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僕はこのことを藤髙先生に伝えた。
伝えた方は大雑把に「蒼井さんが危ない」とだけだったが、藤髙先生はわかったくれた。
そしたら、廊下の窓から学校の正門のところに居る男を見つけた。誰だろう?
「来たな」と一言だけ残し、藤髙先生は歩いてどこかに行ってしまった。
その男は学校に入ってきて途端に、
「迎えにきたよー!」と大声で叫びだした。
休み時間と被っていたので生徒と教師のほぼ全員が窓から首を出して、男を見た。
そしたら、蒼井さんが僕の方に全速力で走ってきた。
「アイツ、アイツなの」と今にも泣き出しそうで怯えた顔をしていた。
僕は聞かなくても蒼井さんから伝わった。
あの男がストーカーだ。
「出てきてくれよー!」と男は力強く叫び続けている。
皆んな窓からそれを見ているが、男はそんなのお構いなしだ。
教師たちはかなり慌てている。
多分、もう警察は呼んでいるはずだ。
男の前に1人の生徒がいた。
新井だ。
コイツは学校で1番危ないヤツとなっている。
新井はボクシングをやっており、前に校内で喧嘩をして相手を瀕死の状態にしたことから誰もアイツとは接しなくなった。
何をするんだ。
「何してるの?あの人」と蒼井さんは僕に聞いてきた。蒼井さんが少し回復しているからよかった。
「さぁ、わかんない」
そしたら教頭先生が「何してるんだ新井!帰ってこい!」と怒鳴ったが、新井はファイティングポーズをとっていた。
まさか、やる気なのか。
男の方は突っ立ったままだ。状況を理解していない様子だ。
新井は…やはり仕掛けた。
男は微動だにしない。
一発目から右ストレートだ。しかも顔に。
男は突っ立ったまま倒れた。
それから約10秒くらい経ち、男は起き上がった。
「なんだよお前!殺してやる!!」と叫び、懐から忍ばせていた刃渡り10cmのナイフを取り出した。
さすがにナイフは無理だろ。
新井は立ち向かう姿勢を見せた。
コイツはアホか。
男は狂ったようにナイフを振り回しだした。しかも狂ったように叫びながらだ。
右ストレートが相当効いたのか、新井を近づけさせないつもりだ。
新井は立ち向かったが、すぐに左腕を切りつけられ完全に足がすくんでいる。
男が新井の胸を刺そうと突っ込んできているが新井は動かない。
いや、動けないんだろう。
もうすぐ刺されそうになったところで、新井の後ろから人影が飛んできた。
男は後方に3mほど吹っ飛んだ。
何が起こったんだろう?
新井の後ろにいたのは藤髙先生だった。
なんで?
「すごいね、藤髙先生って」
「何が?」
「見てなかったの?藤髙先生、アイツを蹴ったんだよ。空中で」
「そうなんだ」
蒼井さんの説明はずいぶんとアバウトだが、ようするに、藤髙先生の飛び蹴りが男に炸裂したんだろう。
男は立ち上がったが鼻血を垂らしている。足元がおぼついている。
男がこっちを見た。
まるで超能力で蒼井さんの位置がわかっているかのようにだ。
「ひゃっ!」
蒼井さんは僕の服の袖を掴み、震えていた。目があったのだろう。
男の方は満面の笑みだ。
「どこ見てるんだ」
藤髙先生はそう言って、男の顔面を右ストレートで殴った。
藤髙先生の声はよく聞こえる。
相手は刃物を持っているにも関わらず、藤髙先生はよく立ち向かえる。
怖くはないのだろうか。
男は倒れたまま動かない。
男が倒れて5分程度経ち、警察が到着した。
警察官の目は点になって止まっている。
応援にきたであろう警察が来たところでやっと動きだした。
救急に連絡をとったり、藤髙先生や新井、教師たちからの聴取で警察の手はいっぱいみたいだ。
蒼井さんの顔色がずいぶん悪い。
かなり、このことは嫌だったんだろう。
「保健室、行く?」
蒼井さんは頷いただけだった。
守護霊は元に戻っていた。相変わらず薄かったが。
それから、皆んなが落ち着いた頃に警察官が2人、保健室に居る僕たちを訪れた。
蒼井さんは寝てるいるから警察官は気付いていないはずだ。
警察官は僕に聴取をしようとしている。
男のことはなんと言えばいいんだろう。
僕の頭が高速で回り考えていると、藤髙先生が保健室に入ってきた。
「彼は関係ありませんよ」と藤髙先生が警察官に言った。
「ですが、一応のこともありますので彼から聞いておきたいのですが」
「何かあるか?石波」
「何もありません」と僕は冷静を装って言った。
「本人がそう言っておりますのでお引き取りください」
警察官は少し不服そうな顔をして帰っていった。素直に引っ込んでくれてよかった。
「先生、私のことはいいの?」と言いながら蒼井さんが寝室から出てきた。
