2 / 4
第1章 魔界編
与えられた者と与えられなかった者
しおりを挟む
ある日、とある高校の教室から、30人の生徒が1人残らず消えた。
彼らが目を覚ました場所は、異世界の王城の中だった。
そう、彼らは異世界に召喚されたのだった。
そして、王から説明を受ける。
異世界から召喚した人間は強力な魔法と武器を与えられている。そのため、現在魔界より侵攻してくる魔王を退ける、勇者になってもらいたいと。
自分に与えられた魔法と武器に夢中になる生徒たちは、快く勇者になることを承諾する
一方魔界に、人知れず召喚された少年がいた。王の召喚の誤作動により、魔法も武器も、情報すらも与えられずに敵の本拠地に召喚されてしまった彼は、果てしない荒野で、恐怖に打ちひしがれていた。
「な、なんだよ!ここは!空は赤いし、荒野だし!さっきまで教室にいたっていうのに、どうなってんだよ!」
彼の名前は黒髪 龍。運動も、学力も、いたって平凡な少年だ。そして、その少年にさらなる危機が訪れようとしている。
「な、なんだよあれぇ!」
龍は、三匹のゴブリンに出くわしてしまった。ゴブリンは人間の倍の体格を持つ残忍な魔物だ。勇者として召喚された他のクラスメイトであれば、大した敵ではない魔物だが、普通の人間のまま召喚された彼にとって、それは熊と戦うようなものだった。
「ひっひぃぃぃ!やめろ!よるな!嫌だ!」
そしてゴブリンたちは、錆びれた剣を手にゆっくりと近づいてくる。どうやって殺してやろうかニヤニヤ考えながら。
龍は、恐怖のあまり体が震えて座り込んでしまう。
そこに、ゴブリンの足が飛ぶ。数メートルも蹴り飛ばされた龍は、嘔吐する。
「ぐはっ!はあはあ。なんなんだよ、いったい」
痛みで失神しそうになるが、なんとか持ちこたえる龍。ゴブリンの中の一体が、彼を片手で持ち上げて、サンドバックのように残りの二体が殴る。身体中から血が飛び出し、骨に幾つかのヒビが入る。そして、地面に叩きつけられ、意識は飛びかけた。そして、そこに、剣が振り降ろされる。
朦朧とする意識の中で、龍はただひとつのことを考えていた。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
そしてどこからか、女の声が聞こえた。
『ならば、戦え』
そうだ。死にたくないのなら、このわけの分からない世界で、生きるためには。
どんなに恐ろしくとも、どんなに苦しくとも、その体が動かなくなるまで、
戦うしか、ない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
龍は雄叫びを上げ、振り降ろされた剣を二本の手で、掴む。かなり錆びれていたため、切れ味のない剣だった事が幸いした。
「死んでたまるかぁぁぁぁぁぁ!」
そして、倒れた状態のまま、剣を持つゴブリンの手を思い切り蹴り飛ばす。その反動で、5メートルほど後ろに飛び、三匹のゴブリンから距離をとる。
「へへ!奪ってやったぜ。お前の武器!」
そしてその手には、ゴブリンの持っていた剣があった。
龍は、ぎこちなく剣を構える。一度も剣など握った事のない龍にとって、その剣はかなり重いものだったが、少しだけ恐怖を緩和させた。
龍は、ゴブリンに向かって走り出した。そして、剣を持たないゴブリンに切り掛かる。首を狙った一撃は、筋力がなかったために狙いがそれ、肩に当たる。傷は付けられなかったが、よろけせる事に成功した。龍はそこに体当たりする。するとゴブリンはバランスを崩し、倒れる。龍はその顔面に剣を突き立て、貫くというより、潰すように顔面にぶち込む。そして一体のゴブリンを倒す事ができた。
しかしそこに、二体目のゴブリンの剣が飛ぶ。鈍い音を立てて龍の横腹は叩かれた。そのまま跳ねながら数メートル飛ばされ、倒れる。
「ぐぁっ!クソが!」
口から血が溢れる。もう体は限界だった。一ミリも動く気がしない。このまま殺されてしまった方が、もしかしたら楽なのかもしれない。
しかし
それでも
「まだ、死ぬわけにはいかないんだぁぁぁぁ!」
その叫びとともに、傷口から大量の血を噴きださせながら立ち上がった龍。近づいてきていたゴブリンの足を全力で叩く。少しだけ足にめり込んだ剣は、そのままゴブリンを転ばせる。そして、その横にいたゴブリンもろとも倒れる。そこに剣をつき出そうとした龍を、ゴブリンの足が蹴り上げる。そうして龍は数メートル上空に浮いた状態になる。龍は、どうにか上下感覚をつかむと、重力のままに落ち、その力を利用して立ち上がりかけのゴブリンの頭を砕いた。そのまま横に一閃し、完全に立ち上がったゴブリンに斬りかかる。しかしその攻撃はゴブリンの持つ剣に阻まれる。
重い剣を振り続け、はちきれそうになる腕にもう一度力を入れる。そしてーー。
「・・・はあはあ、やったぞ、やってやったぞ!・・・あのキモいの、倒してやったぞ!はっはっ!見たかよ俺の勝ちだあ!」
龍は朦朧とする意識の中で、勝利の喜びに酔いしれていた。
しかし、彼は気づいていない。ここは、魔物の巣窟である、魔界だという事を。そして、さらなる絶望が、すぐそこまで迫っているという事を。
彼らが目を覚ました場所は、異世界の王城の中だった。
