ観念して。
弓隊もいなくてどうやって門を落とすつもり?」

中央から突撃したエルザの隊に、
弓兵を片づけた二隊が加わり、敵軍を完全に包囲した。


「くっ、この西門で勝った程度で、
我らの本隊に勝てると思わないことだ。」


敵軍隊長の捨て台詞と共に投降の意を示した敵軍を、
エルザの軍は次々と捕虜として縛り上げた。

敵の増援なしと判断した西門が開門し、
城内へと捕虜が引き渡されていく。

怪我人や捕虜が運ばれる中、
西門の守備隊長がエルザに駆け寄り、敬礼をした。


「エルザ・カナリス隊長、
援軍痛み入ります。
ブラナス守備軍のほとんどが強大な敵を迎え撃つために東門に集中しており、
西門守備隊は僅か千五百。
あまりの戦力差に打って出ることもできませんでした。
恥ずかしいばかりです。」

ぼろぼろの姿でうつむく隊長を、エルザは激励した。


「寡兵の中、よく守り切ってくださいました。
我々はこのまま北門へ向かいます。
貴方の隊も城内から援軍にあたってください。」

エルザの提案に、
それならば、と隊長は一つの案を出した。


「行かれるのであれば、北門より南門がよろしいでしょう。
北門の敵軍は、所属不明の部隊による奇襲で、
指揮官を失ったとのことです。

我々ブラナスの北門守備隊でまだ対応できるでしょう。
一方で、南門の攻撃も苛烈を極めており、我々の損害も大きい。

さらには東門から、
どうやら敵の将騎部隊が南門へ向かったという情報も
物見塔から入っております。
我らも城内から南門の援護に入ります。」


西門守備隊長の情報を聞いたエルザは、
すぐさま紅軍全体に指示を出し、南門へと軍を進めた。


陽動作戦のために南門へと向かうメリッサたちと、
それを追う敵将、青銀鎧のロキシェル将軍。
さらに西門を開放したエルザ率いる赤鎧軍。

激しい戦闘を繰り広げる南門で彼らが一同に会するその時は、
刻一刻と迫っていた。
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