「蒼井さん起きてたの?」
「うん」
そこからは、藤髙先生と蒼井さんだけが話した。
「アイツは前科もある。今回の騒動で実刑を喰らうはずだろう」
「そっか」
「だから安心しろ」
「わかりました」
まるで僕がいないみたいな雰囲気だ。
こんな時に毎回思う。
"僕はいるのか?"と。
「大丈夫だよ、蒼井は石波がしっかり護るから。そうだよな、石波」と藤髙先生が僕に聞いてきた。
僕は話を聞いていなく気の抜けた返事をしてしまった。
蒼井さんは安心した表情だった。
僕は学校が終わり一応、蒼井さんを家まで送った。
僕は家に帰り、夕飯を食べた後に"強くならなくちゃ"と思い、腕立てや腹筋をしたが、たった20回程度で疲れた。
そして、ベットで仰向けになり休憩をしていたら家のチャイムがなった。
こんな時間にいったい誰なんだろうか。
「ちょっと、誰なんですか⁉︎帰ってください!」と言う母さんの声と共に僕の部屋に向かう足音が聞こえた。
"バン"と勢いよく僕の部屋の扉が開かれた。
そこにいたのは、藤髙先生だった。
「何してるんですか?」
「話がある」
母さんは「どうゆうこと?」といいたそうな表情をしている。
「母さん、この人がA先生の後任の藤髙先生」
「あら、そうなんですか。息子がいつもお世話になっています」
「いいえ、こちらこそ」と言い2人とも頭を下げた。
僕は母さんに頼み、席を外してもらい2人で話すことにした。
母さんがいたら、何か都合が悪そうだ。
「今日のことがあってどう思った?素直に答えろ」
「本当に蒼井さんを守れるのか不安になりました」
「そうか。どうしたら守れると思う?」
「強くなります。だから筋トレをしてました」
「それじゃあ、できないな」
「何がですか?」
「それじゃ護れない」
「どうゆうことですか?」
僕は全てを否定された気になり少しイラついた。
「本当に守りたいか?」
「はい」
「わかった…急に来てすまなかったな。またな」
「いいえ」
そう言って藤髙先生は僕の部屋を出た。
僕は何故、素直に今の気持ちを藤髙先生に話してしまったのだろうか?
藤髙先生は、玄関で母さんと何か話している。
僕は聞き耳をたて、話しを聞いていた。
こうゆう会話は気になってしまうものだ。
「夜分遅くに申し訳ありません。失礼します」
「いいえ、これからもよろしくお願いします」
たわいもない会話だった。
日付が変わり学校ヘ行けば、藤髙先生に何を言われるのかドキドキしていた。
そんな心を抱きながら今日は終わった。
それから数週間経ったが、藤髙先生からは何もない。
蒼井さんも、学校もずいぶん落ち着いてきている。
新井はむちゃくちゃに怒られたと誰かが話しているのを盗み聞いた。
蒼井さんの寿命は、あとどのくらいなのだろうか。
こんなことをふと思った。
「明日から夏休みだ。いくら暑いからって気を抜くなよ。
今のお前らの時期が危ないんだから、寝るまで気を抜くなよ」
そういえば明日から夏休みだ。
「先生なんか言ってること変だよ~」とバカな女子が笑いながら指摘したが、藤髙先生はスルーした。
僕が通っている高校は格別に賢くなければ、アホでもない。
だから、どのクラスにもバカな奴は混じっている。
「とにかく死ぬなよ」
教室は笑いに包まれたが、僕と蒼井さんは顔を見合わせてどうしようもない表情になった。
学校が終わり、藤髙先生に呼ばれていたので藤髙先生のもとへ行った。
蒼井さんと帰る予定なので長くはしてほしくない。
「どうしたんですか?」
「前に…家に訪ねたことがあるだろ」
「ありましたね」
「そこで"守れるか不安だ"と言ったよな」
「はい」
「守れるようにしてやる」
何故か、藤髙先生の顔はウキウキしているような気がした。
「どうゆうことですか?わかりません。説明してください」
「とにかく3時に学校に来い。
動きやすい服、持ってこいよ。
あと、絶対に蒼井には言うなよ…ところで時間、大丈夫か?」
藤髙先生に言われて気がついた。もう15分程度経っている。
蒼井さんは放課後、病院へ行くと言っていた。
僕は急いで藤髙先生のもとを去り、蒼井さんのもとへ向かった。
「ごめん蒼井さん」
「いいよ」
蒼井さんは少しふくれているように見えた。
申し訳ない。
「何話してたの?」
「別に何も話してないよ」
「へぇ~そうなんだ~。人をずいぶん待たしたのにね~。教えてもくれないだ~」
僕の心はグサッとした。
「すいません。言います」
「はい。どうぞ」
「えーっと、3時になれば学校に来るように言われました」
「それだけ?」
「それだけ」
「そっか」
丁度、蒼井さんの家に着いたのでそこで別れた。
藤髙先生はいったい石波くんに何をさす気なのだろう?