そう、彼らは異世界に召喚されたのだった。
そして、王から説明を受ける。
異世界から召喚した人間は強力な魔法と武器を与えられている。そのため、現在魔界より侵攻してくる魔王を退ける、勇者になってもらいたいと。
自分に与えられた魔法と武器に夢中になる生徒たちは、快く勇者になることを承諾する
一方魔界に、人知れず召喚された少年がいた。王の召喚の誤作動により、魔法も武器も、情報すらも与えられずに敵の本拠地に召喚されてしまった彼は、果てしない荒野で、恐怖に打ちひしがれていた。
「な、なんだよ!ここは!空は赤いし、荒野だし!さっきまで教室にいたっていうのに、どうなってんだよ!」
彼の名前は黒髪 龍。運動も、学力も、いたって平凡な少年だ。そして、その少年にさらなる危機が訪れようとしている。
「な、なんだよあれぇ!」
龍は、三匹のゴブリンに出くわしてしまった。ゴブリンは人間の倍の体格を持つ残忍な魔物だ。勇者として召喚された他のクラスメイトであれば、大した敵ではない魔物だが、普通の人間のまま召喚された彼にとって、それは熊と戦うようなものだった。
「ひっひぃぃぃ!やめろ!よるな!嫌だ!」
そしてゴブリンたちは、錆びれた剣を手にゆっくりと近づいてくる。どうやって殺してやろうかニヤニヤ考えながら。
龍は、恐怖のあまり体が震えて座り込んでしまう。
そこに、ゴブリンの足が飛ぶ。数メートルも蹴り飛ばされた龍は、嘔吐する。
「ぐはっ!はあはあ。なんなんだよ、いったい」
痛みで失神しそうになるが、なんとか持ちこたえる龍。ゴブリンの中の一体が、彼を片手で持ち上げて、サンドバックのように残りの二体が殴る。身体中から血が飛び出し、骨に幾つかのヒビが入る。そして、地面に叩きつけられ、意識は飛びかけた。そして、そこに、剣が振り降ろされる。
朦朧とする意識の中で、龍はただひとつのことを考えていた。
死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
そしてどこからか、女の声が聞こえた。
『ならば、戦え』
そうだ。死にたくないのなら、このわけの分からない世界で、生きるためには。
どんなに恐ろしくとも、どんなに苦しくとも、その体が動かなくなるまで、
戦うしか、ない。
「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
龍は雄叫びを上げ、振り降ろされた剣を二本の手で、掴む。かなり錆びれていたため、切れ味のない剣だった事が幸いした。
「死んでたまるかぁぁぁぁぁぁ!」
そして、倒れた状態のまま、剣を持つゴブリンの手を思い切り蹴り飛ばす。その反動で、5メートルほど後ろに飛び、三匹のゴブリンから距離をとる。
「へへ!奪ってやったぜ。お前の武器!」
そしてその手には、ゴブリンの持っていた剣があった。
龍は、ぎこちなく剣を構える。一度も剣など握った事のない龍にとって、その剣はかなり重いものだったが、少しだけ恐怖を緩和させた。
龍は、ゴブリンに向かって走り出した。そして、剣を持たないゴブリンに切り掛かる。首を狙った一撃は、筋力がなかったために狙いがそれ、肩に当たる。傷は付けられなかったが、よろけせる事に成功した。龍はそこに体当たりする。するとゴブリンはバランスを崩し、倒れる。龍はその顔面に剣を突き立て、貫くというより、潰すように顔面にぶち込む。そして一体のゴブリンを倒す事ができた。
しかしそこに、二体目のゴブリンの剣が飛ぶ。鈍い音を立てて龍の横腹は叩かれた。そのまま跳ねながら数メートル飛ばされ、倒れる。
「ぐぁっ!クソが!」
口から血が溢れる。もう体は限界だった。一ミリも動く気がしない。このまま殺されてしまった方が、もしかしたら楽なのかもしれない。
しかし
それでも
「まだ、死ぬわけにはいかないんだぁぁぁぁ!」
その叫びとともに、傷口から大量の血を噴きださせながら立ち上がった龍。近づいてきていたゴブリンの足を全力で叩く。少しだけ足にめり込んだ剣は、そのままゴブリンを転ばせる。そして、その横にいたゴブリンもろとも倒れる。そこに剣をつき出そうとした龍を、ゴブリンの足が蹴り上げる。そうして龍は数メートル上空に浮いた状態になる。龍は、どうにか上下感覚をつかむと、重力のままに落ち、その力を利用して立ち上がりかけのゴブリンの頭を砕いた。そのまま横に一閃し、完全に立ち上がったゴブリンに斬りかかる。しかしその攻撃はゴブリンの持つ剣に阻まれる。
重い剣を振り続け、はちきれそうになる腕にもう一度力を入れる。そしてーー。
「・・・はあはあ、やったぞ、やってやったぞ!・・・あのキモいの、倒してやったぞ!はっはっ!見たかよ俺の勝ちだあ!」
龍は朦朧とする意識の中で、勝利の喜びに酔いしれていた。
しかし、彼は気づいていない。ここは、魔物の巣窟である、魔界だという事を。そして、さらなる絶望が、すぐそこまで迫っているという事を。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会
もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる