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雷鳴轟く四日目
監禁と毒殺
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思いがけない死体の発見に、声も出ず立ち尽くす。
あたりを覆う静寂は永遠に続くかと思われたが、それは意外な形で破られた。
「くふふ、くふふふふ……」
微かに聞こえるか細い笑い声。
音が小さすぎてどこから聞こえてくるのか分からず周囲に目をやるも、周りには自分たち三人を除いて誰もいない。それゆえ彼らの視線は、自然と正しい音源へと導かれることになった。
広間の扉を閉め、ゆっくりと死体に向かって歩き出す。
死体に一歩、また一歩と近づくたびに笑い声は明瞭になり、自分たちの考えが間違っていなかったことが証明される。
死体まであと数メートルというところで立ち止まると、東郷が限りなく感情を排した冷たい声を死体に浴びせた。
「いつまで死体のふりを続けるつもりだ。まだ続けるつもりなら、死んでいると判断して霊安室まで引きずっていくぞ」
「……くふふ。できたらそこはお姫様抱っこで運んでもらいたいかな。死んだあととはいえ、体に傷がつくのはなんか嫌だから」
元から本気で騙すつもりはなかったのだろう。腹から大量の血を流した死体――もとい、腹部に大量のケチャップを付けた姫宮は、あっさり体を起こすと天使のほほ笑みを向けてきた。
その笑顔故に彼女の行為を許してしまいそうになるが、やっていたことは悪ふざけというには悪趣味すぎるもの。鬼道院は内心眉をひそめて彼女の笑顔を見つめた。
彼女の行いを不快に感じたのは神楽耶も同じだったようで、少し怒ったような声音で姫宮に迫った。
「なんで、こんな悪趣味な悪戯をしたんですか。状況が状況ですし不謹慎極まりないです。それに私すごく――」
「嬉しくなっちゃったかな?」
神楽耶の言葉を奪って姫宮が言う。
それにすぐさま反応できず口を噤んでしまうと、姫宮はくりくりとした目を神楽耶に向けた。
「違うなんて言わないよね。だって江美ちゃんは私たち犯罪者を殺してここから出て行こうとしてるんだもん。ライバルが勝手に死んでくれるのはとっても嬉しいはずでしょ?」
「そ、それは否定できないですけど……。でも、知り合いが死んでいる姿を見て嬉しいなんて――」
「ねえ。もし江美ちゃんが私の死を悲しんでくれるのなら、私たちの仲間になってよ。そうすれば私も江美ちゃんも生きてここから出られるから。それともやっぱり、私よりも東郷さんの方が大切なのかな?」
「そんな、どちらが大切かなんて……」
姫宮の突然の提案に、神楽耶は戸惑った様子で顔を俯かせる。するとこれ以上の妄言を神楽耶に聞かせまいと、東郷が二人の間に割って入った。
「随分と正面切った寝返り勧誘だな。こいつをこうして惑わせるためだけに、わざわざ死んだふりなんて行ったのか?」
姫宮は東郷に視線を合わせることなく、自分の服に付いたケチャップを指で掬いあげる。
「さあ、どうしてでしょうね。どうせ東郷さんは私の言葉なんて信用しないでしょうし、言う必要性なくないですか。それより私、ちょっと服を着替えたいんでいったん部屋に戻りますね。江美ちゃん。急だとは思うけど、私が戻ってくるまでにどっちに付くか考えておいて欲しいな。まあ、江美ちゃんが東郷さんに付いた理由を考えるなら、どっちの仲間になるべきかは考えるまでもないと思うけどさ」
指に付いたケチャップをぺろりと舐めると、姫宮は自室に戻ろうと歩き出した。
神楽耶も東郷も、彼女の言葉に思うところがあるのか何も言えずに彼女の動きを見守る。
鬼道院も最初は黙って彼女の動きを見守ろうかと思ったが、ふとある疑念を覚え、彼女を呼び止めた。
「すみません、一つだけ質問しても宜しいでしょうか?」
鬼道院に呼びかけられ、姫宮は怯えたようにピクリと肩を震わせる。だが数秒の後、一切怯えを感じさせない満面の笑みと共に振り返った。
「ええいいですよ。何が聞きたいんですか?」
彼女の笑顔に触発され、鬼道院も穏やかな笑みを浮かべて疑問を投げかけた。
「私たちが広間に来たのは、佐久間さんが思いついた、全員生きてこの館を出る方法を教えてもらうためです。そして佐久間さん曰く、その方法を行うにあたって、あなたと六道さんの力を貸してもらうとのことでした」
満面の笑みながらもどこか強張り始めた彼女の笑みを眺めつつ、鬼道院は変わらぬ笑顔で話を続ける。
「佐久間さんの口ぶりからすると、既にお二人から協力を得ているご様子でした。そうであるなら当然、姫宮さんは既に全員が生きて帰る方法とやらを聞いているものと思っていたのです。そしてもし、その提案が実現不可能なものであれば、佐久間さんを諭し、協力はできないことを告げていたはずだと。なので、佐久間さんが私たちに自身の提案を持ち掛けてきた時点で、姫宮さんと六道さんは彼の提案を受け入れたのだろうなと、そう考えていました」
再び言葉を切り、姫宮が何か反応するかを待つ。しかし何も言ってこなかったので、鬼道院はゆったりと話を再開した。
「しかし今ここで、姫宮さんが話す内容を聞いていたら、私の考えは間違っているように思えてしまいまして。姫宮さんも実はまだ、佐久間さんの提案を詳しくは聞いておらず、彼の策に懐疑的なままなのでしょうか? 少々話が長くなってしまいましたが、そこのところがどうしても気になってしまい、是非お聞きしておきたいなと思ったのです」
やや話し疲れて、鬼道院は小さく息を吐いてから口を閉ざした。
姫宮は数秒の間、笑顔のまま沈黙を続けていたが、不意に首を傾げながら問い返してきた。
「えっと、鬼道院さんはそもそも何でそんなことを知りたいんですか? 私が佐久間さんの提案を聞いていなくて、皆で生きて帰る策に懐疑的だと、何か不都合があったりするんですか?」
鬼道院は小さく首を振る。
「いえ、不都合というほどのことはありません。ただ、もし六道さんと姫宮さんのお二人が納得するような策を佐久間さんが考え出していたのなら、それはとても期待が持てるなと、内心胸を躍らせていたものですから」
「ああ、なのに私がゲームを続ける気でいるように見えたから、その期待がぬか喜びだったんじゃないかって不安に思っちゃったわけですね。うーん、鬼道院さんの期待を裏切るようでちょっと心苦しいですけど、私も佐久間さんの策がどんなものかは知らないんですよ」
本心から申し訳なく思っているのが伝わってくる、憂鬱そうな表情を姫宮が浮かべる。期待を裏切ってしまったことへのお詫びのつもりか、少し悩んだ様子で宙を見上げた後、「これぐらいは話しちゃってもいいかな」と、その詳細を告げてきた。
「どうせ鬼道院さんや江美ちゃんも気づいてると思うから言っちゃいますけど、私と六道さん、そして佐久間さんの三人でチームを組んでいるんです。それで当然お互いのスペルを教え合ったわけですけど、私と六道さんのスペルを知った途端、『もしかしたら全員が助かる術があるかもしれない!』って佐久間さんが言い出したんです。でもそれがどんな策なのかは詳しく教えてくれなくて、皆を一堂に集めてから話すの一点張り。だから具体的な内容は聞いてないですし、正直そこまで期待してないんです。実現不可能な策だった場合はそのままゲームが続くんだから、ダメだった時に備えて勝ち残るための動きは続けておかなくちゃいけないし。鬼道院さんも勝ち残るための作戦、ちゃんと考えておいた方がいいですよ。因みにその作戦に私の力が必要だった場合は遠慮せずに言ってください。鬼道院さんの策なら六道さんや佐久間さんよりも勝機がありそうですし、彼らを裏切って仲間に付いちゃいますから」
冗談なのか本気なのか、ぺろりと舌を出しながら可愛らしい笑顔を浮かべて話を締める。
