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EP1_3章

3章_3 英雄の意地

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 一方カムランは、
英雄オリオンを相手に奮戦するエルザ隊を注視しつつ、
まだ動ける兵を集めて倒れた強弩を引き起こしていた。

「隊長が踏ん張ってくれている今がチャンスだ。
絶対に当てられるチャンスを待って、やり遂げてくれ。」

照準をオリオンに定めたところで、
カムランは兵士たちに後をたくし、
一人、また一人と数を減らしていくエルザ隊の加勢に向かった。


ひたすら右足を狙われているオリオンは、
最初程の俊敏な動きがなくなっていた。

しかし、怒りに任せた重い一撃は依然として続いており、
エルザは攻め手を欠いていた。

エルザに相対しているオリオンの背後で、
カムランは身を潜めて様子を伺う。

卑怯な手かも知れないが、
そんなことを言っていられるような相手ではない。

エルザに再び棍棒が振り下ろされる瞬間、
カムランは物陰から駆け出し、
オリオンの右のふくらはぎを深く切り裂いた。

痛みに吠えるオリオンに、
今度は左足のすねをえぐるように突き刺す。

突如現れたカムランの不意打ちに、
オリオンはついに膝をついて地面に倒れた。


「さあ、今だ!」

カムランが声を張り上げると、
強弩隊は万力を込めて弩を引き絞り、
大矢を放った。

矢はギュルギュルと風を切り、
オリオンの頭を目掛けて一直線に飛ぶ。


しかし、矢音に危険を感じ取ったオリオンは、
苦悶の表情を浮かべながらも、
力を振り絞って立ち上がってみせた。

チェックメイトと思われた弩の一撃は、
オリオンの頭ではなく、
その左肩に深く打ち込まれた。

矢は左肩を貫き、
オリオンの背中側から巨大な鏃が飛び出す。

左手に握られていた巨大な棍棒は、
その手をするりと抜け、
ズシンと重い音をたてて地に落ちた。


あまりの痛みからか、
力なく立ち尽くすオリオンを見て、
残った兵たちは声を上げて一斉に突撃していく。

もはや動かない左腕に切りかかってくる兵たちを見下ろすオリオンは、
静かに右腕で腰の剣に手をかけた。


「待って、止まって!」
突撃の最中、
オリオンの右腕の動きに気付いたエルザの警告は、
兵たちの鬨の声にかき消されてしまう。

オリオンは兵たちを十分に引きつけたところで再び動き出した。

腰の大剣を引き抜き、
襲い来る兵に横薙ぎの一閃を放った。

恐ろしい爆風を巻き起こしたその剣撃は、
たった一振りで何人もの兵たちを跡形もなく吹き飛ばしてしまった。

オリオンの強烈な反撃の後には、
目も当てられないような変わり果てた姿になった
兵たちの亡骸が辺りに転がった・・・。


今、オリオンの前に立っているのは、
エルザとカムランのたった二人。

神話の英雄、
オリオンの強大さをその身をもって思い知らされたのだった。
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