転生したいらない子は異世界お兄さんたちに守護られ中! 薔薇と雄鹿と宝石と

夕張さばみそ

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番外編(ネタ)

三種族的な求婚方法でサイアン様に迫るコーラルさんと巻き込まれた三種族の話(ポロリもあるよ)後編

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 キリは持ち前の知識(主にヤクモ・トバリ先生の本から)を披露できる機会に、ここぞとばかりに語りだす。

「華族の国では、最近、ヤクモ・トバリ先生の小説で出てきた愛情表現がスゲー流行っててさぁ~? ま、華族以外のヤツらは知らねーかもだけど『壁ドン』っつー奥義があんだよなぁ~?」

 ドヤ顔で宣言するも、華族のローゼンが壁ドンとは何かと問いかけてきそうになったのでキリは両目を『カッ!』と見開き、無言の圧で質問を止めた。

 華族の国の筆頭が流行りの恋愛情報を知らんとか、設定が破綻するから知ってるふりをしていてくれ! 頼む我が主! とオーラで語る。(もう手遅れ感があったが)

 従者の鬼気迫る空気にローゼンは無言で目を逸らして頷いていたが……。

 まぁ、若者しか知らない方法なので、450歳とかいう青年とオッサンの境目ギリギリのコーナーを攻めてる年齢の攻は知らないかもしれないという特大失礼な思考をしたキリはローゼンに実践を頼んだ。

「つーワケでローゼン様! 壁ドンしてみてください!」
「……は?」

 まさか話をふられると思っていなかったローゼンが驚いていた。

「断る。お前がやれ」

 そして普通に拒否られた。

 だがキリはめげなかった。

「それがローゼン様、壁ドンって、ある程度の体格の良さが無いと出来ない究極奥義なんで頼みますよ。あとオレが壁ドンしても見てるとか誰の潤いにもならない、心がイテェ事態になるだけなんでホントマジで頼みますよ」

 そこでヒルシュが「まるでロゼ殿なら誰かの潤いになるかのような口ぶりですねぇ……」とナチュラル大暴言を吐き、ローゼンが無言でヒルシュの顔面を掴んで締め上げていた。
 どっちも樹族に見えてくる脳筋さである。

 それはさておき、壁ドンとは華族の国の恋愛小説で流行中の『イケメンに壁際に追い詰められて両手で行く手を阻まれる』という超必殺技だった。

 そのイケメンの手の中の固有結界と至近距離から放たれるイケボの破壊力により、女の子は吊り橋効果で恋に堕ちるらしい。


(例)
 華族女「カンチガイしないでよね! アンタの事なんて全然、好きじゃないんだからね!」

 壁にドンッ

 華族男「おもしれー女……。お前、俺と付き合えよ?」←イケボ
 華族女「(ドキッ……! な、何なのコイツ……!? でも……ドキドキが止まらない……?)」


 キリが説明するも、ローゼンから「暴行ではないか……」と言われた。

「いや、暴行て! ほんの少し前に女をムチで叩こうとしてたローゼン様にだけは言われたくないですよ! まぁ、そういうワケなんでローゼン様の世界最高の壁ドンで全存在を発情させていきましょ! 全ての生きとし生けるモノをメスにして抱き潰す最凶の攻様ポジを得てBL界の帝王になっていただかないと!(ムリとは思いますが!)」
「待てキリ! その言い方では、まるで私がこの世の全てにもよおす危険な存在のようではないか!」
「アンタが作中で微塵ももよおさないからBL作品としての存在意義を疑われてんじゃないですか! もっと攻めたことしていきましょうよ! 攻なんですから!」

 ローゼンが嫌そうにしていたが、そもそも彼は本編で『心から好きになった者としか結婚しない』という、結婚や恋愛に夢見ている450歳なので、仮とはいえ好きでもない相手に愛情表現はしたくないと頑なだった。

 しかもそれでいて幼児(雪夜)を溺愛しており、雪夜が何かする度に喜んだり曇ったりと本編で誰よりも情緒が忙しい彼が結婚願望をもつのは割と絶望的に思えた。


「じゃあ、もうローゼン様が一番大切にしている雪夜に壁ドンとかでいいんで(妥協)やってみてくださいよ」


 キリは昼寝から起きない雪夜(ヨダレダラァー)を抱えてローゼンに見せると、彼は露骨に言葉を詰まらせた。

「い、いや、雪夜の事は何よりも大切で、私の命と引き換えにしても惜しくは無い程に真に愛いが、庇護愛と恋愛は全く違うではないか。それに将来、雪夜が何処ぞの者と婚姻を前提とした交流を考えた場合、私が壁ドンなるものを行った事が雪夜の婚姻問題に微小であろうとも影を落とす事になっては雪夜に申し訳が立たぬ」

 六文字で言えば『絶対やらない』で済む事を長文で拒否られた。(華族あるあるの回りくどい言い回し)

 キリは内心で『グダグダめんどくせぇ450歳児だな! 話が進まねーじゃないですか!』とキレた。
 そして気づいたら口に出していた。

「攻はグダグダ言わない! 受をヤると思った時には行動が終了しているモンなんですよ! とりあえず壁ドンとか、自分が一番カワイイと思う存在にやれば正解なんで! ホラ! はよ! 攻行動! 攻行動!」
「いや、そんな雑な判定で善いのか?」
「そういうモンで雑で善いものなので! ほら! ちゃちゃっと雪夜に壁ドンしてくださいよ! こんな微妙な所で尺を使うワケにいかないんで!」

 尺の為に主を急かす従者が何処にいる系の文句を言われたが、キリはローゼンの眠れる野生(攻としての底力)を解き放って存在感を出してもらいたかった。

 だが、その気合いが先走るあまり、キリは重要な事を見逃していた。


 昼寝から起きた雪夜に木の傍に立たせるも……。


「ばっちこーい!」

 雪夜がキャッチャーのように両手をバシバシ合わせてテンションを高くしていた。

 お前、さっきまでコーラル相手にドラネコ化してたのに、何でそんな元気になってんだと思ったが、どうやら夢の中でクッキーを食べて機嫌が直ったらしい。

 ローゼンが試しに木に両手をつけるてみるも、凄まじい身長差だった。
 困惑するローゼンの両腕の遥か下では雪夜がノリノリでシャドーボクシングをしている。

「シュッ! シュッ! ひだり! みぎ! ひだり! まんなか!」

 しかもシャドーボクシングに夢中になっていて大人しくしていない。
 更には一人芝居までやり始めた。

「コーチ! ぼくのパンチでせかいをとります! そしてキリのマウスピースをとばします!」
「ダメだぞ! ユキヤ! そんなパンチじゃ、せかいは、つかめない! ひたすら、えぐりこむように! ウツベシウツベシ!」
「わかりました! ハーッ!(気合い)」

 五歳児なのに無駄に設定にこだわっている。
 が、ローゼンはヤる気まんまんな雪夜によって急所の足を殴られないように、かつ雪夜を傷つけないように、長い両足で華麗にステップを踏んで神回避していた。
(華族と樹族の足は子供に殴られただけでも悶絶するぐらいダメージを受ける最大級の急所) 

 キリの眼前では世界の頂上テッペンを目指す幼子と、その子の繰り出すパンチをさり気なくスタイリッシュに避けるイケメンという、謎の光景が広がっていた。

(なんだこのBL要素が絶命している光景は……って、今更だけどさぁ……)

 そんな身長差がありすぎる壁ドン(?)の最中にシャドーボクシングに飽きたらしい雪夜はローゼンを見上げた。
 その後に目の前にあるローゼンの足へと視線を落とす。

 ローゼンの両足をジーッと見てから雪夜は何を考えたのか、走りだした。
 まさかローゼンの両足に体当たりでもするのかとキリが制止すべく身構えるも、雪夜は笑顔で言い放つ。

「は~い、とおりま~す!」

 そう言いながらローゼンの長すぎる股下に向けて突進し、そのまま普通にローゼンの足の間を走り抜けて通り過ぎていったのだ。

 誰もが事態に唖然としている中、雪夜はローゼンの足の間、長い髪、マントを順にバサバサと通り抜け、後方で

「トンネル、じょうずにとおれました~!」

とエッヘン顔をしている。

 違う、そうじゃない……とキリは言いたかったし、ローゼンも自分の股下を普通に走り抜けられて唖然としていた。

 が、雪夜は完全に『ローゼンさまと、トンネルごっこであそんでもらっているぼく』になっているらしく、またローゼンの前方に戻って来て股下をくぐろうとしている。
 そしてローゼンもそのままの姿勢で動けずにいる。

 雪夜が2周目に入ろうとしていたのでキリは急いで止めた。

「雪夜! やめろ! そうじゃねぇ! ローゼン様の股下100キロメートルはそう使うモンじゃねぇ!」
「え……?」

 何かダメな事をしてしまったのかと雪夜が動揺し始める。
 そして雪夜がローゼンを見上げて目で問いかけていた。

「……」
「……」

 しばし見つめ合った後、雪夜の不安げな表情にローゼンが目蓋を閉じて首を振ってから、目を見開いて強い口調で雪夜とキリに向けて言い切った。

「いや、そなたは何も間違ってなどいない!!!!!!!!!!」
「ろ、ろーぜんさま……!//////」
「ちょ、ローゼン様!? 何言ってんすか! 真顔で乱心するの止めてくださいよ!」

 雪夜が目を輝かせ、キリは鋭利にツッコむ。
 しかしローゼンは雪夜の表情を見て最高の攻顔で頷くと、再度断言した。

「案じるな、雪夜! 正答中の正答だ!!!!!!!!」

 何言ってんだこの主! とキリはローゼンの吹っ切れぶりに困惑したが、ローゼンは雪夜の頭を光速でナデナデしながら空いた片手を握り締めて何度も励ましている。

「流石は雪夜だ……。この私の難解な意図を汲み取り、即座に行動に移すとは……! 僅か五歳にしてこの叡智……! 恐らくは華族の国……いや、三国の何処の国の五歳児も雪夜の智謀の前には敵わぬであろうな……。将来は秀でた文官か軍師の道も可能であろう才覚……」

 何であの特に何も考えていなかったであろう雪夜のトンチキ行動をここまで全力で褒めちぎれるのかキリは疑問だったが、力技で将来有望な天才児の流れにされている。

 その溺愛を拗らせたローゼンの撫ですぎの摩擦で雪夜の頭から白い煙がシュワワァア……と出始めていたが、雪夜はテレテレしながら喜んでいる。(お前の頭どうなってんだよとキリはヒヤヒヤしたが)

「ホッ……! よかった! ぼくのトンネルくぐりはアヤマチではなかったんですね!」
「フッ。そなたの成す事にあやまちなぞあろうはずもない。さあ! 心ゆくまで存分にくぐれ!」

 どうやらローゼンは『雪夜が哀しむくらいなら世界の道理の方を曲げれば善いではないか』という終末思想に至ったらしく、雪夜を甘やかしまくっている。


 その後、もう壁ドンの展開など忘れているらしい雪夜は「ヒャッホ~イ!」と大喜びで股下くぐりをやっている。  
 ローゼンも雪夜が通過する度に雪夜を独り占めに出来て嬉しいのか、髪やら服の袖から薔薇の花が咲き誇ってはボトボト落ちており、あたり一面が薔薇だらけになっていた。

 だがキリは『俺……何を見せられてんの……?』状態だった。

 そこらへんを花まみれにしながら、休日に我が子と遊ぶお父さん状態のローゼンに攻としてそれでいいんですかという疑問は無くもないが、ローゼンは本編で曇ったり刺されたりキレてばかりだった故に番外編で幸せを噛み締めている姿にツッコミがし辛い。

 しかしこれはローゼンの股下が異常に長いから遊びとして成立しているが、凡人の男性ならば五歳児にドコをとは言わないが頭突きされて何がとは言わないが精神的に死んでいる可能性を思うと、雪夜に教えてはならない禁断の遊びだと思う。

 現に雪夜はローゼンとトンネルごっこをしながらも、こちらをチラチラ見ている。
 キリは作中の誰よりも空気が読めるので、瞬時に察した。

『キリのトンネルの方が狭そうで楽しそう』系の思考になっていると……!
 猫と幼児は何故か狭い場所に突撃したくなるのをキリは理解していた。そして戦慄した。

(冗談じゃねぇ! 手加減ゼロの幼児タックルを第二の急所に受けるとか、マジでこの話、どこを目指してんだよ! 正統派BLを目指せよ!)

