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第5章

王宮への奇襲

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 夜中。レイランの透明化の力を使い、僕は王宮に忍び込んだ。マリアシアの魔法で魔法障壁を中和し、物理障壁はガブロディアを魔装し、最低限の力で突破する。
 そして、王宮の中心まできたところで、僕は数千の「魔」を召喚する。ゴブリンやオーク、悪魔やドラゴンなど、多種の「魔」が、王宮中に広がっていく。
「君たちは陽動だ!誰1人殺すな!王の死後、すぐに国が滅ぶと他国を滅ぼす時に利用できないからな。王は僕が必ず殺す!」

 騒ぎに気付いた王宮の魔術師たちが増えてきたところで、僕は顔が隠れるフードを被ったまま、王宮の外に向かった。途中で会った魔術師は、ガブロディアの魔装で無力化する。王宮魔術師ともなれば相当の腕前を持つが、さすがにガブロディア相手だと勝負にならない。

 と、そこで身体中に冷気を感じた。僕はガブロディアの脚力を使い、そこから飛び出す。王宮の幅のある廊下だったので助かった。僕が元いた場所には、氷の塊ができていた。
「・・・死の、吐息?」
マリアシアが多用する究極魔法だ。それを使えるような高レベルの魔術師は、この王宮にも数人しかいない。僕は魔法が放たれた方向を見る。
「貴様、王の命を狙うとは何事だ!」
そう言ったのは、短く切り揃えたブロンドの髪の男。王宮魔術師団副団長、ハルベルトだ。
 「ルキア!」
僕は少女の姿をした「魔」を召喚し、援護を頼む。マリアシアの弟子だった彼女は、かなりの魔術師だ。
「やはり貴様、召喚術師か!」
僕はその質問に答えず、地面がへこむほどの力で飛ぶ。そして、一瞬で距離を詰め、ハルベルトに殴りかかった。しかし、直前で氷の壁に防がれる。氷の壁はすぐに吹き飛んだが、僕の勢いも落ちた。
「無詠唱魔法か、厄介な」
さらにそこに、ハルベルトが放った風の刃が襲いかかる。それをルキアが水の魔法で防いだ。このままでは埒があかないと思った僕はガブロディアの魔装を解いた。そして実体を持って現れたガブロディアに、時間稼ぎを頼む。ガブロディアはハルベルトに向かっていく。
「ルキア!合同魔法だ。魔装!マリアシア」
僕を青紫の魔力が包む。
「光、水複合属性究極魔法!」
「風属性究極魔法!」
僕とルキアの魔法が重なり、白く輝くエネルギーの塊が生まれる。直径5メートルはあるその塊は、ぶよぶよと揺れながら、収縮していく。
「「光、水、風合同属性究極魔法!白銀光線!!」」
その塊を僕はハルベルトに向かって放つ。ガブロディアは、ちょうどいいタイミングで飛んで避けた。
 白銀の光線は、小さな無数の爆発を生みつつ流星のように線を引き、真っ直ぐと進み、ハルベルトを穿つ。そして壁を突き破り、王宮の外にまで影響を及ぼした。空間に穴があいたかのように王宮に円柱の隙間ができた。
「お主。誰も殺すなと言っておったではないか」
ガブロディアが駆け寄ってきて言う。
「殺してないよ。ほら」
僕はそう言いながらハルベルトの方を指差す。そこには、意識は失っているものの、怪我1つない体があった。
「魔力切れみたいですねー」
ルキアが言う。
「ああ。ハルベルトは自分へのダメージを魔力の大量消費によって無効化する固有魔法を持っているんだ」
なるほどー、とルキアは呟く。
 ハルベルトは僕が王宮にいた頃からあまり実力が変わっていないようだった。
 
あの人も、殺すことなく無力化できればいいが。




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