表面上こそ姫宮の魅力を受け付けていないよう表情筋を保つものの、あまりの愛くるしい笑顔に鬼道院の胸中では嵐が吹き荒れていた。そもそも最初から、鬼道院は姫宮の魅力に影響を受けていなかったわけではない。友人からの教えを守り、どんな時でも感情を表に出さないよう自制してきた成果が発揮されていただけである。
そんな状態であったため、真っ向から向けられた笑顔を見て彼女の虜になりかける。なんとか表情筋の緩みは抑えるものの、口調を自制するのは厳しいと感じ口を開くことはできなかった。
そうして鬼道院が何も言えずにいると、話は終わったと見たのか「それじゃあ着替えてきますね」と改めて告げ、姫宮は廊下に向けて歩き出した。だがその歩みは、数歩と行かないうちに再び妨げられることになった。
「待て」
命令に近い声音でそう言うとともに、東郷が姫宮の腕を掴む。腕を掴まれた姫宮は一瞬不快そうに顔を歪めるも、すぐに形だけの笑顔を作り東郷を振り返った。
「今度は何ですか? それと逃げたりしないので、腕、離してくれると嬉しいんですけど」
「悪いが信用できないから無理だ。佐久間と六道、あの二人がここに戻ってくるまではこの状態でいてもらう。もし無理に出ようとするならスペルを唱えて殺す」
「……逃げたら殺すんですよね。だったら腕は離してくれてもいいんじゃないですか」
東郷は姫宮を回りこんで廊下の近くに移動する。それから手を放し、「俺よりも扉に近づくな」と警告した。
姫宮はわざとらしく掴まれたところを何度もさすりながら、唇を尖らせた。
「別に構わないですけど、何で二人が来るまで部屋を出ちゃいけないんですか? 私が服を着替えたいっていうのが嘘じゃないのは明らかなのに。もしかして嫌がらせですか?」
「違う。俺はお前のスペルが毒に関するものだと思っている。だからこの状況でお前を逃がすのは危険だと考えたんだ」
東郷の言葉を聞き、姫宮の表情が一瞬揺らぐ。だがすぐに持ち直すと、「よく分かりません」ととぼけた声を出した。
「私が毒に関するスペルを持ってるなんて、どんな妄想をした結果考え付いたんですか? 私が毒を持ち歩いているところでも見たんですか?」
「まさか。単にお前らの行動から推測しただけだ。佐久間の考え付いたという全員生きて帰る策なんてのは勿論嘘。なら俺たちをそんな嘘で広間に呼び集める理由は何か。答えは――『監禁と毒殺』だ」
「なんで……ッ」
驚きのあまり肯定にも等しい言葉が発される。姫宮は慌てて口を塞ぐが、無論そんなことをしても遅すぎる。東郷は自分の推理が当たっていたことに満足した様子で小さく頷いた。
「やはりか。広間に集めたにも関わらず、中にいるのは死体のふりをしたお前だけ。しかも着替えたいからと言ってお前自身も部屋から出て行こうとした。そうして俺たちだけを部屋に残す理由を考えたら思いついたんだよ。
この館のほぼ全ての扉は外開きであるという共通点がある。つまり扉の前に重しでも置いておけば、内側にいる奴を閉じ込めることが可能になっているわけだ。そこでお前たちは、この仕組みを利用して他プレイヤーを閉じ込めようと考えた」
「……なんで私たちがそんなことを考えたと思ったのか分からないな。いくらなんでも飛躍しすぎじゃないですか?」
姫宮は作り笑いを再開し、精一杯強がってみせる。
しかし流れは完全に東郷が握っている。顔色一つ変えることなく、淡々と反論を口にした。
「別に飛躍してなどない。俺たちが広間に集められる時、そこには集めた奴らなりの理由が存在していた。そして俺はお前同様佐久間の言葉を信用していない。つまりここに俺らを集めたがる理由が、お前を含めた三人組にあったことになる。ではどんな理由があってこの状況下で俺たちを広間に集めるのか。そんなのは決まってる。俺たちを殺すためだ」
東郷の話が核心を突いているからか、姫宮は強張った笑みのまま何も言わない。肩を震わせて、東郷の話を聞き続ける。