 そんな無理筋な未来を願うキリの悩みなど露知らずでローゼンと雪夜は遊んでいる。


 その腐になれずに負が連鎖しまくる状況を強引に断ち切るべく、キリはロカやコーラルらに向き直って言い切った。

「……つーワケで、これが華族の国の壁ドンだよ! スゲーだろ……って、あれ? コーラルは?」

 ロカが事態をメモりまくってるので、ヒルシュ(ニコニコ顔で雪夜を応援していた)に問うとヒルシュは遠くを指差した。

 その指の先には、通りすがりのサイアンの股下めがけて怒涛のスピードで走り込むコーラルが確認できた。

「ちょ、コーラルのヤツ! 何してんのアイツまじで!?!?!!?!?」

 キリが絶叫するも、ヒルシュが言うには『壁ドンは好きな男の股下を通りぬける行為』と何をどうしたらそういう着地点に至るのかわからない曲解の果てに、サイアンを見つけて飛んで行ったという。

 ハイヒールで大地を抉りながら駆けるコーラルの靴音が離れた位置にいるキリ達にまで聞こえた。
 恐らく追われているサイアンは、もっと爆音で迫られている事だろう。

「サイアン様! アタイに股下、くぐらせてください! そしたらアタイとの恋の迷路に堕ちますからね!」カカァ!カカァ!(ハイヒール音)
「ウワーーーーーーーーー!! 落ち着けコーラル! 迷ってるのはアナタの理性の方デス!」
「アタイはサイアン様のカラダの事しか考えてないですから迷うわけないんで!」ガカァッ!ガカァッ!(ハイヒール音)
「ウワァァアアアーーーーーーーーーー!!(涙声)」

 ラスボスが涙目で逃げていた。

 サイアンの股下もローゼンに負けず劣らず長いので通れるだろうが、それは幼児の全長で可能なレベルであり、普通に大人のコーラルが大人のサイアンの股下なぞくぐろうとすれば通報案件となるだろう。

 その教育に悪い光景を見せないようにローゼンはマントをさり気なく広げて雪夜の視界から隠すというチャイルドフィルター(物理)で守護っていた。
 そんなローゼンの姿にキリはホロリとする。

(ローゼン様……! 華族的に誰かの引き立て役とか背景扱いとかゼッテー嫌な性分なのに、雪夜に不適切映像を見せない為に、ご自分を盾になさるなんて……)

 主の成長に涙しかけたが、そこでヒルシュがノコノコ出て来て自分の服のすそまんでめくりだしたのでキリの落涙は瞬時に蒸発した。

 ヒルシュの服は大きな布を纏ったような作りなので、下手したら見えてはいけない場所まで見えかねない。

 雪夜チャイルドを有害なものからフィルタリングしてる真ん前でヒルシュがやらかそうとしているのだ。

 鍛え上げられた白い太股が見えかけた瞬間、キリとローゼンは光の速さでヒルシュのたくし上げる腕を掴んで蛮行を止めた。

「ちょ! 何してんですかヒルシュ様!! これ全年齢なんでそういう都条令(華族の国の)に引っかかること止めてくださいよ!!」
「ヒルシュ貴様この阿呆が! 無垢な幼子の前で破廉恥な振る舞いをするな殺すぞたわけが死ね!」

 ヒルシュはキリの制止とローゼンの罵詈雑言を受けながらも頬を膨らませる。

「ロゼ殿ばかりズルイです! わたくしも雪夜クンに股くぐりで遊んでもらいたいのです!」

 どうやらヒルシュもローゼンと雪夜がやっていたような遊びをしたかったらしい。

 が、ローゼンは華族の国の最高級の仕立てのスタイリッシュ最高級ズボン姿だが、ヒルシュはそうではないというか、むしろ穿いているのか穿いていないのかすら不明だった。

 キリとローゼンは顔を見合わせ、また視線で会話する。

(あ、あの~、ローゼン様、ヒルシュ様って、穿いてましたっけ……? ちょっと聞いてみてくださいよ!『そなた、今日のパンツ、何色~?☆彡』みたいに気軽なカンジで!)

