私の使い魔がたわしだった件

雷庵

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十話 よう、裏表すげぇな?

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 ドリュゲラスとたわしとアリス……否、アリスを除く2人がギャーギャー騒いでいるとショートホームルームの時間を告げる鐘が鳴り響く。それと同時に教室の扉が開き魔術科初等部の先生が教室に入る、そして険しい声を上げた……ドリュゲラスとたわしに向かって。

「あなた達! というかドリュゲラス先生! たわしをつかんで何一人で騒いでるんですか!? あなたがこの国における有数の魔法創作者と言えど、ここは私の教室です! 生徒に迷惑をかける権利は貴方にありません、早々に出ていきなさい!」

 周りにいた生徒のみならずドリュゲラスもたわしも女教師の一喝にのまれた。ドリュゲラスは往生際悪く

「い、いや、アンナ先生これには訳があるんです、このたわしはで――」

「二度は言いません、出口はあちらですよ」

 アンナと呼ばれた女教師は静かに声を上げ、眉間に皺をよせ険しい表情をドリュゲラスに向ける。ドリュゲラスはその表情を見るとしぶしぶ教室を出ようとする、そして扉をくぐろうとする瞬間

「たわしくん、アリスくん、僕は諦め――」

「今回の件は校長に報告させてもらいます、この権威を笠に着たクソ野郎さん」

 表情は大きく変わっていないが、怒りとも憎しみともとれるような負の感情をのせた言葉はドリュゲラスに恐怖を与える。しかしドリュゲラスはひるまない……何事もなかったかのように教室を後にした。アンナはそれを見送ると静かに扉を閉める。そして教壇の前に立つとにこやかな笑顔を見せる。先ほどまでのアンナがまるで別人であるかのように。

「はぁい! みなさん、おはようございます。迷惑な先生の事はわすれて今日も一日魔術の基礎を身に付けていきましょうね」

 そしてアンナは出席をとる……全員出席していることを確認すると満面の笑みで「うん!」とかわいらしく頷いた。

「一人も欠席してないのは先生うれしいです、では今日の学習スケジュールを確認しましょうね」

 アンナは黒板に向かうとマナクリスタル……魔法の記憶媒体を懐から取り出す。そしてマナクリスタルに記録された文章を黒板に投影させる。黒板に投影された文字には[使い魔の紹介][使い魔との共同作業]の二つのワードがかわいらしく書かれている。

「それでは…今八時半なので、九時から授業を始めましょう。それまでに各自使い魔とコミュニケーションをとって授業に参加させるように指示しておいてね」

 アンナは満面の笑みを浮かべそういうと、生徒たちも……特に18歳以上の生徒はデレデレした顔で返事を行う。しかし空気を読めないたわしはアリスの机に立つと

「先生さん、あんたさっきすげぇ怖かったけど、どっちが本当の先生なんだ?」

 アリスは頭を抱える、こいつなんでいつもいらない事ばかりいうんだ、と。しかしアンナは表情一つ崩さないままたわしに向かって歩み寄る。

「ふふ、あなたがアリスちゃんの使い魔のたわしちゃんね。あなた学園中の話題の人よ?」

 たわしは悪い気はしなかった、そして油断した瞬間アンナはたわしを両手で優しく包み込み持ち上げていた。たわしは我に返った……いくら気をよくしていたとはいえ、持ち上げられるまで気づかなかったのだ。アンナという人間なかなかやる……そう感じていた。しかしそのアンナの表情は優しい瞳でたわしを見据えていた。

「でもね? あなた使い魔なんだから、主人であるアリスちゃんを困らせたらだめよ? この娘はすごい頑張ってるの、あなたがそれを台無しにしたらかわいそうでしょ? ね?」

 それを聞いていたアリスは不意に泣きそうになった。当然だ、努力をして落ちこぼれないように頑張ってやっと作れた居場所を、自分が召喚した使い魔にグッチャグチャにされているのだ。そしてそれをちゃんと理解した上でたわしに注意をしてくれる人がいたのだ……そんなの惚れても仕方がないくらいなのだ。しかし……

「うるせぇ! 俺は俺なりにアリスの為に動いてるぜ! ちょっと昔の仲間がいたから挨拶したり、変人がいたからアリスを守っただけじゃねーか!」

 アンナは優しい表情を崩さず、唇を少し噛み締める。

「うんうん、優しいんだね、たわしちゃん。でもちょっと後で先生と校長先生と三人で話をしよっか。アリスちゃんはお勉強だから邪魔しちゃダメよ、ね?

 そのセリフを聞いてアリスはやはり頭を抱えているのであった。ともあれ、アンナに任せておけば大丈夫だろう……そう思う他なかったアリスであった。


*0725 誤字脱字修正しました。
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