「単に一人を殺すだけなら広間に集める必要はない。広間に集めたということは、多くのプレイヤーを殺す気でいるということだ。だがどんなスペルを持っているにしろ、ただ広間に集めただけで大勢を殺せるような強力なスペルがあるとは思えない。そんなものがあれば初日に十一人が集まった時点か、宮城が裁判を行った三日目の時点で唱えているはずだし、そもそもゲームバランスが崩れる。なら、どうやって俺たちを殺す気でいるのか」
東郷は視線を姫宮から廊下に通ずる扉へと移す。
「そこで目に留まったのが血命館の扉だ。外開きの扉なら、外に障害物を置き扉を開かなくし、中にいる奴らを閉じ込めることができる。今回お前がやったように一人がプレイヤーを引き付け、その間に外にいるもう一人が扉を封じるための道具を用意する。準備が整ったら引き付け役が何か理由を設けて退場し、外にいた仲間と一緒に扉の封鎖作業を始める」
視線を扉から外し、東郷は再び姫宮を見つめた。
「これが無期限のゲームであれば、これだけでも十分だったかもしれない。あらかじめ食料を別の場所に移しておけば、後は中のプレイヤーが餓死するのを待つだけだからな。だが、このゲームには誰も死なない日があった場合、プレイヤーをランダムで殺すというルールがある。主催者が餓死する人間を見ることに快感を覚えず、スペルでの争いを望んでいた場合には、このランダム殺人に扉を封鎖した側のプレイヤーが選ばれる可能性もある。そんな主催者頼みの微妙な賭けを、三人チームを組めた奴らがするとは思えない。必ず、何か一つダメ押しとなる一手が存在するはずだ」
東郷はじっと姫宮の目を見つめる。対する姫宮もせめて睨み合いでは負けまいと考えてか、黙って睨み返す。
「そこで俺が考えたのは、毒を使った殺害方法だ。俺たちに与えられたキラースペルは基本個人を対象とするもの。ゲームとしての面白みを考えて、一度に複数人を殺せるような威力を持ったスペルは与えられていないはずだ。それゆえ数人を殺せる規模の爆発による殺害などは考えづらい。密閉した場所で殺す方法としては他に焼殺なども考えられるが……おそらくこの館に火をつけても燃え広がったりはしないだろうからこれも却下。そうなると他に思い浮かぶのは、俺としては一つだけ。毒を使った殺害だ」
東郷がそう断定した途端、急に姫宮が口を開いた。
「……厨房には換気扇がありますから毒ガスを使った殺害はない。やるとすれば出入り口のドアノブに毒を塗って、脱出しようと扉に飛びついた人から殺していくという方法。もしくは食料を残しておき、そこに毒を塗っておいて食べた人を殺すという方法。スペルの力をもってすれば実際には存在しない、無味無臭で取り込んでから数時間後に突然効力を発揮するような毒も作れるかもしれない。それがあればこの作戦はより完璧になる、と言ったところですか」
「まさにその通りだな。大方六道からこの作戦を授かったんだろうが、見事に台無しにしてしまったな」
東郷のさらなる挑発に、姫宮は押し殺した声で反論する。
「……ちょっと私たちの策を見抜いたからって、あんまり余裕ぶらない方がいいですよ。やろうと思えばあなたを殺すことなんて造作もないんですから」
「やろうと思えば、か。とするとやはり宮城を殺すことになったスペルは、ただスペルを無効化、反射するだけのものではなかったようだな。大方自分にかかるダメージを他者に移し変える能力といったところか。それならスペルを二つ使うことで任意の人物を殺せるわけだから、『やろうと思えば』という発言にも納得だ。それにお前が俺たち三人が揃った時点で動き出したのも頷けるな。うまく策がはまれば、本当にこれでゲームエンドだったわけだ。いや全く、何度も何度も情報提供してくれて感謝するよ」
「………………」
流石というべきなのだろうが、ここまで挑発されても姫宮の表情に明確な変化は生じなかった。ただかなりの怒りを押し殺しているのは、強く握りしめられ一筋の赤い液体を滴らせた彼女の拳から瞭然であった。
