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第5章

その復讐を止める者

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 僕は透明になっている魔猿にテレパシーで命令を送る。そして、魔猿にデュースを羽交い締めにさせる。魔剣ネプチューンを持たない彼は動けない。

「お、おい!止めろ!俺は王だぞ!俺が死んだらこの国はーー」
「知るか。僕はただの復讐者だ」

そういい放ち、僕は震える王へ向かいユニコーンの角を突き出した。

 しかし、その攻撃が王に当たることはなかった。
 何か、目に見えない何かが、その攻撃を止めたのだ。

「なんだ?」

僕は一度角を引こうとした。すると強い力で掴まれているようにまったく動かない。しかたなく僕はユニコーンの魔身装を解き、後ろに飛んで距離をつくる。 
そして様子を見ていると、その何か、が正体を現した。透明のガラスに色を塗りたくるように、少しずつ人間の姿が露わになっていく。
 肩甲骨のあたりまで伸びる綺麗な黒髪。そして雪のように白い肌。

「・・・シュファニー?」

それは、間違いなくシュファニーだった。しかし、どこか違和感がある。
 彼女には、表情がないのだ。怒りも、悲しみも、安堵も、何1つ感じられない。
第一彼女は透明になる固有魔法など持っていないはずなのだ。
と、考えを巡らせていると、彼女が口を開いた。

「間一髪といったところかのう」

確信する。彼女はシュファニーではない。

「君は、一体何者なんだ?」

すると、興味なさげにこちらを見る彼女。

「・・・わらわは、神じゃ。創世神トゥルーヌ。聞いたことないかの?」

「そもそもこの世界に神がいるというのが初耳なんだけど」

するとトゥルーヌは乾いたような笑いを漏らした。

「時が経つのは早いのう。お主ものようじゃし、話し相手になるのはトアリアスくらいか?まあよい。今はするべきことがあるんじゃった。降ろしてもらった礼に、万事解決してやろう」

「何をーー」

 その瞬間。エルギア王国国王、デュレイモスの首が、飛んだ。そして、悲鳴すらもあげられないまま絶命する。
 何が起きたのか理解できない。
 しかし、確かに残る証拠。
 トゥルーヌの手に、大量の血が付着していた。
 手刀で、殺ったのか?スピードが段違いすぎる。
 あながち彼女の神宣言は虚言ではないのかもしれない。
 そして、ふぅ、と息を吐くトゥルーヌ。

「・・・わらわには、救えない命が多すぎるのう。そして、伝えられない想いもな・・・。これ以上こやつの身体におると、精神に影響を及ぼしかねんな。よし、戻るとするか」

「待ってください!あなたがもし、本当に神だというのなら!教えてください!「魔呼人」とは、一体なんなんですか!」

すると、疲れたようにトゥルーヌは答えた。

「もう、お主はわらわの目指した「魔呼人」とは違いすぎる。お主の復讐が、まだ続くというのなら、わらわの言葉は意味をなさないだろう」

じゃが、1つだけ、と続けるトゥルーヌ。



 次の瞬間、シュファニーの体が崩れ落ちた。急いで僕は彼女を支える。どうやら眠っているだけのようだ。僕は安堵のため息をつく。そして同時に、大きな虚無感が僕を襲った。
 ここまでやってきて、復讐し損なった。あれほど強い覚悟を持ってきたというのに・・・。それに訳の分からないことが多すぎて、頭が破裂しそうだ。
 
しかし同時に、僕は新たな夢を手に入れた。

「デュースさん。お願いがあります」

 デュースは、分かっている、とでも言うように、静かに頷いた。
 
 
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