気になるし、診察が終われば見に行こう。
何か嫌な予感がするが気にしないでいよう。
いったい藤髙先生は僕に何をさす気なのだろうと考えていれば、家に着いた。
自分の部屋に入り「あ」と一言漏れ、ふと思い出した。蒼井さんに言ってしまった。
まぁ、いいか。
でも、蒼井さんにあんな一面があったなんて少し驚いた。
学校へ行けば、藤髙先生が正門のところで待っていた。
「来たな」
「はい」
「来てくれてよかったよ。早速で悪いが、着替えてくれ」
「どこでですか?」
「更衣室だよ。終わったら体育館に来てくれ」
「わかりました」
体育館へ行けば藤髙先生と新井がいた。
なんでいるんだ。
僕は2人のもとへ行き、「なんでいるんですか?」と藤髙先生に尋ねた。
「一緒にする」
そう言って藤髙先生は6歩下がった。
意味がわからない。なんなんだ。
「実戦で覚えるのが1番身につく。やるぞ。始め!」
その合図と同時に新井はこっちに突っ込んできた。
僕はギリギリで新井の右ストレートをかわした。
こんなの当たればひとたまりも無い。
僕はあの男みたいに鼻血では済まないぞ。
鼻の骨が折れるぞ。
なんだコイツは。ほぼ初対面の相手にこんなことできるのか?
しかも無表情で。
藤髙先生は何をさしたいんだ。わからない。
考えすぎて頭が破裂しそうだ。
とにかく、この状況をどうにかしなければならない。どうしたものか。
まずは、新井の動きを封じなければならない。
足をどうにかしよう。
動けなければどうしようないだろう。と思ったものの近づけない。
とにかく、受けるだけじゃダメだ。攻めなければ。
"攻めは最大の防御"的なものか?
僕は思いっきり殴ろうとしたが、僕の渾身の右ストレートは綺麗に避けられ、新井のパンチが腹に入った。
メチャクチャ痛い。なんだこれは。
僕は無性に腹が立ってきた。
なんでこんなこと、しなくちゃならないんだ!
僕はなんとか立ち、新井に立ち向かおうとした。
ダメだ、やっぱり倒れそうだ。
倒れる前に新井に一発くれてやる。
殴りかかろうと走ったが、足がもつれて倒れてしまった。
"こんまんま倒れるかよ!行けーー!"
思いきり新井に飛んでやった。
"ゴッ"と鈍い音がした。
僕の頭突きが新井を襲った。
『石波くん!』
声の方を見れば、蒼井さんらしき人がいた。
どこだここは?
僕の家じゃないことは確かだ。
"ガチャッ"と扉が開いた音がした。
音がした方を見れば、女の人がいた。
「キャーー!」
「ワーー!」
いったいなんなんだ。
ついつい僕も声を上げてしまった。誰だあれは?
僕は急激に、怖くなってきた。ここから出よう。
そう思いベッドを降りて扉の方を向けば、藤髙先生がいた。
「やっと起きたか。お前が叫ぶなよ。うるさいから」
「藤髙先生!」
会話が繋がらない。
「とにかく、下に降りてこい」
「はい」
下に降りれば、藤髙先生とあの女と何故か新井がテーブルを囲んでそうめんを食っていた。
"グゥ~"と僕は腹が鳴った。
「食うか?」
「食べます」
僕がある程度食べたところで藤髙先生が話し出した。
「あの後、蒼井が来てな、叱られたよ」
いったいなんの話だ?