あたりを覆う静寂は永遠に続くかと思われたが、それは意外な形で破られた。
「くふふ、くふふふふ……」
微かに聞こえるか細い笑い声。
音が小さすぎてどこから聞こえてくるのか分からず周囲に目をやるも、周りには自分たち三人を除いて誰もいない。それゆえ彼らの視線は、自然と正しい音源へと導かれることになった。
広間の扉を閉め、ゆっくりと死体に向かって歩き出す。
死体に一歩、また一歩と近づくたびに笑い声は明瞭になり、自分たちの考えが間違っていなかったことが証明される。
死体まであと数メートルというところで立ち止まると、東郷が限りなく感情を排した冷たい声を死体に浴びせた。
「いつまで死体のふりを続けるつもりだ。まだ続けるつもりなら、死んでいると判断して霊安室まで引きずっていくぞ」
「……くふふ。できたらそこはお姫様抱っこで運んでもらいたいかな。死んだあととはいえ、体に傷がつくのはなんか嫌だから」
元から本気で騙すつもりはなかったのだろう。腹から大量の血を流した死体――もとい、腹部に大量のケチャップを付けた姫宮は、あっさり体を起こすと天使のほほ笑みを向けてきた。
その笑顔故に彼女の行為を許してしまいそうになるが、やっていたことは悪ふざけというには悪趣味すぎるもの。鬼道院は内心眉をひそめて彼女の笑顔を見つめた。
彼女の行いを不快に感じたのは神楽耶も同じだったようで、少し怒ったような声音で姫宮に迫った。
「なんで、こんな悪趣味な悪戯をしたんですか。状況が状況ですし不謹慎極まりないです。それに私すごく――」
「嬉しくなっちゃったかな?」
神楽耶の言葉を奪って姫宮が言う。
それにすぐさま反応できず口を噤んでしまうと、姫宮はくりくりとした目を神楽耶に向けた。
「違うなんて言わないよね。だって江美ちゃんは私たち犯罪者を殺してここから出て行こうとしてるんだもん。ライバルが勝手に死んでくれるのはとっても嬉しいはずでしょ?」
「そ、それは否定できないですけど……。でも、知り合いが死んでいる姿を見て嬉しいなんて――」
「ねえ。もし江美ちゃんが私の死を悲しんでくれるのなら、私たちの仲間になってよ。そうすれば私も江美ちゃんも生きてここから出られるから。それともやっぱり、私よりも東郷さんの方が大切なのかな?」
「そんな、どちらが大切かなんて……」
姫宮の突然の提案に、神楽耶は戸惑った様子で顔を俯かせる。するとこれ以上の妄言を神楽耶に聞かせまいと、東郷が二人の間に割って入った。
「随分と正面切った寝返り勧誘だな。こいつをこうして惑わせるためだけに、わざわざ死んだふりなんて行ったのか?」
姫宮は東郷に視線を合わせることなく、自分の服に付いたケチャップを指で掬いあげる。
「さあ、どうしてでしょうね。どうせ東郷さんは私の言葉なんて信用しないでしょうし、言う必要性なくないですか。それより私、ちょっと服を着替えたいんでいったん部屋に戻りますね。江美ちゃん。急だとは思うけど、私が戻ってくるまでにどっちに付くか考えておいて欲しいな。まあ、江美ちゃんが東郷さんに付いた理由を考えるなら、どっちの仲間になるべきかは考えるまでもないと思うけどさ」
指に付いたケチャップをぺろりと舐めると、姫宮は自室に戻ろうと歩き出した。
神楽耶も東郷も、彼女の言葉に思うところがあるのか何も言えずに彼女の動きを見守る。
鬼道院も最初は黙って彼女の動きを見守ろうかと思ったが、ふとある疑念を覚え、彼女を呼び止めた。
「すみません、一つだけ質問しても宜しいでしょうか?」
鬼道院に呼びかけられ、姫宮は怯えたようにピクリと肩を震わせる。だが数秒の後、一切怯えを感じさせない満面の笑みと共に振り返った。
「ええいいですよ。何が聞きたいんですか?」
彼女の笑顔に触発され、鬼道院も穏やかな笑みを浮かべて疑問を投げかけた。