(断 る! というか、そんな下らん内容、考えた事すらないし考えたくもない上に何故に私がヒルシュの下穿きについて問わねばならんのだ!)

 そんな風に揉めていると、雪夜が自分の短い両足とローゼンやヒルシュの下半身を見比べながら、両手をあげたY字ポーズで目を輝かせながら言い出した。

「ローゼンさまとヒルシュおにいさんがいてくれるから、トンネルごっこがいっぱいできて、ぼくはウレシイです!」

 ローゼンだけでなくヒルシュまで遊具扱いしだした。
 しかしその雪夜の台詞と笑顔にローゼンとヒルシュが太陽を直視したかの如く眩し気に目を細めている。

「雪夜……ッッ!」
「雪夜クン……!」

 二人同時に落とした! とキリが戦慄していると、そこにコーラルを振り切ったサイアンがイキナリ雪夜の眼前に着地した。

 次から次へと忙しくて忘れていたが、そういえばコーラルとサイアンの話だったと思い出す一同にサイアンは乱れた呼吸と帽子を正しながら、雪夜に向き直った。

 すかさずローゼンとヒルシュが身構えるも、サイアンは二人など眼中に無いとでも言わんばかりに雪夜の前でポーズをとる。
 皆を置いてきぼりにするサイアンの行動だが、彼は構わずに雪夜に話しかけた。

「トンネルごっこならそこのバラ野郎や鹿野郎よりも、作中で最も足が長いワタシと遊んだ方が楽しいデスヨ!」
「え……」

 雪夜は戸惑いつつも、無意識にチラ……とサイアンやローゼン、ヒルシュの足を見ていた。

 こ、こいつ、攻の足の長さを見比べてやがる……! とキリが引く中、ローゼンとヒルシュがポッと出のサイアンに負けじと、雪夜の前でポーズをとった。
 何故かジ●ジョ立ちで。

「ふざけるな! 華族の国で随一と言われた私の股下に貴様ら如き下郎が敵うとでも思っているのか!」

「わたくしも樹族の国で最強の破壊力をもつ足と言われましたので負けられません!」

 そんなローゼンとヒルシュにサイアンは悪党スマイルで応える。

「フッ……、ワタシのこの計算され尽くした愛され美ボディに、ナルシストキングダムの華族&肉体言語が公用語の樹族如きが越えられるとは、とてもとても思えマセンねぇ~?」

 足の長さとか関係ないディスり合いが始まった。
 しかも最終的に「雪夜に選ばれた男が勝者」という決闘スタイルになったようだ。
 ローゼン、ヒルシュ、サイアンが居並んで雪夜に呼びかける。

「雪夜! 私はそなたへの愛ならば誰にも負けぬ!」

「雪夜クーン! ロゼ殿や、この殴ったら不味い方よりも、わたくしの方が生活力がありますよ~!」

「ボウヤ~、ワタシならキミを傷つける糞どもをブチ殺しまくれマスヨ~!」

 やたら顔の良い男達が、やたら格好良いポーズで居並びながら告ってる姿にキリは一人だけ白黒映像になっていた。

(オレ、マジで何を見せられてんの……?)