伝えた方は大雑把に「蒼井さんが危ない」とだけだったが、藤髙先生はわかったくれた。
そしたら、廊下の窓から学校の正門のところに居る男を見つけた。誰だろう?
「来たな」と一言だけ残し、藤髙先生は歩いてどこかに行ってしまった。
その男は学校に入ってきて途端に、
「迎えにきたよー!」と大声で叫びだした。
休み時間と被っていたので生徒と教師のほぼ全員が窓から首を出して、男を見た。
そしたら、蒼井さんが僕の方に全速力で走ってきた。
「アイツ、アイツなの」と今にも泣き出しそうで怯えた顔をしていた。
僕は聞かなくても蒼井さんから伝わった。
あの男がストーカーだ。
「出てきてくれよー!」と男は力強く叫び続けている。
皆んな窓からそれを見ているが、男はそんなのお構いなしだ。
教師たちはかなり慌てている。
多分、もう警察は呼んでいるはずだ。
男の前に1人の生徒がいた。
新井だ。
コイツは学校で1番危ないヤツとなっている。
新井はボクシングをやっており、前に校内で喧嘩をして相手を瀕死の状態にしたことから誰もアイツとは接しなくなった。
何をするんだ。
「何してるの?あの人」と蒼井さんは僕に聞いてきた。蒼井さんが少し回復しているからよかった。
「さぁ、わかんない」
そしたら教頭先生が「何してるんだ新井!帰ってこい!」と怒鳴ったが、新井はファイティングポーズをとっていた。
まさか、やる気なのか。
男の方は突っ立ったままだ。状況を理解していない様子だ。
新井は…やはり仕掛けた。
男は微動だにしない。
一発目から右ストレートだ。しかも顔に。
男は突っ立ったまま倒れた。
それから約10秒くらい経ち、男は起き上がった。
「なんだよお前!殺してやる!!」と叫び、懐から忍ばせていた刃渡り10cmのナイフを取り出した。
さすがにナイフは無理だろ。
新井は立ち向かう姿勢を見せた。
コイツはアホか。
男は狂ったようにナイフを振り回しだした。しかも狂ったように叫びながらだ。
右ストレートが相当効いたのか、新井を近づけさせないつもりだ。
新井は立ち向かったが、すぐに左腕を切りつけられ完全に足がすくんでいる。
男が新井の胸を刺そうと突っ込んできているが新井は動かない。
いや、動けないんだろう。
もうすぐ刺されそうになったところで、新井の後ろから人影が飛んできた。
男は後方に3mほど吹っ飛んだ。
何が起こったんだろう?
新井の後ろにいたのは藤髙先生だった。
なんで?
「すごいね、藤髙先生って」
「何が?」
「見てなかったの?藤髙先生、アイツを蹴ったんだよ。空中で」
「そうなんだ」
蒼井さんの説明はずいぶんとアバウトだが、ようするに、藤髙先生の飛び蹴りが男に炸裂したんだろう。
男は立ち上がったが鼻血を垂らしている。足元がおぼついている。
男がこっちを見た。
まるで超能力で蒼井さんの位置がわかっているかのようにだ。
「ひゃっ!」
蒼井さんは僕の服の袖を掴み、震えていた。目があったのだろう。
男の方は満面の笑みだ。
「どこ見てるんだ」
藤髙先生はそう言って、男の顔面を右ストレートで殴った。
藤髙先生の声はよく聞こえる。
相手は刃物を持っているにも関わらず、藤髙先生はよく立ち向かえる。
怖くはないのだろうか。
男は倒れたまま動かない。
男が倒れて5分程度経ち、警察が到着した。
警察官の目は点になって止まっている。
応援にきたであろう警察が来たところでやっと動きだした。
救急に連絡をとったり、藤髙先生や新井、教師たちからの聴取で警察の手はいっぱいみたいだ。
蒼井さんの顔色がずいぶん悪い。
かなり、このことは嫌だったんだろう。
「保健室、行く?」
蒼井さんは頷いただけだった。
守護霊は元に戻っていた。相変わらず薄かったが。
それから、皆んなが落ち着いた頃に警察官が2人、保健室に居る僕たちを訪れた。
蒼井さんは寝てるいるから警察官は気付いていないはずだ。
警察官は僕に聴取をしようとしている。
男のことはなんと言えばいいんだろう。
僕の頭が高速で回り考えていると、藤髙先生が保健室に入ってきた。
「彼は関係ありませんよ」と藤髙先生が警察官に言った。
「ですが、一応のこともありますので彼から聞いておきたいのですが」
「何かあるか?石波」
「何もありません」と僕は冷静を装って言った。
「本人がそう言っておりますのでお引き取りください」
警察官は少し不服そうな顔をして帰っていった。素直に引っ込んでくれてよかった。
「先生、私のことはいいの?」と言いながら蒼井さんが寝室から出てきた。
「蒼井さん起きてたの?」
「うん」
そこからは、藤髙先生と蒼井さんだけが話した。