「私たちが広間に来たのは、佐久間さんが思いついた、全員生きてこの館を出る方法を教えてもらうためです。そして佐久間さん曰く、その方法を行うにあたって、あなたと六道さんの力を貸してもらうとのことでした」
満面の笑みながらもどこか強張り始めた彼女の笑みを眺めつつ、鬼道院は変わらぬ笑顔で話を続ける。
「佐久間さんの口ぶりからすると、既にお二人から協力を得ているご様子でした。そうであるなら当然、姫宮さんは既に全員が生きて帰る方法とやらを聞いているものと思っていたのです。そしてもし、その提案が実現不可能なものであれば、佐久間さんを諭し、協力はできないことを告げていたはずだと。なので、佐久間さんが私たちに自身の提案を持ち掛けてきた時点で、姫宮さんと六道さんは彼の提案を受け入れたのだろうなと、そう考えていました」
再び言葉を切り、姫宮が何か反応するかを待つ。しかし何も言ってこなかったので、鬼道院はゆったりと話を再開した。
「しかし今ここで、姫宮さんが話す内容を聞いていたら、私の考えは間違っているように思えてしまいまして。姫宮さんも実はまだ、佐久間さんの提案を詳しくは聞いておらず、彼の策に懐疑的なままなのでしょうか? 少々話が長くなってしまいましたが、そこのところがどうしても気になってしまい、是非お聞きしておきたいなと思ったのです」
やや話し疲れて、鬼道院は小さく息を吐いてから口を閉ざした。
姫宮は数秒の間、笑顔のまま沈黙を続けていたが、不意に首を傾げながら問い返してきた。
「えっと、鬼道院さんはそもそも何でそんなことを知りたいんですか? 私が佐久間さんの提案を聞いていなくて、皆で生きて帰る策に懐疑的だと、何か不都合があったりするんですか?」
鬼道院は小さく首を振る。
「いえ、不都合というほどのことはありません。ただ、もし六道さんと姫宮さんのお二人が納得するような策を佐久間さんが考え出していたのなら、それはとても期待が持てるなと、内心胸を躍らせていたものですから」
「ああ、なのに私がゲームを続ける気でいるように見えたから、その期待がぬか喜びだったんじゃないかって不安に思っちゃったわけですね。うーん、鬼道院さんの期待を裏切るようでちょっと心苦しいですけど、私も佐久間さんの策がどんなものかは知らないんですよ」
本心から申し訳なく思っているのが伝わってくる、憂鬱そうな表情を姫宮が浮かべる。期待を裏切ってしまったことへのお詫びのつもりか、少し悩んだ様子で宙を見上げた後、「これぐらいは話しちゃってもいいかな」と、その詳細を告げてきた。
「どうせ鬼道院さんや江美ちゃんも気づいてると思うから言っちゃいますけど、私と六道さん、そして佐久間さんの三人でチームを組んでいるんです。それで当然お互いのスペルを教え合ったわけですけど、私と六道さんのスペルを知った途端、『もしかしたら全員が助かる術があるかもしれない!』って佐久間さんが言い出したんです。でもそれがどんな策なのかは詳しく教えてくれなくて、皆を一堂に集めてから話すの一点張り。だから具体的な内容は聞いてないですし、正直そこまで期待してないんです。実現不可能な策だった場合はそのままゲームが続くんだから、ダメだった時に備えて勝ち残るための動きは続けておかなくちゃいけないし。鬼道院さんも勝ち残るための作戦、ちゃんと考えておいた方がいいですよ。因みにその作戦に私の力が必要だった場合は遠慮せずに言ってください。鬼道院さんの策なら六道さんや佐久間さんよりも勝機がありそうですし、彼らを裏切って仲間に付いちゃいますから」
冗談なのか本気なのか、ぺろりと舌を出しながら可愛らしい笑顔を浮かべて話を締める。
表面上こそ姫宮の魅力を受け付けていないよう表情筋を保つものの、あまりの愛くるしい笑顔に鬼道院の胸中では嵐が吹き荒れていた。そもそも最初から、鬼道院は姫宮の魅力に影響を受けていなかったわけではない。友人からの教えを守り、どんな時でも感情を表に出さないよう自制してきた成果が発揮されていただけである。