 しかし雪夜は「はわわ……!」と、トンネルごっこの相手を選び放題な環境に嬉しそうだったが、傍から見ていると幼児の前でジョジ●ョ立ちしている謎集団にしか見えない。

 その幼児(雪夜)は、ポーズをとってるイケメン達の足元をチョロチョロ走り回って嬉しそうだ。

「はわわわわ! す、すごいアシのながさ……! なんとゆう……なんとゆう、おおばんぶるまい!」

 意味がわかってないであろうに、何となく意味がわかる台詞にキリはイラッとしたが、キリ以外の全員は雪夜にチヤホヤされているのが嬉しいのか、満足げだった。

 そしてロカさんはそれを楽し気にスケッチしているし、もうこの時空を何処からつっこめばいいのかキリにはわからなかった。


 結局、順番に全員の股下くぐりをしている間に戻ってきたコーラルにサイアンが捕獲されかけて退避したり、ローゼンとヒルシュがお前の方が雪夜が通過した回数が多いとか言いながら拳で語りだしたので、揉めている間に雪夜の興味はロカのスケブに夢中(下書きなしの猛者)になったのか、ロカに話しかけていた。

「ロカおにいさん! ぼくもローゼンさまたちみたいに、ななとうしんにしてかいてください!」
「ああ! お安い御用だ! ふふ……200年前にオンリーイベントに参加した時の事を思い出すなぁ……」
「それとキリがナカマハズレにされるとかわいそうだから、ななとうしんにしてあげてください!」

 このガキャァ……とキリはイラッとしたが、雪夜はロカとキャッキャウフフしながらお絵描きを始めている。

 最終的にロカがコーラルに彼女とサイアンのハピエンイラストを描いてあげた事でコーラルは満足したのか、安らかな笑みでイラストを抱いて五体投地した。

「やべぇ……推しサイアン様にお姫様抱っこされるとか、夢女が生涯に108回は妄想する欲望を一身に浴びちまってるじゃねーか……!」
 キリは足元で五体投地中のコーラルに溜息をついた。

「主語でけぇよ! つうか、延々とサイアンをブチ犯っつってたのに、最後の方でキレイなコーラルになって誤魔化そうとすんじゃねぇ!!」

 そんなこんなで根性が汚かったコーラルがキレイになるくらいのロカの画伯っぷりにローゼンやヒルシュまで食いつき始めていた。

「雪夜の肖像画を描け。金は幾らでも出す」
「雪夜クンとわたくしの絵を下さいな!」

 リクエストをし始めていた。

 雪夜は「ぼくにはクッキーのえをください!」と言っていたが、そこはローゼン様とかヒルシュ様の絵じゃないのかよとキリはツッコミたかった。(ローゼンが被弾で曇りそうなので黙ったが)


 というか、最初からロカがカップリング絵を描いてたら済んでいた気もする。

 しかしロカはキッパリと「ナマモノの取り扱いは慎重にするのが鉱族のルールだからな!」とかワケがわからない事を言いだしており、今回も振り回されたキリは誰よりも疲れながら、自身も草原に五体を投地するのだった……。


 完


【あとがきのようなもの】

最終話の更新が遅くなって申し訳ありません!
引っ越しと仕事が思った以上に難航した結果、更新の息の根が止まっており、本当に申し訳ありません(涙)

と、私のキャパの脆弱さは置いといて、

書籍のキャラ設定絵を拝見したのですが、それがもう皆めちゃくちゃ美しくて足が長くて、雪夜が余裕で股下潜りを出来るくらいの長さで、そんな光景を見たいという欲望から始まり、更にはサイアンとコーラルは番外編で輝く漢(漢女)なので、手心ナシで輝かせた結果、こんな展開になりました。
是非、書籍の表紙のイケメン達がジョジ●立ちしている姿を脳内で再現してみてください(ステマ)



ちなみに、樹族の国でも『壁ドン』はあります↓↓↓


(例)
 樹族女「そこの猛者! うぬの力を我に示してみろ!」ザシャアッ
 樹族男「フッ……いい度胸よのう! 喰らえ! 絶殺の奥義! 樹族爆殺殴波!」

 壁(そこらへんの木)にドーーーーーーーーーンッ

 樹族女「ペッ!(血ヘド)フン、 この程度の戦闘力の雄の子種など、我の胎には不要! 弱き者よ! 露と散れぇぇええええい!!!!!」

 グワッシャアアァアアアン!!

 樹族男「ぬわーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 Fin


……という、物理で語る樹族社会を体現した壁ドゴォンになっております。

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感想 34

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