「アイツは前科もある。今回の騒動で実刑を喰らうはずだろう」
「そっか」
「だから安心しろ」
「わかりました」
まるで僕がいないみたいな雰囲気だ。
こんな時に毎回思う。
"僕はいるのか?"と。
「大丈夫だよ、蒼井は石波がしっかり護るから。そうだよな、石波」と藤髙先生が僕に聞いてきた。
僕は話を聞いていなく気の抜けた返事をしてしまった。
蒼井さんは安心した表情だった。
僕は学校が終わり一応、蒼井さんを家まで送った。
僕は家に帰り、夕飯を食べた後に"強くならなくちゃ"と思い、腕立てや腹筋をしたが、たった20回程度で疲れた。
そして、ベットで仰向けになり休憩をしていたら家のチャイムがなった。
こんな時間にいったい誰なんだろうか。
「ちょっと、誰なんですか⁉︎帰ってください!」と言う母さんの声と共に僕の部屋に向かう足音が聞こえた。
"バン"と勢いよく僕の部屋の扉が開かれた。
そこにいたのは、藤髙先生だった。
「何してるんですか?」
「話がある」
母さんは「どうゆうこと?」といいたそうな表情をしている。
「母さん、この人がA先生の後任の藤髙先生」
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「いいえ、こちらこそ」と言い2人とも頭を下げた。
僕は母さんに頼み、席を外してもらい2人で話すことにした。
母さんがいたら、何か都合が悪そうだ。
「今日のことがあってどう思った?素直に答えろ」
「本当に蒼井さんを守れるのか不安になりました」
「そうか。どうしたら守れると思う?」
「強くなります。だから筋トレをしてました」
「それじゃあ、できないな」
「何がですか?」
「それじゃ護れない」
「どうゆうことですか?」
僕は全てを否定された気になり少しイラついた。
「本当に守りたいか?」
「はい」
「わかった…急に来てすまなかったな。またな」
「いいえ」
そう言って藤髙先生は僕の部屋を出た。
僕は何故、素直に今の気持ちを藤髙先生に話してしまったのだろうか?
藤髙先生は、玄関で母さんと何か話している。
僕は聞き耳をたて、話しを聞いていた。
こうゆう会話は気になってしまうものだ。
「夜分遅くに申し訳ありません。失礼します」
「いいえ、これからもよろしくお願いします」
たわいもない会話だった。
日付が変わり学校ヘ行けば、藤髙先生に何を言われるのかドキドキしていた。
そんな心を抱きながら今日は終わった。
それから数週間経ったが、藤髙先生からは何もない。
蒼井さんも、学校もずいぶん落ち着いてきている。
新井はむちゃくちゃに怒られたと誰かが話しているのを盗み聞いた。
蒼井さんの寿命は、あとどのくらいなのだろうか。
こんなことをふと思った。
「明日から夏休みだ。いくら暑いからって気を抜くなよ。
今のお前らの時期が危ないんだから、寝るまで気を抜くなよ」
そういえば明日から夏休みだ。
「先生なんか言ってること変だよ~」とバカな女子が笑いながら指摘したが、藤髙先生はスルーした。
僕が通っている高校は格別に賢くなければ、アホでもない。
だから、どのクラスにもバカな奴は混じっている。
「とにかく死ぬなよ」
教室は笑いに包まれたが、僕と蒼井さんは顔を見合わせてどうしようもない表情になった。
学校が終わり、藤髙先生に呼ばれていたので藤髙先生のもとへ行った。
蒼井さんと帰る予定なので長くはしてほしくない。
「どうしたんですか?」
「前に…家に訪ねたことがあるだろ」
「ありましたね」
「そこで"守れるか不安だ"と言ったよな」
「はい」
「守れるようにしてやる」
何故か、藤髙先生の顔はウキウキしているような気がした。
「どうゆうことですか?わかりません。説明してください」
「とにかく3時に学校に来い。
動きやすい服、持ってこいよ。
あと、絶対に蒼井には言うなよ…ところで時間、大丈夫か?」
藤髙先生に言われて気がついた。もう15分程度経っている。
蒼井さんは放課後、病院へ行くと言っていた。
僕は急いで藤髙先生のもとを去り、蒼井さんのもとへ向かった。
「ごめん蒼井さん」
「いいよ」
蒼井さんは少しふくれているように見えた。
申し訳ない。
「何話してたの?」
「別に何も話してないよ」
「へぇ~そうなんだ~。人をずいぶん待たしたのにね~。教えてもくれないだ~」
僕の心はグサッとした。
「すいません。言います」
「はい。どうぞ」
「えーっと、3時になれば学校に来るように言われました」
「それだけ?」
「それだけ」
「そっか」
丁度、蒼井さんの家に着いたのでそこで別れた。
藤髙先生はいったい石波くんに何をさす気なのだろう?