そんな状態であったため、真っ向から向けられた笑顔を見て彼女の虜になりかける。なんとか表情筋の緩みは抑えるものの、口調を自制するのは厳しいと感じ口を開くことはできなかった。
そうして鬼道院が何も言えずにいると、話は終わったと見たのか「それじゃあ着替えてきますね」と改めて告げ、姫宮は廊下に向けて歩き出した。だがその歩みは、数歩と行かないうちに再び妨げられることになった。
「待て」
命令に近い声音でそう言うとともに、東郷が姫宮の腕を掴む。腕を掴まれた姫宮は一瞬不快そうに顔を歪めるも、すぐに形だけの笑顔を作り東郷を振り返った。
「今度は何ですか? それと逃げたりしないので、腕、離してくれると嬉しいんですけど」
「悪いが信用できないから無理だ。佐久間と六道、あの二人がここに戻ってくるまではこの状態でいてもらう。もし無理に出ようとするならスペルを唱えて殺す」
「……逃げたら殺すんですよね。だったら腕は離してくれてもいいんじゃないですか」
東郷は姫宮を回りこんで廊下の近くに移動する。それから手を放し、「俺よりも扉に近づくな」と警告した。
姫宮はわざとらしく掴まれたところを何度もさすりながら、唇を尖らせた。
「別に構わないですけど、何で二人が来るまで部屋を出ちゃいけないんですか? 私が服を着替えたいっていうのが嘘じゃないのは明らかなのに。もしかして嫌がらせですか?」
「違う。俺はお前のスペルが毒に関するものだと思っている。だからこの状況でお前を逃がすのは危険だと考えたんだ」
東郷の言葉を聞き、姫宮の表情が一瞬揺らぐ。だがすぐに持ち直すと、「よく分かりません」ととぼけた声を出した。
「私が毒に関するスペルを持ってるなんて、どんな妄想をした結果考え付いたんですか? 私が毒を持ち歩いているところでも見たんですか?」
「まさか。単にお前らの行動から推測しただけだ。佐久間の考え付いたという全員生きて帰る策なんてのは勿論嘘。なら俺たちをそんな嘘で広間に呼び集める理由は何か。答えは――『監禁と毒殺』だ」
「なんで……ッ」
驚きのあまり肯定にも等しい言葉が発される。姫宮は慌てて口を塞ぐが、無論そんなことをしても遅すぎる。東郷は自分の推理が当たっていたことに満足した様子で小さく頷いた。
「やはりか。広間に集めたにも関わらず、中にいるのは死体のふりをしたお前だけ。しかも着替えたいからと言ってお前自身も部屋から出て行こうとした。そうして俺たちだけを部屋に残す理由を考えたら思いついたんだよ。
この館のほぼ全ての扉は外開きであるという共通点がある。つまり扉の前に重しでも置いておけば、内側にいる奴を閉じ込めることが可能になっているわけだ。そこでお前たちは、この仕組みを利用して他プレイヤーを閉じ込めようと考えた」
「……なんで私たちがそんなことを考えたと思ったのか分からないな。いくらなんでも飛躍しすぎじゃないですか?」
姫宮は作り笑いを再開し、精一杯強がってみせる。
しかし流れは完全に東郷が握っている。顔色一つ変えることなく、淡々と反論を口にした。
「別に飛躍してなどない。俺たちが広間に集められる時、そこには集めた奴らなりの理由が存在していた。そして俺はお前同様佐久間の言葉を信用していない。つまりここに俺らを集めたがる理由が、お前を含めた三人組にあったことになる。ではどんな理由があってこの状況下で俺たちを広間に集めるのか。そんなのは決まってる。俺たちを殺すためだ」
東郷の話が核心を突いているからか、姫宮は強張った笑みのまま何も言わない。肩を震わせて、東郷の話を聞き続ける。
