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EP1_3章

3章_2 エルザの意地

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 オリオンに追われながらも、
星石鉱付近までたどり着いたその時、

前方から投石車がこちらへ向かってきた。

燃える魔剣を掲げたエルザの合図で石塊が夜空に放たれると、
巨人の前を走る騎兵の一団は一気に速度をあげて落石圏から退避し、
馬首を返して投石車を守るように布陣した。


しかし、オリオンは降り注ぐ石塊を次々と棍棒で粉砕し、
なおも陣に迫ってくる。

投石車では効果が薄いと判断したエルザはすぐに部隊を下げ、
坑道掘削用の強弩隊に指示を出した。

兵士たちは巨大なボウガンのようなその兵器でオリオンに狙いを定めると、
長さ二メートルはあろうかという大きな矢を数人がかりで引き絞り、
次々に矢を放つ。

先ほどの石塊よりもだいぶ的の小さな矢のはずだが、
オリオンはまたしても矢の雨を棍棒で防ぎきった。

度重なる攻撃にオリオンは怒り、
辺り一面に響き渡るほどの怒号をあげて守備軍に襲い掛かる。


オリオンの猛攻に、
なす術もなくなぎ倒されていく兵士たち。

善戦虚しく形勢逆転となってしまうかという時、
エルザはオリオンに向かって突撃をかけた。

未だ戦意を失っていない兵もそれに続いていく。
オリオンが逃げ惑う兵士に気を取られていた隙をつき、
エルザは馬から飛び降り、鞭でオリオンの右脚を縛りあげた。

そして僅かに動きの止まった右脚に狙いを定め、
全身の力を込めて、
右足の甲を両手に握った槍で突き立てる。

槍は足の甲を貫いて地面まで突き刺さり、
オリオンの右足を完全に止めた。

オリオンが右足の激痛に悶える中、
兵たちが一斉に切り付ける。
しかしそれでも致命傷には及ばず、
多少の傷しかつけることが出来なかった。

痛みから我にかえったオリオンは右足に突き刺さった槍を引き抜き、
棍棒で兵士たちを弾き飛ばして立ち上がった。


その目は怒りに燃えさかり、
槍を突き立てた赤鎧の騎士に狙いを定めた。


次の瞬間、
すさまじい威力でエルザに向かって棍棒を叩きつけてくる。

狙われていることを察していたエルザは素早くその攻撃に反応し、
棍棒が落とされる一瞬の間にオリオンの足元に滑り込み、
炎の魔剣で右足に深く切り付けた。

切られた傷跡からは、
光の粒子が血のように溢れ出てくる。

エルザの隊に徹底的に狙われている右足からは、
その光の粒子が幾筋も流れ出ていた。
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