気になるし、診察が終われば見に行こう。
何か嫌な予感がするが気にしないでいよう。
いったい藤髙先生は僕に何をさす気なのだろうと考えていれば、家に着いた。
自分の部屋に入り「あ」と一言漏れ、ふと思い出した。蒼井さんに言ってしまった。
まぁ、いいか。
でも、蒼井さんにあんな一面があったなんて少し驚いた。
学校へ行けば、藤髙先生が正門のところで待っていた。
「来たな」
「はい」
「来てくれてよかったよ。早速で悪いが、着替えてくれ」
「どこでですか?」
「更衣室だよ。終わったら体育館に来てくれ」
「わかりました」
体育館へ行けば藤髙先生と新井がいた。
なんでいるんだ。
僕は2人のもとへ行き、「なんでいるんですか?」と藤髙先生に尋ねた。
「一緒にする」
そう言って藤髙先生は6歩下がった。
意味がわからない。なんなんだ。
「実戦で覚えるのが1番身につく。やるぞ。始め!」
その合図と同時に新井はこっちに突っ込んできた。
僕はギリギリで新井の右ストレートをかわした。
こんなの当たればひとたまりも無い。
僕はあの男みたいに鼻血では済まないぞ。
鼻の骨が折れるぞ。
なんだコイツは。ほぼ初対面の相手にこんなことできるのか?
しかも無表情で。
藤髙先生は何をさしたいんだ。わからない。
考えすぎて頭が破裂しそうだ。
とにかく、この状況をどうにかしなければならない。どうしたものか。
まずは、新井の動きを封じなければならない。
足をどうにかしよう。
動けなければどうしようないだろう。と思ったものの近づけない。
とにかく、受けるだけじゃダメだ。攻めなければ。
"攻めは最大の防御"的なものか?
僕は思いっきり殴ろうとしたが、僕の渾身の右ストレートは綺麗に避けられ、新井のパンチが腹に入った。
メチャクチャ痛い。なんだこれは。
僕は無性に腹が立ってきた。
なんでこんなこと、しなくちゃならないんだ!
僕はなんとか立ち、新井に立ち向かおうとした。
ダメだ、やっぱり倒れそうだ。
倒れる前に新井に一発くれてやる。
殴りかかろうと走ったが、足がもつれて倒れてしまった。
"こんまんま倒れるかよ!行けーー!"
思いきり新井に飛んでやった。
"ゴッ"と鈍い音がした。
僕の頭突きが新井を襲った。
『石波くん!』
声の方を見れば、蒼井さんらしき人がいた。
どこだここは?
僕の家じゃないことは確かだ。
"ガチャッ"と扉が開いた音がした。
音がした方を見れば、女の人がいた。
「キャーー!」
「ワーー!」
いったいなんなんだ。
ついつい僕も声を上げてしまった。誰だあれは?
僕は急激に、怖くなってきた。ここから出よう。
そう思いベッドを降りて扉の方を向けば、藤髙先生がいた。
「やっと起きたか。お前が叫ぶなよ。うるさいから」
「藤髙先生!」
会話が繋がらない。
「とにかく、下に降りてこい」
「はい」
下に降りれば、藤髙先生とあの女と何故か新井がテーブルを囲んでそうめんを食っていた。
"グゥ~"と僕は腹が鳴った。
「食うか?」
「食べます」
僕がある程度食べたところで藤髙先生が話し出した。
「あの後、蒼井が来てな、叱られたよ」
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