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10.ヘアサロン

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「あっあの、最初は控えめにした方が……彼女こういう防具は初めてなので、私が最初に着たようなビキニ防具が、いいと思うんです」
「ええ~? でも彼女、Cランクでしょ。 天使ちゃんがCランクになった頃には、もうお尻全部出してたわよ。それに、すぐBランクに上がれるってさっき言ってたじゃない。Bランクにもなってお尻隠す防具なんか着けてたら舐められちゃう。もうAランクに上がる前提で、思い切って出しちゃおうよ」
 すごいグイグイくる……。師匠、あたしをかばおうとしてくれてるんだ。でも、守られてるだけじゃだめだ。
「あの! 防具のカタチについては、職人さんにおまかせしたいと思います。師匠があんな防具着て頑張ってるのに、弟子のあたしがだらしない恰好してたら申し訳ないし……。それより予算のことなんですけど、アイテム袋はどうしても必要だと思うので、防具の方は分割払いにしていただけるとありがたいんですが」
「よく決心したわね。天使ちゃんのこと師匠って呼んでるのね。美しい師弟愛だわぁ。お姉さんも頑張っちゃう。防具にアイテム袋、その次に欲しいのは魔導二輪車よね。Aランク以上の需要はそろそろ一巡するし、Bランク向けの新型を出そうと思って開発してたのよ。この際だから試作品のテストに参加してみない?」
「え……魔導二輪車も、作ってたんですか」
「そうよぉ。でも、発明したのは天使ちゃんよ。二つの車輪を前後に並べるなんて、発想がすごすぎるでしょ?」
 まさか、冒険者の最新装備の発信源が全部ここだったとは……!
「ということで、防具と魔導二輪車については私にまかせて、安心してアイテム袋を買ってらっしゃい。あ、そういえばここの道具屋に中古の掘り出し物があった気がするわ」

「あの、師匠、すみません勝手に決めちゃって」
「いえ、いいんです。それより中古のアイテム袋があるか聞いてみましょう」
「はい。あの、すみません。アイテム袋が欲しいんですけど、予算が厳しいので、中古品はありませんか?」
「ああ、あるにはあるぜ。ただ、外装が相当くたびれてるからなあ。若い女の子が使うには抵抗があるかもしれん。いっそのこと、外装を新しくするか?」
「え、外装……?」
「ああ。アイテム袋の核は空間石っていう鉱石なんだ。外装はただの袋だから作り直せるぜ。ところで、あの新しい弓でどんな獲物を狙ってるんだ?」
「え、獲物……師匠、どうすればいいんでしょう」
「そうですね。ワイバーンあたりがいいんじゃないかと思ってるんですが」
「ワイバーンか。巾着型にするなら翼膜がちょうどよさそうだな。現状渡しなら値段はこれくらい、材料持ち込みで外装を作り直すならこれくらいだ。自力でワイバーンが獲れたとすればどうってことねえだろ?」
 前のPTパーティで買ったのよりずっと安い。確かに掘り出し物だ。でもワイバーン……亜竜とはいえ竜の仲間だ。あたしに倒せるんだろうか。
「大丈夫ですよ。あの弓で、威力としては十分です。では、次の狩はワイバーンにしましょう」

「話は纏まったみたいね。今日はこれからどうするの?」
「注文した矢が出来上がるのを待ってるところなので、それまで予定はないです」
「そうなのね。それなら彼女の髪を整えに行かない?」
「えっ、髪をですか」
「そう。ちょっと前髪が重いし、わざと顔を隠してるような感じがするのよね。それじゃもったいないでしょ。魔導防具を着ける決心したんだし、魅力を全部出していきましょうよ」
 あたしは容姿に自信ないし、人に見られたくないから目立たないようにしてた。でも、魔力の封印が解けたこの機会に変わらなきゃいけない気がする。
 試験のないCランクまでならどこにでもいる中級冒険者だけど、試験を受けてBランクに上がれたとすれば上級の仲間入りだ。見られたくないなんて言ってられない。見られてもいいように、ちゃんとしなきゃ。

「わあ……」
 防具職人の案内でヘアサロンに行って髪を整えてもらい、鏡を見ると、別人のように印象が変わったあたしがいた。
「雰囲気がすごく明るくなりましたね」
 師匠にも褒めてもらって感激だ。
「ふふ、よかったわね。さ、次はカラダを整えるわよ」
「えっ、か、カラダを……」
「そう。次に行くのはエステよ」
「エステって、上流階級の婦人が行くんじゃ……」
「大丈夫よ。初めて行く人には体験コースがあるの」
 今度はエステサロンに行くことになってしまった。受付をして色々受け答えをして、防具職人の提案で体験コースの内容はウェスト引き締めに重点を置くことになってしまった。
「せっかくこんなキレイなお尻してるんだから、ウェストを引き締めて差を強調しなくちゃ、もったいないわよ」
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