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EP1_1章

1章_11 星晶石の武器

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 カムランは態度の悪い協力者を目で見送ると、
マルスに伝えられた鍛冶屋を目指すことにした。

謁見の間を出て左手にある東塔、
その地下に鍛冶屋はあった。

地下へ下る階段から、
強烈な熱気が流れ出している。


降りてみると、
部屋の奥に巨大な窯が口を開けているのが見える。

そして、部屋の壁一面の武具の数々。剣、槍、斧。
どれをとっても素晴らしい出来なのが容易に解る。

そしてどの武具も、
刃の部分は微かに青みがかった色をしている。
おそらくこれが星晶石で作られている武器なのだろう。

さらに奥には、一つ部屋があった。
扉の向こうから金属を打つカンカンという音が聞こえてくる。

カムランは鍛冶師の耳に届くように、力を込めてドアノッカーを叩いた。


「すみません。マルスという騎士に紹介されて来ました。」


扉の奥で、カンカンという音が止み、
扉がゆっくりと開いた。


カムランの目の前に、たわしのような髭を蓄えた巨体の男が姿を現した。


「おお、世にも珍しく、マルス様からの紹介ってのはあんたの事だな。
わしはゲント。見ての通り鍛冶職人だ。

城のお抱えってことは、当然にこの街一番の刀匠である訳だ。
ここに来たからには、理由は一つだろう。
そんで、あんたさんの得物はなんだね。」


身体の大きさに負けず劣らず、鍛冶仕事中であっても問題なく届きそうな太い声だ。


「話が早くて助かるよ。俺はカムラン・リード。
ここでの仕事に貴方の武器が欲しい。
この斧槍と、こっちの剣が得物だ。」

カムランは背中の斧槍と、
腰に備えた剣を工作机に置いた。

ゲントは眼を丸くしてその武具を手に取った。

「随分おもしれえ得物だな。この斧槍は、ハルバードだな。
こっちの剣は初めて見るが、刃の曲がり具合を見るにこの地の物じゃねえ。
どっちも舶来品だな。何処でこさえたんだか知らねえが、

どっちも珍しい品だ。これの替えとなると、
此処にもあるかどうか正直怪しいぞ。

それに明日すぐに使うとなれば、打つわけにもいかん。
とにかく、ここにあるモンを見てってくれ。」

カムランは、ゲントに案内されて壁一面に並んだ武具を見て回った。

どれも素晴らしい出来だが、
今まで使っていた武器とは違う剣や斧ばかりが並んでいる。

手に取ってみても、どうにもしっくりこないものばかりだった。
武器を手に取っては首を横に振るカムランを見て、
ゲントもいくつか見繕って試させたが、
なかなかこれというものが見つからなかった。

「ゲントさん、この扉の奥には何かあるかい?」
最初は気付かなかった古びた扉を見つけてなんとなく尋ねたカムランだったが、
ゲントは苦い顔で答えた。
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