「単に一人を殺すだけなら広間に集める必要はない。広間に集めたということは、多くのプレイヤーを殺す気でいるということだ。だがどんなスペルを持っているにしろ、ただ広間に集めただけで大勢を殺せるような強力なスペルがあるとは思えない。そんなものがあれば初日に十一人が集まった時点か、宮城が裁判を行った三日目の時点で唱えているはずだし、そもそもゲームバランスが崩れる。なら、どうやって俺たちを殺す気でいるのか」
東郷は視線を姫宮から廊下に通ずる扉へと移す。
「そこで目に留まったのが血命館の扉だ。外開きの扉なら、外に障害物を置き扉を開かなくし、中にいる奴らを閉じ込めることができる。今回お前がやったように一人がプレイヤーを引き付け、その間に外にいるもう一人が扉を封じるための道具を用意する。準備が整ったら引き付け役が何か理由を設けて退場し、外にいた仲間と一緒に扉の封鎖作業を始める」
視線を扉から外し、東郷は再び姫宮を見つめた。
「これが無期限のゲームであれば、これだけでも十分だったかもしれない。あらかじめ食料を別の場所に移しておけば、後は中のプレイヤーが餓死するのを待つだけだからな。だが、このゲームには誰も死なない日があった場合、プレイヤーをランダムで殺すというルールがある。主催者が餓死する人間を見ることに快感を覚えず、スペルでの争いを望んでいた場合には、このランダム殺人に扉を封鎖した側のプレイヤーが選ばれる可能性もある。そんな主催者頼みの微妙な賭けを、三人チームを組めた奴らがするとは思えない。必ず、何か一つダメ押しとなる一手が存在するはずだ」
東郷はじっと姫宮の目を見つめる。対する姫宮もせめて睨み合いでは負けまいと考えてか、黙って睨み返す。
「そこで俺が考えたのは、毒を使った殺害方法だ。俺たちに与えられたキラースペルは基本個人を対象とするもの。ゲームとしての面白みを考えて、一度に複数人を殺せるような威力を持ったスペルは与えられていないはずだ。それゆえ数人を殺せる規模の爆発による殺害などは考えづらい。密閉した場所で殺す方法としては他に焼殺なども考えられるが……おそらくこの館に火をつけても燃え広がったりはしないだろうからこれも却下。そうなると他に思い浮かぶのは、俺としては一つだけ。毒を使った殺害だ」
東郷がそう断定した途端、急に姫宮が口を開いた。
「……厨房には換気扇がありますから毒ガスを使った殺害はない。やるとすれば出入り口のドアノブに毒を塗って、脱出しようと扉に飛びついた人から殺していくという方法。もしくは食料を残しておき、そこに毒を塗っておいて食べた人を殺すという方法。スペルの力をもってすれば実際には存在しない、無味無臭で取り込んでから数時間後に突然効力を発揮するような毒も作れるかもしれない。それがあればこの作戦はより完璧になる、と言ったところですか」
「まさにその通りだな。大方六道からこの作戦を授かったんだろうが、見事に台無しにしてしまったな」
東郷のさらなる挑発に、姫宮は押し殺した声で反論する。
「……ちょっと私たちの策を見抜いたからって、あんまり余裕ぶらない方がいいですよ。やろうと思えばあなたを殺すことなんて造作もないんですから」
「やろうと思えば、か。とするとやはり宮城を殺すことになったスペルは、ただスペルを無効化、反射するだけのものではなかったようだな。大方自分にかかるダメージを他者に移し変える能力といったところか。それならスペルを二つ使うことで任意の人物を殺せるわけだから、『やろうと思えば』という発言にも納得だ。それにお前が俺たち三人が揃った時点で動き出したのも頷けるな。うまく策がはまれば、本当にこれでゲームエンドだったわけだ。いや全く、何度も何度も情報提供してくれて感謝するよ」
「………………」
流石というべきなのだろうが、ここまで挑発されても姫宮の表情に明確な変化は生じなかった。ただかなりの怒りを押し殺しているのは、強く握りしめられ一筋の赤い液体を滴らせた彼女の拳から瞭然であった。
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